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【6月18日(水)】


 漫画一気読みが一段落したので、漫画喫茶に置いてある週刊誌をぱらぱら。いくつかわかったことは――

・おやじ系週刊誌における川奈まり子人気はあいかわらず凄い。
・週刊大衆で猿楽一がずっとやってるポルノレビューは、あんな書きとばしの癖にやっぱり妙に面白い。
・長瀬愛がとうとう引退するらしい。
・成田アキラはえらい。
・斎藤孝『質問力』より百倍タメになる『インタビュー術!』を書いた永江朗がアサ芸のベストセラー書評欄でその『質問力』を書評(そんな仕事をなぜ?)
・小倉優子はちょっといいかも。

 しかしいちばん笑ったのは週プレの4ページ特集、『男なら「オタク」のように生きてみろ!』。「アキバ系ボーイズはこんなにイケてるぜ!」って……。
 20年のオタク史を総括し、1991年の湾岸戦争でオタクの復権、1992年の『ツインピークス』ブームでオタクが台頭、95年のエヴァで加速、いまは「繁栄」の時代らしい。ふうん。
 それにしてもあの週刊プレイポーイがねえ。君子豹変っていうか、隔世の感。どうせならまず過去の認識のあやまりをただしたうえで、宅八郎のコメントをとってほしかった。

 コンフェデレーションズ・カップ開幕。日本×ニュージーランド。ニュージーランド弱すぎ。1対1の技術では日本選手がほとんど負けてない。というか日本が強くなったのか? それでも中田英寿が2点めを決めるまで妙に重苦しい展開になってしまうあたりが課題。高原はよっぽど調子悪いのか?
 こっち側のグループは非常に楽なので、フランスが下馬評どおり3勝してくれるなら、あとはコロンビアに引き分けでも大丈夫かも――と思ってたところ、フランスが弱い。3−0ぐらいで勝ってくれるんじゃなかったの? 試合の流れは逆にコロンビア優勢で、神様が公平なら悪くても引き分けでしょう。ホームだからあのPKはとるとしても、後半のフランスは防戦一方。ピレス入れても流れは変わらず前途多難。というか、今日の調子がそのまま再現されれば、日本が勝つ可能性さえある。意外と若い選手が出てきてないのかフランス。でもセンターバックの子はわりとよかった。日本でも人気出そうな感じ。
 まあしかし、これで万一フランス×コロンビアが引き分けだったりしたらたいへんなことになっていたので、あんな情けない勝ち方でも勝ってくれてよかった。

『犬』は順調に進行中。ようやく半分を消化。



【6月19日(木)】


 チャーリー・カウフマン脚本、ジョージ・クルーニー監督の『コンフェッション』@GAGA試写室。つまんなくはないけどまあふつう。CIAの殺し屋でした、とかいう話は映画でやっても当たり前すぎて面白くない。そんなのいいからもっとゴングショー見せろ、みたいな。なぜか米倉涼子が来てて、すぐ前の席にすわってました。

 つづいて石井聰亙監督『DEAD END RUN』。走る男の話が20分×3本。永瀬正敏編は退屈。浅野忠信編がまだいちばん面白いかな。10分に縮めて《刑事まつり》に出せば――って違うか。

 本格ミステリマスターズの新刊、西澤保彦『神のロジック人間(ひと)のマジック』(→bk1)は、最近の西澤作品の中では珍しくストレートな本格。しかし、このネタでひっぱるのはつらい。というかあまりにタイミング悪すぎ。編集者がもっと配慮すべきだと思いますがどうですか。
 西澤保彦と言えば、小説新潮発表時に話題騒然だった怪獣本格ミステリ連作も単行本化。『笑う怪獣 ミステリ劇場』(→bk1)。単発ならいいんだけど、連作にするにはかなり無理があったような。というか、特撮おたく的な方法論はまったく採用してないので、非常に不思議な感触。怪獣・怪人を出すならふつうこうでしょう――という部分はことごとくはずされる。怪獣ミステリなのにおたく小説じゃないっていうか。小林泰三『ΑΩ』とは好対照。

 帯に「これぞブロックバスター」とか書いてある池井戸潤『BT'63』(→bk1)は、親子ネタのタイムトラベル・ファンタジー。自分が生まれる前の父親の体に意識だけが乗り移るパターンで、時間物としては北上次郎系? できれば主人公視点のみで書いてほしい話だが、なぜか三人称多視点になるところがかろうじてブロックバスター的。SF的には「現在から息子が介入することによって過去は変わるのか?」がキモになるはずなんだけど……。いろんな要素を入れすぎて中途半端になった感じ。父親と息子の関係だけに絞って、ジャック・フィニイ系のノスタルジー路線または『流星ワゴン』系の泣かせ路線をめざしたほうがよかったのでは。

