分  娩




ここはふしぎな地層だ
るいるいと積み重なる河原の
石のあいだに
意外にこまやかな砂の やさしい堆積があり
不毛な土地とはいえ 豊かな水が
ぼくの 沈んで眠る半身をひたす




明け方の冷え冷えとした大気をすかして
地平線上の一点が赤らむのが見える
水ガラスの天空を火花が突っ走る
新たな支配の開始を世界に告げる使者たち
その直前を逃げ散る臆病な妖怪たち



逆光に引き裂かれた苦悩の雲が
まんまるな太陽を分娩する
あんまりたびたび生まれたので
すっかり角のとれてしまった
永遠の老いたる胎児を。









不定形の渡船より