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【お知らせ】
コニー・ウィリス『航路』、全国書店で発売中(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円)
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『航路』ネタバレ感想・議論用掲示板を設置しました。あんなことやこんなことを心おきなく語りたい人はどうぞ。




【1月1日(水)】


 うちの両親と一緒に高知天満宮へ初詣。
 元日営業の喫茶店に寄ってから、帯屋町をぶらぶら歩いてると、これから初詣に出かけるゑり忠一家と遭遇。帰ってくるのを待って岡本家にお邪魔して早めの夕食をごちそうになる。トキオは岡本家の長男に遊んでもらって上機嫌。



【1月2日(木)】


 トキオが昼から爆睡に突入したので、ひとり外出。高知東映で樋口真嗣――じゃなくてヒグチしんじ監督の『ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険!』と澤井信一郎監督『仔犬ダンの物語』のハロプロ系2本立てを鑑賞(監督的には、「お盆と正月がいっしょに来たような素晴らしい組み合わせ」――と添野知生談)。観客は主に女子小学生とその保護者たちなので、怪しまれない態度を心がけました。小学生と目を合わせないようにするとか。むしろこっちを子連れで観るべきだったのか。
 『お菓子』のほうは、最初と最後が実写で(背景は一部CGI)、活劇部分がSDキャラの3DCGアニメ。お菓子のモンスターが襲ってくる場面とか、怪獣映画的な見所も用意されてます。ラストは矢口のミニモニ。卒業をいちはやく先取り。しかしこれ、正確には、「ミニモニ。と高橋愛+4KIDSじゃムービー」ですね。ゲストが中澤裕子。高橋愛はなんとかなりそうな気配。個人的には、矢口のいないミニモニ。はすでにミニモニ。じゃないんだけど。絵コンテのクレジットが「ヒゲモニ。」になってたのは笑った。ミュージカル部分はえらく音が悪かった気がするが、これは劇場の問題?
 『仔犬ダン』はハロプロキッズ主演作。女子小学生萌えの人向け――じゃなくて女子小学生向けか。我孫子武丸が怒り狂いそうな設定ですが(ペットがかわいかったら集団生活のルール破ってもええんか。かわいそうなイグアナやったらどうすんねん! 責任者出てこい! みたいな)、実話が下敷きらしいから仕方ない。主演の子は、最初のうちどうなるかと思ったけど、けっこういい感じ。でもほかのメンバーはさすがにちょっと……。

 あとからやってきた妻子と電車通りで合流して、高知東宝で『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス』『ゴジラ×メカゴジラ』の二本立て。
『ハム太郎』を出崎統が監督してるのは、やっぱり『ガンバの冒険』で培ったネズミ演出力のせい? しかし今回の見所はむしろサバクーニャ(猫)か。前作につづきミニハムズもゲスト出演、ほとんど『お菓子な大冒険!』の予告編みたいなオマケ映像までついててちょっとびっくり(あとで聞いた話だと、ミニモニ。は東映と東宝の舞台挨拶をはしごしたらしい)。
『ゴジラ×メカゴジラ』は、原爆を落とされた国が自衛のために核武装するのは当然の権利であると主張する映画――という要約は乱暴ですが、前作に続いてぷちなしょな傾向。我が国最高の科学者を集めて新兵器をつくるって話だから、パーネルが書きそうなネタですね。
 ゴジラ×メカゴジラの戦いに決着がつくなり(映画は終わってないのに)席を立つ親子連れが多くて、まるでサッカーの試合みたいだと思った。といいつつ、うちも子連れだったので、エンドクレジット後のオマケ場面は見損ねてたり。
 ふつうのコンピュータは2進法なので0と1しかないが、DNAコンピュータは4種類の塩基を使うので処理スピードが速い――とグラフで実演する場面がポイントか。
『修羅雪姫』からそのまま横滑りしたような釈由美子の芝居は意外にもこの映画にぴたりとハマる。まさか釈由美子がこういうポジションの女優になるとはねえ。

 映画のあとは新阪急ホテルのル・シエルでさいとうよしこバースデー食事会。うちの弟は年末に引っ越しだったらしく、今回は帰省せず。
 ちなみに「うらごえ往復書簡」で本人が公表してるので書きますが、英保未紀はいよいよ独身生活に終止符を打つ模様。お相手はマンガ家の石原理さん。うちの夫婦および両親とは11月9日の「メインイベント」で対面済み。披露宴はやらない方針みたいですが、めでたしめでたし。これで英保家・齊藤家ともに兄弟関係は全員かたづいたことに。



【1月3日(金)】


 雨なので大橋通のアーケード前にタクシーで乗りつけ、ひろめ市場をぶらついてから帯屋町のアーケードを流し、おびさんロードのブティックでchikiriyaのトレーナーを2枚購入。最近ここでしか服を買ってない気が。

 19:50発のJAL最終便で羽田帰還。小浜家新年会を添野家でやってる(?)というので、妻子と別れてタクシーで高輪方面へ。でじこの人生ゲーム(笑)とかやってから、朝までうだうだ。タクシーがまったく見当たらないので始発で帰宅。



