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【10月12日(火)】


 本の雑誌新刊ガイド原稿。今月の目玉は創元SF文庫のグレッグ・イーガン『万物理論』(→amazon | bk1)。
 期待通りの傑作だが、ネタバレ禁止オーラを強烈に放つ訳者あとがきがついてるのでなにも書けない。まあ、主観的宇宙論サイクル(というか三部作?)完結編としては当然こうなるって話なんだけど、それでもびっくりしたな。
 一カ所、「山岸がこれ訳したのか。きっつーーっ」と(知り合いならだれしも)思う件りがあって、訳者的にはますますシンクロ率が上昇したんじゃないですか。この箇所に反応しそうなSFおたく男子の顔が次々に浮かびます。ねえ。
 ちなみにTOEとか全然知らなくてもまったく問題ありません。気になる人は、ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙』(→amazon | bk1)あたりを読んでおけばいい……のかな。よく知りませんが。

 今年の京都SFフェスティバル合宿企画で、もしかしたら「サルでもわかる万物理論」講座が開催されるかも。

 ところで、京フェスに多少なりとも愛着のあるSF者は、今年の京フェスには万難を排してでも参加したほうがいいかも。いや、なんとなく。そんな気配が。まだわかんないけど。

 国内SFの今月イチオシは、もちろん有川浩『空の中』(→amazon | bk1)。

 この2冊がたぶん2004年のオレSF内外それぞれのベスト1。



【10月13日(水)】


 矢野徹氏の突然の訃報に茫然。大学出たばかりの若造の時分から、翻訳勉強会(1970年代から続くSF翻訳者の集まり)の末席に加えていただき、年に何度か、朝まで矢野さんの融通無碍な放談を聞いて過ごしたものでした。

 お別れ会の弔辞で「矢野さんのいない世界なんて想像もできなかった」と浅倉さんが言ってたけど、まさにそういう感じ。
 もう何年もお目にかかっていないばかりか、最近の訳書も読んでなくて、思えば不義理ばかりでした。ご冥福をお祈りします。



【10月16日(土)】


 矢野さんのお別れ会に出席してから、池袋ジュンク堂で喜国雅彦『本棚探偵の回想』(→amazon | bk1)サイン会。由香ちゃん入魂の限定小冊子「神保町の中心でダブリとさけぶ」および検印紙つき。
 古本軍団は三省堂サイン会に集結するらしく、こちらにやってきた関係者は非古本系のひと中心。
 ジュンク堂でずうっと知り合いと立ち話のあと、カプリチョーザで食事して帰宅。
 寝不足でぼんやりしてたため、網棚にジャケットを置き忘れ、西船橋までとりにいく羽目に。とほほ。



【10月17日(日)】


 本を読みながらうとうとしてたら週刊新潮から『電車男』取材電話。
「これが2ちゃんねるのスレッドをまとめたものだと知って私はすごく驚いたんですが、そのあたりはいかがでしょう?」
 って言われてましも……(笑)。だいじょうぶなのか週刊新潮(後記:わりとだいじょうぶでした)。

 目が覚めたので「ジャスティライザー」見てから、トキオ連れで行船公園。園内の江戸川自然動物園(入場無料)でmixi日記更新。 歩いていけるところに動物園があるのは、東京だと恵まれてるのかも。



【10月18日(月)】


 河出書房新社の文藝賞授賞式@山の上ホテル
 ひさしぶりに来たら明治大学が新築ガラス&スチールのものすごいビルになってて驚愕。これが大学かよ!
 共同通信の人との打ち合わせがあるので早めに来たら、ティールームは文藝編集部の人の控え室と化してました(笑)。 いろんな人に挨拶されて恐縮。

 受賞者挨拶では、山崎ナオコーラさんのスピーチがまるでコリン星からやってきた人のようだった。 不思議すぎる芸風。三振かホームランだな。

 受賞作「人のセックスを笑うな」はタイトルが傑作なんだけど、小説は一行目がさっぱりわからない。意味が。3回読んで一応の結論は出したんですが、会場で読んだ人に話を聞くと、「5回読んだよ」って人が二人いました。選考委員の高橋源一郎氏は、
「あ、そう? 全然気づかなかったな、ははは」と豪快。

 選評は田中康夫知事のスピーチが爆笑。長野県の赤字が減った話や小布施の町おこしの話まで聞けて有意義。さらに某エンターテインメント系ベストセラー作家に対する嫌味のサービス付き。しかし編集者から聞きかじったような話をウラもとらずにああいう場で笑いのネタにするのはちょっとどうか。純文系のひとにはウケたみたいだけど。

