【6月22日(日)】

 週刊現代の『嗤う伊右衛門』書評のために南砂の江東区図書館まで資料さがしに出かけたら、改築のため休館中。広尾の有栖川図書館まで行く時間がないので、とりあえず日比谷図書館まで足を延ばし、参考文献の原典にあたる――といってもあんまり見つからないんだけどさ。国文学的教養が全然ないとこういうときに苦労するよな。「模文画今怪談」って絵本だったのね、とか。

 京極さんに電話して聞いちゃえばはやいんだけど(笑)それはやっぱり恥ずかしいでしょ。確信のないまま原稿を書き(まちがってる可能性大)、とっとと送ってさっさと忘れる。あんまり週刊誌向きの書評じゃなかった気がするけど、まあいいや。


【6月23日(月)】

 推理作家協会賞授賞パーティに出るため、新橋の第一ホテル東京へ。ティーラウンジで日経文化部の女性記者と落ち合い、「インターネットと小説」みたいなテーマの取材。「日本SF、氷河期の様相」の話をちょっと聞く(笑)。もっとも大阪本社から転勤してきたばかりの人だったのであまりよく知らないらしい。
 取材のあと、おなじ記者から頼まれていたレジスの新刊、『ナノテクの楽園』の書評原稿を書き上げ、PHSにつないで送る。だったらもうちょっとはやく書いて手渡ししろよ、と思うけど、プリンタもFDドライブもないから、けっきょく通信で送るしかないのだった。  ちょうど授賞式の時間になったので上に上がり、正月以来の西澤保彦氏に挨拶。赤茶色のヘアマニキュアを入れた綾辻さんも来ててびっくり。馳星周はやっぱり青だった。ちなみにこの日は大森も青でした。
 協会賞は新保裕一氏の『奪取』。『百万ドルをとりかえせ!』みたいなコンゲーム小説で、わたしは『ホワイトアウト』よりこっちが好きですね。でも趣味的にはやっぱり最新刊の『奇跡の人』かも。
 パーティのあとはふたたびラウンジでお茶。堺三保は、最近、と学会本にハマっているという宮部みゆきさんから、「えーっ、と学会の方なんですか!?」と尊敬のまなざしで見られて目を白黒(笑)。西澤さんは緊張していたらしく、けっこうおとなしくしてましたね。  もう一軒、近所のバーに寄ってから、終電前に解散になり、西澤氏をともなって帰宅――というか、仕事場に行って西澤さんを泊める。奥さんに電話するのをすっかり忘れてた、どうしよう、いまから電話して寝てたら怒られるし……と動揺する西澤さんは、まるで一頃の小浜徹也を見るようだった(笑)。


【6月24日(火)】

 起きるとすでに西澤さんは出かけたあと。ミストラルでごはんを食べてから、恵比寿ガーデンプレイス・タワーの34階だかにあるエスクァイアの編集部で、江戸木純氏と新作SF映画対談。MIBとかロストワールドとか。ちゃんとお話するのははじめてですが、江戸木さんは最近のSF映画にけっこう批判的だったり。
 恵比寿から日比谷に出て、東宝本社試写室で「もののけ姫」。予告編とかで見て、これはけっこう嫌いな映画じゃないかと思ってたけど、いや、さすがに立派ですね。音楽以外はほとんど文句のつけようがない感じ。とはいえここまで来るとただの国民映画なので、オレ的にはおたくのツボがほとんど刺激されず、そうですかと言うしかない。あ、たたり神の造形はけっこう好き。
 夜はMAGTIMEでざべの原稿。今回のお題はタニス・リー『銀色の恋人』でした。


