青ざめたその影でさえ
消えかかりゆらめきながら私には命の符号だった
今夜ねむってかすかな内臓の感覚にみちびかれ
奇異な夢と夢の胞状鬼胎
癌性増殖するイマージュの群れに
分裂した「私」
背後をもたない眼
そして「私」がすべて口をつぐみ終えたとき
イマージュはそのともづなをきって漂流し
はるかな地平をかすめ かつて「私」のあった場所をかすめ
岩燕のように飛び交う
このようにして私は世界を回復する
「私」の不在の上に
かくてひとつの死が成就され
世界の再生が確立
熱い流れが宇宙の外縁を滴り落ちていった
それはこの世界にはもうかかわりない
「私」の形骸の単なる生理のひとつであった
詩集「変身者の伝言」より