【3月8日(月)】


《映画秘宝》編集部のT辺くんとミストラルで日記本の打ち合わせ。日記部分の総原稿枚数は500枚ぐらいで、と言われてるので、とりあえず膨大な量の日記の山からミステリに関係した日付だけを抜粋して、基礎ファイルを作成。さらにそこから、SFネタやM:TGネタをびしばし削って減量……という作業をえんえんやってるんですが、ようやく一区切りついたところで1000枚(笑)
 全体で3000枚近いものを500枚にするわけだから、なにか抜本的な対策が必要かも。しかしこんなのほんとに面白いのか。自分で読んでるとさっぱりわけがわからないので、あとは編集部に下駄を預けて、残したい部分を適当に選んでもらうことにする。



【3月9日(火)】


 喜国雅彦『月光の囁き』の小学館文庫版解説が締切を過ぎてしまったので、江戸川区立西葛西図書館に籠もり、ひたすら谷崎潤一郎全集を読む。喜国雅彦を脚フェチの道にひきずりこんだという谷崎短編「富美子の足」とか、もう面白すぎ。
「異性の足に対する僕のこう云う心持ち(中略)は、幼い時分から僕の胸の奥に潜んで居ましたが、子供心にも忌まわしい病的な感情である事を悟って、なるべく人に知られないように努めて居たのでした。然るに、此の気違いじみた心理作用を感ずる人間は単に僕一人ではないと云うこと、世の中には異性の足を渇仰する拝物教徒、――Foot-Feticistの名を以て呼ばるべき人々が、僕以外にも無数にあると云う事実を、つい近頃になって或る書物から学んだ僕は、それ以来自分の仲間が何処か一人ぐらいは居そうなものだと、内々気を附けて捜して居たのでした。ところが早速、ここに塚越の隠居が現れて僕の仲間に加わって来たのです(後略)」

 調子に乗ってがんがん引用してたら、予定枚数(5枚)の倍をはるかに越えて全然終わらない。20枚コースの解説になってしまったので、あわてて前フリを削り、作品解説を削り、結局ほとんど谷崎の話だけになってしまった。ほんとはまだ『マゾッホとサド』とか引用する予定だったのに。



【3月10日(水)〜11日(木)】


 ゲームウォーカー創刊以来つづいてきたゲームレビュー欄がとうとう最終回なので、その最後の原稿を書く。これのためだけに義務的に遊んだゲームもけっこう多かったんで、ほっとひと息。しかしこれでますますゲームしなくなるような。いや、ゲーム(と映画とアニメ)から引退すると可処分時間はかなり増えるはずなので、そのほうが賢明な選択だという気がしなくもない。



【3月12日(金)】


 6時、高田馬場の《ジァンナン》で夏来健次迎撃宴会に集合。倉阪鬼一郎高瀬美恵、東雅夫、迫水由季@てぃんか〜べる、橋詰久子、福井健太、三村美衣、それに創元の編集者が三人(K浜、M原、I藤)。
 西武線でぞろぞろ新宿に出て区役所通りのパセラ。日下三蔵の名前で別口(OES)の予約が入ってたりするあたりが週末のパセラである。さいようよしこはそっちに呼ばれているらしい。まあ男ばかりのあのアニソン集団に違和感なく溶け込んで女声パートを歌える女は貴重かも。いや、高瀬美恵でもだいじょうぶな気がしますが。

