「ポロライド」

父。
2006年、盛夏。



「写真ば、撮ってくれ」


或る公文書を提出するのに、
写真を添付する必要があるから、と父の依頼。


「デジカメ持っとろうもん(自分で撮れよ!)」と僕。

「それがどこにやったかわからん。失うた(なくした)」と父。


ちっ、面倒くさい。



...そのうち依頼されたのを忘れてしまっていた。



アテにならない息子にしびれを切らし、
父はどこからか「チェキ!」を調達してきた。





父が駆け込んできた。
「おい! “ポロライド” の使い方ば教えてくれ」

(ぽ?ぽろらいど...??)





...

父は昔、ポラロイドカメラを持っていた。
撮ったら付着した紙をめくる、というのがセオリーだった。
父は、チェキで撮ったあと、一所懸命めくろうと頑張った。
いくらやっても一向にめくれず
「あ〜〜〜〜!!!!!!」
苛立ち、とうとう端っこをジョキン!とハサミでタタッ斬った。

...



「写真から“黒か汁” が出てきて、絵がジェンブ消えてしもうた」
駆け込んできた父の手には、チェキ写真内部の黒い液体が
ベットリ付着。
そして、流れてしまってなにがなんだかわからない、
抽象表現的 “ポロライド写真” が、あった。