 噂の真相にいた某嬢の再就職先を聞いて驚愕。そりゃまた180度の転身。

 会場はスーツ姿の人ばかりで、地味な滑降してきたつもりなのに思いきり場違い……と思ったら半ズボンの太田出版K尾氏がやってきて安心。 しかし片隅でmixiオフしてただけのような気も……。



【10月20日(水)】


 起きたら1時10分。 渋谷Q-Frontで2時の待ち合わせなのにっ。
 ダッシュで飛び出したら間に合ってびっくり。三村美衣のほうが遅刻。
 太田出版で出すライトノベル本の打ち合わせ。
 タイトルは、柳の下のドジョウを信じる太田出版サイドの強い意向で、『ライトノベルめった斬り!』(または『ライトノベル☆メッタ斬り!』または『ライトノベル☆めった斬り!』)になるらしい。全然メッタ斬りじゃないんだけど。
 『文学賞メッタ斬り!』チームにおそるおそるお伺いを立てたところ、「いいんじゃないですか」「まあしょうがないね」という感じでお許しが出たので、これが仮タイトル。
 個人的には『ライトノベル三十年史』ぐらいのカタめタイトルで考えてたんですが。

 内容は、対談パートでライトノベルの歴史を1970年ぐらいからたどり、ブックガイド・パートでライトノベルの主要作品(一部、ごく個人的な趣味で選んだ作品含む)100タイトルぐらい(冊数だと千冊ぐらい?)を紹介。ライトノベル度チェックと採点つき。

 現在、対談のまとめがあらかた終わり、ブックガイドの原稿が半分ぐらい上がった段階。なのに12月5日見本とかムタイなことを言う編集者。ブックガイドは三村美衣に全面的にまかせてオレは楽をしようという目算だったのに、三村美衣から泣きが入ってどんどんオレの仕事量が増えてゆく。毎日5冊ずつライトノベルを読む羽目に。こんなはずじゃなかった(泣)。

 雨の中、表参道Wonder Works.に移動して、ライトノベル本デザイン打ち合わせ。岩郷重力と会ったのはひさしぶりかも。すでに25年のつきあいだが、よく考えるとめったに会わないなあ。
 カバーイラストの方向は、タイトルがこう決まった時点で半ば自動的に決定。イラストレーター候補について相談し、その場でD.K.氏に依頼。『神様のパズル』の人です。抜群にうまいのに、まだ単行本カバーではそれほど使われていないので理想的かも。
 四六判ソフトカバー、300ページ弱の予定。しかし原稿が上がるかどうかが最大の問題だな。

 帰りはかなり雨がひどくなり、急いで帰ろうとする人々の群れで東西線は大混雑。西葛西は豪雨。

 高知もけっこうたいへんらしい。うちの母親は明日の飛行機で上京予定なんだけど、はたして飛ぶのか。

 太田出版K尾氏からもらった『新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド』をぱらぱら読む。ちみもさんのmixi日記を読んで、『文学賞メッタ斬り!』が論評されてることを知り、ぜひ買わねばと思ってた本。
 さっそく問題の(笑)32〜33ページを開くと――

渡部 さまざまな小説をじつに良くフォローしていることは感心しますけれど、このふたりのアクチュアリティを支えているメンタリティは、ものすごく古いものですね。

 まさか渡部直己・スガ秀実の両先生から「古い」と言われるとは(笑)。
 しかも今回は清涼院流水とか西尾維新とか太田克史とかファウストとか2ちゃんねるとかの固有名詞が乱舞して眩暈がしそうです。
 いや、中身はけっこう面白いっすよ。「純文学のジュニア化」とか。とにかくディシプリンが問題らしい。ヒートのディシプリン? 調教ものはそんな好きじゃないです。



【10月21日(木)】


 WEB本の雑誌「今月の新刊採点」単行本班に強力メンバー新加入。最近いちばんびっくりした出来事かも。ボランティアの採点員が、毎月、編集部から送られてくる10冊の課題図書を読んでクロスレビューを書き、採点するという、オープン当初からの人気企画。採点員は本誌で募集してるんだっけ? H本発行人が何も知らずに選んだ新メンバーのひとりが三枝さんだったらしい。評価には納得しがたい部分もあるけど、レビュー自体は抜群に面白い。三枝節炸裂。しかし怒る人も出そうだなあ。これから毎月スリリングです。

