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【7月19日(土)〜21日(月)】


 週末はSF大会。えーと、とちぎSFファン合宿T-Con2003、だっけか。

 那須塩原に16:00頃到着の東北新幹線にダッシュで飛び乗り、すいててよかったと腰を落ち着けたところ、通路を隔てた二人掛けの席に座って文庫本を読んでた成年(20歳未満らしい)がじっとこちらを見て、
「あの……もしかして大森さんですか?」
「え? あ、はい」
 まあSF大会列車だからなあ――と思ってると、青年は読んでいた本をこちらに差し出し、「すみませんが、サインを」
 見たらその本は『ドゥームズデイ・ブック』なんでした。いくらSF大会列車とはいっても天文学的な確率では。
 ではいったい何人のSFファンが同乗しているのか――と車両を端から端まで歩いてみたが、なんか一般人ばっかりじゃん。疑態してるだけ? それともSF大会参加者を見分ける能力が今のオレにはすで失われているのか? 結局、発見できた知り合いは喜多哲士夫妻とひかわ玲子さんぐらいでした。もっとたくさん乗ってると思ったのに。
 しかし那須塩原で降りて大会シャトルバスを待ってると知った顔がぞろぞろ。風野夫妻とか森岡浩之とか野田昌宏とか。失われたのはSFファンを見分ける能力じゃなくて、人の顔を認識する能力だったのか。
 大会参加受付はシャトルバスの列に並んでいるうちに終了し、プログラムブックもその場でもらえました。これは便利。那須塩原は雨模様で、肌寒いぐらいの涼しさ。こんなに涼しい大会はひさしぶりかも。

 ホテルニュー塩原には17:00到着。部屋番号を告げると仲居さんが荷物を持って案内してくれて、あとから鍵を持ってきてくれる親切ぶり。ニュー塩原なんて(伊東のはとや同様)一生泊まらないだろうと思ってたんだけど(少人数の旅行で選ぶホテルじゃないので)、来てみるとけっこういいね。古い部分は古いけど(やたら暗いロビーとか)。

 ただし、立食パーティの食事は質的にいかがなものか。いまどき1万円も出せば一泊二食付きの温泉旅館でそれなりに豪勢な食事ができるわけで(ただしニュー塩原はもっと高いらしい)、いくら(時刊新聞によれば)質より量を選択したとしても、大会参加者の高年齢化と2泊で4万とかの参加料金を考えるとちょっとなあ。どうせなら、マグロ解体より塩原名物スープ焼そばの仕出しとかのほうがよかった気が。まあ、東京でホテルの立食パーティに出る機会がやたら多いから、こういう形式だと要求水準が高くなるだけで、SF大会の食事だと思えばこんなもんかもしれませんが。

 オープニングアニメはDAICON IIIを思わせる懐しい仕上がり。まあ、どんな内容でも上映されればそれなりに盛り上がるんだから、ちゃんと間に合って上映されたことを評価したい。よね(だれにともなく)。
 宴会場は立食にもかかわらず相当な人口密度。定員いっぱい(1200人)来てたらどうするつもりだったんだろう……。
 ホテルに着く直前から寝始めたトキオ社長はパーティの終わり頃から合流。それと入れ替わりで20:00からの「電脳ゲーム版『星界の戦旗』の部屋」の雇われ司会業。後半は、赤井さんによるGAINAX新企画プロモーションの場と化してましたが、発売前のゲームの細かい話よりは観客ニーズに応えていたかも。しかし客がどんな話を聞きたいのかどうもよくわからない――という困惑は今回わりとつきまとっていた気がする。濃い星界マニアって感じの人も少なそうだったしなあ。

