Eyes Wide Shut |
1999年作品。アメリカ映画。159分。配給=ワーナー・ブラザース。製作会社=ワーナー・ブラザース。製作総指揮=ヤン・ハーラン。監督=スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)。脚本=スタンリー・キューブリック、フレデリック・ラファエル。原作=アーサー・シュニッツラー『トローム・ノヴェル』。撮影=ラリー・スミス。特殊効果=ガース・インス。美術=レス・トムキンズ、ロイ・ウォーカー。編集=ナイジェル・ゴルト。ビル・ハーフォード=トム・クルーズ(Tom Cruise)、アリス・ハーフォード=ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、パーティのホスト=シドニー・ポラック、ジャズ・ミュージシャン=トッド・フィールド、マリー・リチャードソン、アラン・カミング、マディソン・エジントン、ソーマス・ギブソン
結婚9年目で幸せだがささやかな倦怠期を迎えつつある夫婦。二人はそれぞれに性的な妄想をいだき、嫉妬する。ニコール・キッドマン扮するアリス・ハーフォードは、旅行先で一瞬だけ視線を交わした海軍士官との情交を夢みる。ビル・ハーフォード役のトム・クルーズは、性的好奇心で街をさまよい、著名人たちの秘密の乱交パーティに紛れ込み危うく難を逃れる。「お互いほどほどの冒険で良かったわね、セックスしましょう」でおしまい。夢と現実が混濁する迷宮も謎もショッキングな映像もなかった。まして異常性欲など描かれてはいない。
豪華でセンスの良いセット、的確なカメラワーク、心憎い音楽の使い方は、確かにキューブリックらしい。ダンスシーンのたゆたうキッドマンはまぶしい。しかし、息を飲むようなシーンには出会えなかった。「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」「シャィニング」と歴史的な傑作を生み出した監督の遺作を観た感慨は深いが、キューブリックの「最高傑作」ではけっしてない。映画化を構想した70年代に公開されていたとしても、代表作にはならなかっただろう。