『社会福祉士・介護福祉士のための用語集』


29項目執筆したのですが、2項目は採用されていないようです。
でも、せっかくでもったいないので載せておきます。したがって、その部分は現物と違います。


医学モデル/意図的な感情表現/エコマップ/間接援助技術/クライエント中心療法
グループ・スーパービジョン/グループ形成/グループの凝集性/グループ目標/グループワーカー
/グループワーク(集団援助技術)/サイキアトリック・グループワーク/集団援助計画/集団記録/集団処遇活動
/集団面接/グループダイナミックス/生活場面ソーシャルワーク/生活場面面接/生活モデル
/精神医学ソーシャルワーク/積極的ケースワークケースワーク/直接援助活動/直接援助技術/トレッカー ,ハーレー/波長合わせ/問題解決アプローチ/4つのP/ライフ・ヒストリー


医学モデル
社会福祉援助、特にケースワークやグループワークといった直接援助において用いられるモデル。福祉援助の一連の過程を医師による治療過程に準ずるものと見なしていくところに特徴がある。クライエントの抱える問題の生じた理由や背景について情報を集め(調査:Stusy)、どのように関わっていけば良いかについて処遇方針を決め(診断:Diagnosis)、現実にさまざまな援助を行っていく(治療:Treatment)。このプロセスからSDTモデルともいう。


意図的な感情表現
アメリカのバイスティック(F.P.Biestek)が明らかにした「ケースワークの7つの原則」の一つ。社会福祉援助に当たっては、全てのクライエントのとる行動には何らかの意味があるという事実を理解することが大切になる。ワーカーはクライエントのとる言動の背景にある意図を理解する努力を怠ってはならない。また面接場面などにおいても、できるだけ不満・不安や疑問などの日頃口に出しくい感情を、クライエントが自由に表現できるような状況づくりを心がけなければならない。


エコマップ
1970年代に、アメリカのハートマン(Hartman,A)によって開発された、ニード評価のための道具。一枚の用紙に「家族」を中心に、「社会福祉機関」「仕事」「保健ケア」「親戚」等といった家族をとりまくシステムが空欄の形で配置されている。各項目について、実際のケースの内容を書き込んでいくことで、クライエントの抱える問題を巡って、どのような資源が利用可能であり、また不足しているかなど、社会関係が直感的に理解できるようになる。


間接援助技術
「社会福祉士及び介護福祉士法」の制定にともなって、用いられるようになった用語。社会福祉援助技術(ソーシャルワーク)の内、ワーカーが直接クライエントに関わることによって問題解決・課題達成を図っていこうとする直接援助技術に対置される概念。コミュニティワーク、社会福祉調査、福祉運営管理、福祉計画等、クライエント援助を間接的な形で達成していこうとする技術の総称。真の社会福祉援助のためには、直接援助技術だけでなく間接援助技術も十分に行使される必要がある。


クライエント中心療法
アメリカの心理学者ロジャーズ(Rogers C.)によって強調された、カウンセリングの代表的立場。来談者中心療法とも訳される。クライエント自身のもつ「変化する力、成長する力」を絶対的に信じ、ワーカー側が問題についての解釈や判断を加えないこの治療法は、社会福祉援助−特にケースワークに大きな影響を与えた。初期においては非指示療法といったが、ただ機械的に非指示的対応さえとれば良いのではないため、現在の名称になった。


グループ・スーパービジョン
社会福祉実践において、スーパービジョンは不可欠の条件である。グループスーパービジョンとは、スーパーバイジー(指導を受けるワーカー)が複数いる場面で行うスーパービジョンである。一般的に行われる個別スーパービジョンと比べて、スーパーバイジー同士の相互援助関係の力を利用できる点が優れている。また、他人のケースについてのスーパービジョンを聞き、自らも議論に参加する中で自分自身の振り返りにもなる。


グループ形成
グループワークが始まったときには、メンバーは互いに相手のことを知らず、グループはバラバラの状態である。それが、ワーカーの援助を得て、メンバー同士は徐々に相互作用を始める。そして、全体としてのグループ意識をもち、仲間意識を強め始める。このような段階までグループ形成が進んだとき、グループはただの「人の集まり」から、真の意味でのグループワーク的グループ形成がなされることになる。


グループの凝集性
集団が本質的にもつ性質の一つ。メンバーが集団内に留まり、まとまろうとする力が強いとき、「凝集性」の高いグループと呼ぶ。メンバーにとって他のメンバーがどれだけ魅力的か、プログラムに積極的に参加できているか、グループでどのような体験や交流ができているか等によって凝集性は規定される。グループワーカーにとって、グループの凝集性をある程度高めようとすることは大切になってくる。ただし、凝集性が高ければ高いほど良いというものでもない。


