インプレッサ用 リヤ対向2POTキャリパの装着 |
BGレガシィのリヤブレーキにインプレッサSTi用の
対向2POTブレーキキャリパを移植した際の手記。
●2002-04-16:新製、●2002-05-07:追記&校正&仮公開(未完)、●2002-05-14〜15:後半追記&再校正
<概要> 標準装備品のバックプレートを対向2POT用に交換すれば、キャリパの移植が可能。
1.はじめに |
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レガシィユーザーの間では、自車にインプレッサ用のパーツを流用する人々が多いようだ。それはエンブレムであったりサスペンションであったりエンジン丸ごとであったり、大から小まで実に様々なパーツに及ぶ。元々互換性があって換装されている場合もあるし、「知恵+改修+力業(?)」
で移植されている場合もあろう。 その中でも、フロントブレーキキャリパの移植は比較的ポピュラーな流用技だ。各アフターマーケットメーカーやショップのデモカー (もちろんレガシィ) がこぞってインプレッサ用のフロント対向4POTキャリパを移植している影響もあってか、BD/BG型、BE/BH型 問わず、フロントブレーキキャリパが対向4POTに換装された車両を街中でも見かけるようになった。特にインプレッサ22B用の赤く塗装されたものは ”赤キャリ” などと呼ばれ、一部ショップの店頭やオークションで (一時期に較べると落ち着いたとは言え) まだ高値で取り引きされているようである。 ところが、いわゆる 「ポン付け(一部グレードを除く)」 で済むフロント側とは異なり、リヤ側はその作業難易度が高いためか、対向2POTキャリパを移植したという例は、皆無ではないが、ほとんど聞かない。また、ショップからリリースされている必要部品一式がキット化されたものの中には、10万円を超えているものもある。これではコストパフォーマンスが良いとは言えない。 そこで、対向キャリパ本体は解体屋さんから新古品を入手し、主な作業は自分でやることにすれば費用も安く済むではないか。しかも、リヤ側はまだほとんどのレガシィユーザーが手を加えていない部位であるから、完成後の満足度も高いだろう。また、バイク乗り(※1)なら実感している人々も多いと思うが、リヤブレーキの制動如何で車両の安定度が意外なほど変わってくるという事実(※2)もある。 (※1)通常、二輪車はフロントとリヤのブレーキは独立しており、ライダーがそれぞれを同時に操作する。 ・・・ということで、よーし、こりゃ一丁、リヤ側に対向2POTキャリパを移植してみるか・・・と考えるに至ったのである。ちなみに、フロント側がノーマル片押し(2POT)のままでリヤから先に対向2POT化する、という順序については、まぁ、他人から
「KAZさんオール2ポッターですか」
などとツッコまれる恐れがあるが、そのような指摘については受け流すことにした。本人も承知の上での移植だし、それにフロント側は4POTキャリパ本体さえ手に入れば、後でいつでも移植できるだろうから。 |
2.必要な部品について |
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私のレガシィはBG5B5CD、後期型GT−Bである。リヤブレーキシステムには元々15インチディスク
(ベンチレーテッド) が適用されているから、対向2POTキャリパ化にあたって必要な部品は、
<画像1>の右欄に示す通りである。ブレーキディスク (ローター) については現在のものがそのまま使えるが、対向2POT化によりブレーキパッド接触面の半径方向の大きさ (内外周距離) が若干異なるようなので、再利用の際には研磨するか、研磨できなければ新品ディスクを使った方が良い。 ブレーキホースについては、BG5B(GT−B) 純正のものもインプレッサSTi 純正のものも どちらも使えないことは無いが、ストラットダンパーの標準取り付け位置に固定させると長さが微妙に足りず、常にツッパられるような状態となるので好ましくない。一説によると、インプレッサ22B用のブレーキホースが適用可能との情報もあるが、今回は GOODRIDGE製 のステンメッシュホースを用いることにする。 ステンメッシュホースについては屈曲性や耐久性の点で難ありとの指摘もあるが、ダイレクト感重視で
(というより、ホントにダイレクト感が増すのか?
