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シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社1900円)発売中→bk1 | amazon


【1月10日(土)〜15日(木)】


 『文学賞メッタ斬り』の対談部分校正をなんとか終わらせて、ひきつづき各種コラム(「授賞パーティってなにやってるの?」とか「ライトノベルの賞事情」とか「海外の文学賞/エンターテインメント篇」とか)を書き、さらに巻末の「文学賞の値うち」を書く。この一年間の文学賞受賞作を100点満点で(というか『作家の値うち』方式で)採点し、コメントをつけるってやつ。長篇短篇合わせて60作ぐらいかな。とにかく点数決めるのがたいへんです。100点満点の採点は、はるかむかし、《小説奇想天外》の「海外SF問題相談室」でもやってたんだけど。

 そうこうしてるうちに、130回の芥川賞・直木賞が決定。今回の芥川賞は綿矢りさ『蹴りたい背中』イチ押しだったんで、受賞はめでたい。しかし『蛇はピアス』と同時受賞かあ。金原さん(パパのほう)おめでとうございます。まあ、大学の教え子が星雲賞とるんだから、そりゃ実の娘は芥川賞ぐらいとるよね。とかいってたら、お嬢さんもこっそり聴講していたらしい(週刊文春のインタビューより)。星雲賞作家と芥川賞作家を両方出した創作ゼミはここぐらいじゃないですか。
 直木賞、『号泣〜』は鉄板だと思ったけど、『後巷説』は意外。なぜこれで受賞なのか? と思ったらちゃんと理由がありました――という話は、電話とメールのやりとりで急遽つっこんだ『文学賞メッタ斬り!』緊急対談でどうぞ。間に合ってしまうところが怖ろしい。やはり2月発売は無理で、刊行は3月中旬になりそうな気配。
 にもかかわらず、『文学賞メッタ斬り!』はamazon.co.jpでフライング予約受付中。ていうか、発売日も定価もまだ正式決定してないんですけど。なんの告知もないので、幕下付出しの「売上ランキング: 99,527」という状態(笑)。amazonユーザな人は予約してやってください。いや、ここまで来たら本は出ると思います、たぶん。



【1月16日(金)〜21日(水)】


『メッタ斬り』が一段落したので『犬』の直し。調べることが多すぎてぜんぜん進まない。現在の仮タイトルは、『犬は勘定に入れません あるいは消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』。早川書房海外SFノヴェルズで出るらしい。

 《SFが読みたい! 2004年版》掲載予定の「21世紀日本SF作家分布マップ エスエフ大陸の国勢調査」は、原稿はわりとあっさり上がったものの、S澤編集長担当(協力・三村美衣)のマップ作成が難航。見開きなんで、X軸とY軸を縦横にすると、縦軸がノドにかぶってしまうという判断から、45度ずらして斜めにすることになったんだけど、よく考えるとこれでは表示面積が足りなくて、座標を正確にプロットできない。つまり、たとえば物語性max、幻想性maxの人は、見開きのページから飛び出しちゃうわけですね。どうも考えたとおりの位置にいないと思ったら。ていうか、これ、本来あるべき面積の半分しかないんじゃん! って、もっとはやく気づけよ。ま、メルカトル図法の地図だって極地のほうは歪んでるからな。
 さらにS澤編集長が、マップに出てくる237人(に最終的に到達したらしい)の作品一覧をくっつけると頑張り、半日がかりでリストを作成。それをチェックしてるとまた時間が……。企画を聞いた瞬間に覚悟したこととはいえ、予想通りたいへん。しかし役に立つのかこれ? どうせなら各作家の値うちを100点満点で採点したバージョンをつくれば(つくりません)。

 さらに《eとらんす》の「翻訳SFオールタイムベスト20」原稿と、インタビュー原稿の直し。いまこんなことやってて1日に発売とは……ほとんど《SFマガジン》並みの進行です。

 あとは《週刊新潮》の書評原稿(森見登美彦『太陽の塔』)と、井上夢人『ダレカガナカニイル…』講談社文庫版の解説。新潮文庫版の解説にその後の情報を追加するかたちにしてほしいと言われたんで、それにしたがったんですが、十年の歳月を実感。そうかあ、このときは小沢健二がホットだったのか。なお、この解説と冒頭は井上さんのサイトで読めます。



【1月22日(木)】


 UIPでジョン・ウー「ペイチェック」の試写。小道具の数が原作の9個から思いきり増量され、なかなか楽しい話になってます。リバースエンジニアリングの達人ってのはちょっと笑った。ディックとはほとんどなんの関係もないけど、まあ悪い映画じゃないです。『マイノリティ・リポート』といろいろかぶってるのが惜しい。

