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【6月27日(木)】


 すっかり忘れてましたが今日は推理作家協会賞授賞パーティ@第一ホテル東京。
 サッカー観戦のために三島賞・山本賞のパーティも本格ミステリ大賞のパーティも欠席したのでひさしぶりの宴会。
 長編部門は山田正紀『ミステリ・オペラ』と古川日出男『アラビアの夜の種族』、短編部門は法月綸太郎「都市伝説パズル」と光原百合「十八の夏」がそれぞれ受賞。

 山田さんは受賞者スピーチでいきなりオレの名前を引き合いに出し、「サッカー評論家の大森望さんに薦められて『アラビアの夜の種族』を読んだんですが――」うんぬんと発言。
「ギャグのつもりだったのに全然ウケなかったなあ」とか、あとで山田さんは言ってましたが、言われた当人は、「作家・評論家」っていったいなんのことだろうとぼんやり思ってて、柳下毅一郎に「やーい、サッカー評論家」と揶揄されるまで気がつかなかったというお粗末。本人がわかんないだからウケるわけないでしょう、山田さん。

 対照的に(笑)ウケまくっていたのは、四百字詰め原稿用紙四枚の受賞記念短篇を書いてきて朗読した古川日出男。千匹のおたまじゃくしのうち、森の王が選出するカエル大賞に輝いた一匹だけがカエルになれるというネタの傑作。すばらしい。
 その古川さんとは今日が初対面だったんですが、大森が小説すばるに書いた『アビシニアン』の短い書評の話を真っ先にしてくれてちょっとうれしかったり。『アビシニアン』みたいな(ある種ミニマルな)話を書いたから『アラビアの夜の種族』が書けたんですという話には納得。文庫化された『13』は傑作ですが、『アビシニアン』も非常にいい小説なので未読の方は是非。

 日下三蔵ほか2人から、SFマガジン8月号の近況欄について、あれはどういうことですかと質問される。すっかり忘れてましたが、準決勝前日に発売されたSFマガジンの近況に、大森は、
『蹴球W杯で日本各地を転戦中。まさか埼玉で日本×ブラジルの準決勝を見ることになろうとは。世の中なにがあるかわかりません。』と書いてたんでした。
「どういうことですかって? その通りの意味ですよ。まさか日本×ブラジルの準決勝になるとはねえ。長生きはするもんだね。え? トルコ×ブラジル? なにそれ? きみんとこのテレビではそういうカードの準決勝やってたの? ふうん。テレビ買い換えたら?」みたいな。
 そうか、宮城以降はずっと妄想日記にすればよかったな、とちょっと思ったがすでに手遅れか。
 この日記を参考にしてW杯を見てますなどというとんでもない人もいましたが、危険なのですぐやめたほうが。あ、いいのか、「サッカー評論家」の日記だから(笑)。田中啓文によると、新宿を歩いてたらホームレスのおっちゃんふたりが、「決勝はどうかなあ」「ドイツは速攻のチームやからなあ」とか話し合っていたそうで、日本も一億総サッカー評論家という正しい道を歩んでいるらしい。

 二次会は四箇所で分散開催。とりあえず古川さんのところへ行く。協会理事・選考委員のお歴々に囲まれて、やや居心地が悪そうな受賞者。古川さんは知り合いをひとりも呼ばなかったんだそうで、こういうパーティそのものも初参加とか。
 同じテーブルではW杯の感想を求められた馳星周が滔々と持論をぶつ。いや、原稿に書いてることと同じなんでまったく裏表はありません。作者の胸の中を斟酌するような書評にオレはあまり興味がないので、敗戦の原因をトルシエの個人的な感情に求めるタイプの説にもほとんど関心が持てないんですが。稲本の交代の是非は戦術面から語るべきことで、指揮官の心の動きを憶測したって意味ないと思うんだけど。

 法月さんの二次会、山田さんの二次会を回ってから、最後は数寄屋橋ビッグエコー。3部屋に分かれて40人ぐらい残ってたのかな。最後は10人ぐらいで7丁目の椿屋に流れ、午前3時半帰宅。タクシーの運転手氏は30日の決勝を観戦するお客さんの送迎で、千葉から横浜まで往復するらしい。新横浜プリンスのパーティつきプレステージ・チケットとか。常連の客から、「チケットが余ったら運転手さんを招待するから、スーツ着てきてよ」といわれてるんだそうです。ふうん。
 しかしW杯期間中も外国人サポーターを乗せたことは一度もなかったらしい。みんな倹約家なのか?



