ミニエッセイ [時間と空間]

Written by  中原 憬
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時間と空間に関するとりとめのない日々の短い雑感です。

2018.01.08 更新


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No.12 科学映画「POWERS OF TEN」の紹介

「POWERS OF TEN」という、極めて秀逸な科学映画を紹介いたします。
日本語に訳すと「10のべき乗」になります。

およそ4分半で、1億光年先の宇宙まで連れていってくれます。
気持ち的には宇宙の果てまで行ってきた気になれます。

その先は、観てのお楽しみ。


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No.11 太古の星座

星座というものは、どうにも解せないものだと
子どもの頃から思っていました。

どうして、これが白鳥なんだ?
どうして、これが水がめなんだ?

いくつかの星を直線で結ぶだけで、白鳥や水がめに見えるなんて、
いくら想像力があってもそれは無理があると考えていたものです。

最近、ふっとその理由がわかりました。
太古の夜空は、きっと、一枚の点描の絵を見るように、
満天に星が溢れていたのだろうと。

太古、地上に明かりはなく、大気は澄み切っていたことでしょう。

夜空に星がいくつか輝いているだけではなく、きっと夜空一面が
輝く絵のように光っていたのでしょうね。

本当に、夜空に白鳥が見えたのだろうし、水がめが見えたのでしょう。
きっと、壮大な眺めだったのだろうな。



No.10 物質の密度 その1

お風呂に潜ってみると、どくんどくんと自分の心臓の鼓動が聞ける。
水の中で、体を通して音が伝わってくる。

水も、人間の体も物質であり、音が通る。
つまり、液体でも、固体でも、気体でも音が伝わる。

音から見たら、どれも本質的な差はないんだろうな。
平らな道か、坂道か、山道かぐらいの違いか。

もし、ニュートリノから見たら、宇宙であろうと、大気中であろうと、
地中であろうと、スコーンと通過してしまう。

宇宙空間にある地球なんて、空にある雲みたいなものだろう。
ニュートリノから見たら、宇宙は等密度の一つの大きな物質なんだろうな。

人間から見れば液体、固体、気体というのは、性質の違うものとして
別々に認識しているが、人間の生存形式からくる認識の在り方の限界なのだろう。

異なる観点から見れば、固体も液体も気体も単なる密度のムラに過ぎず、
すべてがひとつの塊に見えるということだと思う。

ひとつの塊として宇宙空間には無数の波が響き渡っている。
人間に見える波、見えない波。

プルンとしているゼリーみたいなものか。



No.9 物質の密度 その2

エントロピーという観点から見れば、果てしない時間の流れの果てに
宇宙空間の密度のムラはやがて均質なものとなるのでしょうね。

波も収まったそのとき、一体、「空間」と「物質」に差異はあるのでしょうか。

ところで、原子核と電子の間にあるものは「空間」なのか、「物質」なのか。
どちらなんでしょう。



No.8 鏡が映すもの その1

子供の頃に不思議だったことは(今でも不思議なのだけど)、
鏡を覗いたときに、正面から見れば、そこには自分の顔が
映っているのだけど、横の方からそっと見れば、そこには
部屋の向こう側が映っているということ。

もし、一人がこの鏡を正面から見て、同時にもう一人が横から
見た時、その鏡はその瞬間、表面に何を映しているのだろう?

鏡の表面には、同時に二つのものが映っているとすると、
見る角度や距離を変えれば、鏡は対面するすべての物を
同時に映していることになる。

もし、鏡を地面に置いて、遠い星から超高性能の望遠鏡で
その鏡を見れば、やはり遠い世界がそこには映るのだろう。

いま、この鏡は、火星の山脈を映しているかも知れないし、
同時に、鏡の上を這うてんとう虫のお腹を映しているかも知れない。



No.7 鏡が映すもの その2

ところで、火星からの光は地球に到達するのにおよそ3分掛かる。
鏡には3分前の世界と、リアルタイムのてんとう虫が映る。
(同時に?少なくても「私」にとっては同時に)

つまり、光には距離に応じた過去の情報も含まれているし、
現在の情報も含まれているということですよね?
(厳密に言えば、すべて過去の情報か・・・)

