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【12月23日(金)】


【これまでのお話】
 神田駅北口の居酒屋に集合した若手SF作家トリオ、秋山瑞人・冲方丁・小川一水(あいうえお順)はファミレス話その他で静かに盛り上がっていた。
「なんか、ファミレスの店員にいろいろ相談されるんですよ。ひとり、ボクサーのアルバイトがいたんですけどね。ファイティング・スタイルは右がいいか左がいいか、真顔で相談されたときは困っちゃって。素人にそんなこと訊かれても……」(冲方丁)
 S澤編集長はその間、柱にもたれて2時間爆睡。ようやくむっくり起き上がったかと思うと釜揚げうどんを注文。
 このまま朝まで飲んで解散かと思いきや、店の閉店時刻は午前4時半。近くの和民その他も午前五時までなんで、今からは入れない。
「近くにファミレスとかないですかね」
「たしかデニーズがあります。十分ぐらい歩きますけどいいですか?」と力強く歩き出すS澤編集長。「たしかこっちのはずです」
 三村美衣は神保町パセラのカラオケ組に合流すべくタクシーで去り、人けのない夜明け前の神田を歩く五人の男たち。
「秋葉原のショップって開店時刻はあんまり早くないですよね」と唐突に質問する秋山瑞人。こ、この男、いったい何を考えてるのか……。
「じゅ、じゅういちじぐらいじゃないかな、ははは」
 ようやくデニーズに到着し(S澤編集長を疑ったわたしが悪かった)、いきなりくつろいだ気怠い雰囲気の中でなぜか「呪怨」話がえんえん続く。
「じつは、書きたいと思ってるホラーがあるんですよ」とおもむろに切り出す秋山瑞人。微に入り細わたってスプラッタ描写を語りはじめる。
「いい感じですね」
「でもどうせなら渋谷とかに来たほうが」
「そこで終わったかと思わせておいてじつは……」
「さっき、もう一個ネタがあるって言ってませんでしたっけ?」
「ああ、そっちはタイトルだけでまず通りそうにないんですけどね。『ウンコマン』っていうんですよ」
 完成の暁には百万部の大ベストセラーとなり、いずれハリウッドでピーター・ジャクソンが映画化するに違いないその素晴らしいストーリーを惜しげもなく披露する鉄人アキヤマ。
 が、そのとき、閑散とした店内に突如響きわたる声。
「なにがウンコだ、バカ野郎!」
 五人が一斉に声の方向を振り返ると、隣の隣の四人掛けボックス席にひとりでだらしなくすわる酔眼の中年サラリーマン。
「いい加減にしろってんだ。こっちはメシ食ってるんだぞ。公共の場所でなにがウンコだよ。おまえらだけの店じゃないんだ。汚い話ばっかりしやがって」
「…………」
「…………」
「……どうもすみません」
「…………」
「……それでそのペケペケマンですけど、実際には……」
「まったく気持ち悪いんだよ。なあ。こっちは食事してるんだ。気分悪い」
(でももう食い終わってるじゃん)
{こっちはフレンチフライにケチャップつけて食ってるやつがいるんだぞ)
(なんか、悪いボタン押しちゃったみたいですね)
(押したのはまちがいなく秋山瑞人だね)
(すいません、どうも)
「おまえらみたいな連中はなあ……バーチャルな世界へ行け
「…………」
 必死に笑いを噛み殺す五人。
(見抜かれてますね)
(「バーチャルな世界」って……いったいどこから出てきたんだろう)
(日頃、部下の若いやつに言いたくて言えないことが溜まってるんじゃないの)
 さらに店長を呼びつけ、くどくどと文句を言いはじめるサラリーマン氏。
「さっきからウンコだなんだって迷惑なんだよまったく。こういう客をそのままにしてていいのかっ。食事してる人間もいるんだよ。ええ、わかってるのか。そういう話がしたいならよそへ行ってくれと言えばいいだろう」
(おまえが直接言え)
(ファミレスの店長も楽じゃないですよねえ)
(たまにいますよね、酔っ払って怒鳴り散らす客とか)
(そういえばこないだ……)

