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【7月23日(水)】


 ワーナー試写室で『ハルク』。アン・リーと言えば、'80年代アメリカ家族映画の『アイス・ストーム』でトビー・マクガイアに無理やり「ファンタスティック・フォー」読ませてた人なので、マーヴルコミック映画撮るのは歴史の必然かも。ほとんど怪獣映画(というか大魔神というか)ですが、けっこう好き。いちばん凄いのはパンツだな。

 つづいてシャンテシネのPFFで『ロボコン』。『がんばれ!!ロボコン』じゃなくて全国高専ロボットコンテストのほうなのでイントネーションに注意。長澤まさみがメンバーに入ってるロボコンチームって、ある意味おたく男子の夢かも。試合場面はほとんどNHKロボコンの中継録画そのまま(ドラマ的盛り上げに欠ける点まで含めて)なので、ロボコンファンには楽しい。終了後の質疑応答で思わずロボコンの話ばっかり監督に訊いてしまいました(出場ロボットはどうやって選んだのかとか)。なぜロボットなのかという質問に、古厩監督が瀬名秀明『あしたのロボット』(推定)を引いて答えていたのが印象的。
 しかし古厩監督はソニーマガジンズのS木編集長に似てると思った。



【7月29日(火)】


 九段下の角川春樹事務所で小松左京賞予選会。今回はどれが来るのかさっぱりわからない。うーん。



【7月31日(木)】


 小説すばるの書評は青山光二『吾妹子哀し』(新潮社)。川端賞受賞スピーチがあんまり面白かったんで読んだんですが、いや、すばらしい。90歳とは思えない若々しさ。いきなり60年前の回想に入ってヴィクトリア朝青春小説みたいなノリのドタバタ恋愛劇がえんえん続くところに惚れる。作中における時間のコントロールについては相当意識的にやってて、ギャグの入れ方も含めてじじい版の奥泉光みたい。痴呆症の老妻を介護する私小説なんか読みたくねえよと思ってる人も是非。
 週刊新潮は夏休み特集で今年上半期の本からベスト5を選ぶ。その『吾妹子』を含め、スタージョン『海を失った男』、イーガン『しあわせの理由』、歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』、ジュリアン・シモンズ『ブラッディ・マーダー』を選択。
 シモンズも後半の追加部分は、人生幸朗のぼやき漫才というか、偏屈じじいの罵倒大会になるんだけど、そこが爆笑。いや、前半はふつうに勉強になるけど。



【8月1日(金)】


 映画の日なので妙典マイカルで『踊る大捜査線2』。捜査本部設営のため弁当屋を面接するところと、自動販売機に入ってるカップラーメン類の無駄な作り込みは笑ったけど、あとはどうしようもないひどさ。この脚本に何故OKが出たのか謎。レインボウ・ブリッジ封鎖する意味がないし、封鎖してないし、検問もしてない。前作は、メインの事件はともかく領収書盗難事件がすばらしかったんですが、今度の小事件はふたつともダメ。あと、あまりにもひどすぎるのが真矢みきの扱い。全国の真矢みきファンは暴動を起こすべきじゃないですか。女性キャリアに対する無自覚な悪意もすさまじい。妙に社会派的なネタ(監視カメラによる警察の監視とか、リストラ問題とか)入れて、なんの決着もつけてなかったりするのもちょっと。



【8月4日(月)】


 夏恒例の江東区花火大会を中州で見物したあと、大将で焼肉宴会。本の雑誌M村嬢は道に迷って30分ぐらい葛西橋近辺を走りまわったらしい。花火の音が鳴ってるほうに歩けばたどりつくはずなのに。今回はご近所在住の特に名を伏す作家の人とかも参加。急激なダイエットで急激に偽者化しつつある堺は体力不足が深刻化しているらしく、途中でダウンして中抜け。いろんな人から真顔で説教されてましたが、おたくのダイエットは行くところまで行くもんでしょ。



【8月7日(木)】


 小松左京事務所に呼ばれて、恒例の選評披露会。といっても、今回、小松御大はこれから読むってことなので、下馬評を事前取材しておきたかっただけらしい。はたして第四回はどれが受賞するのか。
(8月29日に受賞作発表。上田早夕里『火星ダーク・バラード』に決定しました。火星を舞台にした刑事物+超能力アクションみたいな娯楽SFで、過去の受賞作とはかなり趣きが違います。キャラクター小説的な側面もあるから、『神様のパズル』の流れだと言えなくもないけど)。



