狂乱西葛西日記96年11月23日〜28日


【11月23日(土)〜24日(日)】

【承前】
 さて、京都SFフェスティバル合宿の開幕である。開幕といっても、例年、口の中でもぐもぐとしゃべるスタッフが気弱に「はじめます」とかゆってなしくずしに企画に入るのが京フェスってもんですが、今年はなんと演出あり。参加者にまじってタタミにすわってたスタッフが次々にすっくと立ち上がり、エヴァ最終話風のモノローグを叫ぶ。いやあ驚いたね。
 まあふつうのコンベンションならともかく京フェスでこれとは。予想外の叙述トリックっていうか。あんまり驚いたのでなにが語られていたかはよく覚えてないっす、すいません。
 例年通りの企画紹介&来場者紹介が終わると、合宿の目玉(らしい)SFセンター試験に突入。一次はマークシートで、四教科五科目から三教科四科目を受験する方式。SF1、SF2、現代SFが必修で、あと一科目はSF基礎とマンガから選択。参加者は受験番号(名札に書かれていた謎の番号がそれだった)別に受験会場(といっても6畳とかの和室だけど)、試験官がやってくるのを待つ。試験官は問題用紙と答案用紙を配り、担当会場の受験生を監督するわけですね。
 うーん、このシチュエーションだと、「死の鳥」がらみの出題が欲しかったな(笑)「それでは問題用紙をめくって、はじめ」ってやつね。
 一次は本格的なマークシート。問題の質にはかなりばらつきがあるものの、15分で50問近く解かないといけないのでカンニングしているヒマがない。SF1はかなり出来が悪かったと思う。選択問題では、当然SF基礎を選択。なんだ、楽勝じゃん。とっとと終わらせて余裕の煙草をふかしてたら、思わぬ落とし穴が。なんとこの教科だけ60問あったんですね。15問手つかずという事実に気づいたのが終了30秒前。とりあえず全部3にマークする(笑)
 油断大敵ってやつですね。いやめちゃくちゃ疲れました。でも基本的にテストはけっこう好きかも(笑)

 試験が終了した頃、札幌からさいとうよしこが到着。久美さんがカラオケ行きたいとゆってるので、とりあえずそのへんにたまってたSFM編集長ほか数名を引率して恒例のマジカルビーンズ。久美さんの歌を2曲くらい聴いたところでふたたび合宿所にひきかえし、ギャザ部屋をのぞく。知らない学生も3人くらい集まってるのでめでたしめでたし。これでブースタードラフトのトーナメントも盛り上がるというものである。フリーでちょっと対戦してみたら、魔力の櫃入り黒速攻デッキに惨敗。アーティファクト対策重要。いやまあどのみち速いデッキには弱いんですけどね。
 並行してやってる企画をいくつか冷やかして二階にもどると、我孫子さんが廊下で水鏡子とデュエル中(笑) いったいなにやってんだか。
 ギャザ部屋にギャザラーを集めて、12時過ぎからミラージュ2+4th1のブースタードラフト。8人参加なのでスイスドロー方式を採用。制限時間30分で3デュエル。勝ちは3点、ドローは1点。3デュエルして3勝なら9点だけど、1デュエルが長引いて引き分けだと1点ずつしかとれない速攻デッキ向きのシステム。まあブースタードラフトでロックとかパーミッションとかのデッキはありえないからいいんですけど。
 ブースタードラフトは、全員で輪になり、開封したパックから自分の必要なカードを一枚抜いてとなりの人にまわす方式。シールドパックだとあたりはずれが大きいけど、これなら自分の選んだカードなのでうらみっこなし。最終的に選んだカードが自分のものになることにしたので、勝負を捨ててレアカード集めに走るやつも当然いるのだった。たとえば水鏡子(笑)
 この手のトーナメントは航空兵力が決定的になることが多いので、フライングウィニー+強化型エンチャントを中心にドラフト。くじ引きで決まった一回戦の相手は三村美衣(笑)
 もちろん問題なく2勝1分けで勝ち点7を獲得する。やっぱ2色以上で組むなら、色マナ1個以上のカードは一切入れないくらいの割り切りが重要かも。

 一回戦デュエルの最中から、SF試験二次の試験官がしつこく呼びにきて、
「いまそれどころじゃないからちょっと待ってろ」とか生意気なことをゆってたんだけど、三村美衣も大森も一次通過者20人に入ってるし、わたしは壁に名前とか張り出されてたのでパスするわけにもいかず、一回戦が終わるなり大広間に走り、すでにスタートしていた記述式の二次を受験。いやあ、すげえむずかしくて全然わからん。「復活の日」のでかい問題なんか出すなよー。「知性化戦争」「裏小倉」「菅浩江」関連の問題のみ、解答用紙にでたらめを殴り書き。とにかく書いておきゃいいんだろ――という態度が正解だったことはのちに判明する。裏小倉の解釈はけっこう傑作だと思った(笑)