 産経新聞からも『電車男』(本日発売)取材電話。
 相手の人の「常識の範囲」がよくわからなくて困る。
「『Deep Love』や『電車男』のようにネット発の作品が本になることについてどう思いますか?」って言われてもなあ。『文学賞メッタ斬り!』だってネット発なのに。だいたい『ほぼ日』なんか、ベストセラーリストに何冊も新刊送り込んでるじゃん。ラジオやテレビからベストセラーが生まれてきたのと同じことでしょ?
「2ちゃんねるのスレッドが単行本化された先例」とか、ちょっとぐぐればすぐわかると思うんだけどなあ。文化部・学芸部の人は2ch見ないんでしょうか。いや、オレも見ないけど。mixiだけでいっぱいいっぱい。mixiにハマると2ch時間が減るって説はほんとでした。



【10月22日(金)】


 ミステリチャンネル《ブックナビ》の収録と年末特番『闘うベストテン』の打ち合わせ。

 ミステリチャンネル恒例の年末ベストテン番組、今年は船橋で公開録画となりました。
 なぜ船橋? かというと茶木則雄@ときわ書房の仕切りだから。にもかかわらず会場はしょぼいんですが(船橋市民ホールのリハーサル室)ご用とお急ぎでない方はどうぞ。
 以下、ミステリチャンネルのサイトからコピペ。

日時: 11月14日(日) 午後3時開場 午後3時半開演
場所: 船橋市民ホール2階(JR船橋駅南口下車徒歩約7分)
出演: 大森望、香山二三郎、杉江松恋、関口苑生、豊崎由美、吉野仁
観覧ご希望方は、「往復はがき」に住所、氏名、年齢、職業を明記の上下記までご応募ください。(応募者多数の場合は抽選とさせていただきます)

応募先: 〒273-0005 千葉県船橋市本町4-2-17 
ときわ書房本店公開録画観覧希望係
締切: 2004年11月1日(当日消印有効)
お問い合わせ: ときわ書房本店(Tel 047-424-0750)

 行ってもいいけど、いまどき往復葉書ってどうよ。と思う業界関係者は大森までメールまたは電話をどうぞ。茶木さんに直でもOK。

 ついでにもうひとつ、文学賞メッタ斬り!チームも出撃する10/30のジュンク堂新宿本店オープン記念トークショー
 定員オーバーで受付を中止してたんですが、なんか倍以上広い場所に会場が変わって、定員に余裕が出た模様。真ん中のメッタ斬りチームはともかく、最初と最後が柴田元幸、斎藤美奈子という強力布陣なんで、入場無料はお得かと。こちらも電話予約はお早めに。

 収録終了後は香山二三郎氏とタクシーに乗って飯田橋ホテルエドモント。鮎川哲也賞の授賞パーティ。
 いろんな本が出たばかりのせいか、めずらしく熱いミステリ話が各所で花ざかり。『生首』の細部にわたる技術論を突っ込んで語り合う麻耶雄嵩と法月綸太郎とか、本格ミステリ定義をめぐって激突する(←伝聞に基づく推測)綾辻行人と我孫子武丸とか。

 一方、わりとひさしぶりに会った笠井さんは、開口一番、
「大森君、冬ソナ見てるんだって? ぼくのまわりでは見てる人間がだれもいんだいんだよ。けしからんね」
 ひとしきり冬ソナの作品評価についてしゃべったあと、笠井さんいわく、
「まあ、ユン・ソクホの四季シリーズでは、それほど出来がいいほうじゃないけどね。いちばんいいのは『夏の香り』ですよ」
 あ、ありえなーい! と驚愕する大森。
「えーっ、『夏の香り』なんていちばんダメじゃないですか! そりゃソン・イェジンはかわいいけど、芝居はダメだし話の展開ものろすぎ! だいたいあの心臓移植ネタでひっぱるのは以下略」
 などと口角泡を飛ばして反論したところ、笠井さんが一言。
「きみとは意見が合わないな」

 まあ意見が合わないのは韓国ドラマにかぎった話ではありませんが。創元の《ミステリーズ》に笠井さんが書いたという冬ソナ論を読まなきゃ。

 それにしても笠井さんから、
「『左巻キ式ラストリゾート』はどう思うか」とご下問があったのには驚いた。
「著者の人から送ってもらって読みましたけど、うーん、ああいうの、僕はちょっと……」と言葉を濁していると、
「ああいう作品をきちんと評価できないのは批評家として問題なんじゃないの」
 そ、そういう問題なのか?(笑)