 終了後は、SFファングループ連合会議と螢雪次朗×浅暮三文トークを掛け持ち見物。事前情報によると連合会議は大荒れになることも予想されたので、これは見物しなければと議決権を持って覗きにいったんだけど、けっきょく平和的解決。事務局長がすんなり交替しただけに終わる。作戦ミスだったのか、方針転換だったのか、大人の判断だったのか謎。しかし事務局長にわざわざ立候補するとは奇特な……。
 ゲストの星雲賞投票は禁止にしたらどうかって提案(というか意見)も出て、全体の空気は「そんなかたいこと言わなくても」って感じだったけど、オレは投票権要らない派。ぜんぜん投票してないし。って、気がつくとたいてい締切過ぎてるだけなんだけど、ファン投票の結果を、それでメシ喰ってる人の投票が左右するっていうのはいくらか違和感がある。まあ、(ノミネート作や票数の不自然さはともかく)受賞作的にはいつもだいたい順当なところに落ち着いているわけだし、家族揃って自作に投票するゲストっていうのも微笑ましいんだけどさ。

 裏でやってた螢×浅暮話はものすごく狭くてディープな世界に突入してて、ピンク時代と新宿ミュージック時代のエピソードはめちゃくちゃ面白かった。螢さんがいま撮ってる中野貴雄脚本のピンク映画が、話だけ聞いてるとたいへん賢そうなSFネタなんですが、いったいどんな映画になるのか……。タイトルもよくわからないけど、なんか主演はイメクラとAVをかけもちしてる女優で、脳の入れ替えだか人格交替だかするらしい。柳下毅一郎はチェックしてオレに教えるように。

 連合会議が三時間ぐらいあったので(参加してたのは一時間ぐらいだけど)ぐったりしつつ宴会部屋でだらだら。寝たのは6時ごろかな。

 二日めは10時ごろ起床。すでに朝食をとる時間もなく、11:30から「ネット書店繁盛記」。朝からbk1の話を聞きにくる客なんていないだろうと思ったら意外とたくさん入ってました。福原くんが用意してきたネタに適当にツッコミを入れつつ進み、あとは質疑応答とか。実務的な話が多かったんだけど、非常に具体的な分、それなりに面白かったんじゃないでしょうか。
 きのうの夜食にラーメン食おうと思ってたのに食いそびれたし、朝食にもありつけなかったので、よし昼飯はラーメンだ。と思って西館の食事処に入る。しかし、先に来ていた小浜徹也・三村美衣夫妻が注文したラーメン×2はいつまで待っても届かず、オレが注文したやつが先に来ることに。三村美衣は企画の時間が迫ってるからこれ先にもらうねと、オレのラーメンをスープ一滴残さず食いつくしたあげく、彼らの注文は通っていなかったことが判明。せめて一口ぐらい残しておいてくれればなあ。食い物のうらみは怖ろしい。と呟いて悄然と店を出る。

 ラウンジで妻子と合流、のんびりしているところへ、さいとう父母とさいとう弟夫婦が到着。二日目夜の子守り担当として参加申し込みしてあったさいとう母をクルマで送るついでに遊びに来たらしいが、客室に入ってしまうとすでに温泉家族旅行状態。
 さいとう父・弟・トキオを連れて露天風呂へ向かう途中、エレベーターで浅暮さんといっしょになり、さいとう父と浅暮三文が釣り会話でなごんでたりするのを横で見てるともうなんだかわかりません。
 というわけで西館の露天風呂ですが、すぐ前を川が流れてて、風呂から階段数段で河原に降りられる構造。裸のまま河原に降りようとするトキオにあわててパンツをはかせ、パンツ一丁でそれに付き添う父親。まあ、そのへんにいるのは鮎釣りのおっちゃんだけだからいいか。と思って顔を上げると、すぐ前の橋に観光客らしきおばちゃんたちが5人ぐらい並んでこっち方向を指さしたりしつつ景色を眺めているんでした。パンツ履いててよかった。

 風呂から上がって着替えてぶらぶらしてるとSFセンター試験。だからおれは共通一次世代なんだよ! いまのSFを支えてるのは共通一次世代で、SFをダメにしたのはセンター試験世代。だいたいなにがセンターだよ。だいたい20分で100問も解けるかっ。と負け犬は遠吠えしつつ57点で敗退。
 となりは「オレは試験なんか嫌いだから」といいつつ問題用紙だけもらって眺めている高千穂遥。黙ってればいいのに、いちいちアニメ系の問題にツッコミを入れつつ「そう言えばこのときは」と思い出話をはじめるのでうるさくてしょうがない。「あ、これは簡単。わたしでもわかる。でも教えないよ。試験のルールは遵守しなきゃ」とか。
 『惑星ビザンの危機』の問題ぐらいは教えてくれてもいいのに、「キミがマルした答えに合わせて書き直してやるよ。わっはっは」とか、いちいち癪にさわるおやじだな。