 15分で終わらせてギャザ部屋にもどる。勝ち点7で抜けたメンバーからは、すでに知り合いがほぼ姿を消している(笑) 二回戦はもうちょっとで勝ち点9だったんだけどなあ。時間切れ狙いの戦術の前にまたしても2勝1分け。水鏡子相手に一回戦で勝ち点9の人がいるので、この時点では2位。しかし最後の三回戦、その相手を2勝1分けで撃破し、無敗優勝を決める。フリー対戦で勝てない相手でもブースタードラフトならなんとかなるってやつ。
 すでに15万ぐらいをカードに投資している水鏡子は、けっきょく一勝もできずめでたく最下位。それにくらべれば、数千円しか使ってない我孫子武丸のブービーは立派でしょう。
 川合小百合、岡田靖史の京都勢は真ん中くらい。佐脇が意外にふるわず、大森をのぞく上位3名は学生ばかりという結果。いやあ、よく優勝できたものである。
 トーナメント後は残った六人で3対3のエンペラー戦。やることがなくてHowling Mineを3枚出す水鏡子とかいたので、いやはやたいへんでした。マルチプレーヤーにクリーチャーレスなデッキは向かないよな。

 M:TGが一段落したところでバラード部屋に遊びにいって、最後は京フェスらしくSFの話でうだうだ。そのうち試験の採点結果が発表になり、大森は神大SF研OBの木下充矢氏に次いで総合二位に浮上。一次では大差をつけられていた山岸真その他7人ばかりを二次でごぼう抜きにした計算。ここんとこ京フェスのクイズではまったく精彩がなかったので、今回の業界人リーグ一位には満足。いやまあ傾斜配点のおかげって気もしますけどね。
 しかし驚いたのは米村秀雄の十位。二次ではすっかり酔っぱらって人の回答用紙をのぞきこみ、
「を、なんやたくさん書いてるやんけ。こんなもん知るかあ。なあ」
 とかひたすらビール飲んでたくせに。侮れないおやじである。まあその米村秀雄に勝てない三村美衣とかが情けないんだけどさ。

 朝になったのでぞろぞろ10人くらいでからふね屋行って朝食。うだうだしてからもどってきたらちょうどエンディング。テストの賞品がなくて残念(笑)
 あとは流れ解散だけど、朝飯を食ってないさいとうその他のために、ふたたびからふね屋。水鏡子、佐脇とデュエル少々(笑) 水鏡子デッキは全然ダメっす。勝つための思想がまったくない。ゴブリンデッキで蹂躙する。
 とかしてるうちに昼になり、11月祭に遊びに行く佐脇夫妻&水鏡子と別れ、さいとうよしこと鍵善で葛切り食べてから京都駅。新幹線で爆睡しつつ帰る。


【11月25日(月)】

 昨日からえんえん眠りつづけて一日が終わる。体調最悪な感じで喘息の発作に悩まされつつ本を読む。小説すばるの締切はとうに過ぎてるはずなんだけど、まあ催促もないからいいや。


【11月26日(火)】

 ずーっと寝ている。やや回復基調。でも原稿を書く気力がないので、書評用の本を読み続ける。山田正紀の『女囮捜査官』、貫井くんの新刊、笠井さんの新刊。『天啓の宴』はなにが書きたいのかよくわからない。「作者の死」ってそういうレベルの問題じゃない気がするんだけど。貫井くんはテーマが重くてもさわやかである。このへんはかめちゃんの主張が正しいかも。二階堂さんの新刊は物理的に重いので、もうちょっと体調がよくなってからにしよう。あとはザ・ベーシックの新連載用に、『ソフトウェア』と『ウェットウェア』。


【11月27日(水)】

 リハビリのため、Active Englishの原稿を書く。小説すばるは山田正紀。
 水玉さんに電話してテキトーにバカ話したネタを盛り込みつつ、ざべの原稿をいいかげんにでっちあげる。対談形式ですがほとんどつくってるので信用しないように。あーしかしこういうSFの原稿書くのは楽しいかも。水玉さんと組んでおいてよかった。最近どうもひとりで仕事してると煮詰まるんです。


