【8月16日】


『回天編』作業中。7月はイベントと新人賞下読みの嵐でなんにもできなかったんで、8月からが勝負。もう2週間やってるけどなかなか先が見えません。しかも分量は『乱闘編』の2割増しになりそう(バイト数計算)。そんなに入るのか?

なんか、該当期間に出た全SF書籍について言及があることにこだわってるのはオレだけかもしれんという気がしてきたので、追加分を削るかも。


【8月4日】


 このミス大賞一次通過作発表。12歳の女の子の「殺人ピエロの孤島同窓会」が話題騒然ですが、選評読んでいちばんツボだったのは「宝妃」。おまえは田中啓文か! 読みたい(笑)。
 町井登志夫は懲りずに今年も応募。一次は通ってます。


【8月2日】


 ミステリチャンネルの夏特番、「夏のイチオシバトル」で、上半期の内外ミステリを対象に「くろねこアカデミー賞」を選定しました(選者は、「Mysteryブックナビ」レギュラー出演者の香山二三郎、豊崎由美、吉野仁、大森望)。結果は以下の通り。

【国内編】
○新人賞:「空の中」有川浩 (メディアワークス)
○特殊効果賞(仕掛け、トリック):「扉は閉ざされたまま」石持浅海 (祥伝社)
○撮影賞(文体):「ユージニア」恩田陸(角川書店)
○脚本賞(ストーリー)」「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男(文藝春秋)
○ラズベリー賞(バカミス):「痙攣的 モンド氏の逆説」鳥飼否宇(光文社)
○監督賞:恩田陸
○ベスト・キャラクター賞:笑酔亭梅寿(笑酔亭梅寿謎解噺 田中啓文・集英社)
○くろねこ賞(作品賞):「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男 (文藝春秋)

【海外編】
○新人賞:「カジノを罠にかけろ」ジェイムズ・スウェイン 三川基好訳(文春文庫)
○特殊効果賞:「輝く断片」シオドア・スタージョン 大森望編(河出書房新社)
○撮影賞:「スパイズ・ライフ」ヘンリー・ポーター 二宮磬訳(新潮文庫)
○ラズベリー賞:「パズル」アントワーヌ・ベロ 香川由利子訳(早川書房)
○監督賞:シオドア・スタージョン
○ベスト・キャラクター賞:ブリジッド・ローガン(「耽溺者」 グレッグ・ルッカ 古沢嘉通訳・講談社文庫)
○くろねこ賞:「耽溺者」グレッグ・ルッカ 古沢嘉通訳(講談社文庫)

 選考の模様はミステリチャンネルで放送中。国内・海外各1時間の番組です。


【7月25日】


 2007年のヒューゴー賞短編部門に 日本人作家の作品を送り込むプロジェクトをちょっと考えた。
 長編とノヴェラは現実性が低いので、ショートストーリー(可能ならノヴェレット)を対象に作品を選ぶ。この10年ぐらいのSF短編で、アメリカ人にもウケそうなやつ。
 レギュレーションとしては英訳が必須ではないらしいけど、旧作から選ぶなら2005年中に英訳をつくり、インターゾーンなりF&SFなりに売り込む。ウェブジンも可。
 でもべつに有料である必要はなくて、日本の版元のウェブサイトに英訳版無料公開でもOK。日本人参加者の組織票を集めてノミネートまで持ち込む。翻訳コストは短いものなら10万円くらい? プロの日英SF翻訳者でも、ヒューゴー賞受賞可能性があるならタダでも引き受けてくれるかもしれない(ついでに売り込みもやってもらう)。

 新作で勝負するなら、2006年に日本の商業誌に発表し、自分のサイトでシノプシスの英訳を公開するのでもいい。星雲賞とヒューゴー賞の同時受賞狙い。韓日W杯で韓国がベスト4に入ったことを思えば、ショートストーリー部門を日本作家の作品が制するぐらいは許してもらえそうな気もしますね。ネタ勝負のハードSF系とかだったら国際的な理解も得られそうだし。英訳を希望する人がいたら、日英翻訳者は紹介します。
 野尻さんの「太陽の簒奪者」は英訳があるんだっけ? どの程度のレベルの英語なのか知らないけど、2007年をにらめば、修正版の掲載先を探すことは可能じゃないですか。長さ的には「沈黙のフライバイ」ぐらいのほうが売りやすそうだけど。

 あと、星雲賞海外部門に関しては例年と違う投票傾向になる可能性も高い。ヒューゴー賞既受賞作が強い?

