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シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社1900円)発売中→bk1 | amazon


【11月11日(火)】


 《SIGHT》の年末ベスト対談with北上次郎。
 編集部の選ぶ3冊が石田衣良『4teen』、桐田夏生『グロテスク』、YOSHI『deep love アユの物語』。
 北上次郎の選ぶ5冊は、
リチャード・ノース・パタースン『サイレント・ゲーム』(新潮社)
森絵都『永遠の出口』(集英社)
ローラ・ヒレンブランド『シービスケット』(ソニーマガジンズ)
乙一『ZOO』(集英社)
横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文藝春秋)
 大森の選んだ5冊は、
グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫SF)
古川日出男『サウンドトラック』(集英社)
秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』全4巻(電撃文庫)
小川洋子『博士の愛した数式』
冲方丁『マルドゥック・スクランブル』
(綿矢りさ『蹴りたい背中』)

 北上次郎がいまごろ『マルドゥック・スクランブル』読んで絶賛してると聞いて、当初予定していた『蹴りたい背中』と差し替え。
 今回はじめて読んで仰天したのは『deep love アユの物語』ですね。いやあ、読んでる途中でむかつきのあまりゴミ箱に投げ捨てたくなった本はひさしぶり。小説としては古今東西の本の中でダントツのワースト。世間は広いというか下には下があるというか。最近流行している頭の悪い恋愛小説群でも圧倒的に最低。HIVの前に尖圭コンジロームかクラミジアにかかってしまえ。
 小川洋子『博士の愛した数式』は、竹本健治『フォア・フォーズの素数』、高橋源一郎「素数」(『君が代は千代に八千代に』所収)に続く素数小説。数学的な美しさを情緒的な感動に結びつける技術は(まあ当然のことながら)グレッグ・イーガンよりうまい。江夏の使い方は完璧なので、古いタイガースファンにもお薦めしたい。国産の数学小説オールタイムベストを書き替える傑作。



【11月14日(金)】


 ミステリチャンネル『闘うベストテン2003』の収録。海外編では杉江松恋とタッグを組み、デイヴィッド・イーリイ『ヨットクラブ』の1位獲得に成功。一点突破戦略を採用したため、『海を失った男』をベストテン圏外に落としたことが悔やまれるが、まあスタージョンはどう見てもSF短篇集なので仕方がない。2003年最大の驚き本たる『ヨットクラブ』を正しく一位にすることのできるベストテンはこの『闘うベストテン』だけなのである。ま、対抗馬の『ボストン沈黙の街』を強力に推す人がいなかったというのが最大の勝因ですが。

 国内編も順当に『サウンドトラック』が1位に輝き、『マルドゥック』も入ったし、文句なしの結果。すばらしい。ぱちぱちぱち。

 このベストのためにこの二週間で集中的に読んだ海外ミステリの中では、デイヴィッド・グレン・ゴールド『奇術師カーターの華麗なるフィナーレ(上下)』(早川書房)、アラン・ディーン・フォスター『密林・生存の掟』(扶桑社ミステリー)、ドナルド・E・ウェストレイク『鉤』(文春文庫)、マイケル・ギルバート『捕虜収容所の死』とサラ・ウォーターズ『半身』(ともに創元推理文庫)あたりがお薦め。こんなことでもなきゃ絶対読まない二見文庫のP・T・デューターマン『闇の狩人を撃て』も意外と面白い。『文学刑事サーズデイネクスト』は細部の詰めが甘すぎる(作者の態度があんまり真面目じゃない)のでそんなに買いません。冗談が冗談のままになってて、自分のネタをもっとちゃんと考えろよという感じ。自分で笑いながら芸をやってるお笑い芸人、みたいな。

 トヨザキ社長は『カルカッタ染色体』を強く推してたけど、大森・豊崎組以外はだれも読んでなかったためあえなく落選。ミステリ談話室で強力に支持されているチャック・パラニューク『インヴィジブル・モンスターズ』は未読。『サバイバー』も積ん読状態で、こっちは買ってさえいないのだった。ほかのひとが推してる本を読むだけで手いっぱいだったとはいえ、いかんなあ。



【11月15日(水)〜20日(木)】



 本の雑誌《文庫王国》の2003年文庫SFベストテンを選出。これまたあんまり悩む余地がない感じ。再刊は5と9のみ。ブリン『星海の楽園』は、まあアメリカSF長編の代表ってことで。バクスターの《ジーリー・クロニクル》2冊が次点かな。

1 テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)
2 グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫SF)
3 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』全3巻(ハヤカワ文庫JA)
4 秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』(電撃文庫)
5 イタロ・カルヴィーノ『マルコ・ポーロの見えない都市』
6 アンドレアス・エシュバッハ『イエスのビデオ』上下(ハヤカワ文庫NV)
7 デイヴィッド・ブリン『知性化の嵐3 星海の楽園』(ハヤカワ文庫SF)
8 クライヴ・バーカー『冷たい心の谷』(ヴィレッジ・ブックス)
9 藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』(ソノラマ文庫)
10 小川一水『第六大陸』1・2(ハヤカワ文庫JA)

 しかしいま気がついたんだけど(すでに原稿はとっくに書き終わり、掲載誌も出ている)、今年文庫化されたコニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』を入れるのをすっかり忘れていた。灯台もと暗し。カルヴィーノとか入れてる場合じゃなかったよ。  さらにSFマガジンのベスト。

【海外】
1 シオドア・スタージョン『海を失った男』(晶文社)
2 グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫SF)
3 テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)
4 デイヴィッド・イーリイ『ヨットクラブ』(晶文社)
5 アンドレアス・エシュバッハ『イエスのビデオ』上下(ハヤカワ文庫NV)

【国内】
1 古川日出男『サウンドトラック』(集英社)
2 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』(ハヤカワ文庫JA)
3 秋山瑞人『イリヤの夏、UFOの空』(電撃文庫)
4 山尾悠子『ラピスラズリ』(国書刊行会)
5 機本伸司『神様のパズル』(角川春樹事務所)

 同じようなタイトルばかり並んで申し訳ない。

 最後まで迷ってこのベストに入れなかったのが山本弘『神は沈黙せず』。いちいち納得するんだけどなあ。むしろ一般読者向けタイトルでは。ってことでかわりに《週刊新潮》書評欄で紹介。



【11月21日(金)】


 ミステリチャンネル『ブックナビ』の収録。
 終了後は神保町の新世界飯店で上海蟹の夕べ。たいへんおいしゅうございました。しかしどうも他人が食ってるカニのほうがうまそうに見えるのはなぜ。あとは夜中まで業界話。



【11月22日(土)〜30日(日)】


 本のベストテンラッシュがだいたい一段落したので、あとは未見映画の消化に東奔西走。三軒茶屋シネマで『永遠のマリア・カラス』と『トゥー・ウィーク・ノーティス』の二本立てとか。二十年前とまったく変わってなくて感動しました。中劇もまだそのまま残ってるのか。三茶おそるべし。あとは早稲田松竹で『北京ヴァイオリン』とか、日比谷シャンテで『トーク・トゥ・ハー』とか。感動作とか言われてるらしい『トーク・トゥ・ハー』は壮絶な異常心理サスペンス。あまりのことに茫然。こんなに怖ろしくも厭な映画がなぜ胸を打つラブストーリーとか言われますか。いや、傑作なんだけどさ。
『ラストサムライ』はなぜ評判がいいのか謎。渡辺謙はすばらしいが、インディアンの話を西南戦争でやるのはどう考えても無理。タイムスリップ・ファンタジーにすればよかったのに。




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