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【6月14日(月)】


 EURO2004開幕にともない更新頻度増強中。

 すっかり忘れてましたが、本格ミステリ大賞宴会で、『空の境界』以上に話題を集めていたのは『中田いたり蹴』じゃなくて『蹴りたい田中』。
 田中啓文の第130回茶川賞受賞作を表題作とする短篇集で、表題作の扉裏には『文学賞ブッタ斬り!』の一部が抜粋されている。この本のためにトヨザキ社長と語り下ろした無慮千枚ぐらいある対談の一節。ウソです。構想30秒、執筆15分の『メッタ斬り!』第二弾。
 字数制限がきつかったんで、 「選評見るかぎり、戦艦がどうして〈和紀〉なのかわかってる人もほとんどいないみたいだし。」  のあとに続く、 「シンちゃんは『はいからさんが通る』とか読んでないから」っていう部分を削ったら、意味がわからんと悩む人がけっこういたらしい。だからね、戦艦大和じゃなくて戦艦和紀なんですよ。それでもわからない人はお母さんに聞いてみよう。

『メッタ斬り!』読者は、帯裏の茶川賞選評で笑ってください。今回のゲスト原稿は前回よりかなり底上げされてますが、いちばん笑えないのは塩澤編集長の原稿かも。自分で考えたコンセプトをよく理解してない疑惑が。
 ちなみにこの『蹴りたい田中』の冒頭部分は、SFインターセクション初の書籍収録かも。初出を見て狐につままれた他社編集者もいたらしい。大森のクレジットが入ってないのは、お笑い観の相違から田中啓文とつかみ合いの大喧嘩になり、「もういい、勝手にしろ! オレは降りる!」と宣言して訣別したからです。ウソです。雑誌じゃないと成立しないはずのギャグだったのになあ。

「ナカタ、黄金の右足でいたり蹴! ゴオオオオオオールゥゥ!」みたいなカバーは秀逸。藤原ヨウコウ(推定)のクレジットが入ってないのは、お笑い観の相違から以下略。ウソです。

 でも帯の推薦文は太田光にもらうべきだったと思った。

 ユーロ2004はイタリア登場。デンマークのキーパーがあたりまくって(いや、ブッフォンもあたってたけど)点が入らず。まあ、イタリアらしい緒戦ですね。
 しかし攻撃的なスタイルに変身とかいうのは大嘘。変わってないじゃん! デルピエロとトッティの共存もたいして機能せず、長髪のビエリは迫力不足。なんか前より小さくなったように見えます。いちばん驚いたのはカンナバロのスキンヘッド。ヘアスタイル以外は変化に乏しいイタリア代表なのだった。

 強いのはスウェーデン。1−0の前半見て、こりゃスウェーデンの勝ちは動かないねと思ってちょっと目を離したら5−0かよ! ラーション2ゴール、ユングベリ、イブラヒモビッチ(PK)、それに交替出場のFWアルバックが各1ゴールと、理想的な入り方。
 イタリアは次のスウェーデン戦に引き分けた場合、ブルガリアに勝っても一次リーグを抜けられない可能性が出てきたのでけっこうたいへん。イタリア×スウェーデンがC組の天王山か。ま、デンマーク×ブルガリアの結果を見て戦えるわけですが。

 目を離してる間になにをしてたかというと雑誌の整理。3年分なんですが、もう百キロぐらい溜まってる。積み上げてある山を崩し、雑誌別に分けて、保存山と捨てる山に分別。いま毎月届く雑誌は、週刊新潮&週刊文春、それに月刊誌がSFマガジン、本の雑誌、小説すばる、小説推理、小説NON、野性時代、問題小説、Men's Extra、プレミア、映画秘宝、キネマ旬報(月2回)、ゲームぎゃざ、Vジャンプ、eとらんす、アニメージュなどなど。PR誌では、ポンツーン、星々峡、波、青春と読書、本、本の話、新刊ニュースetc. そのほかSFJapan、活字倶楽部、ジャーロ、メフィスト、スターログ、文芸ポスト、小説トリッパー、通訳翻訳ジャーナル、TITLE、遊歩人などなどもあって、週刊誌以外はなかなかすぐ捨てられないので溜まり放題。《噂の真相》亡き今、中身を半分以上読んでるのは、週刊誌以外では《本の雑誌》だけ。まるっきり読まない雑誌が半分以上。
 捨てるやつを片っ端からヒモで縛って玄関の外に出し、古紙回収おやじに電話。ちょっとは片づいたか? 誤差の範囲内です。



