圧倒的な戦闘場面でスピルバーグ監督の力量が再認識された「プライベートライアン」・・「平和、平和」と声高に叫ばずとも、見る者に戦争の無残さ、非情さを訴えて、そのアピールの見事さには驚嘆させられたが、この映画のシーンの中で、「戦死公報」を旧式タイプライターが打ち出す音は、日本と連合軍の軍部のあり方の大きな差を感じさせてカタカタ、カタカタと響いて心に残った。
「ご子息は自由と平和の為に立派に戦って亡くなられました。ご子息の死があなた方ご家族にとって誇りになり・・・」
戦死した兵士の遺骨すら未だ収容されず、南方の地に埋もれさせたままの日本とは「人間」に対する考え方が全く違う、所詮日本と言う国は戦争の犠牲者への配慮などあった筈も無いと思いながら映画館を後にしたが、この六月に逝った母の遺品の中からこれを覆すような一通の手紙が出て来た。
今の若い人達には意味すら理解出来ない程の「候文」で、茶色く変色した粗末な「陸軍」の封筒には、宛名として母の名前が達筆な墨字で書かれていた。
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