 どうも笠井さんの場合は、ユン・ソクホ作品をTVドラマの水準で、『ラストリゾート』をポルノ(エロゲ・ノベライズ)の水準で評価するってことは頭にないらしい。頭の中の批評モデルに適用すべき素材っていうか。批評家の鑑。

 ……みたいな話をmixi日記に書いたら、『左巻キ式ラストリゾート』に関するコメントが立て続けに寄せられる(笑)。そんな話題作でしたか。いや、局地的にはそうなんだけど。太田出版のK尾氏は思いきりハマってしまったらしいので、ある種の人を強烈に惹きつけるパワーがあるのかも。わかるようなわからないような。

 しかし笠井さんがすごいのは、韓国ドラマなら韓国ドラマで、冬ソナだけじゃなく「秋の童話」や「天国の階段」もちゃんとぜんぶ見てること。
「よくそんな時間がありますねえ」と言ったら、笠井さんはにやりと笑って、
「あるんだよ。原稿書く時間はないけどね」
「……」
 見習っていきたい。

 文鳥堂に寄って、日下三蔵先生の指導のもと、最近の推薦マンガを数冊購入(フリースタイルのベストテン選出用)したのち、17,8人いるベローチェ組に合流。11時過ぎから朝5時までカーニバルで雑談&カラオケ。「バレンタイン・キッス」とか(笑)。

 上京したうちの母親が子供二人の面倒を見てくれてるので、ひさしぶりに夫婦で朝まで。



【10月23日(土)】


 一時間睡眠でトキオの保育園の運動会 。会場は近所の小学校の体育館。もう3回目の運動会ですな。キリカはまだ見学。
 プログラムはかけっことか玉転がしリレーとかダンスとか。



【10月24日(日)】


 朝日新聞の石田衣良『ブルータワー』書評を見て驚愕。評者は池上冬樹氏。誉めるのはいいんですが、
「とりわけラストがいい。女性の肉体を使った"行為"が何とも官能的に、でも世界救済の崇高な意識に貫かれていて素晴らしく感動的だ」
 ってマジですか? あれ、笑うとこじゃないの? あそこで感動しなきゃいけなかったのか!?  茫然。
 じゃなくて、「意見が合わない」っていうのはこういうときに使うのか。

 ところでこの「官能的に」という副詞はどこにかかるんでしょうか。



【10月25日(月)】


 今度はSPA!から電車男取材――かと思ったら、その他のネット発出版物についての取材。相槌の打ち方から判断する限りではわりとよくわかってる人のようだったけど、合宿所スレの話は通じなかった。なにが有名なのかよくわかりません。オレのまわりにネット中毒者が多すぎるのか、活字メディアの人のネット中毒度が低すぎるのか。

 『電車男』は発売たちまち10万部を超え、紀伊国屋でもベストテン入り(翌週は1位に)。すでに映像化依頼も殺到してるそうですが(だれが許諾するんだろう)、映画は無名の人々の群像劇にすれば、主要登場人物たちが最後まで出会わない(電車男とエルメスをのぞく)ユニークな青春映画になるんじゃないかと。モニター上だけで連帯する人たち。「ekiden」だっけ? 意外とああいう感じが合うかも。負け犬OLとかリストラされそうなサラリーマンとかイジメに遭ってる中学生とかが登場。松竹系。
 うわ、見たくない(笑)

 いまの興味は、噂の真相なきいま、最初に「電車男(本人)」写真をスクープする(もしくは「電車男は虚構の存在だった!」と暴く)メディアはどこか? あと、エルメス(ブランドのほう)の反応。
 後者については、mixiでspinn寺本氏(「電車男」未読らしい)が書いてたネタが爆笑でした。「今年はエルメスのティーカップを贈るとラブ打率がめちゃくちゃ上がるらしいわよ!」みたいな。読まずによくそこまで。しかし不況の折り、これが現実になりそうで恐い。
 じっさい巷では、電車男がエルメス宅で振る舞われたベノアの紅茶が売り上げ急上昇みたいな現象も起きてるらしい。もうワイドショウではとりあげたんでしょうか。
 しかしHERMESのティーカップって高すぎ。

 電話取材を受けてるうちにBSアニメ夜話がはじまったんで、途中から視聴。2ch実況板を覗きながら見るとけっこう笑える。宮台うざい派と国生うざい派と真っ二つ? 岡田、出渕はおおむね好評。オレはほとんどしゃべってないのであんまり関係ありません。国生さゆりさまのとなりにいられただけで幸せ。宮台真司はすでに完成された芸風ですね。ああいう場でも普通に「永遠の戯れ」とか「サブライムなものを希求する」とか言えるんだからすごい。




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