【6月15日(火)】


 死のD組も、いよいよ開幕。3強1番外地の1番外地指定だったはずのラトビアが健闘するが、残り30分ぐらいで電池切れ。それにしてもチェコはしぶとい。あわてない。この組はチェコが当確で、あとはドイツとオランダのマッチレースでしょ。

 下馬評最悪のドイツは、じつは強いんじゃないかと思ってて、ほうらやっぱり予想通り――のはずが、オランダに勝ち切れない。でもドイツの勝ち残りに一票。

 新生ドイツ期待の星(大森認定)、シュヴァンシュタイガーくん19歳は後半から登場。ちょっとくずれた中村獅堂みたいな子です。ドイツ代表には珍しく、とっても楽しそうに球を蹴るので、見てて面白い。最初見たときはジダンみたいだと思ったけど、むしろフィーゴ系か?
 ところで大森は前から、バラックはマット・デイモンでフェラーはグルーチョ・マルクスだと思ってるんですがどうですか。
 オランダは暗雲漂う立ち上がり。ライジハーのかわりにハイティンハっていう面白い顔の若者が右サイドバックに入ってるんですが、なんかアガってたんじゃないの。こっちの期待の星はファンデルファールトかな。

 横田さんが週刊誌に書いてた書評を読んで注文したジョン・バクスター『愛書狂の告白』(晶文社)が届く。オーストラリアのSFコレクター兼(元)SF作家の話。もちろんアッカーマンとかも出てきます。SFおたく的には、キース・ロバーツがImpulseの編集長やってたころの英国SF界裏話がポイントで、キリル・ボンフィリオリ情報が妙に詳しかったり。
 しかし、ぱらぱら眺めてたら、「P・G・ウォードハウス」という名前が出てきて仰天。そりゃまあWodehouseの発音がなぜウッドハウスなのかは、わたしもつねづね疑問なんですが、だからといってウォードハウスにしてはいけません。思わず目を皿のようにして読みはじめる。したら、うしろのほうではちゃんとウッドハウスになってるよ。直し忘れ? SFの訳題は(長編に関しては)わりと調べてるみたいなんだけど、「アンドレ・ブレトン」とか、基本人名に関する謎の間違いがいくつか。「ハリー・ハリスン」が気持ち悪いの趣味の問題か。ジェームズ・G・バラードもなあ。原著者による作家名表記もけっこうでたらめで、それをそのまま訳してるので愛称その他がごちゃ混ぜ。同じページの中にジェイムズとジェームズが両方出てきたり。著者も訳者も細かいことは気にしてません。あ、だからいいのか。
 おたく系読者にはいろんな意味で楽しめる一冊。でもネルスン・ボンドのファンは怒ると思う。著者は、友だちにはなりたくないタイプだな。



【6月16日(水)】


 A組の二戦目。スペインもギリシャに勝ちきれず、ギリシャは勝ち点4。三戦目でギリシャが順当にロシアに勝つ(または引き分ける)と考えると、A組は残り1枠。

 ポルトガルかスペインか、どっちか片方は一次リーグを突破できない可能性が濃厚。スペインは引き分けでもOKだから、ポルトガルは崖っぷち。一戦めからデコを入れとけばよかったのにねえ。フェルナンド・コウトもはずしたほうが安心。ていうか、ポルト勢を主力に据えて、ベンフィカの選手をちょっと混ぜればいいんじゃないの。フェリポンが好きな選手ばっか集めてもユーロじゃ勝てません。
 デコとルイコスタの併用パターンが機能するなら、クリスチアーノ・ロナウドも最初から入れてがんがん行くのはどうか。勝つしかないと開き直ったら、意外と強いかも。
 どっちにしてもすごい試合になりそうです。