【教訓】
 ファミレスでウンコマンの話をするときはまわりによく注意しましょう。




【12月24日(水)】


 ダイエーの総菜コーナーで買ってきたフライドチキン、お好み焼き、焼きそば、餃子、寿司その他と、ラピュタで予約してあったクリスマスケーキでサンタ降臨宴会。
 クリスマスプレゼントはバンダイの爆竜合体アバレンオー。爆竜ティラノにトリケラとプテラが合体するやつ。合体ギミックがどうなってるのか興味津々だったんですが、めちゃくちゃよくできてますね。というか、取扱説明書なしでは合体不可能かも。ようやくできあがると「完成! アバレンオー!」と叫ぶのはお約束。
 クリスマスなのでアバレンジャー見放題のサービスつき。ちゃんと見はじめたのが途中からなんで、本放送と併行して1話からDVD視聴してるんですが、最初の10話ぐらいはものすごく出来がいい。
 最近の戦隊ものってみんなこんなレベルなのかと驚いて、ガオレンジャー、ハリケンジャー、タイムレンジャー、カーレンジャーetc.の第一巻を片っ端からレンタルビデオ屋のキッズコーナーで借りてきて(一週間レンタル×3本で400円)ざっとチェックしたところ、やはりアバレンジャーがダントツだと思った。浦沢節爆発のカーレンジャーもいいんだけど、基本線を無視してギャグばかりが暴走するので、ビデオで続けてみるにはちょっとつらい。いちばん許せないのは親父が偉そうに命令するゴーゴーファイブ。
 一方、新しい仮面ライダーでは、やっぱりクウガの出来がいい。555もキャラクターは悪くないけど、メインのストーリーが迷走しているとしか思えないからなあ。
 最初のほうをざっと見た感じでは、クウガ>龍騎、555>アギトでしょうか。こないだ小林泰三からクウガとアギトの関係について詳しい説明を受け、聞いてるときは絶対ウソだと思ったけどほんとだったので驚いたり(笑)。




【12月25日(木)〜26日(金)】


 『文学賞めった斬り』の対談校正作業中。章単位でアライさんからメールされてくる原稿に手を入れるんだけど、直しはじめるとキリがない。入稿原稿が揃うのが来年1月中旬、刊行は3月ぐらいか。コニー・ウィリスの直しも途中で止まってるのに。あ、その前に、映画化合わせで出るディックの新しい短篇集『ペイチェック』に大森訳の「父さんもどき」と「待機員」が入る予定。向こうで出たリミックス短篇集の全訳なんだけど、ベスト盤というわけでもなく、けっこう謎のセレクション。だれが選んでるんだろうな。


 NHK BSで1日2話×10日間のアンコール再放送をやってた「冬のソナタ」を見はじめたら止まらなくなり(一部早送りしつつも)結局全話見てしまう。まあ、前半の××××ネタはほとんどSFだしな。大映ドラマのシナリオを月9の枠でやってるようなミスマッチ感がたまりません。ありえない偶然が連発される3話〜8話あたりがとくにお薦め。




【12月27日(土)】


 西葛西の焼肉屋・大将で忘年会。近所の独身者たちにも声をかけたので、SF系のみならず翻訳系、ミステリ系に作家、編集者が入り乱れるよくわからない顔ぶれに。初対面の人が多かったわりにはほどよく盛り上がり、焼肉屋で四時間。

 食事のあとは十人ばかり大森宅に集まり、『仮面ライダー555ハイパーバトルビデオ』、『爆竜戦隊アバレンジャー オール爆竜お笑いバトル』、『闘うベストテン』その他を鑑賞しつつ、福井健太が近所のコンビニで買ってきたズブロッカを空ける会。酔っ払ったM村嬢は画面上の香山二三郎にいちいち突っ込んでは笑い転げ、森岡浩之はさいとうよしこが通販で購入した2ちゃんねるカルタのネタに逐一詳細な解説を加えてゆく。というか、「とり札から読み札を当てる芸」に挑戦し、
「『か』。『か』ねえ。あ、そうか、『鍵の音』でしょう。『かぎのおと おやがわたしや もうだめぽ』」
「正解!」
「なんでわかるんですかっ」
「だって有名でしょう」
「もしかしてこれが『だめぽ』の語源?」
「そうですよ。あれ? 知らないの? だれでも知ってますよ。これはですね、今から2年ぐらい前にWinMXの一斉検挙があったとき、福岡に住む22歳のサラリーマン、やすだゆういちくんが実況スレに残した言葉なんです。部屋から外を見ると、警察のクルマらしいのがとまってる。あ、玄関のドアが開いた。やばい。自分の部屋に鍵かけて閉じこもってたんだけど、どうも親が警察に鍵を渡したらしい。もうだめだ……と。最初は『だめぽ』っていうのがなんの意味かわからなくて議論になったんだけど、これはおそらく『もうダメっぽい』と書こうとして力つきたんじゃないかと……」
 へぇボタンを叩きまくるギャラリーに向かって、
 森岡浩之は一言。「常識でしょう」
 最後は2ちゃんねるかるたの読み札を仔細に健闘し、「よかった。わたしが知らないネタもある」とつぶやく森岡浩之。
『星界の戦旗』の続きがなかなか出ない理由の一端がここに。

 2ちゃんねる情報にまったく通じていないM村嬢は、定規とカッターナイフとマットを駆使し、酔っ払ったまま、黙々と2ちゃんねるかるたの箱をつくり、さらに台紙を切断して、かるたを作成。
「こういうのやりはじめると止まらないんですよ。あ、曲がっちゃいました。すいません。今年最後の仕事がこれかあ……」