という興味から)
試してみることにする。ちなみにブレーキフルードは、これまた物性温度重視で
TRUST の スーパーDOT4
を継続使用する。なお、バックプレートについては後述する。 |
3.作業手順について |
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作業目標としてはバックプレートの交換になるが、バックプレートを取り外すためには、直前に位置するハブベアリングを引き抜かなければならない。よって、圧入機の必要なベアリング交換作業はディーラーに依頼することにした。つまり、今回のリヤ2POTキャリパ移植の作業内容は、次のような段階を経ることになる。 <画像2> 主要作業はアクスルハウジングの脱着となる ◎第一ステップ :
「ベアリングハウジング (=リヤアクスル
ハウジング、人によっては ”ナックル” |
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4.リヤ アクスル
ハウジングの取り外し |
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必要なパーツ類がそろったら、いよいよ移植作業の開始である。車輪止めをかけて車両をウマに載せ、リヤホイールを取り外す。2柱リフトは特に必要ない。まず初めに、アクスルナットを軽く緩めておく。本来は、ホイールのセンターキャップのみを取り外し、荷重
(車両重量)
がタイヤにかかった状態でハブナットを軽く緩めた方が無難であろう
(今回はホイールを取り外さないとセンターキャップが取り外せなかったので、先に車両をウマに載せた状態で軽く緩めた)。なおアクスルナットを緩める際には、<画像3>の左側に示すように、長さが優に2.0mはあろうかと思われるほどの超ロングエクステンションを使用した。・・・エクステンションと言うと聞こえは良いが、実は単なるパイプ鋼材である。 <画像3> 次に標準のキャリパ(片押し) をバックプレートからいったん取り外し、ブレーキディスクも取り外す。リヤの場合はドラムイン方式なので、ここで<画像4>の左側に示すように、パーキングドラムブレーキ構成パーツも取り外しておく。もちろんABSセンサも取り外す。あとはバックプレートをハブベアリングハウジング (=アクスルハウジング) ごと引き抜けばOKだが、スプライン嵌合がキツイくてなかなか抜けない場合は、<画像4>の中央に示すように市販のプーラーなどでキッカケを作ってやると良いと思う。<画像4>の右側に、標準のバックプレートをアクスルハウジングごと引き抜いたあとの様子を示す。・・・ハブ (アクスルハウジング) の無いクルマの姿はかなりみすぼらしい・・・。 <画像4> |
5.バックプレートの交換(ハブベアリングの打ち換え) |
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さて、後輪の左右で同様な作業を繰り返し、標準のバックプレートがアクスルハウジングごと車両から取り外せたら、ここから先のハブベアリング抜き取り
および 圧入作業はディーラー (スバル)
にお願いする。第三節でも述べたように、(バックプレートの交換に必須の)
ハブベアリング打ち換え作業には、圧入機が必要となるからだ。 個人でベアリング圧入機を備えている者は非常に少ないだろうから、BG/BDレガシィでDIY作業にてリヤのバックプレートを交換する場合、ショップやディーラーにハブベアリングの打ち換え作業が依頼可能かどうか (あるいは圧入機を使用させてもらえるかどうか) を事前に確かめておいた方が無難だろう。 私の場合、ディーラーに部品持ち込みで作業をお願いすることになるため、まずは 「車両本体での入庫ではなく、アクスルハウジングAssyを車両から取り外し、部品持ち込み状態でのハブベアリング交換作業が受付可能かどうか」 「可能な場合は工賃はいくらになるのか」 を事前に打診した。結果、左右で1時間ほどの時間工賃で依頼受付OKとなった。ただし、あくまでも 「ハブベアリングの交換」 をメインの依頼項目とし、「同時に持参する対向2POT用バックプレートへの交換」 はあくまでその ついで に行いたい・・・というスタンスで打診した。いくらバックプレートがスバル純正品とは言え、適用外車種への装着に関しては、ディーラーは良い顔をするハズが無いとの配慮からである。 <画像5> ・・・とは言え、最近ではディーラー自体がフロント対向4POT化の作業を引き受ける例もあるようで、また東京スバルや神奈川スバルのように、ディーラー内へのScLaBo(※4)コーナー設置の動きもあることから、時代の流れは改造に対して次第に寛容になってきているのかも知れない。 |
6.リヤ アクスル
