【1月21日〜23日(日〜火)】

 真保裕一『ホワイトアウト』、藤原伊織『テロリストのパラソル』、小池真理子『恋』、東野圭吾『天空の蜂』とまとめて未読処理。
『ホワイトアウト』は、ぼくは買わない。そりゃおもしろいけどさ、なんであんなに評判になったのか理解できない。どうもおれには男性的冒険小説に反応する回路が欠落してるみたいで、ラッセルしながら雪山をひとりでえっちらおっちら進んでくようなタイプの男のロマンにはまったく共感できないのである。真保裕一の最初の二冊のせこい小役人物はどっちも好きだったんだけどなあ。だいたい親友を死なせた罪悪感から超人的にがんばっちゃうって設定そのものが納得できないもん。
 それだったら、『天空の蜂』のいいかげんな動機のほうがまだ納得できるし、壮大な愉快犯(でもないけど)的な軽さがあるぶん面白く読めましたね。原発をテーマに持ってきて、反対派にも賛成派にも与しない綱渡りは(どっちからも攻撃されそうだけどさ)見事。犯人側の心理の屈折ぶりも評価できる。しかし、もんじゅの上に爆弾積んだ巨大ヘリ落としてほんとにだいじょぶなのかっ。
 というわけで、もはや小説の世界ではあまり説得力がない「個人の超人的努力による絶望的状況からの脱出」というお話を筆力だけで語る『ホワイトアウト』より、無駄なあがきと知りつつも状況にひと刺しを企む『天空の蜂』に軍配をあげる大森ですが、直木賞対決の『テロパラ』vs『恋』では、ジグソーパズルを一個残らずきれいに組み上げたらつまんない絵がでてきて困ったねって感じの前者より、後者の割り切れなさをとりたい。
『テロパラ』に関しては、クヌルプじゃ罵倒の嵐が吹き荒れて、読んでないわたしはひとり疎外感を味わってたんだけど(某編集者は、「チャンドラーの真似の原りょうの真似ですからね。韓国を真似するインドネシアみたいなもんですよ」と言い放ったとか(笑))、まあたしかにいくらなんでもあの解決はないよなあ。このどんでん返し(?)は、某ベストセラーの某続篇でも使われてた超ありがちパターンで、某続篇の場合にはそれが作品世界全体を反転させる効果を持ってたから評価できるんだけど、『テロパラ』の場合にはストーリーレベルの計算ばかりが目立って美しくない。『さらば長き別れ』のシンプルな大どんでんには本格ミステリー的なカタルシスがあったのに対して、こちらは「ふうん、それで?」って感じ。いや、でもそれなりによくできてはいるので、べつに腹は立ちませんでした。読んでるあいだは面白かったしね。『恋』については、やっぱり語り口の勝利ですかね。この種の強烈な恋愛感情ってのもおれにはどうもよくわかんないもののひとつなんだけど、それでも読ませてしまう筆力はさすが。いかにも直木賞な小説。


 ゲームのほうは、今月のレビュー用に、SSの「セガラリー・チャンピオンシップ」(笑)と「ガンダム」、PSの「闘神伝II」が届く。セガラリーはいくらやっても、クヌルプで出したタイムからほとんど向上しない。いやもちろん完走はするんですけどね(笑) 5位から上に行けないのはなぜ。やはりブレーキングが問題なのか。「闘神伝II」はオープニングが爆笑。色物格闘ゲーの道をまっしぐらなのかっ。「ガンダム」に至っては、オリジナルアニメシリーズの総集篇の合間にちょっとゲームがついてるという早わかりビデオ。2時間でわかるファーストガンダムってことで、VやGからファンになった子供には最適かも(笑)


 仕事のほうは、クヌルプで遅塚さんに頼まれた、小説すばる本格座談会の原稿整理。テープ起こしの人から届いた100枚くらいのベタ起こし原稿を加工して40枚くらいにまで縮める。北村薫・山口雅也・京極夏彦の鼎談なんだけど、山口さんが戦闘的。しかし固有名詞を挙げてないからなあ(笑) 京極夏彦のルーツは馬琴だった!てなあたりがポイントでしょうか。
 ところで遅塚さんはいまだにMacの電源を入れてないらしい(笑)

 21日になにをしていたかをいま思い出したのだが、斉藤友子が月曜日に帰るってんで、日曜の夜は喜国雅彦夫人の国樹由香さんがうちに遊びにきてたんだった。喜国さんとこも年末にMacを買って、喜国さんが遊び倒しているらしい。
 んで翌月曜日には斉藤友子帰国。ようやく平和がもどる。ってちがうか(笑)


【1月24日(水)】

 1時、松竹で「岸和田少年愚連隊」の試写。なんか「ガキ帝国」の続篇って感じで、原作ファンから見ると井筒節に寄りすぎか。カオルちゃんの小林念侍はないと思うぞ。あのへんはむしろ那須博之で見たかったような。そういえば那須博之っていまなにしてるんだっけ。あ、しかし女の子視点から語るって方法論は、「ビーバップ・ハイスクール」からのいただきって気がしないでもなかったり。いくらなんでもナイナイはナイだろうと思ってたら、意外にハマってたのがおかしかったけど、原作からはやっぱり逸脱するわなあ。中場利一の出番がバスの中だけでがっかり。西原理恵子ってどこに出てたの? なんにしてもぜひシリーズ化してほしいもんである。

