Eyes Wide Shut 



「幸福な結婚生活に存在する、セックスについての矛盾した精神状態を探り、
性的妄想や実現しなかった夢を現実と同じくらい重要なものとして扱った」
(スタンリー・キューブリック監督)


 1972年、キューブリックは 「Traumnovelle」の映画化権を取得。1995年12月15日、ワーナー映画が「EYES WIDE SHUT」の製作発表。1996年11月4日、英国で撮影開始。トム・クルーズ、ニコール・キッドマン夫妻は家族とロンドンに移り住む。1998年4月撮影終了。1998年9月9日、ワーナー映画は全米公開を1999年7月16日に決定。1999年3月2日、ニューヨークで、トム・クルーズ、ニコール・キッドマン、テリー・セメル、ロバート・デイリーWB両会長の4人が極秘試写。1999年3月7日、スタンリー・キューブリック死去。1999年3月10日、キューブリック監督編集の90秒予告編が、ショーウェストで上映される。1999年7月16日、R指定で全米公開。日本は成人指定で7月31日公開。
1999年作品。アメリカ映画。159分。配給=ワーナー・ブラザース。製作会社=ワーナー・ブラザース。製作総指揮=ヤン・ハーラン。監督=スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)。脚本=スタンリー・キューブリック、フレデリック・ラファエル。原作=アーサー・シュニッツラー『トローム・ノヴェル』。撮影=ラリー・スミス。特殊効果=ガース・インス。美術=レス・トムキンズ、ロイ・ウォーカー。編集=ナイジェル・ゴルト。ビル・ハーフォード=トム・クルーズ(Tom Cruise)、アリス・ハーフォード=ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、パーティのホスト=シドニー・ポラック、ジャズ・ミュージシャン=トッド・フィールド、マリー・リチャードソン、アラン・カミング、マディソン・エジントン、ソーマス・ギブソン

 結婚9年目で幸せだがささやかな倦怠期を迎えつつある夫婦。二人はそれぞれに性的な妄想をいだき、嫉妬する。ニコール・キッドマン扮するアリス・ハーフォードは、旅行先で一瞬だけ視線を交わした海軍士官との情交を夢みる。ビル・ハーフォード役のトム・クルーズは、性的好奇心で街をさまよい、著名人たちの秘密の乱交パーティに紛れ込み危うく難を逃れる。「お互いほどほどの冒険で良かったわね、セックスしましょう」でおしまい。夢と現実が混濁する迷宮も謎もショッキングな映像もなかった。まして異常性欲など描かれてはいない。

 豪華でセンスの良いセット、的確なカメラワーク、心憎い音楽の使い方は、確かにキューブリックらしい。ダンスシーンのたゆたうキッドマンはまぶしい。しかし、息を飲むようなシーンには出会えなかった。「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」「シャィニング」と歴史的な傑作を生み出した監督の遺作を観た感慨は深いが、キューブリックの「最高傑作」ではけっしてない。映画化を構想した70年代に公開されていたとしても、代表作にはならなかっただろう。


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Visitorssince99.07.18