ハウジングの取り付け |
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ハブベアリングが新品
(>本当はバックプレートの交換が主目的・・・シィーッ!?) になったアクスルハウジングをディーラーから受け取ると、これまでの作業と逆の手順で取り外した部品群を装着していけばよい。もちろん、ブレーキホースのガスケットやアクスルナットなどの再利用不可品は新品に換えることになる。なお、GOODRIDGE製ステンメッシュブレーキホースの装着については、機会を見ていずれ別ページにて詳しく述べるつもりである。 <画像6> 以上で、DIY作業 (ただし、ハブベアリング交換はディーラーへ依頼) によるインプレッサ用・リヤ対向2POTキャリパのBGレガシィへの移植は、ほぼ完了である。ここで 「ほぼ」 と書いた理由は、アライメント調整作業が残っているからである。サスペンション (ストラットダンパー&コイルスプリング) こそ、ボディ側から取り外さずに残してはいるが、作業前後で宙ぶらりん状態を経ているので、アライメントチェックも必須と考えた方が無難である。 このように、自分でできることを自分で行った結果、アライメント調整以外の工賃はハブベアリング打ち換え料金のみ
(しかも車両本体入庫時の工賃よりも遙かに格安)
で済む。ベアリングやオイルシール、ガスケットなどの消耗部品も元々メーカー純正品であるから、ショップを介してわざわざ高価なキット物を買わなくてもディーラーで購入できる。特にお客様感謝デーにあわせて購入すると、ディーラーによっては割引価格で手に入れることも可能だ。要するに、リヤ対向2POTキャリパの移植費用は、自分で苦労する量に応じて安くなるということである。ただし、アクスルハウジングの脱着には
それ相応の工具が必要になるので、確実性を求めるなら、部品調達から移植作業まで一連の段取りをショップに一任するのも
「アリ」 だと思う。 |
7.インプレッション(リヤ対向2POTキャリパ移植後の感想) |
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まずは様子見のため、リヤのブレーキパッドはインプレッサ純正品
(対向2pot用)
をそのまま使用することにした。ただし、端面に軽く面取り加工を施しておく。ここでキャリパ交換前後でのブレーキパッドの銘柄
(仕様) を確認すると、次のようになる。 ◎交換前 まず交換直後 (ホントに直後) の印象は、パッドとディスク (ブレーキローター) がなじんでいないため、ブレーキング時の車両のノーズダイブがやや増したような感じがした。つまり、フロントブレーキの負担がかえって増えているような感じだ。それは、ディスクの表面温度からも分かる。例えばフロントは素手では触れないほど熱くなっているときに、リヤは指で軽く触れることができたりしたからだ。 そこで、リヤパッドとディスクになじみを持たせるために、ハードブレーキングをくれてやる。街中や高速道路では思い切りブレーキングできないので、SLy(スポーツランドやまなし) というミニサーキットに行ってきた。1周約1.2kmで高低差のあるコースだ。が、リヤブレーキに喰い付きが出たと感じるまでには、結構な周回数を必要とした (周回ペースは約45秒台)。思うに、フロントは片押し2pot(ノーマル)システムのままとは言え、パッドは社外品。一方、リヤは対向2pot化したとは言え、ノーマルパッド。リヤのインプレッサ用ノーマルパッドは、制動力至上主義では無い (その開発に際し、耐摩耗性や鳴きに対しても考慮された素材を採用しているであろう) と思われることなどから、当初はなかなか思うようにリヤブレーキに仕事が分担されなかったのかも知れない。 ・・・しかし、これはリヤのパッドとディスクに当たり・なじみ・喰い付き感が出る以前の話である。 いったんなじみが出ると、ブレーキング最中の車両姿勢は非常に安定していると感じる。巷でささやかれるような、「リヤから先に効き出す」 ような印象は無いし、実際にそうなることも無いだろうが、ブレーキングの後半過程で、車体のフロントが沈み込むのをリヤが効くことで抑えに入っているようなイメージだ。もう少し詳しく書くと、ブレーキングの初期には特に強力な制動力を感じないが、踏み込んでいくにしたがって、リヤの制動分担が増していくような印象だ。バランス的には悪くないと思う。これはリヤが純正パッドのせいだからかも知れない。リヤ用として、実は旧タイプではあるがプロジェクトμのHCチタン改も別途入手してあるので、機会があればその組合せでの制動バランスも試してみようと思う。 (↓2002-05-14 追記) その後、ショップ主催の走行会に参加して ヒーローしのいサーキット(栃木県) を走る機会を得た。こちらも1周約1.8kmほどのミニサーキットではあるが、アベレージ車速はSLyよりも高くなるコースレイアウトだ。以下、ブレーキに関する 非常に私的な印象 を箇条書きしてみる。 ◎フロントブレーキがリヤブレーキに負けていると感じる場面が多々あった
