投稿者・井上 裕 公務員 大分市 2001.10.30 update
昨年4月に発刊されて、すぐに購入し通読したが素晴らしい書物だった。オリンピックマラソン100年を第一章のアテネから第25章のシドニーまでそれぞれ15〜20ページにわたって詳細に記述。データが正確かつ詳細。データの豊富さを数え上げるときりがないが、例えば、初回アテネからアトランタの前出場選手の結果(訳1500人、棄権も含む)のリストは壮観である。また1936年1月現在のマラソン歴代トップ10のリストがベルリン前夜の記事にさりげなく出てくるが、ここに日本が7人占めていたのを見るのは感慨深い。データ以上にドキュメンタリーとして読み物としても非常に優れており、各マラソンのレース模様は目の前で実際にレースを見ていると錯覚するほど詳しく記述されている。また各オリンピックの間の4年間の世界の動向が書かれているのもマラソンファンにはうれしい。
戦前の日本のマラソン黄金期のことも詳細に記述されているが、これは著者の一人にKen Nakamura(国際陸連のスタッフのおひとり)がいらっしゃるからであろう。
陸上競技について余り洋書を読んだことがないので、この本の読後感でもって一概に欧書陸上競技本が優れているとは主張しないが、しかしこの書物はとりわけ群を抜いている。
良い本には素直に感銘したいと思う。
この書物を越える日本の陸上競技の書物を見たことが無いのが残念である。
是非、翻訳をと思うが、難しいかもしれない。いっそ自分で翻訳して、日本の陸上ファンに読んでもらいたいと思うくらいの書物なのである。英語は比較的平易である。 |
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