 3時半、東宝本社で「ハル」の試写。いかにも森田芳光ふうの恋愛映画におさまっているのだった。しかしNIFTY方言をこんなに連発するなら、作中でも固有名詞使うべきだと思いますね。映画フォーラムのRTって一回しか行ったことないけど、こんな感じなんだろうか。いきなりハルみたいなやつが来たらたいてい無視するぞ。あ、でも、ほしがなぜハルにメールしたかについての謎解きはちゃんとあるから、そのへんは許せる。
 あーしかしやっぱりハルのRT発言とかメールの文章とかはムカつくかも。会議室とオフラインミーティングが存在しないパソ通映画ってのもへんなもんである。
 しかし文通映画としては非常によくできているのだった。「ノーライフキング」みたいに新しいリアルを提出しないぶん、非通信者にもわかりやすいしね。

 映画のあとは秋葉原に寄って書泉で『吾妻ひでおCD-ROM WORLD』を購入。山口雅也『ミステリー倶楽部へ行こう』も島田荘司『臥竜邸事件』も未入荷。しょうがないのでマンガ買ってショップぶらついて帰る――と、国書刊行会からの宅急便が不在で持ち帰られていた。その中身が『ミステリー倶楽部』だったんだな(笑) まっすぐ帰ってれば受け取れていたのに(;_;) しょうがないので遅塚さん@小説すばるに頼んで私物の本をバイク便してもらう。


【1月25日(木)】

 ちょっと寝てからバイク便で届いた『ミステリー倶楽部へ行こう』を明け方読んで小説すばるの原稿書いて、『吾妻ひでお』を見てSiFTの原稿を書く。
 これで今日の仕事は終わりってことにして、駅前の明和書店に『臥竜邸』買いにいったら、カッパのあと2冊は入ってるのに島田荘司だけない。
「これ、新刊3点のはずなんだけどもう一点は?」
 とか店長のおっちゃんにきいてると、となりで思い詰めたような顔して平台を見つめていた若い女性が、
「島田さんの『臥竜邸事件』がもう出てるって友だちに聞いたんですけどっ」
 をを、島田人気は健在だぞ(笑) しかし明和書店のおっちゃんは少しもさわがず、取次から書店への本の納入システムを説明しはじめる。結論は、西葛西の書店には未入荷ってことで、くだんの女性はがっくりした顔で帰っていきましたが、毒食わば皿まで状態(ってちがうか)の大森は、かわりに22刷の『龍の契り』を買って帰宅。推薦文が印税(0.5パーセントでも)だったら関口苑生大兄も大儲けだったのにねえ。
 しかし『龍の契り』の冒頭は、まるでアカデミーが翻訳したダニエル・スティールのようだ(笑)


【1月26日(金)】

 2時半、九段下の喫茶店ブルーベリーで、日経BPの新雑誌〈日経ネットナビ〉の松平由美子さんと打ち合わせ。見本誌もらった感じでは日経クリックのインターネット版みたい。例によって「初心者にやさしいインターネット誌」のコンセプト。またしても日記ネタWWW紹介コラムを振られそうになる(笑) 4月末創刊なんで、まだどうなるかわかんないす。大原さんはSFネタで書く模様。
 4時、東大駒場。岡田さんがやってるゼミにゲストで呼ばれて、80分間バカ話をする。なんかほとんど「エヴァンゲリオン」の話をしてたような。学生は10数人で全員男(笑) なんか非おたくの人がどんどん脱落して、異常におたく率が高くなってるらしい――ってあたりまえか。しかし「スター・ウォーズ」公開の年に生まれたような人たちにSFの話をするのはけっこうたいへんかも。岡田さんいわく、最近は「わたし、おたくになりたいんです。どうすればいいんでしょう」的な相談を受けることが多いとか(笑)
 しかし「なにか質問は?」コーナーで手を挙げた学生が、「アボっていう字はどう書くんですか?」とたずねたときは驚いた(笑) 

 授業前にちょっと時間があいたので図書館に寄ったけど、IDがないと入れない仕組みでがっかり。手前の一画には端末(古い98)がずらずら並んでて検索しほうだいらしくて、うらやましいことではある。出入り自由の新聞室には図書新聞と読書人があったのでぱらぱら読む。去年は大森が担当していた「エンターテインメントの窓」の新担当者は法月綸太郎なんだけど、一回目がいきなり最近の火種特集(笑) メインは創元推理の夏木檄文の話。論争が盛んなのは旧来のジャンル小説読みのパラダイムが崩壊しつつある証拠だっていう切り口なんだけど、ぼく個人は、本格vs冒険・ハードボイルドの二項対立が無化するとは思いません。だって読み方がぜんぜん違うんだもん。でも「さらば長き眠り」を本格探偵小説の文脈で読み直したりするアプローチはアリだと思う。
 一方、読書人のほうではいつのまにか白石朗の怪しい連載がはじまっている。しかし、宝島のベストに「フェルマータ」を入れたりする行為にそんな「ひそかなたくらみ」が画されているとは知らなかったぜ、フフ。

 6時45分、渋谷のドクタージーカンズでGamewalker新年会。ビンゴの賞品にPHSがあって、これしかないと気合いを入れて望んだが、一番に当たった大日本の営業担当者がかっさらっていった。珍しく二番に(さいとうよしこの紙で)ビンゴったんだけど、あとはいやなもの(笑)しかない。しょうがないので二台目のプレステをゲット。白石朗か三村美衣に2万円で売ろう(笑) PHSのかわりにPSかあ、おれえっちじゃないからなあ、やっぱり、とかバカなこといってたら、最後におれのほうのカードもビンゴで、ワイルドターキー一本を収穫。これはもうバーボンつきPSを大々的に売り出すしか(笑) 購入希望者は希望価格を書いてメールしてください。知り合い関係の人にはソフトもつけましょう(笑)

 我孫子さんちのマシンが再びぶっこわれた模様。またしばらくごった日記の更新が止まるかも。やはりWin95マシン買うしか>我孫子さん。





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