【1月4日(土)】


 2時ごろ起き出し、夕方の《なすの》で宇都宮。さいとう弟(新婚)に迎えにきてもらってさいとう実家へ。さいとう妹の子供三人とうちの子で大騒ぎ。新婚夫婦用に増設された新居部分(年末に完成したばかり)に泊まる。



【1月5日(日)】


 夕方の《なすの》で東京帰還。これでお正月遠征も無事終了。ぼちぼち仕事しなきゃいかんのだが……。



【1月6日(月)〜8日(水)】


 第三回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した牧村泉『邪光』(幻冬舎・1月刊行予定)の《星星峡》用書評を書き。《本の雑誌》新刊ガイド原稿に着手……するも調子が出ない。まだ正月ボケか。古ペーパーバックの短編集だのアンソロジーだのをひっくりかえし、コニー・ウィリスとかシオドア・スタージョンとかの未読短篇をぼちぼち読んでリハビリ。

 デイヴィッド・トゥーヒー監督『ビロウ』試写@映画美学校。『終戦のローレライ』を読んだ勢いで第二次大戦中の潜水艦映画を見に来たわけですが、妙に(製作総指揮・共同脚本の)ダーレン・アロノフスキー風のカットが多くて笑える。ゴーストストーリー的なネタはすぐにバレちゃうので後半はややまだるっこしいものの、前半は悪くない。屋内シーンと潜水艦シーンに限定すれば、『ローレライ』もこのぐらいの予算で映画化できるのか?
 ところでこの映画の試写状は潜水艦型(の厚紙)で30センチぐらいの長さがあり、みんなこんなの試写室に持ってくるのかと思ってましたが、入口の机にはそれが山積み。なんか子供が遊んでるみたいな……。
 しかし年明けに届いたBend It Like Beccham(『ベッカムに恋して』)の試写状はおなじパターンでサッカーシューズ型なのだった。流行?



【1月9日(木)】


 六本木のTATOU TOKYO第一回「このミステリーがすごい!」大賞授賞パーティ。出版系のパーティとは思えない会場だなあと思いつつ、中に入って仰天。宝島社の女性社員が全員着物姿で受付に! 石倉局長は留め袖ですが、まさか21世紀になってA野嬢の振り袖姿を見ることになろうとは。今日のパーティはこれだけでOKだね。

 と思ってたら、石倉局長の主催者挨拶は、別冊宝島『ミステリーの友』から語り起こし一水会から飯田橋「深夜プラスワン」にまで言及するという(「池林房の2次会」仕様の)爆裂した内容。客層とまったく無関係なところがすばらしい。共同主催の三菱商事およびNECの代表者の挨拶とは思いきり雰囲気が違ってましたが、まあこのミスらしいとは言えるのか。
 ちなみにこのパーティ、ADKの仕切りだったらしく、ステージ上の立ち位置指示までついたぶあつい台本が用意され、さらに貸衣装の着物代まで含めると相当の予算がかかったんじゃないですかね。まあ賞金総額1400万円の賞なんだからそれにふさわしいとはいえ、だったら審査員の謝礼はもうちょっと世間並みの相場に近づけても罰は当たらないと思った。せめて貸衣装代5人分ぐらいとか(笑)。
 この手の授賞式の場合、ふつうだと審査員および受賞者は客と対面するかたちで椅子にすわってるんですが、このミス大賞は呼ばれてから壇上に上がる方式。審査員代表の挨拶は茶木則雄。選評というより賞のアピールに近いスピーチだったけど、まあ茶木さんの子供みたいな賞ですから。

 二次会はとくに名を伏す(理由は後述)某レストラン。店内はガラガラで、われわれだけが二箇所に分かれたせまいスペースに押し込められる格好(この事実がのちに重要な伏線となるとは知る由もなかった)。
 定員20人とかだったので、参加者は選考担当者と受賞者およびその関係者と宝島社社員がほとんど。古山裕樹が福井健太にビール瓶を投げつけることもなくなごやかな歓談がつづき、気が大きくなったらしい茶木さんが、千街晶之と福井健太の和解工作に乗り出すひと幕も。「歴史的な和解が成立した」とか茶木さんは威張ってましたが、あとで話を聞くと、千街晶之いわく、
「たしかに私は福井健太と顔を合わせても話とかはしませんけど、ふたりのあいだではすでに暗黙のコンセンサスができているんです」
 仲は悪いが心は通じ合っているらしい。まあ、二次会でふたりの間にすわっていた古山裕樹は、「両側にいるふたりの反応とか笑うタイミングとかがまったくいっしょなんですよ。シンクロナイズド・スイミングみたいな」と証言していたので、たしかに水面下では意志の疎通がある模様。

男子トイレの謎

 だが、その後まもなく、この和気藹々たる会に暗雲を呼ぶ事件が起きた。支配人らしき人物がつかつかと歩み寄り、幹事の石倉局長を呼び寄せると、何事か耳打ちする。局長の顔がたちまち強張り、深刻な表情で話を聞いている。