【6月17日(木)】


 イングランドはスイスに快勝。スイスはまた退場者が。ヤキン兄弟のおかげでプチトルコみたいに見えるけど、決定的に運が悪い。イングランドはスコールズとベッカムの調子が上がらない。とくにスコールズが弱気。

 しかし最大の驚きはクロアチア。もうちょっとでフランス打倒に成功するところだったのに惜しかったねえ。トレゼゲの同点弾はどう見てもハンドだよ! 1点めもジダンのフリーキックが抜けてラッキーなオウンゴールだし。まあクロアチアが勝っていたとしても大勢に影響はなくて、どっちみちフランスは三戦目をまじめに戦わなきゃいけないし、イングランド×クロアチアは勝ったほうが決勝トーナメント進出。

 フランスは運がよかったので勝ち点4あるけど、ふつうなら勝ち点1または0でもおかしくない2試合。予選の調子がよすぎて、本選でガタガタになるパターンか。とはいえ、さすがにスイスには負けないだろうけど、2試合つづけてPK与えたシルベストルの心理的影響は……。

 《小説トリッパー》夏号は新人賞特集。斎藤美奈子×重松清対談と、トヨザキ社長のエッセイと、永江朗のブックガイド原稿に『文学賞メッタ斬り!』が登場。朝日新人文学賞のことはクソミソに言ってるのに、なんという太っ腹でしょう。
 考えてみると、『文学賞メッタ斬り!』は朝日新聞社系の媒体でめちゃくちゃ厚遇されてて、《週刊朝日》では枡野浩一さんと斎藤美奈子さん、朝日新聞夕刊では枡野さん、朝刊書評欄では高橋源一郎さんが書いてます。築地に足を向けては寝られません。

 と言いつつ、選評を読むかぎり、今回も朝日新人文学賞はかなり苦しい選考を余儀なくされたみたいで、奥泉光なんか駄洒落落ち(笑)。いわく、

「選考会では受賞作なしも健闘されたが、受賞作は必ず出すべしとの原則が改めて確認され、最後の投票で『サハリンのイトウ(漢字)』が選ばれた。とりあえずこれが一等ということだ。」

 って、田中啓文かよ! 
 という話はともかく、びっくりしたのは、それと最後まで受賞を争った「密儀とピクニック」。作者は西村創。どこかで見たような名前ですが、もしかしてこれはあの人(の本名)なんでしょうか。
 内容は、「ある読者会のメンバーがピクニックに行き、公園でアナザーワールドに迷い込み、謎の敵に追いかけられたり、管理小屋に泊る羽目になったり、整合性のない現実と格闘させられる話である」(高樹のぶ子)。
 どう見てもかなり怪しくて、やっぱり同姓同名の別人というわけじゃなそうなんですけど。しかしなぜ朝日新人文学賞に応募したんだろう。実際、もうちょっとで受賞ってところまで行ったわけだし、狙い目と言えば狙い目だったわけか。惜しかったねえ。朝日新聞社から本を出すという快挙が実現するところだったのに。

 その朝日新人文学賞、次回から選考委員の顔ぶれが一新。残るのは高橋源一郎だけで、新たに阿部和重、小川洋子、斎藤美奈子、重松清が加わる。雑誌のリニューアル度から言えば、もうちょいエンターテインメント系の比率を高めてもよかったんじゃないかと思うけど、いまの公募新人賞の選考委員としてはかなり期待できそうな布陣。

 公募新人賞の場合、いい作品が来るかどうかは限りなく博奕に近くて、どんなにいい選考委員を集めても、どんなに高額の賞金を提示しても、ダメなときはダメなんですが、強いやる気を見せたことはたしか。これで応募原稿の質と内容が変わってくるかどうかに注目していきたい。




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