 ところで映画に合わせて出たハヤカワ文庫版の再編集短篇集『ペイチェック』なんですが、これがよくわからない。「報酬」が入ってるベストオブPKDの一巻目(『パーキー・パットの日々』)を改題・増刷しようとしたら、新しい短篇集が出るからこっちを出してくれと言われて向こうのエージェントからラインナップが送られてきたらしいんだけど、実際に向こうで出ているPaycheck: And 24 Other Classic Storiesは、5巻本ディック短篇全集の一巻目を改題したやつで、日本版の『ペイチェック』とはまったく違う。
 日本版の版権表示を見ると、原書タイトルは入ってなくて、短篇ごとの表示になってるし、いったいこれは誰のセレクションなのか。編集者に訊いても浅倉さんに訊いてもよくわかりません。謎すぎる。日本版『ペイチェック』収録作はいったい誰が選んだのか。知ってる人がいたら教えてください。

 ミステリチャンネル本社で「ブックナビ」収録。トヨザキ社長は「文学賞の値うち」で四苦八苦らしい。わははは。がんばってください。



【1月23日(金)】


 第二回「このミステリーがすごい!」大賞授賞パーティ@ダイヤモンドホテル金剛飯店。前回とはうってかわって、とても大賞賞金1200万円が授与される賞とは思えないつつましさ。前回受賞作の『四日間の奇蹟』のほうは出たばかりの文庫版がめちゃめちゃ売れているらしく、破格の部数。さらにほとんど即日増刷だったらしい。まあ、最近の傾向から言うとたしかに売れ筋なんですが。
 今回の受賞作、柳原慧『パーフェクト・プラン』はすでに発売中(→bk1 | amazon)。例によってちょっとどうかと思うようなカバーですが、読んだ人の評判はまずまずのようで一安心。高橋まき@「ただ、風のために。」の助言を仰いだおかげで、クラッキング系の描写は異様に濃くなってて、linuxな人とかの一部にウケている模様。ヒロインがMewでメールを読むのは国産ミステリ史上初かも(笑)。
 優秀賞のハセベバクシンオー『ビッグボーナス』は2月13日刊行予定(→amazon | bk1)。こっちも後半部分を改稿して、可読性がかなり向上。めちゃめちゃ面白いので、書店で見かけたらだまされたと思って最初の20ページぐらい立ち読みしてください。



【1月24日(土)〜25日(日)】


 日本ホラー小説大賞の一次選考通過作を猛然と読む。今年は短篇がけっこう面白い感じ。

 『不思議のひと触れ』はめでたく重版決定。企画が持ち上がる前から、「スタージョンならこの部数は売れる」と適当に言ってた部数に到達したのでめでたしめでたし。



【1月26日(月)】


 日本ホラーサスペンス大賞授賞式。今回から会場がグランドハイアット東京@六本木ヒルズにグレードアップ。テレビ朝日のご威光で意外と安く使えるらしい。
 二次会は近所だったんですが、集まった人数が多すぎて(または会場のフロア面積が狭すぎて)3フロアに分散して開催される状態に(笑)。
 特別賞の誉田哲也氏が持ち芸を披露しようとネタを仕込んできたにもかかわらず激しくすべり、なかなかユニークな芸風と好評。ていうか、新人賞受賞者が授賞パーティで芸を見せようと考える時点ですでにユニーク。一方、大賞の高田侑氏は、作品からは想像がつかないほどのジェントルマン。高田氏が《本の雑誌》の愛読者なんですといったとたん、それまで気のないそぶりで話を聞いていた北上次郎の態度が一変、それからえんえん話し込んでましたが、あれはなにを話したんでしょうかね。



【1月27日(火)】


 ホラー大賞二次選考会@角川書店本社会議室。今回は、一次選考(の一部)が大幅に遅れた関係で、一次通過作の発表ができなかったらしく(紙媒体で無理ならウェブサイトで発表すればいいのに)、2ちゃんねる創作文芸板ホラー大賞スレは疑心暗鬼の嵐。応募した人の立場で考えれば、はやく発表してほしいと思うのは当然ですが、オレの日記を頼りにするのはやめてほしい(笑)。ホラー大賞がいまどうなってるのか教えろといろんな人に言われたんで、前回の日記で状況だけ報告したところ、それはそれで混乱を招いたらしく、どうすればいいのかよくわからない。
 長篇の候補作はわりとすんなり決まったものの(あまり選ぶ余地がなかった)、短篇は紛糾。最後は決選投票にまでもつれこんだけど、ほぼ満足すべき結果でした。