【6月28日(金)】



 書評用のゲラ読みとメンズ・エキストラの映画原稿。Passageもちょっと再開してみるが予想通りまったく調子が出ません。社会復帰できるのか?
 4年前の日記読むとW杯期間中も鬼のように仕事してるのに。って今回は自国開催だからしょうがないよ。



【6月29日(土)】



 妻の妹が子供三人連れてやってきて大騒ぎなので、書庫のほうに避難して韓国×トルコの三位決定戦をTV観戦。はじまったと思ったら、ホンミョンボ兄さんのボールコントロール・ミスからいきなり韓国失点。開始11秒はW杯史上最速とか。初先発のイルハンは気合い充分。ハカンもやっと点がとれて気が楽になったらしく、その後も動きがいい。このコンビでがんがん攻める。
 もっともトルコは、中二日しかない過密スケジュールの上に日本→韓国の移動まで重なり、準決勝にくらべるとかなりの疲労モード。地上波の中継では韓国選手の疲れにばかり言及してましたが、韓国のほうが休みは一日多いのでは。
 というわけで、ブラジル戦のようなワンタッチパスが影をひそめたトルコは、前三人だけの攻撃。中盤の華麗なパス回しがあんまり見られなかったのは残念ですが、後半一方的に攻められたのは(日本戦と同様)予定の行動か。ただし、攻撃が枠内シュートにほとんど結びつかなかった日本と違って、韓国の怒濤の攻めは枠に飛びまくる。リュシュトゥは鬼神の働きでそれをセーブ。途中、足を痛めて、「交替させてくれ」のサインを送っていたのに、ベンチはそれを無視。そうするとなんとか立ち直っちゃうんだから恐ろしい。2点差で迎えたロスタイムの一発は大勢に影響なかったしな。
 ハサンもファンソンホンも出なかったし、やや気が抜ける展開でもありましたが、3位決定戦としてはまずまず盛り上がったゲームでしょ。
 しかしスタジアムも含めて、韓国側に思ったほど異様な気合いが感じられなかったのは(最後に一点入れたとはいえ)もう日本なんか眼中にないってこと?



【6月30日(日)】



 決勝戦。もっと渋いゲームを予想してたんですが、意外とドイツが攻めたので、けっこうスリリングな展開。ただしドイツの攻めはシュートまで行かない。やっぱりノイビルだけじゃ苦しいね。バラックがいればねえ。しかしブラジル相手では、むしろファーストラウンドみたいに、ヤンカーとクローゼ並べて機械のような放り込みサッカーをやったほうがよかったんじゃないですか。ブラジルの3バックも高いから通じたかどうかはわかんないけど。
 それにしてもノイビルのFKは凄かった。結局、あれを防いだマルコスの執念勝ち。「ずっと活躍していた立て役者が最後の最後にミスしてそれで負ける」という法則の正しさがまたしても証明されて、カーンのファンブルをロナウドが決めた瞬間に勝負あり。
 リバウドはベルギー戦のあとから別人のように変身して、献身的なチームプレーヤー(リバウドにしては、だけど)になりました。そのリバウドのアシストで、ロナウドが得点王。しかし8点は立派。大会前から評判のスーパースターなストライカーが評判通り得点王に輝くケースは最近じゃすごく珍しいのでは。ま、前回が前回だったからなあ。
 ブラジルはクレベルソン入れるシステムに変えてからうしろが安定。破壊力は多少落ちてもまとまりが出てきた。トーナメント4試合でトータル1失点なんて、グループリーグの調子からはとても想像できなかったもんな。その1失点もルシオの凡ミスから生まれたゴールだし。マルコスも3点か4点止めてますね。スーパーセーブ率ではカーンより上かもしれない(カーンはアメリカ戦をべつにすると、危ない枠内シュートをそんなに打たれてない。打たせないのがえらいとも言えますが)。

 まあしかし、波乱続きの2002W杯も最後は落ち着くところに落ち着いてめでたしめでたし。
 狂乱の一カ月も今日でおしまいなので、書き忘れていた話をいくつか。

 スタジアムではいろんな著名人を目撃したんですが、いちばんよく見かけたのは当然のことながら高円宮夫妻。埼玉の準決勝では、生まれてはじめて皇太子夫妻をナマで目撃。真正面だったので双眼鏡ごしによく見えました。新潟のブラジル×ベルギー戦のときは貴賓席にエリクソンとベッカムとシェリンガム(たぶん)も来てたけど、イングランドのゲームは4試合も見てるからなあ。よく見たと言えば、車椅子席の羽中田昌も間近で二、三度目撃。
 長居のセネガル×トルコ戦のときはすぐ横が記者席で、ジャン・ルカ・富樫洋一とか三浦俊也とか岡ちゃんとかがすわってて、すぐ上のガラス張りボックス席にはピクシー。手を振ると振り替えしてくれて、ピッチの外では意外といい人だと思った(笑)。
 あと、神戸ウィングスタジアムに行く途中には、生け垣かなんかにぐったりすわっている堀井憲一郎も目撃。なにを調査してるんだろうと思ったら、その後の週刊文春によると、「チケット求む」の看板を出してると何人のダフ屋が声をかけてくるかとか、そんな調査だった模様(笑)。