この宇宙において光の届く範囲、つまり宇宙の地平線までの
過去の情報さえも、この鏡の表面には映っているはず。



No.6 鏡が映すもの その3

望遠鏡は、いまここにある光から遠い世界の情報を拾い出せる。

それは、鏡とレンズを適切に組み合わせた光学的な道具であり、
望遠鏡の規模が大きければ大きいほど、遠い星の世界を観測できる。

宇宙空間に浮かぶ超大型の望遠鏡なら、理論的には宇宙の地平線まで、
無数の星の姿、膨大な情報を取り出すことができる。

ただ、どんなに規模が大きいものでも、それを構成するものは
1枚1枚の凹面鏡を構成する鏡とレンズでしかない。

1枚、1枚の鏡に、この宇宙の情報が映っているということ(ですよね)。



No.5 空を見上げるときに

そういえば、人が晴れた空を見上げるときには、
そこに、人は無限を見ているのだったよね。

この蒼さは、150億光年先の宇宙の地平線まですべてを足した
深みの蒼さなのかも知れない。



No.4 鏡が写すもの その4

鏡にこの宇宙の情報が映っているのなら、鏡は3次元を2次元に
置き換える道具といえますね。髪型を直すだけの道具ではなく。

時間までも距離に応じて2次元化しているから、この宇宙の時空までを
2次元に投影していると言えるかも。ファンタスティック。

透明な球体であれば、3次元から1次元ですね。
水晶玉とか、ビー玉とか。

占い師が、水晶玉に人の未来や過去を見るのも象徴的かも。
子供の頃、ビー玉を覗き込んで、そこに宇宙の神秘を感じていたのは、
間違いではなかったんだな。きっと。



No.3 空間に満ちているもの

ラジオが、何もない透明な空間に満ちている音楽を拾い出せるように、
望遠鏡は、何もない透明な空間に満ちている星々の姿を拾い出せる。

この空間には、何もないように見えても、溢れるばかりの膨大な
情報が波として存在している。
海面の波のように、さまざまな波が無限に打ち寄せているのだろう。
波は互いに干渉し、輻輳し、新しい波の形をつくる。



No.2 歳をとると時間が速く流れる理由

なぜ、歳をとれば、とるほど時間の流れが速く感じられるか、
その理由を知っていますか。
子供の頃は、一日が、今よりもとっても長くありませんでしたか?
子供の頃は、一週間がとっても長く感じられませんでしたか?
子供の頃は、一年が果てしなく長く、お正月やお誕生日が
なかなかやってこない気がしませんでしたか?

大人になると、一週間がやたらに早く過ぎ去っていきませんか?
大人になると、一年があまりに早く流れていきませんか?
もう誕生日が来たのかと思いませんか?
それはだんだんと加速して、人生の坂道を転げ落ちるような
気にさえなりませんか?

どうして、歳をとれば、とるほど時間の流れが速く感じられるのか?

実は、それはすごく単純な理由だったのです。
ちなみに、その理由を私はいままでこう考えていました。
−−−−生きることに慣れてしまうから。
つまり感受性が汚れて鈍くなっていくから、と。
それよりも説得力のある答えがありました。

「10歳の子供にとって、5年間という歳月は人生の半分だが、
50歳の大人にとって、それは人生の1/10にしか過ぎないから」



No.1 自分しか知らない虚像

高画質のデジタルカメラを買いました。早速箱から出してパチリパチリと
写真をとってみました。自分の顔もアップで撮ってみました。
そして、パソコンにつないで実物大ほどに自分の顔を表示したところ、
そこに表示されているのは私の顔じゃない私でした。期待どおりの高画質な
画像で、確かにそれは私の顔なのですが、何かしら説明のできない違和感を
感じるのです。それは私の知っている私の顔ではありませんでした。
私は驚き、うろたえました。
その理由を考えました。そして気付きました。
このディスプレイに表示されている見慣れない顔こそが本当の私の顔だと。
その逆に日頃、自分で自分の顔だと思っているものは本物ではないことを。

私はメニューからあるコマンドを実行しました。「左右反転」
ディスプレイには、自分の知っているなじみの顔が表示されました。

自分が今まで生きてきて自分の顔だと思ってきたものは、実物の左右が
ひっくり返ったものであって、それは自分しか知らない虚像だったのです。
あらためてその事実に気付かされました。

ところで、昔から疑問に思っていることがあるのですが、どうして鏡は
左右が逆に写るのに、上下は逆に写らないのでしょうか?
どなたか私に分かりやすく教えてくださいませんか。


[補足]
この質問に対する完全な回答が、ブルーバックス「トポロジーの発想」に記載されています!!
ノーベル物理学賞をもらった朝朝永振一郎氏も悩んだこの問題の答えが!!目から鱗です。

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