 しかし大森よりさらに出来が悪かったのが三村美衣。油断してたらぜんぜん時間が足りなかったらしく、夫の人にも敗北したあげく、栃木県の県庁所在地は栃木市だと思っていたという事実が判明。
「県と同じ名前の市があるのに県庁所在地じゃないなんてまちがってる!」「オーストラリアだって首都がシドニーだと思わせておいてキャンベラなのに!」などと怒り狂ってました。
 わたしは配偶者が地元民だけあって、ちゃんと「しもつかれ」も正答。というか、「ロックンロール県庁所在地」を聴いたとき、知らない単語が出てきたのに仰天して、「ねえ、しもつかれってなに?」と妻に訊ねたんでした。なんなのかと聞かれてももう忘れたので説明できませんが。

 夜は宴会場で星雲賞バンケット。星雲賞と食事を一体化させるアイデアは優秀だと思うけど、ずっと立食なのは年寄りにつらすぎ。さいとう母とトキオはかぶりつきでコスプレを鑑賞してました。

 21:30〜23:00は『「異世界の構築」その自由と制約』。荻野目悠樹、浅暮三文、めるへんめーかーで司会が大森という謎の布陣。途中から客席にいた森岡浩之も引きずり出し、異世界設定の方法論をしゃべってもらう。
 荻野目悠樹は(うちの子よりちょっと年下の)2歳の子連れ。ちょうど昼寝から起きたばかりでたいそうおむずかりのご様子の息子を抱いてあやしつつマイクに向かって整然と持論を述べるという難度の高い芸を披露してました。その間、お母さんはやおいパネルに出演。いや、やおい企画に子供を抱いて出るよりは、パパがこっちに抱いて出たほうが正解でしょう。なんとなく。

 01:30〜3:00は『海外SF事情』。林哲矢・山岸真・嶋田洋一・大森望というメンツで誰が司会なのかもよくわからない。時刻のせいかメンツのせいか内容のせいか、この企画がいちばん客の入りが悪かったですね。なんの話をしてもあまり反応がないのでやっぱりよくわからない。

 企画終了後、5時ごろまで宴会部屋その他でだらだらしたあと、さあ寝るかと西館7階に引き揚げると、エレベーターホールのソファを中心に雑談の輪が。
 一個だけまだ入ってなかった東館の内風呂に行ってもどってきてもまだ続いてて、部屋にもどろうと上がってきた人が次々に合流する事態に。徳間の編集者とか塩澤編集長とか萩原gonzapとか森岡浩之とか三村美衣とか小林泰三とか野尻抱介とか。早起きして風呂に出てきた今年の星雲賞作家・秋山瑞人までひっかかり、結局朝食時間までエレベーターホールでSF話。まあしかし、考えてみるとここにいた時間がいちばんSF大会らしかったかもなあ。
 秋山瑞人はなんか見かけるたびに古橋秀之とロビーでお茶飲んでて、「いやあ、今回は電撃系の人が少なくて知り合いがいないんですよ」とか言ってたからちょうどよかったんじゃないでしょうか。

 そのままぞろぞろと朝食に行って、夕食と比較するとたいへん豪華でよくできたメニューの正しい観光ホテル朝食をいただき、部屋にもどる。はっと気がつくと9時半。

 エンディング――じゃなくてクロージングと言わないと柴野さんに注意されるらしい。ワールドコン日本開催があるかもしれないんだから、大会企画も「通じる英語で」ってこと?――はちょっと覗いただけでロビーに溜まり、さいとう弟が運転する迎えのクルマを待つ。
 宇都宮で昼食のあと、さいとう実家へ向かう妻子と別れて新幹線で帰郷。15時間爆睡。
 二泊三日だった分、最近になく疲労が溜まったけど、なかなかいい大会だったんじゃないでしょうか。
 スタッフ及び参加者の皆様お疲れさまでした。



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