 知り合いにはほとんど会わなかったんですが、掛川駅構内ですれ違ったのは朝日新聞W杯プロジェクトチーム所属のK須氏。思いきりお疲れの御様子。げっそりした顔で足早に去っていきました。
 あと、長居のセネガル×トルコ戦のハーフタイムでは、喫煙コーナーでぼんやり煙草吸ってると声かけられて、だれかと思ったら馳星周。わりと近くの席だったらしい。この日のバックスタンドはどういうわけか出口が一カ所しか開いてなくて、試合が終わったあとはせまい通路に長蛇の列。観客席から出るだけで15分か20分かかり、列に並んでた若者たちは、「ドイツだったら暴動が起きてるよな」とかぶつぶつ言ってたんだけど、翌日のスポニチのコラムで馳星周がその件に関する怒りをぶちまけ、長居スタジアムの運営を思いきり罵っていたのは笑った。この件については柳下毅一郎も怒り狂っていたから、今回のW杯に関して、馳星周と柳下毅一郎のあいだで少なくともひとつは意見の一致を見たわけである。

 ちなみにスタジアムで観戦した中でのベストゲームは、準決勝トルコ×ブラジル、一次ラウンドのイングランド×アルゼンチン、それに準々決勝のイングランド×ブラジルかな。
 TV観戦も含めると、いちばん壮絶だったのが文句なしでセカンドラウンドの韓国×イタリア。韓国×ポルトガルの最後のほうの悲愴感(9人のポルトガルが泣きながら攻めつづける)も凄かったけどね。ふつうの試合(笑)では、開幕戦のフランス×セネガル、鹿島のイタリア×クロアチアあたり。
 ヨーロッパの強豪国は全体にがっかり度が高かったんですが(イングランドもあれでは全然満足できない)、その分、メキシコ、アメリカ、セネガル、トルコあたりが非常にがんばってくれました。ファーストラウンドがこんなに面白かったW杯も(最近では)珍しい。大会前に調子がよかった国ほどグループリーグをなめてかかってて、ちゃんと準備してなかったってことですか。その結果、スウェーデン、デンマーク、ベルギーなんかの二番手国の現実的な戦いが勝利したと。とくにフランスとポルトガルの敗退は自業自得度が高かったが、アルゼンチンはもうちょっと見たかった。

「こんなワールドカップはワールドカップじゃない」とか、「アジアなんかでやるからこんなレベルの低い大会になる」とかいう見方も(とくにヨーロッパ方面には)あるでしょうが、むしろ日本人的には、前にも書いたように、「これが正しいワールドカップだ」という方向で考えたい。「欧州強豪国もしょせん内弁慶じゃん!」みたいな。

 しかし次回はその内弁慶たちがぶんぶんやってるとこへ出かけてって試合するんだからこれはたいへん。事前に三カ月ぐらいかけて欧州遠征かな。その前にアジア予選を抜けられるかどうかも問題ですが。

 韓国について言うと、欧州各国のメディアが叩きまくるのはいいとして、日本はむしろそれを「負け犬の遠吠えだ」と笑って見るべき立場でしょ。それに同調して共同開催国をバッシングするのはどうかと思う。「いっしょにされたくない」っていう気持ちはよくわかるが、どうせ向こうは韓国と日本の区別なんかろくについてないんだから。
 韓国の人も、よその国同士が真剣に試合やってるスタジアムで「テーハーミングッ」コールとかウェーブとかやるのだけはやめたほうがいいと思いましたが、韓国代表にしか興味がない人がほとんどだったからしかたがない。それにくらべると日本は外国同士の対戦でも高視聴率だったりして、多少は成熟したのかも。しかし自国開催だというのに地上波で全試合中継ができなかったことについてはもっと怒るべきじゃないですかね(あと、グループリーグを1位で抜けるか2位で抜けるかとか、、セカンドラウンドの会場は宮城がいいか神戸がいいかとか、そういう議論がほとんどなかったのも新興国の悲しさか)。

 審判問題では、従来、「疑わしきは強豪国の有利に」という風潮だったのが、今回はけっこうでたらめでしたね。そのパターンで恩恵を受けたのはブラジルぐらい?
 日本はファウルがめちゃくちゃ多かった(とくに最初の2試合)わりに警告が少なかったり、PK3つ(楢崎1・戸田2)を見逃してもらえたりして、開催国の恩恵をそこそこは受けたものの、勝敗にかかわる贔屓はあんまりなくて、ホームのメリットを活用し損ねた感じ。チュニジア戦なんか思いきり不利な判定でいいから、トルコ戦でPKとってくれればよかったのに。
 副審の有利な判定が勝ちに直結した韓国は、それだけ強運だったということもできるかも。ふつう、ああうまくはいきません。ま、考えてみればポルトガル戦を順当に引き分けておいて、イタリア戦を(トッティの退場なしで)PK勝ちぐらいしておけば、ああやってスペインに勝って準決勝に進出しても、ここまで悪し様には罵られなかっただろうから、強運の代償は支払ったわけですか。


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