コニー・ウィリス『航路』日本語ページ

「死ぬっていうのはすごい大冒険だろうな」
――ジェイムズ・バリー『ピーター・パンとウェンディ』より


ヒューゴー賞・ネビュラ賞最多受賞歴を誇るウィリスが死の謎に正面から挑む
怒濤のローラーコースターノベル。魂を揺さぶる感動の大作。

『SFが読みたい 2003年版』ベストSF第1位



装幀:大久保伸子/挿画:本村加代子
(上下巻・各1800円/ソニー・マガジンズより2002年10月8日刊)



●宮部みゆき・瀬名秀明両氏推薦
 臨死体験――自然科学の探究する客観的事実と、人の心が欲してやまない主観的真実の狭間で揺れ動く、今もっとも興味深い謎のひとつ。その解答をお求めですか? でしたら、何をおいても本書をどうぞ。大嵐のようなストーリー展開に翻弄されても、けっしてこの"船"は沈まず、すべての謎が解き明かされる感動のラストへと、必ず貴方をお連れします。――宮部みゆき(上巻帯より)
 私たちは皆いつか死ぬ。だからこそ死には無数の物語が詰まっている。その巨大な死を、コニー・ウィリス以外の誰がこれほど豊かに描き出せるだろう。笑い、驚き、はらはらし、胸が熱くなる。この物語が残した素晴らしい船跡【ふなあと】は、いつまでも心に残るに違いない。――瀬名秀明(下巻帯より)

●『航路』概要(パイロット版より)
死≠フ謎に正面から挑む、未曾有の臨死体験スリラー。

 物語は2001年1月、若い認知心理学者の主人公ジョアンナ・ランダーが、コロラド州デンヴァーのマーシー・ジェネラル病院で臨死体験者の対面聞きとり調査をしている場面から幕を開ける。彼女の目的は、臨死体験の仕組みを科学的に解明すること。しかし、同じ病院には、ジョアンナの天敵がいた。あの世の実在を「証明」するトンデモ系臨死体験本を大ヒットさせたノンフィクション作家、モーリス・マンドレイクが次作の取材のため長期滞在中だったのである。
 マンドレイクと面接調査の先陣争いを繰り広げる最中、ジョアンナは神経内科医のリチャード・ライトから、臨死体験プロジェクトの共同研究を持ちかけられる。リチャードは、ジテタミンと呼ばれる新開発の薬剤によって擬似的な臨死体験を誘発できることを発見し、被験者が報告する幻覚体験を本物の臨死体験と比較対照するため、ジョアンナの助けを求めていた。ジョアンナはその申し出を受け、臨死体験をシミュレートする実験に参加する。しかし、リチャードが調達したボランティアたちは、ジョアンナの予備調査で、次々に不適格であることが判明。暗礁に乗り上げた研究プロジェクトを救うため、ジョアンナはみずからが被験者となることを申し出る。しかし、ジテタミンを投与されたジョアンナが疑似臨死体験の中で赴いたのは、思いもよらぬ実在の場所だった。わたしはこの場所をたしかに知っている。でもどこだったのか思い出せない……。
 ただの幻覚だから思い出せなくて当然だというリチャードに反発し、その場所がどこなのか、なぜ自分がその場所を知っているのか、必死に記憶を探りはじめるジョアンナ。とうとう突き止めた答えは、まったく予想もしないものだった……。

 コミカルなシーンを随所にちりばめながら、物語はやがて怒濤のクライマックスへ。そして第二部のラストで待ち受ける驚愕の大どんでん返し(この趣向は誰にも話さないでください)。

さらにくわしい粗筋はこちら(ネタバレあり。結末までのストーリーを紹介しています)。

●臨死体験とは――
 臨死体験というのは、事故や病気などで死にかかった人が、九死に一生を得て意識を回復したときに語る、不思議なイメージ体験である。三途の川を見た、お花畑の中を歩いた、魂が肉体から抜けだした、死んだ人に出会ったといった、一連の共通したパターンがある。
 臨死体験とはいったい何なのか。その意味づけと解釈をめぐってさまざまの議論がある。  一方には、これをもって死後の世界をかいま見た体験であるとし、臨死体験は魂の存在とその死後存続を証明するものであるとする人がいる。他方では、臨死体験というのは、生の最終段階において弱りきった脳の中で起こる特異な幻覚にすぎないという人がいる。(立花隆『臨死体験』文春文庫より)

●『航路』主要登場人物の横顔(その他の人物については『航路』登場人物表を参照)。

ジョアンナ・ランダー 本書のヒロイン。眼鏡にカーディガンがトレードマークの認知心理学者。きまじめで、わりと思いつめやすいタイプ。趣味は著名人の臨終の言葉コレクション。

リチャード・ライト 神経内科医。ブロンドのハンサム男で頭も切れるが、私生活ではぼんやり型。もてる割りに男女の機微に疎い。仕事も趣味も、スキャン画像を見ること。

ヴィエル・ハワード マーシー・ジェネラル病院ER勤務の黒人ベテラン看護婦。口は悪いが気は優しい世話焼きタイプ。ジョアンナの無二の親友で、映画好き。

メイジー・ネリス 心臓病で入退院をくりかえしている早熟な少女。ヒンデンブルクやポンペイなど、世界の災害に関する本を読み漁る災害おたく。調べものの達人で、特技は引き延ばし=B

モーリス・マンドレイク トンデモ系の臨死体験本でベストセラーを飛ばした尊大で傲慢なノンフィクション作家。あの世の実在を信じている。ジョアンナの天敵。

ミスター・ウォジャコフスキー プロジェクトの被験者。老人ホームで暮らす退役軍人で、戦争話をはじめたら止まらない。戦時中は空母ヨークタウンの乗組員だった(自称)。

ブライアリー先生 アルツハイマー病を患う元英語教師。ジョアンナの高校時代の恩師で、かつては「ブライアリー英文学集成」とまで渾名される博覧強記の知識人だった。

キット・ガーディナー ブライアリー先生と同居する姪。なぜかいつも薄着。「薄倖のヒロイン」タイプだが、ジョアンナと知り合ってからは本領を発揮する。


『航路』ネタバレ掲示板(その他のウィリス作品ネタバレ談義もこちらで)

コニー・ウィリスが『航路』日本版に寄せたメッセージ

『航路』一問一答(コニー・ウィリス)

大森による『航路』訳者あとがき

『航路』に出てくる映画/TVタイトル一覧

●ありさとの蔵に「ブライアリー英文学集成〜『航路』登場文学作品解説〜」

amazon.co.jpの米国版ペーパーバック『Passage』ページ(各種レビューあり・もちろん原書も買えます)

ソニー・マガジンズ『航路』紹介ページ
 東浩紀/香山二三郎/香山リカ/新保博久/関口苑生/千街晶之/茶木則雄/豊崎由美/西上心太/三村美衣/山田正紀/吉野仁の各氏のコメントが読めます。
『航路』コメント・感想・書評リンク集(増えてきたので別ファイルにまとめました。情報提供募集中)



top | link | board | articles | other days