【6月25日(水)】

 3時、早川書房でSFインターセクションの西澤保彦インタビュー。最後は三村美衣が合流し、サインとかもらっている。「『瞬間移動死体』の奥さんがかわいいですねえ」とかゆってるし。あれをかわいいと言うのはきみだけだよ(笑)。いや、おれも好きだけどさ。  インタビュー終了後、駅前の喫茶店・小鍛冶に移動。西澤ファンの野間美由紀さん&水玉さんを西澤さんに紹介し、そのあとカラオケという趣旨だったんだけど、西澤さんも『パズルゲーム☆はいすくーる』や水玉イラストのファンと判明。ちょうどよかった。それにしても西澤さんてば、こんなに女性ファンが多いとわ。そういえば早川書房の河野佐知嬢もファンだとゆってたしなあ。
 水玉さんの原稿をとりにきたついでの野崎岳彦@角川書店と塩澤編集長が合流してメンバーがそろったところで神田駅ガード下の印度屋三平に移動、動けなくなるまでカレーを食う。安くてけっこううまい。例によって、食事が終わる寸前にさいとうよしこが登場、カラオケに流れる。あ、塩澤妻の博子さん@元早川書房も合流したんでした。  西澤さんは昔のアニソンを熱唱、野間さんや水玉さんとのデュエットででれでれ状態(笑)。奥さんにはとても見せられませんね。しかしウテナの主題歌の「輪舞」はけっこうむずかしかったな。T内@早川、F施@ミステリマガジン、O沢@朝日新聞社(元早川)もなぜか夜ふけにやってきて、後半は一部、早川書房邪悪なカラオケ大会化してましたが、西澤さんはゴーイングマイウェイ。最後は「恋の呪文はスキトキメキトキス」でした(笑)


【6月26日(木)】

 3時、京王プラザホテルのスイートで小説現代メフィストの座談会。メンバーは西澤保彦、小森健太朗、清涼院流水の三氏。流水氏は意外と(失礼)好青年でびっくり。しかしときどき流水節が炸裂して期待を裏切らないあたりがさすがですね。西澤さんががんがんつっこんでくれたんで、メフィスト編集部の心配は杞憂に終わり、大森はほとんど仕事がなかった感じ。適度にやばい(挑戦的な)発言も出たし、盛り上がったんじゃないでしょうか。
 流水語録の一部は……。
「小森さんやぼくの書くものは本格といってもメタフィクション的な要素が入ってきますよね。これをぼくは本格じゃなくて『本書くミステリ』と名づけてるんです。これからは本書く作家でいきたいと思いますね」
「ジャンルにとらわれるんじゃなくて、大盛りの総合エンターテインメントをめざしたいんですよ。そうですね、『大盛り望む』という感じで。いや、小森さんが小盛りだというわけじゃなくて、小森さんの場合は『こんもり』ですが」
 まだテープ起こしが来てないのでわりといいかげんだけど、まあこんな感じ。座談会のあとで噂の『ノベレスト』の話も聞いてみたところ、
「まだ『ノベレスト』の時期じゃないと思うんです。いま出しても、読者がそのレベルに達してませんから、だれにも理解できないでしょう。いま書いている小説はすべて、『ノベレスト』を出すための道をつける準備作業だと思っています」
 いやあ、とばしてくれます。でもけっこういいやつかも。

 座談会後はNSビルの和食屋で懐石料理。その後、宇山さんが合流してもう一軒まわり、11時ぐらいに解散。いや、なかなか面白かったす。


【6月27日(金)】

 ミストラルでごはん食べて、小説すばるの書評を角川日本ホラー小説大賞長篇賞の『レフトハンド』で書いてPHSで送り、それから角川スニーカー大賞、学園小説大賞の授賞パーティ@ホテル・インターコンチネンタル東京ベイ。新橋からはじめてゆりかもめに乗ったら、ほとんど遊園地みたいで、思わずお台場まで行って引き返す(笑)。
 角川書店はこの6月に大人事異動があったので、パーティ会場はほとんど引き継ぎ大会。折原一・新津きよみ夫妻がきててどうしたんだろうと思ったら、新高輪プリンスに家族連れでバカンス逗留中とか。近所のパーティに遊びにきたという優雅な世界でした。
 佐藤大輔氏、小林めぐみ嬢とはこのパーティで初対面。大輔氏とは『地球連邦の興亡』、めぐみ嬢とはホームページの話など。そういえばリンクページに入れるのを忘れてましたが、小林めぐみホームページはここにあります。
 去年の受賞者、七尾あきら嬢とも初対面。「えー、うそー、大森さんですかあ。『フリーゾーン大混戦』とか大好きなんです」と言われて驚く。さすがワセミス出身。ってそういう問題じゃないか(笑)。しかしもっと驚いたのは、菅ちゃんに紹介された声優の池澤春菜嬢。めちゃめちゃ読書家でラッカー読んでるんだそうで。やっぱり血は争えない……ってそういう問題じゃないか。SFオンラインで父娘インタビューすればいいのに。じゃなくてSFインターセクションか(笑) しかもふだんの声があの声だしなあ。びっくりびっくり。
 パーティ終了後、菅ちゃんからいろいろ話を聞いているうちにみんないなくなり、菅・武田夫妻と春菜嬢と田中啓文氏はクルマで渋谷方面に去ってしまい、気がつくとこの日初対面の五代ゆう嬢とふたりで取り残される。箱入り娘らしい五代嬢をホテルに(といってもすぐとなりのアジュールなんだけど)送り、バーラウンジで一時間ほどお茶飲んでから帰宅。
 しかし怒濤の一週間はまだ終わらない。