「どうしたんですか?」沈痛な面持ちで席にもどってきた局長に私はそうたずねた。
「いや、その……男子トイレの壁が壊れてるけど、だれか心当たりはないか、って」
 さっそく現場となったトイレに私が急行すると、小便器横に立てられた目隠し用の木製衝立が斜めに傾いている。壁に固定されていた部分をだれかが破壊したらしい。
「支配人が二十分前にトイレを点検したときはなんともなくて、そのあとべつの店員がトイレに立ったら、もう壊れてたらしいのよ。その二十分のあいだ、店にいた客はわたしたちのグループだけなんだって……」

 われわれのグループ各人のアリバイ確認作業がすみやかに開始された。真っ先に疑われたのは、当然のことながら杉江松恋。過去に数々の店で酔っ払った挙げ句の乱暴狼藉を働いてきた前科がある。しかし、いちばん怪しい男が犯人とは限らない。たしかに、問題の衝立は、杉江が小便しながら「邪魔だ!」と左手でぶん殴った場合、ちょうど壊れそうな位置にあるが、犯行が可能だからといって犯人と断定するのは早計だろう。むしろ、体格的にいちばん疑わしい西上心太が竹内祐一とともにいちはやく店を出て、姿を消しているのが怪しいとも考えられる。いやもしかしたら記述者が犯人かも。この店(とくに名を伏す)の男子トイレを破壊した犯人はいったいだれなのか?

 ……という行き詰まる推理劇が展開されれば、「このミス」大賞の夜にふさわしい趣向になったわけですが、この事件の全貌は、本格ミステリというより、むしろ戸梶圭太的な激安犯罪だった。
 ほんの15分ほど前、大森は、トイレから帰ってきた杉江松恋が高らかにこう叫ぶのをたしかに聞いていたのである。
「いまさっき男子トイレの壁をぶっ壊してきました! がははは!」
 その杉江松恋が、石倉局長に問い詰められても、最後までしらを切り通したことは言うまでもない。
以上は最近の事件をもとにした創作です。

 ところでこの二次会の隠れたメインゲストは、『四日間の奇蹟』サイン会@ときわ書房本店で旋風を巻き起こした浅倉卓弥氏のフィアンセ(吉野仁「孤低のつぶやき」既報)。わたしも吉野さん同様、実物を拝見し損ねていたので、あまり期待しないようにいい聞かせていたんですが、たしかに茶木さんが大興奮していたのも無理はない美貌。しかもそれと裏腹の爆裂キャラ振りがすばらしく、激安犯罪にかまけてじっくりとお話できなかったことが悔やまれることである。

 さらに三次会では、深夜1時半を回ったあたりで、「だれかテレビタロウ編集部の直通電話番号を知りませんか」事件が発生し、真夜中だというのにあちこち電話をかけるハメになり、そのあたりの皆様には多大なご迷惑をかけましたが、悪いのはみんな茶木さんなので許してやってください。まあ、経験から言って、あのぐらいじゃ原稿は落ちません。って、全然関係ない話にえんえん付き合わせた式田さん、東山さんには失礼しました。もっともA野嬢のギャンブル話には東山さんが多大なる関心を寄せていたので、そのうち作品に反映されるかも。

 肝心のこのミス大賞金賞受賞作、浅倉卓弥『四日間の奇蹟』(宝島社)は、本日発売。(→amazon | bk1)。新聞広告効果か、出足好調の模様。タイトルが暗示するようにミステリというより一種のファンタジーなので、SFファンもお見逃しなく。
選考委員(香山二三郎・茶木則雄・吉野仁・大森)の選評。
●返金保証付きサイン会にもパーティにも来ていたタニグチリウイチの書評

 なお、優秀賞の式田ティエン『沈むさかな』は3月、大賞銀賞および読者賞の東山彰良『逃亡作法 タード・オン・ザ・ラン』は4月、宝島社より刊行予定。

 受賞作が売れないと賞の存続(と選考手当の増額)が危ぶまれるので皆様よろしく。いやほんと、ミステリ系のあんな賞やこんな賞の受賞作よりよっぽど面白いと思います。

 ところでamazonで『四日間の奇蹟』を検索すると、「この本を買った人はこんな本も買っています」に『航路』だけが出てくるのはなぜ。

 オンライン書店といえば、最近の当サイト経由のベストセラーは、bk1で買えるメアリー・H・ブラッドリー(宮坂宏美訳)『ジャングルの国のアリス』。12月だけで10冊以上を販売。まあ、ふつうの書店ではなかなか見かけないし、amazonではあいかわらず買えないみたいだから当然か。これが売れると続篇の邦訳も実現するかも。
 あと、マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の(→amazon | bk1)も意外と売れてますが、グレッグ・ベア『ダーウィンの使者』文庫版(ソニー・マガジンズ《ヴィレッジブックス》)(→amazon | bk1)もお忘れなく。上下で買えば送料無料。


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