 丸谷才一『輝く日の宮』(朝日新聞社)をやっと読む。西崎憲『世界の果ての庭』を単純化して下世話にしたような話。源氏物語って、書かれてたころは視聴率30%超のテレビの連ドラ(あるいは連載中から人気爆発のレディコミ)みたいなもんだったんだよね――ってところから出発するので、ラブストーリー部分が連ドラ的ご都合主義で出来上がってるのは必然か。デイヴィッド・ロッジ『交換教授』や金井美恵子『文章教室』を彷彿とさせるコミックノベルな部分はけっこう笑える(とくに4章のパネルディスカッション)。
7つの章を7つの文体で――とかいう趣向は、どうせみんな正字旧仮名だからぜんぶ「丸谷才一」にしか見えません。文体変えるなら仮名遣いから変えてほしい。
 源氏物語の失われた一帖を探す国文ミステリとしても読めるので、ミステリ読者にもお薦め。



【6月20日(金)】


 ホテル・オークラで新潮三賞授賞パーティ。三島賞受賞の舞城王太郎は宣言通り欠席し、新潮社A木がメッセージを代読。いちばん面白かったのは川端賞の選考経過を発表した小川国夫(1927年生まれ)。芸風がどんどん磨かれて、すでに神様の領域。(山本賞の選考委員代表でスピーチした)花村萬月をダシに使って会場の緊張を極度に高めてからすとんと落とすなんてワザが使えるのはこの人ぐらいでしょう。それにしても川端賞の選考って、4時間×2回もやるのか。恐るべし。
 それを受けての青山光二(1913年生まれ)の受賞スピーチもすばらしかった。こういう年寄りになりたいものである。

 一次会終了後、銀座の二次会場に向かうタクシーを数寄屋橋で降りて、『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌〈レクイエム〉』完成披露試写@丸の内東映。スタッフ&キャスト向けの初号試写とマスコミ試写を兼ねているので関係者多数。前田亜季・前田愛姉妹とか藤原竜也とか忍成修吾とかがそのへんをうろうろしている豪華な雰囲気。忍成修吾なんか、「出演者はどこの列に並ぶんですか?」とか聞いてるし。前田姉妹はマネージャーもだれもつかず、オレの目の前を通って、ふたりだけで帰っていきましたが、そういうもんなんでしょうか。
 映画のほうは、話があまりにもでたらめ。だいたいテロリスト集団がどうして孤島に立てこもるのよ。前作の原作がいかによく考えられていたかを再認識させてくれるこのでたらめな設定をどう小説にまとめたか、杉江松恋の書くノベライズの仕上がりが注目されるところではある(太田出版より6月末刊行予定。オープンしたばかりの杉江サイトにある「バトル・ロワイアルUについて」によると、そのへんはけっこう気を遣ってる模様)。
 もっとも映画的には、なぜ孤島に立てこもったか、その理由は明らか。BR2に選ばれた中学生集団がゴムボートでノルマンジー上陸作戦を敢行、『プライベート・ライアン』をやるのが最初の見せ場なんですね。前半は、前作ファン向けのサービスとしてバトロワふたたび、後半は子供対大人の戦争という趣向。しかも、AK-47が賛美される米帝粉砕映画になってるのが凄まじい。
 いや、「ナショナリストはかっこいい」っていう右翼映画より、「革命はかっこいい」っていうテロリスト映画のほうが個人的にはまだしっくり来ますが、でもリーダーが藤原竜也ではなあ。
 忍成修吾は悪くないけど、女優陣は前作の柴咲コウに匹敵するインパクトがない。芝居や演出よりキャラ設定の問題か。すばらしかったのは竹内力。もう最高です。
 全体としては、深作健太監督は大健闘してるものの前作には及ばずってところ。前作に及ばないのがこの企画の宿命だと思えばじゅうぶん及第点か。穴だらけの脚本だって、穴を埋めちゃうと話が成立しないもんな。

 午前0時、銀座ファゼンダに移動して京極組の山本周五郎賞受賞祝い3次会。京極さんの替え歌新作、「恐怖の町」SARSバージョンとか、持ち歌の「酒と泪と坊主と按摩」とかを拝聴。宮部さんとのカラオケもわりとひさしぶり。

 午前3時前に引き揚げて西葛西。ロイヤルホストで週刊新潮の原稿をぶっ書き、仕上がらないまま帰宅して、4時からコンフェデレーションズ・カップ、対フランスBチーム戦。ニュージーランドには楽勝だから日本戦は最悪落としてもいいよね、まあでも日本相手ならこのチームでも負けないでしょ――みたいな相手が出てきたんだから、最低でも引き分けてほしかった。こっちもBチームで闘ったんならともかく(1戦め勝ってるのに)明日なきスタメン布陣でやってるんだからさ。しかしゴヴーにはぜったいやられそうな気がしたよ。セネガルのディウフみたいなタイプですね。悪ガキ系。
 ジーコが監督になって以降ではいちばんいい試合だったとは思いますが、こんなやつらに負けるとめちゃくちゃ悔しい。後半は、一戦めのコロンビアと同様、フランスの術中にハマり、圧倒的に押しても点がとれない。向こうは余裕のアンリ顔見せ興行ですか。ちぇ。