 やがて柳下毅一郎が到着し、福井健太、林哲矢、堺三保の三人が駅前の雀荘へ麻雀に。残りの連中もやがてカラオケに去り、大森はこんこんと眠る古山裕樹を子守りに残して麻雀に参戦。
「やっぱり全自動卓じゃないとちょっと。手積みだとどうしても牌を覚えちゃうんですよ」などと事前にさんざん吹きまくっていた福井健太は、闘牌の最中もビッグマウスが炸裂。柳下がシャンポンで待っていた緑発に振り込んで(ちなみに上家の飯田比呂はこの牌をずっと止めていた)、
「ちっ。こんなので当たるのは相性の問題ですよ。ふつう通るでしょう」
 と言い放ち、以後は「相性」が流行語となるなど、福井節全開で、最初のうちはたいへんうるさかったんですが、局が進むに連れて静かになり、
「何点ですか? 倍満直撃でオッケーか。よし」などと気合いを入れるのも虚しい展開に。大森がいない間も柳下毅一郎がいじり倒していたらしく、現場を見たかったような見たくなかったような。
 最終戦績は、入って一回目の半荘でツキまくり+70を超えるトップをとった大森がその貯金を維持して、柳下毅一郎を僅差で押さえ首位ゴール。福井健太はあえなく最下位に沈没し、「WMCもたいしたことないな」とか言われる羽目に。ま、リターンマッチの申し込みはいつでも受けましょう。新年会は馬場で麻雀大会か。

 しかし若い(といってもそう若くない)SFおたくの人は、外部の人とのコミュニケーションスキルをもう少し向上させたほうがいいんじゃないかと思った。
「あしたもアンサンブルの集まりがあるんですよ」と前置き抜きで聞かされたM村嬢は、楽器の演奏とかやる人なのかとずっと思っていたらしい(笑)。
 いきなりアンサンブルとか言ってもわかるわけないだろ。と大森が突っ込むと、
「あ、ええとアンサンブルっていうのは京都の細井さんが中心になって……」と説明をはじめてさらに墓穴を掘ったり。誰とは言いませんが、ぜる嬢は反省するように。ま、人を紹介するのに、「マガジンでスキャナーとかやってる……」とか発言する林哲矢も似たようなレベルか。もっともM村嬢は《SF者の癖》を担当したため、「ほんとにSFマガジンのことを『マガジン』って言うんですね!」と思いきり感動してました。




【12月29日(月)】


 12:46ののぞみで京都。いろは旅館に荷物を置いてトキオと鴨川ベリを歩き、夕方からは宴会場で鍋を囲んで恒例のSF忘年会。すでに平均年齢が五十歳を超えるテーブルもちらほら。子供の年齢は2歳〜20歳(推定)。
 鍋のうどんを一口食っただけで爆睡したトキオは11時過ぎにむっくり起き出し、ウルトラ怪獣の対戦格闘ゲーと『太鼓の達人』を食い入るように凝視。それっきり全然寝なくて往生しました。
 夜中はなぜかゴジラ話とか、戦隊物とか、「踊る大捜査線2」「ラストサムライ」は是か非か話。なんか最近、アバレンジャーのネタ(太秦映画村ロケ編とか小津安二郎パロディ回とか)をやたら何度も説明してる気がするなあ。あ、でも昨日放送の、総集編を夢オチ(マトリックス・ネタ?)でやる話もヤツデンワニの使い方が秀逸でしたね。




【12月30日(火)】


 10時チェックアウト。ぞろぞろ歩いて京極三条のリプトンでお茶飲んでから、佐脇家4人、菊池家3人、大森家3人の10人で、三条京阪の地上駅だった場所にできたレストラン街のお粥屋で昼食。たいそうゆったりした庭付きで、子供を遊ばせるには最適。食事を終えた親たちがだらだらしゃべってる外でぐるぐる走りまわる子供たち。今年の京都は異様にあたたかく、なかなかいい歳末でした。
 あとは佐脇家のクルマで伊丹空港まで送ってもらい、展望デッキで飛行機を眺め、となりのカフェでお茶を飲み、夕方のANKで高知。実家でしゃぶしゃぶ食べて爆睡。




【12月31日(水)】

 10時起床。
 宮尾登美子さんから送られてきたという大量のホタテ貝の一部を刺身でいただいてから、鏡川べりをぶらぶら。またしてもすっかり風景が変わり、鷺、鴉、燕、雀、鴨が乱舞する状況。なんでも秋口は大量の鮎が川面を黒く埋めつくし、それを目当てに大量の鷺が集まり、それを目当てに大量のカメラマンが集まり、たいへんな騒ぎだったらしい。トキオはひたすら石を拾っては川に投げる行為に熱中。

 トキオが昼寝しないので午後からタクシーで帯屋町。広末涼子妊娠・入籍に関する地元情報を収集したり。「東京で働きゆう娘さんに子供ができて、それで急いで籍を入れたがやと」みたいなご近所噂話がワイドショウネタに直結してるのがおかしい。というか、実際に報道陣が帯屋町筋の商店をけっこう取材してまわったらしいが、おいしいネタはだれもしゃべらなかったのだとか。

 帰宅して、金沢・金茶寮から取り寄せたという二段重おせちを旧年中から早々とつまみつつ紅白。

 というわけで、いよいよ十年目に突入する日本最長寿blog(?)、狂乱西葛西日記を今後ともよろしく。




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