【6月28日(土)】

 死んだように眠ってから昼過ぎにのそのそ起き出し、ミストラルでマックライフの原稿。  かたづいたところで、さいとうといっしょに新宿ゼニス。山岸真主催のカラオケ&先行オールナイトのゆうべ。前回、SWNH特別編でやったことを、今回はロストワールドとSWESBの二本立てでやろうという企画。しかしまたしても雨。しかも台風(笑)。
 今回のメンバーは、山岸、小浜、三村、白石、田中光、大森、さいとうがカラオケからで、内田昌之、小木曽ゆき、雑破業、添野、堺があとから合流。「ロストワールド」のオールナイトに並んでるあいだ、台風情報用に持参したラジオを聴いていたさいとうよしこが、
「ねえねえ、酒鬼薔薇逮捕とかゆってるよ。なんか中学三年生だって」と言ったもんだから大騒ぎ。映画館から高橋良平宅に電話して、
「あのー、テレビ見てます?」
「なに? 見てるよ。ブラッドベリが出てる」
 だからそうじゃなくてえ(笑)。
「9時半から記者会見でしょ」
「だってどうせなんにも言わないに決まってるじゃん」と冷静な良平さん。こりゃSFじゃだめだと、はるばる京都の我孫子さんとこまで電話をかける。
「いやあ、NHK教育って速報出ないのね。綾辻さんから電話があったからあわててチャンネル変えたけど。でもぼくが予言したとおりだったでしょ」
 そう、我孫子さんは第一報を聞いた日に、「犯人は中学生」と予告していたのである。これはわたしが証人になりましょう。ちなみに菅ちゃんの予測もかなり正確にあたっていたらしい。
 ……と、この騒動ですっかりかすんじゃったけど、「ロストワールド」は見世物映画としてはよくできてましたね。SFオンラインで樋口真嗣氏が思いきり罵倒してるのもわかるけど、だからもうシナリオがどうとかいうレベルは超越しちゃってるんでわ。添野くんはひとり、「二回目に見てぜんぶわかった!」と弁護にまわってましたが、ほかの人は納得してなかったす。堺は罵倒派、さいとうは大喜び派。

「ロストワールド」のあと、大森をのぞく全員はESB。SWに愛がない(笑)大森は、試写で見たばっかりだからもういいよと、となりの映画館でやってるバリー・レビンソンの「スリーパーズ」へ。「目撃」やっててくれれば完璧だったんだけどなあ。まあでもレンビンソンはそんなに嫌いじゃないからいいっす。こんなことでもないとぜったい劇場では見ない映画だし。
 終了後、ESBご一行と劇場前で合流、またしてもマイアミで始発を待つ。ってことで、怒濤の宴会週間も無事終了、さあ仕事だっ。


【6月29日(日)】

 ってさすがにすぐには仕事モードに復帰できず、昼間は一日ぐだぐだ寝て暮らし、夜からニュータイプの原稿。夏休み映画20本ばかりにコメントするという仕事で、あと二人は黒田勇樹くんと佐伯日菜子ちゃん。日菜子ちゃんのコメントがおたく魂バリバリで笑えました。


【6月30日(月)】

 ゲームウォーカーの締切なので、あわてて「スター・ウォーズ 帝国の影」をプレイ。いやあ、去年のワールドコンで開発中の画面を見たときは「すげえ」と思ったんだけどなあ。ゲームバランス悪すぎ。でも、AT-ATの足にケーブルからませるミッションとか、けっこううれしいかも(笑)


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