(第二ヘアピン〜最終コーナー)。 SLy(スポーツランドやまなし) のように、コーナーが比較的多く車速が低め (MTで3速ギヤ以下) のサーキットでは気が付かなかったが、長いストレートから一気に車速を落としたり、あるいは下り坂でのハードブレーキングが必要な場面では、もう少しフロントの効きを強くしたいと感じた。逆の言い方をすると、ハードなブレーキングになればなるほど、リヤの効き方が従来比で強くなっているということだろう。従来の片押しシステムで使用していたリヤパッド (comp-B ラリー&ダートラ) の効きは強力な方だと思うが、そこまで感じたことは無かった。このへんが、世間で言うところの 「キャリパーの剛性感の違い」 なのかも知れない。 インプレッサ用の純正リヤパッドでそう感じたのだから、これをHCチタン改などに換えた日にゃ、いったいどのようなブレーキバランスになることやら・・・。ということで、ヒーローしのいサーキットでの結果から、とりあえずリヤパッドはこのままで、フロントブレーキパッドのグレードをもう1ランク上げることに決めた。次は同じプロジェクトμのHCチタン
(”改” ではなく ”カーボン” の方、リニューアル版)
に換えてみるつもりである。もちろん、その際にはフロントにも対向4POTキャリパを導入する予定である。 |
8.まとめ |
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市街地や高速道路だけでなく、ミニサーキット
(ただしオイラは初心者でヘタレ君だけどね・・・)
を走ってみた経験から得られた結論は、以下の通り。もちろん
これは私的なものであり、車両コンディションやドライバーなどの諸条件が異なる場合には、評価もまた変わってくる可能性があることは、いつも書いている通りである。
要するに、市街地をごく普通に走るぶんには、リヤ対向2POT化のメリットはあまり感じられない。その代わり、前後のブレーキバランスが問題になるようなことも無いと思われる。逆にハードブレーキングが求められるようなシーンでは、フロントブレーキのグレードアップと合わせた場合には有効に機能すると考える。 ・・・やはり、バランスというものは大切だ。いたずらにパーツを装着するのではなく、車両バランス
(または限界)
をより高次元に保てるように注意しなければならない、と実感した次第である。 |
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9.備考(おまけ) |
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リヤのブレーキキャリパを対向2POT化したことにより、市販の16インチホイール
(GT−B純正指定サイズは17インチ)
が履けるかどうか若干心配だったが、手持ちのロンシャンXR−4Z
(鈴鹿産業、1665、offset -50mm)
はまったく問題なく履けることが分かった。BD/BG型レガシィに無理なく適合する16インチホイールならば、恐らくは対向2POTキャリパに干渉しないと思われる
(注:絶対ではないので念のため)。もしも干渉するようなら、もともとリヤ対向2POTキャリパを標準装備するインプレッサWRX系の純正16インチホイールを履けば良い。 <画像7> なお最後に付け加えておくが、今回の移植ワザの
”キモ” であるバックプレートについては、インプレッサSTi
系
(R180デフ搭載車、国内仕様、ブレンボ装着モデルも含む)
のものは、そのままの形ではレガシィ (R160デフ搭載車)
に流用できないことを、実物を購入して確認済みである
(画像7の右側参照)。もし流用しようとしても、小改修で済むレベルのものには収まらないだろう(※5)。ただし、ドライブシャフトなどR180駆動系全体を丸ごと移植する場合は、その限りではない。 よってBG/BDレガシィに限っては、各チューニングショップから販売されているリヤ2POT化キットのバックプレートを購入するか、輸出用のバックプレートを入手するか、R160デフ搭載車でリヤ対向2POTキャリパ純正装備の車種用のバックプレートを探し当てるか、あるいは個人売買などで入手するか・・・のいずれかになるだろう。 |
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(STiパーツ流用
オイルフィラーキャップの制作) (MT油温計(フロントデフギヤ油温計))