 打ち上げはラムラ摩天楼飯店が潰れちゃったとかで、近所の中華料理屋に変更。そのあとは例によって麻雀。茶木さんが4連続トップをとり爆走しかけたんだけど、最後で急落。大森は例によって終盤で帳尻を合わせ、チップの貯金で7000ガバスほど浮きで終了。帰りのタクシーでは、「今日は早番だから6時に起きて仕事だ。2時間しか寝られないよ(泣)」と嘆くことしきりの茶木則雄。だったら麻雀せずに帰ったらどうですか。

 その最中もS澤編集長と電話で、「21世紀SF作家分布マップ エスエフ大陸の国勢調査」(というタイトルになるらしい)の最終調整。最初はファンタジー系もホラー系もライトノベル系も落とすはずだったのに、結局あとからごそっと追加したんで、意外な人を入れ忘れてたり。うーん、まだまだ洩れてるような気がするが、さすがにもう間に合わないでしょう。ていうか、原稿とマップと作品一覧が連動してるので、追加はたいへんなのだった。



【1月28日(水)】


 睡眠不足でぼうっとしたまま、渋谷・PARCO出版で『文学賞メッタ斬り』のゲラチェックと註の打ち合わせ。なんだかんだであと100枚ぐらい脚注を書くことになりそうな気配。うーん、こんなたいへんな仕事になろうとは……。



【1月29日(木)】


『犬』の刊行に合わせて《SFマガジン》でコニー・ウィリス特集を組んでもらえることになったんで、その作品選択のためにImpossible Things(第二短編集)を再読。むかし読んでるのに全然話を覚えてないのはどういうことですか。大学までに読んだやつは何年たっても忘れないのになあ。
 ほんとはSpice Pogromをやりたくてしょうがないんだけど、長すぎると却下されました。未訳の中編の中ではこれがいちばんの傑作だと思うんだけど、230枚ぐらいあるからなあ。やはりヒューゴー&ネビュラのThe Last of Winnebagos か。こっちは泣ける名作です。あとは短いの一本。AdoもしくはIn the Late Cretaceousでしょう。



【1月30日(金)】


 柳原慧『パーフェクト・プラン』および村上貴史『ミステリアス・ジャム・セッション』刊行祝賀会@新宿FUMA。このミス大賞の授賞パーティよりにぎやかだったかも(笑)。
 宴会は朝までコースなんだけど、仕事も詰まってるので終電帰宅。



【1月31日(土)】


 推理作家協会の麻雀大会で勝負! のはずだったが、両親が上京して、弟の長男のお食い初めイベントが開催されるので、泣く泣くあきらめる。それにしても倉阪鬼一郎が5位ですか。

 弟夫婦のマンションで豪華な昼食をたらふくごちそうになったあと、赤坂ですぺらで幻想的掲示板の新年会。急な葬式で欠席した浅暮三文から電話が入り、ひとしきり『10センチの空』について文句を言う(笑)。そのあと、ふと気になって、
「お祖母さんの葬式って、いったい何歳やったんですか?」
「百六歳ですわ」
「百六! それ、表彰とかされるんちゃうの」
「枚方市で最長寿やったそうです」
「うちのおじいちゃんも九十九まで生きたけど、百六歳はすごいなあ。そらもう歴史上の人物ですよ」(1896年生まれってことは、大下宇陀児と同い年。江戸川乱歩の2歳下で、海野十三や木々高太郎より年上になる)
 とか言ってたら、倉阪さんのお祖母さんもいま九十九歳か百歳で元気らしい。浅暮祖母の記録を抜いてやると息巻く倉阪鬼一郎。百七まで生きろ! いや、倉阪鬼一郎ががんばってもしかたないんですが。

【告知】
コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』
 版元の事情で刊行がまたまた1カ月延びました。3月発売で告知されてますが、4月中旬発売になります。待ってる人がいたらすみません。四六判『ドゥームズデイ・ブック』よりは安くなる模様。と思ったら、こっちもamazon.co.jpで予約可になっている事実にいま気づいて愕然。いったいいつの間に……(書店向けのリリースから担当者が適当に選んで予約リストに入れてるらしい)。予価2800円。しかしタイトルが「犬は勘定に入れません 海外SF」って……。カタログ修整フォームからタイトルと刊行日の修整を送信したんだけど(2月19日現在)、はたして反映されるでしょうか。

『SFが読みたい! 2004年版 2004年版 発表!ベストSF2003〈国内篇・海外篇〉』
 発売中です。手間だけはかかってる「21世紀日本SF作家分布マップ エスエフ大陸の国勢調査」を眺めてやってください。しかし当初は、「SFに疎い人がぱっと見てわかるように」という趣旨だったのになあ。なんでこうなっちゃったんだろうなあ。あと、若手作家座談会が笑えます。岩郷重力インタビューも掲載。ベストテンは内外ともにほぼ順当。



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