【8月8日(金)】


 渋谷セルリアン・タワーでアスキーえんため賞。中村うさぎ女王に拝謁し、ネット上における最近のすばらしいご活躍ぶりを絶賛させていただく栄誉に浴する。2ちゃんねる某スレで女王の発言を見たときは腰を抜かすほど驚いたもんなあ。凄すぎる。



【8月9日(土)〜12日(火)】


 今年で第50回となる《よさこい祭り》を見物するため、子連れで高知へ。母親が追手筋の観覧席チケットを買ってくれてたので、生まれて初めて有料席で見たんだけど、これは楽だわ。ていうか、帯屋町筋の混雑度が殺人的なので、そっちで見るのはあまりにたいへん。子連れだと大橋通から一歩も進めない感じなので、松浦屋の向かいの2階にある喫茶店《恋話館》に上がってしばらく上から眺めてました。トキオは初めてのよさこいに大興奮して一歩も動かず、よちょれよちょれと大はしゃぎ。そんなに好きなら来年は帯屋町踊り子隊ちびっこチームに混ぜてもらって踊ってこい。ちなみに今年も広末涼子はよさこいに戻ってきて、帯屋町チームで踊ってました。それならオレも踊りたい。

 ところで、よさこい鳴子踊りは、後発だけあって規則がゆるやかで、ルールは三つしかない。「よさこい節の一節を使う」「踊り子が鳴子を持つ」「前に進む」。あとはなにをやってもOK(あ、最近はもうひとつ、「1チームの人数は150人以内」という規則も追加されたらしい)。
 1970年ごろから生バンドが導入され、ロックアレンジが流行。じょじょによさこい節から離れて、'80年代はディスコ系とかの音楽をバックに踊るのがはやってたんだけど、最近はクラブ系もストリート系も一段落して「和風」が主流。よさこいなのにキモノ着て踊ってるよ!みたいな。当日2時間だけの練習で誰でもすぐ踊れる「市民踊り子隊」も健在ですが、気合い入れてるところはだいたい衣裳も鳴子も自作。生バンドを乗せて先導する地方車をデコトラ並みに装飾するのも当たり前で、ひとり2万円とかの参加料をとるところも多いんだけど、それでも1チームあたり数百万の持ち出しになるとか。高知放送(日本テレビ系列)は前夜祭からの三日間で合計10時間ぐらい生中継するし、考えてみるとめちゃくちゃな祭りかも。
 二日目の夜はチケットが余ってたんで西澤さんを誘って見物。雨が降ってきても動かない子供を連れ出すのに苦労しました。



【8月13日(水)】


 SIGHT書評対談@渋谷ロッキンオン本社。北上次郎推薦の荒山徹『十兵衛両断』(新潮社)とローラ・ヒレンブランド『シービスケット』(ソニーマガジンズ)はどっちもかなりお薦め。前者は山田風太郎のネタで司馬遼太郎が書いたような伝奇時代小説短編連作。ネタの密度が非常に濃く、語り口もすばらしい。『魔岩伝説』より上でしょう。後者はアメリカ競馬史に残る伝説の名馬をめぐるノンフィクション。
 大森推薦はシオドア・スタージョン『海を失った男』(晶文社)、青山光二『吾妹子哀し』(新潮社)、沢村凛『瞳の中の大河』(新潮社)。『瞳の中の大河』(→amazon | bk1)に目黒さんが予想通りハマってくれたのでしめしめ。北上次郎的には、『十二国記』→『七王国』→『大河』というグラデーション(異世界設定で、順にファンタジー要素が薄くなる)らしい。なるほどねえ。しかしタイトルとカバーについては担当編集者の猛省を促したいと思った。佐藤賢一の本みたいに造ったほうがよかったんじゃないかなあ。
 北上さんには、さらに小山歩『戒』と酒見賢一『陋巷に在り』を推薦。