グループ目標
グループワークにおいて、メンバー全員が了解して目指している目標のこと。メンバーは自らの目標(個人目標)を達成するために、グループ活動に参加する。しかしあるメンバーの行動は、他人にとっての目標達成の妨げになることもある。このようなとき、グループ内に葛藤が生じることになる。その意味で、個人レベルの目標と、全体レベルの目標(グループ目標)が矛盾なく並存・統合されるように、ワーカーは努力しなければならない。


グループワーカー
グループワークを行う、社会福祉援助者をさす。グループのメンバー個々に働きかけるだけでなく、メンバー同士の励ましあいや協力といったグループの相互作用を促すことが重要な役目となる。グループワーカーは、グループリーダーとは異なる。リーダーはグループの雰囲気や意志決定に影響を与えるメンバーであるのに対して、ワーカーは必要に応じてリーダーシップを発揮することはあるにしろ、あくまでもグループの側面的な援助者である。


グループワーク(集団援助技術)
ソーシャルワークの一つの方法で、社会福祉援助技術の中では、直接援助技術に属する。福祉問題を抱える個人及び集団に対して、意図的なグループプログラム体験を提供し、グループ内外の相互作用を生ぜしめることによって、彼らの抱える問題を解決しようとするものである。ワーカーとメンバーの援助関係とメンバー同士の相互作用関係、さらにはグループと外部社会との関わり等が充分に行われることによって、メンバーとグループは成長していく。


サイキアトリック・グループワーク
(原稿提出するも、掲載されず??)

精神医学グループワークのこと。サイキアトリック・ソーシャルワークの一部をなす。精神科病院や保健所などにおいて、精神医学的関わりの必要なメンバーに対して実施されるグループワークのことである。精神科疾患のあるクライエントへのアプローチは、一般的な社会福祉援助としてのグループワーク技術だけでなく、メンバーの精神医学的な知識や技術も同時に必要とすることから生じたものである。



集団援助計画
グループワーク実践において、援助目標を達成するために設定される一連の計画。具体的には、■どのようなメンバーを対象にし、どの程度の人数でグループを運営するのか ■どこで、どのくらいの頻度・時間で行うのか ■どのようなプログラムを設定するのか ■どのような状態になったときにグループワークを終結するのか 等である。ある程度援助開始に当たって、計画の基本線は決めておくが、開始以後もグループの状況によって、随時計画は修正されることはいうまでもない。


集団記録
原語のままグループレコードと呼ばれることが多い。ケースレコードが原則的にクライエント個々の様子について触れられるものであるのに対して、グループワークにおいて、グループ全体の様子、それへのワーカーの介入、その後の変化の様子等について記述するものである。従って、グループワークにおいても、個々のメンバーについて記録を残す場合にはケースレコードと呼ぶ。グループレコードとケースレコードの両方が良いグループワーク実践のためには必要になってくる。


集団処遇活動
施設等福祉実践の「場」では、クライエントを集団として扱い関わることが多い。厳密にいえば集団処遇=グループワークではない。職員がメンバーを集めて、一律に指示を出したときそれは、集団処遇ではあってもまだ、グループワークにはなっていない。メンバーの相互作用を重視して、その後のグループの展開をメンバーのリーダーシップに基本的に委ねたとき、集団処遇はグループワークになる。集団処遇活動はグループワークをも含む広義の概念といって良いだろう。


集団面接
複数の調査対象者を一堂に集めて、質問や試験を行い情報を集める方法。社会福祉調査法における代表的な面接調査法の一つである。この場合、できるだけ多くの人の意見・態度を知ろうとする「資料収集」が主目的となる。一方、ケースワーク等において合同面接といった意味で用いられることもある。この場合は、問題を抱えている家族や仲間を全体としてみなし、ワーカーが関わり援助しようとするものである。


グループダイナミックス
集団力学を指す。グループを静態的に理解するのでなく、動態的に理解していこうとする集団論。1930年代にK.レヴィン(Lewin,K.)によって創始された。実験的小集団を観察することによって、さまざまな事実が明らかになってきている。例えば、集団の凝集性やリーダーシップ等の程度によって、メンバーの満足度やグループ目標の達成度等が影響を受けるといったことが明らかになっている。社会福祉実践、特にグループワークにおいても、その研究成果は大いに活用されている。


生活場面ソーシャルワーク
レドル(Redl,F.)等によって提唱された生活場面面接の概念を福祉援助場面に導入したもの。従来福祉施設等におけるクライエントの日常生活の場面(ケアの場)と面接等の相談援助の場面(ソーシャルワークの場)は切り放して考えられることが多かった。しかし、日常生活場面でも充分ソーシャルワーク援助は可能であるとの考えで、介護の場面やクライエントの送り迎えの場面など、従来「日常会話」として軽視されてきた場面で専門的援助を実施することである。


生活場面面接
従来、福祉や臨床心理等人間援助において「面接」と言うとき、特別に時間と場所を確保して実施されるもの(構造化された面接)のみを指すことが多かった。しかし、病院や施設、学校などといった援助の「場」は生活の場でもある。そこで生じた問題を、「後日別な場所で面接しましょう」と後回しにするわけにはいかない。そこで、今までワーカーがあまり重要視してこなかったクライエントの日常生活の場を面接空間として認めていこうとするもの。