 しかしわれわれのボックスが平和だったかというと、怪奇小説家がいる以上そんなことはありえないのだった。きっぱり邪悪。倉阪鬼一郎の歌う川本真琴は、サイコサスペンスでありながらホラーとしか言いようがなく、やっぱり『暗い森の少女』はホラーに分類されて当然であると再認識する。黒猫のぬいぐるみを抱いて歌うその姿には鬼気迫るものがありました。作品より人間がこわいというのは作家的敗北かも。
 東編集長は、「さそり座の女」「銭形平次」からGLAYまでと、打倒!京極夏彦的選曲。ひさしぶりに東・倉阪の幻想文学デュオが揃ったので、クールファイブも爆発してました。謎だったのは夏来健次の選曲だが(ジュディマリの「散歩道」とか)、この人は存在自体が謎なので選曲の謎ぐらいは些末な問題と言えよう。
 夏来健次の謎の行動のおそろしさを知らない人(高瀬さんとか)がいたので、基本的なところをブリーフィングする。しかし夏来さんは、とくに変わったことをしているという認識がまったくないのだった。敵にまわすと恐ろしいが味方にすると迷惑というたいへんな怪人である。敵にまわしても無害だが味方にしてもいいことがない福井健太とは好対照か。

 カラオケは午前2時半ぐらいでお開きになり、靖国通りの屋台でラーメンとおでん。「ホラーはスーパーナチュラルに限るか」みたいな話を屋台でえんえんつづけるのもいい感じでしたが、「寒い」の声が澎湃としてわき起こったため、近くの居酒屋《志ろう》に入って朝5時まで。
 平和主義者のわたしにはとても詳細を書く勇気がない「東雅夫追及大会」と、「橋詰久子は根に持つタイプである」ことが確認できた議論は収穫でした。
 ついでにtcupにある福井健太ホラー掲示板のバックログが参照できない問題についてさんざん文句を言ったおかげか、ホラー系ツリーのログの抜粋が別ファイルで格納されたのはめでたいことである。しかしこのログでは、倉阪×橋詰の蜘蛛論争が読めないので、怪奇作家の鬼畜な素顔に接するすべがないのは残念なことである。
 ちなみに大森に期待される役割は「潤滑油のような人」((C)福井健太)らしいので、忠実に職務を実行してました。ホラーとミステリとSFの円滑なコミュニケーションを促進するジャンル間の潤滑油。

 午前5時に居酒屋を出たところで、わたしはタクシーで帰宅しましたが、残りの7人はさらに7時まで喫茶店でしゃべっていたらしい。元気なことである。高瀬美恵にいたっては、翌日、自分のサイトのオフ会で夕方またパセラにやってきて、あろうことか、また《志ろう》に行ったそうで、ひとりビューティフル・ドリーマーである。



【3月13日(土)】


 お昼に泣きながら起き出し、日本橋から京急の特急で八景島を目指す。毎年、黒丸尚氏の命日には蒲田の居酒屋で集まってたんですが、今年の会場はなぜか八景島シーパラダイスなのである。
 小浜・三村夫婦と電車の中で偶然いっしょになり、四人でシーパラダイス。水族館で先発組と合流、そろってイルカのショウを見物してから、子供連れな人々と別れてアトラクションに散る。八景島に来たらブルーフォールでしょう、もちろん。というのが日本の常識なのに、軟弱なSF者たちはだれも乗ろうとしない。そんなことじゃ宇宙に出られないぞ。自由落下がこわくてビジョルドが読めるか。
 といくら説得してもだれも納得しないので、ひとりでゼロGを体験する。109メートル落っこちるだけの、この世でもっともシンプルなアトラクションである。いちばん上は高いね、あたりまえだけど。昇りきったところで後悔してもどうしようもないのがポイント。しかし落下してる時間は2秒ぐらいなので、むしろやたら長いサーフコースターなんかより耐えやすいんじゃないですかね。

 時間も遅かったので園内はガラガラ。どのアトラクションも行けばすぐ乗れる状態だったんで、体力のある人にはおすすめでしょう。ロッジの宿泊もわりと安いので、八景島オフとかどうですか。

 日が落ちたあたりでふたたび全員が集合し、シズラーで食事。堺三保のサラダバー利用法は豪快である。
 シーパラダイスに宿泊する残りの人々と別れて、ひとりさびしく東京方面に引き返す。今日は楽しいDASACONなのである。本来はとっとと八景島を出て7時には会場の本郷に着いてるはずだったんですが、さすがにとんぼ帰りは困難だったな。

 ってことで、DASACONレポートは次のファイルにつづく


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