【8月14日(木)】


 角川文庫に入る伊島りすと『ジュリエット』の解説原稿。



【8月15日(金)】


 夏コミ合わせで京大SF研宴会@赤坂。東京方面在住のOBも多数。京フェス企画打ち合わせとか。冲方丁を呼ぼう!とか、若島さんでスタージョン企画を!とか、その場でどんどん話が進む。
 若島さんは京大英文学会と日程が重なってたんですが、午前中ならOKってことで、11:00からのスタージョン企画が決まった模様。小川一水×野尻抱介対談(大野万紀司会も決定済みだし、今年はわりと派手になりそうかも。
 日程は2003年11月8日(土)〜9日(日)。例年通り、本会は芝蘭会館、合宿はさわや本店。



【8月16日(土)】


 2時半ごろ起きて、まあコミケを1時間ぐらい見るかと3時前にタクシー呼んだら有明が大渋滞。いつもは15分の道のりに1時間近くかかり、着いたら終わってました(笑)。しょうがないので企業ブースを1時間ぶらぶらして、U17になってからの活躍が目覚ましい桃井はるこライブを見物。もっとはやくアニソン歌手になってればよかった気が。よくわからないケロロTシャツとか山田章博Tシャツとか買って、小浜夫妻とまたしても加賀屋で夕食。高田馬場例会経由で帰宅。



【8月18日(日)】


 えんえんやってたコニー・ウィリス To Say Nothing of the Dogの第一次入力作業が終了。といってもこれから果てしない改稿作業が待っていると思うと気が遠い。テニスンとか引用しまくるキャラがいるし、作中で言及される黄金期の本格ミステリ作品のネタバレ問題をどう処理するかも検討しなきゃ。あとナポレオン戦争とか第二次大戦とかの戦史関係と、ヴィクトリア朝関係。
 今月中にはとっても終わらないよなあ、11月刊行って大丈夫かなあと思っていたところ、早川書房の人手不足で刊行スケジュールが延び、来春(2月か3月ごろ)になることが判明し、めでたしめでたし。9月いっぱいぐらいかけて直すことにしたい。



【8月20日(水)】


 渋谷のパルコ出版でトヨザキ社長ほかと謎の打ち合わせ。そ、そんなスケジュールでほんとに大丈夫ですか。いや、『犬』も延びたし、オレはいいけどさ。



【8月21日(木)】


 青山ブックセンター本店のカルチャーサロン青山で9月15日に開かれるトークショウ、「本のことは書評家に訊け!」に出ます(北上次郎、吉田伸子と大森の鼎談)。先着120名、入場料500円で、本日から電話予約受付開始。オススメ本フェアをやるので10冊選んでほしい(なるべく単行本)と言われたので、この3年ぐらいに出た、刷り部数1万部以下(推定)のハードカバーに限定して選んだのが以下の10冊。《仰天小説(または超異常小説)10選》ってことにしました。このうち何冊か読んで気に入ったという人は、趣味が似ている可能性が高いので、この機会に他のやつもどうぞ。

シオドア・スタージョン『海を失った男』晶文社
小川勝己『眩暈を愛して夢を見よ』新潮社
池上永一『レキオス』文藝春秋
M・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』ソニー・マガジンズ
R・A・ラファティ『地球礁』河出書房新社
ニール・スティーヴンスン『ダイヤモンド・エイジ』早川書房
津原泰水『ペニス』双葉社
浅暮三文『似非エルサレム記』集英社
アミタヴ・ゴーシュ『カルカッタ染色体』DHC
マイケル・マーシャル・スミス『オンリー・フォワード』ソニー・マガジンズ



【8月23日(土)】


 ゲラで古川日出男『サウンドトラック』(→amazon | bk1)を読了。最初のほうは小説すばるで読んでたんだけど、後半がこんな話になってるとは。五年先の神楽坂描写に茫然。むかし岩郷重力が住んでたあたり(赤城神社の裏のほう)はたいへんなことになってます。東京創元社の近所はアラブ人街で通称「レバノン」だし。ちょうど『神楽坂ホン書き旅館』を読んでるとこだったので、あまりの落差に眩暈が……。でも五十番も紀の善もちゃんと営業続けてるのが凄い。さすが老舗。ただし西荻は純日本人だけのいやな町になってるから、そのへんに住んでる人はむっとするかも。近未来SFとしてのオリジナリティは抜群に高く、『ダイヤモンド・エイジ』とか『ヴァーチャル・ライト』が好きな人には絶対のお薦め。傑作。しかし、まさかあそこでいしいひさいちネタに振るとはなあ。古川日出男畏るべし。



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