 しかしいざワールドコン日本開催となったら、ヒューゴー賞の存在も知らない日本人の参加者が大多数を占めそうだな。

 そうそう、イーガンの新作ノヴェラ"Riding the Crocodile"はドゾアのアンソロジーONE MILLION A.D.(The Science Fiction Book Club)に載るらしい。 2005年末から2006年の刊行予定。出るのが2006年になれば、「イーガンにヒューゴー賞を獲らせる」計画を発動することもできそう。

 イーガンと言えば、山岸真の陰謀で『ディアスポラ』の解説がまわってきて、翻訳原稿を読んだ。超絶ハードSF。何カ所か、なにが書いてあるのかさっぱり理解できない箇所がありますが、飛ばして読めば平気。主観的宇宙論三部作とくらべると、話のほうはむしろ思いきりストレート。骨格は古典的なハードSFに近いんじゃないかと思った。タイプが違うので前三作とは比較しにくいが、やっぱり傑作です。9月末刊行予定。


【7月23日】


 『1500冊』トーク@ジュンク堂池袋本店。ぼちぼち行くかと思ったら地震で東西線ストップ。しょうがないので駅前からタクシーに乗って池袋まで。首都高ガラガラであっという間に着いたんだけど、山の手線内交通途絶のおかげで立往生する人続出。開始時刻の19:00に来てたお客さんは予約した人の4割ぐらい?
 稲葉さんはたいへんな苦労をしたそうですが、艱難辛苦のあげくジュンク堂に登場したのは終了予定時刻間際。
 それでも10分ぐらいコンデンストな話をしてもらえたのでよかった。
 それまでの1時間半は、見物に来ていた人をひっぱりだして、中村融とサイバーパンクおよび奇想コレクションの話、山岸真とイーガンおよび最近の文庫SFの話。
 なんかSFセミナーの合宿みたいなノリになっちゃっいましたが、まあ地震の余波ってことでご寛恕ください。お客さんはぽつぽつぽつと増えて最後は50人ぐらい。

 9時からはとなりのとなりの地下で二次会。こっちも盛況で、結局30人。なんかSF大会の打ち上げ(反省会)だったような……。幹事を買って出てくれたいでさん、ありがとうございました。結局、朝まで同じ店でうだうだ。

 しかし19歳の若者が三人も来てたので驚いた。
 いちばん心を打たれた発言。
「でも、若い人は『現代SF1500冊』とか読んでもわけがわからないんじゃないの?」
「いや、大丈夫ですよ。『SF雑誌の歴史』みたいに、歴史として楽しめました」
「……」
『SF雑誌の歴史』が平安時代なら『乱闘編』は明治時代ぐらいか?
(その後、『乱闘編』が戦前編で、『回天編』が戦中・戦後編だという話に(笑))


【7月17日】


 第44回日本SF大会(HAMACON2)で発表された第36回星雲賞・海外短編部門をシオドア・スタージョンの「ニュースの時間です」が受賞しました。めちゃめちゃ意外。というか、オレはコニー・ウィリスの「最後のウィネベーゴ」に投票したのに、まさかこっちが来るとは。「ニュースの時間です」は、SFマガジン異色作家特集用に自分で選んだ短編で、傑作だと思ってるんだけど、ひとつだけ大きな問題があって、どう見てもSFじゃないのである。この短編を収録した『輝く断片』も帯は「ミステリ短篇集」って書いてあるし。
 まあしかし、これが星雲賞を受賞したってことは、スタージョンが書けばなんでもSFになるってことで、つまりエラリー・クイーンもSFだってことですね。
 ――というようなことを受賞挨拶でしゃべりました。

 『輝く断片』は出足から好調ですでに増刷が決まってるんですが、発注が早すぎて帯に「星雲賞受賞」の文字は入らない模様。書店の皆様はぜひPOP立ててください。

 副賞は輪島塗の楯。なかなかいい感じです(上に張ってある写真は開いたところ)。スタージョンの分ももらったけど、いったいどうしろと。ノエル・スタージョンに送るのかなあ。

 ちなみにその他の部門の受賞作は、海外長編『万物理論』、日本長編『ARIEL』、日本短編「象られた力」。メディア部門は「プラネテス」、コミック部門は川原泉『ブレーメンII』、アート部門は新海誠、ノンフィクション部門は『前田建設ファンタジー営業部』、自由部門はヴェネチア・ビエンナーレのOTAKU展。授賞式には初対面の森川嘉一郎さんが来てて、控え室と星雲賞パネルでSFおよび最近のおたく界についてちょっと話をしました。前田建設の人々は全員作業服姿で登壇しバカウケ。山岸はなんかすごく真面目な挨拶をしてました。

 ジュンク堂の『現代SF1500冊』トーク、詳細決定。おヒマな方はぜひ。


top | link | bbs | articles | other days