【6月21日(土)】


 朝方、週刊新潮の書評を送ってから夕方まで睡眠。のそのそ起き出して高田馬場ルノワールに行き、SF例会。食事に行くところで別れて、赤坂ですぺらの浅暮三文推理作家協会賞受賞お祝い会。「浅暮三文は協会賞のパーティでどんな受賞者スピーチをすべきか」が主な話題。
 あとは牛込櫻会館管理人の櫻井氏がつくった会社アイサシステムの話とか。ネットショップのDeepMacもあるので、Macな人は覗いてみてください。店主エッセイコーナーに高原英理『無垢の力』出版記念パーティのレポートが載ってたりするあたりがなんとも。今日撮影された写真もここに載るんでしょうか。DVD/HDDレコーダーも売ってて、RD-XS40は 89,800円。どうせ買うならぜひここで。

 スタージョン『海を失った男』の予約はまずまず快調な滑り出しらしい。予約分に関しては確実に手配できる(刊行後だと24時間以内出荷がキープできなくなることもありうる)ってことなので、どうせ買うつもりの人はお早めに。bk1の予約ページには宣伝コメントを書きました。でもこれ、内容紹介が上にあるほうがいいと思うんですけど。


 コンフェデレーションズ・カップ、カメルーン×トルコブラジル×アメリカ。パルマでは絶対的なストライカーのアドリアーノも、セレソンに入ると並の下ぐらいにしか見えない。ディフェンスのボールをひっかけて1点決めたからいいようなものの、まだまだ定着は難しそう。このメンバーだと目立つのはロナウジーニョばかりだもんなあ。新しいサイドバックも機能せず、若手主体のアメリカ相手にこんなに苦戦してるようでは先が思いやられる。カメルーンはずいぶん守備がよくなってる感じ。トルコはW杯チームよりかなり小粒。エムレもイルハンもハサンもいなくてバシトゥルクだけじゃあねえ。
 結局ここもグループAと同じような展開で、トルコとブラジルがグループリーグ通過を賭けて闘うことに。日本の仇をフランスで討てるかトルコ。



【6月22日(日)】


 コンフェデレーションズ・カップ、一次リーグA組最終戦、日本×コロンビア。どうせ点とられるなら、後半40分とかより早めのほうがいいと思いながら見てたら微妙な時間帯に失点。それはいいとして、とられたあとがひどすぎる。選手交替するたびにゴールが遠くなる感じ。最初からいちばん攻撃的なメンバーで組んでるので、どうしても点をとりにいくってときに切るカードがない(いや、ほんとは松井のところで俊輔だけど)。
 やっぱり勝ちに行ったフランス戦で勝てなかったのが祟ったのか。この試合は服部先発で、リードされた場合にアレックス投入でよかったんじゃ。
 アレックスはプレミアリーグ移籍がかかってるので(あと2試合やらないと移籍資格ができない)、先制されてからはひとりだけ目の色が変わってましたが、やはりスピードが……。

 アミタヴ・ゴーシュのアーサー・C・クラーク賞受賞作『カルカッタ染色体』(伊藤真訳/DHC)→bk1を読了。『フリッカー、あるいは映画の魔』なんかの系列に属するメインストリーム寄りの歴史伝奇SF。『ダイヤモンド・エイジ』meets『マルコヴィッチの穴』――みたいな奇天烈な話だが、1995年の本なので、意外とチャーリー・カウフマンはこれをネタにしたのかもしれない。マラリアの感染経路を解明して1902年のノーベル医学賞に輝いたロナルド・ロスの謎をめぐる話がめちゃくちゃ面白い。ハマダラ蚊が××を媒介するというアイデアも秀逸。しかし、比喩的な意味だとしても、これを「染色体」と言っちゃうのはなあ。もっとも、SF部分は意図的に曖昧にしてあるので、致命的な傷にはなってない。
 途中、独立したゴーストストーリーとして読める章があり、これがものすごくよくできてるのでホラーおたくの人も必読。その一方、近未来パートはいかにも弱いが、1995年の作品だからいたしかたないか。いくつかのマイナス点を勘案しても、今年の海外SF長編ではいまんとここれがベストワン。★★★★1/2ぐらいでしょうか。「アメリカ以外の英語圏SFに優れたものが多い」というこの十年の潮流を裏付ける作品なので、くれぐれもお見逃しなく。


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