【11月28日(木)】

 小説すばるの原稿を送ってから、赤坂新社屋に移ったWOWOWの会議。終わってから日本SF大会授賞式会場の東京會舘へ。二時間くらい時間が空くので三村美衣を呼び出し、階下のティールームでデュエル(笑)
 6時から授賞式。今年の日本SF大賞はみなさんご承知の通り「ガメラ2」で、まあお手盛りと言われてもしょうがないし、どうせ授賞するなら去年「ガメラ 大怪獣空中戦」に与えるべきだった、という持論はかわりませんが、授賞式見てるとまあこれでよかったんじゃないかという気がしてくるので不思議。金子監督はじめ樋口真嗣、伊藤和典と本気で喜んでるみたいだし。
 それにしても徳間社長のあいさつは例によって飛ばしまくりですごかったね。映画業界でもオフレコレベルの話ががんがん出てくるんだもん。しかしほんとに金子修介以外の監督で「ガメラ3」つくるのか。まだ決まってないって話だと思ったのになあ。
 せっかくなので、金子、樋口、伊藤の三氏にあいさつ。伊藤さんは第一声で、「ホームページ見ました」と言われてのけぞる。迂闊なことは書けませんね。正直言って「ガメ2」のシナリオには不満が残るとか。書いてるけど。まあこんなところまで読むまい。
 金子修介監督は、個人的に「濡れて打つ」以来すごく好きな監督なので(「みんなあげちゃう」「山田村ワルツ」はべつとして)、話ができてうれしかったす。でもあんなにまじめそうな人とは思わなかったな。樋口さんはだいたい予想通り。

 佐藤嗣麻子監督も来てて、「どうもありがとうございました」と言われたので、一瞬なんのことかわからずうろたえたんだけど、「エコエコ2」の映画評のことだった。あんな映画評までいちいちチェックしてるのか。ううむ。映画監督の知り合いはほとんどいないので、書評の場合と違ってよくわからないのだった。
 んで「エコエコ2」の話をしてて、「まあしかし後半のあの展開はちょっとねえ」みたいなことを(ほかの部分をさんざん誉めたあとで)ぽろっと言ったら、じつはすごくむっとしたんだそうで、さいとうよしこはあとで文句を言われたそうである(笑)
「あたしも大人だからその場では笑ってたけどさあ、ムカつくぅ……」だって。女性監督のメンタリティも女性作家に似ているかもしれないとちょっと思った。という話は内緒。でも「エコエコ2」はいいっすよ。

 パーティ終了後は例によって一階のティールームでうだうだ。講談社の宇山さん、西澤保彦担当の佐々木さんとミステリ業界話。『女囮捜査官』の話になったので、宇山さんがとなりのテーブルから山田さんをひっぱってくる。著者いわく、
「いやあ、若い作家がノベルズはいやだとかいうから、なに言ってるんだと思って。じゃあ思い切り安っぽい装幀のノベルズで本格やったら面白いんじゃないかと思ったけど、いやあ失敗した。みんなあんなにノベルズ読まないとは思わなかったなあ。ノベルズいやだっていうわけがやっとわかった」
 あの装幀であのタイトルで、本格だと思って読めというのが無茶でわ。講談社ノベルズならともかく徳間ノベルズではなあ。我孫子さんと法月さんがまじめにずっと読んでるのが数少ない例外ですね。あ、山岸真も読んでるか。
 とにかくいろんな意味でもったいないシリーズである。

 ティールームが閉店になったので、そのへんのSF者たちと銀座でカラオケ2時間。溝畑探偵はあいかわらず爆発している。宇山さんはひとりでラーメンを静かに食べて帰る予定だったところを、その上の階のカラオケ屋をめざすSF者たちに発見されて拉致されてしまいとてもかわいそうでした。いやはや。

 途中、新宿の行きつけの店で飲んでいるという久美さんから携帯に電話が入り、銀座のカラオケから新宿のカラオケに移動。花井愛子先生のカラオケを聞かせて頂く。あとは竹内、荻原、塩澤のハヤカワ勢と菅ちゃん武田さん夫妻に徳間の国田さんとか。ビデオではえんえん菅ちゃんの踊りの絵が流れている。すげえ立派。でも顔がわかんないからな。ってそういう問題じゃないか。

 2時ぐらいで久美さんが「久美は眠くなったので帰ります、すいません」とフケてしまい、解散の勢いになりかけたところですっくと立ち上がったのが花井愛子女史。
「みなさんお帰りになってくださってよろしいのよ。でもわたくし、あと30分くらいここで休んでいきますから。あ、でもついでだからあと二曲くらいお歌いになったら」
 とか強力にひきとめられ、わたしは一時間で逃げましたが、早川組はけっきょく朝5時半までつきあって、塩澤編集長はさんざん演歌を歌わされたそうです。おそるべし。

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