生活モデル
代表的なソーシャルワークモデルの一つ。1960〜70年代に、福祉問題を抱えるクライエントを、社会から切り放して治療しようとする「医学モデル」への批判として登場した。人と環境の交互作用に注目し、福祉問題を両者の関係において理解し援助していこうとする。つまり、「誰が(何が)悪いのか」と考えるのでなく、クライエントの環境に適応する力を高める一方で、環境がクライエントに対してより良く対応することができるようにすることが目指されている。


精神医学ソーシャルワーク
精神科病院や保健所などにおける、精神医学的関わりの必要なクライエントに対して実施されるソーシャルワークのこと。サイキアトリックソーシャルワークともいう。精神科疾患のあるクライエントへのアプローチは一般的な社会福祉援助者としてのソーシャルワーク技術だけでなく、一定の精神医学的な知識や技術ももっていないと適切な援助が期待できないことから生じたものである。ワーカーは精神科医や臨床心理士等と協力しながら、援助を行う。


積極的ケースワークケースワーク
一般にケースワークの開始に当たっては、クライエント自らが援助を受ける意志のあることが前提となる。それは「善意のおしつけ」を避けるためには重要なことである。しかし、長期間にわたって複合的な問題を抱えているクライエントは、その問題状況が自分にとっては「普通」の状況であるため、自分からは援助を求めようとしないことがある。そこで、ワーカー側から積極的に援助について説明し、ケースワークを受ける必要性を認識してもらおうとするものである。


直接援助活動
社会福祉援助活動において、直接的にクライエントに対して関わる活動の総称。社会福祉援助には、直接援助活動だけではなく、間接的に支える活動もある。例えば、施設でクライエントに対して直接ケアを行う仕事が前者とするならば、掃除や食事の準備といった形での間接的な関わり方が間接援助活動といえる。大旨は直接援助技術という援助方法に関する規定と重なるが、より広義であると考えて良い。


直接援助技術
「社会福祉士及び介護福祉士法」の制定にともなって、用いられるようになった用語。社会福祉援助技術(ソーシャルワーク)の内ワーカーが直接クライエントに関わることによって問題解決・課題達成を図っていこうとする概念。具体的には、ケースワークとグループワークをさす。コミュニティワーク、社会福祉調査、福祉運営管理、福祉計画等、クライエント援助を間接的な形で達成していこうとする技術(間接援助技術)に対置される。


トレッカー ,ハーレー(Trecker ,Harleigh B1911−)
アメリカのグループワーク研究者。特に、彼の著書の「Social Group Work」は、日本においても永井三郎によって翻訳され、コノプカ(Konopka Gisela)とともに、大きな影響を与えた。アメリカグループワーカー協会会長も務めた。


波長合わせ
ソーシャルワーク援助のプロセスの最初期に強調されるポイントである。特にグループワーク実践においてその重要性が強調されることが多い。グループワークのプロセスを準備期−開始期−作業期−終結期と分けたときの、準備期において、波長合わせは必要になってくる。この段階において、申込書など各種資料を基に、メンバー一人一人のもつ悩みや課題、またグループワークが実際始まってから起こるであろうさまざまな問題などについて、予備的に共感しておくことが必要になるのである。


問題解決アプローチ
ソーシャルワークの代表的なアプローチの一つ。アメリカのソーシャルワーク研究者のパールマン(Perlman , Helen H.)によって、体系化された。それは、役割理論を導入することによって、診断主義アプローチと機能主義アプローチを統合したものであった。ソーシャルワークを、ワーカーがクライエントを「治療」していくプロセスと見るのではなく、人生を問題解決過程ととらえ、クライエントが自らの「問題を解決」していく過程であると見なすところに特徴がある。


4つのP
アメリカのソーシャルワーク研究者のパールマン(Perlman , Helen H.)によって示された、ケースワーク援助の構成要素。要素の頭文字がそれぞれ「P」であることからこのように言われる。具体的には、人(Person) - 問題(Problem) - 場所(Place) - 過程(Process)の4つである。つまりケースワークには、解決を必要とする「問題」を抱えた「人」に対して、面接や指導等の援助を行う「場所」が必要になる。その上で、ワーカーとクライエントによる問題解決のための「過程」が展開されたとき、真の援助となるのである。


ライフ・ヒストリー
(この原稿提出したのですが、どうも不採用で別の方の原稿になっているようです。)

生育歴、生活歴、生活史などと日本語では訳される。個々のクライエントのことを「良く知る」ためには、現在の問題がなぜ生じたのかという経緯や、彼が今までどのような努力を問題解決のためにしてきたのかといった、「過去」を知ることも必要となってくる。診断主義的な立場に立つとき特に重視されることになるが、過去に拘らない機能主義的立場においても、クライエントの現在に至るまでの経緯をある程度知ることは必要であることは変わらない。


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