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【11月23日(火)〜26日(月)】


 本の雑誌社『文庫王国』2002年版の原稿。再刊・復刊・書き下ろし・オリジナルすべて含めて、2001年度に出たSFの文庫からベストテンを選ぶってやつ。今回、大森が選んだ10作品は、

1 ダン・シモンズ『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』(酒井昭伸訳/ハヤカワ文庫SF)
2 グレッグ・イーガン『祈りの海』(山岸真訳/ハヤカワ文庫SF)
3 ニール・スティーヴンスン『スノウ・クラッシュ』(日暮雅通訳/ハヤカワ文庫SF)
4 ブルース・スターリング『タクラマカン』(小川隆ほか訳/ハヤカワ文庫SF)
5 中村融・山岸真編《20世紀SF》全6巻(河出文庫)
6 奥泉光『グランドミステリー』(角川文庫)
7 瀬名秀明『Brain Valley』(角川文庫)
8 北野勇作『かめくん』徳間デュアル文庫648円)
9 田中啓文『銀河帝国の弘法も筆の誤り』ハヤカワ文庫JA580円
10 林譲治『暗黒太陽の目覚め』ハルキ文庫

 上下も別にカウントすると、合計で20冊かも。

 年末映画ベストテンに向けて、未見作品消化中。『ファイナル・デスティネーション』『ギター弾きの恋』『どつかれてアンダルシア』『ベティ・サイズモア』『誘拐犯』『テイラー・オブ・パナマ』……とか。『ロスト・ソウルズ』の結末はけっこうびっくり。勇気があるというかなんというか。あのあとどうするんでしょうね。




【11月27日(木)】


 日劇で『スパイ・ゲーム』試写。ブラピとレッドフォードのやつ。細部によくわからないところもあるんだけど、シナリオの構成はよくできてます。デニーロとノートンの『スコア』と好一対か。
 川又千秋氏、青井邦夫氏が来てたんだけど、終わったあと顔を合わせるなり、「冒頭に出てきたあの銃は……」とかガンマニアな会話になるのがおかしい。いいなあ、楽しそうで。




【11月28日(水)】


 ル・テアトル銀座でニコール・キッドマン主演の『アザーズ』試写。端正なゴーストストーリーで、雰囲気は非常にいい。しかしいま公開したのではネタがバレバレ。一応、二段構えにはしてあるんだけど、ちょっとつらいかも。




【11月29日(木)〜12月4日(火)】


 月末なのでどんどん仕事。
 小説すばるの書評。今月は坂東眞砂子『曼荼羅道』……と思ったら吉野仁氏に先を越されてしまい、あわてて読んだ田中啓文『ベルゼブブ』(徳間ノベルス)を読んだらこれが傑作だったのでラッキー。ホラーっていうより伝奇SFでしょう。歌舞伎町の対決はもうちょっと長く書いてほしかったけど。ていうか、田中啓文に2000枚とか3000枚とか好きなだけページを与える奇特な出版社はないのか。

 関係ないけど、吉野さんの日記に、
「某書評家が(例の)書評で「すごい、すごすぎる」との表現を使っていた。これは前に大森望氏が書いていたフレーズではなかったかな」
 とありますが、「すごい、すごい、すごすぎる」(藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』初版オビ用)をべつに大森のオリジナルじゃないと思います。あのときは「身も蓋もないストレートな絶賛」をめざしたんで、じゃあ北上次郎路線で(笑)とか考えた記憶が。まんまのフレーズをだれかが使ってたかどうか確信はないけど、気分的には「ベタなキメゼリフの引用」なので。

 その吉野日記で、若島正『乱視読者の帰還』(みすず書房)が出てることを知って、あわててbk1注文。それにしても3200円ですか。
 さらに吉野日記から、最近あんまり読んでなかった馳星周Sleepless City に飛ぶ。《週刊現代》の『ダーク・ムーン』書評に対する批判。ちゃんとやれよゴルァ!みたいな感じ? この小説、バンクーバーが舞台なんで、小説すばるの書評でやろうかと思ったんだけど、刊行前の馳星周特集号を山から発掘してみたら(←ふだん読んでないのがバレバレ)すでに二本も書評が載ってたんで見送ったんでした。書かなくてよかった。ってそうじゃないか。それにしても馳星周だって元同業者なんだから、現実問題として担当編集者がそんな内容的なチェックまでするケースはめったにないと知ってるはずなのに。

 その《週刊現代》用に、宮部みゆき『ドリームバスター』の書評。
 スターログの「80年代名画座」は今回『バットマン』。よく考えたらこれってSF映画じゃないのでは。ジャックの顔を変えちゃう化学物質の設定がSF? 原稿書くために2000円のDVD買いました。しかしTV画面だと部屋を真っ暗にしてもつらい。やはり劇場で見るべき映画かも。
 さらに《本の雑誌》用の未読消化。その合間を縫って週末は、高槻の病院に入院中の伯父を見舞いに大阪まで往復。思ったより元気そうでよかった。高槻でひさしぶりに会ったうちの弟はJUNE編集部からいきなり異動になり、新創刊のパズル雑誌を担当するらしい。帰りは喫茶店で今年の映画の話。そりゃもう当然『ハッシュ!』とかでしょ(笑)。

 東映本社試写室で角川まんが祭りの『サクラ大戦 活動写真』と『スレイヤーズぷれみあむ』。思うに劇場版『サクラ大戦』は劇場版FFとおなじ問題を抱えてますね。技術的には悪くないのにさっぱり燃えない。なんでこんなダメな映画になっちゃうのか。責任の相当程度はシナリオにあると思う。キャラもつかみ切れてないしなあ。その点、『スレイヤーズ』は安心して見られる。あと、『サクラ大戦』は英語ネイティヴって設定のキャラが出てくるんですが、あえて英語使わせるならもうちょっとなんとかしないと。そこだけネイティヴ吹き替えでもいいんじゃないの。




【12月5日(水)〜12月7日(金)】


 SFマガジンの2001年度マイ・ベストSFに投票。今年はこんな感じ。

【海外SF】
1 グレッグ・イーガン『祈りの海』
2 ブルース・スターリング『タクラマカン』
3 マイケル・マーシャル・スミス『オンリー・フォワード』
4 中村融・山岸真編《20世紀SF》
5 ニール・ゲイマン『ネバーウェア』

【国内SF】
1 奥泉光『鳥類学者のファンタジア』
2 北野勇作『かめくん』
3 野阿梓『ソドムの林檎』
4 田中啓文『銀河帝国の弘法も筆の誤り』
5 林譲治『暗黒太陽の目覚め』

 海外はほとんど迷う余地がなくて、SF性を重視すれば5位に『オルガスマシン』の手もあるかな、という程度。国内は『スカーレット・ウィザード』とか入れてもよかったんだけど……。林譲治はもう少し評価されてもいいんじゃないかと思う。『ソドムの林檎』もあんまり話題になってない気が。短編集だから? そういえば、フレッシュアイだかgoogleだかで検索してたら、オレが書評で姉川孤悲の説明にアンジェリーナ・ジョリー@ララ・クロフトを引き合いに出したことに激しく怒ってる人がいましたね。あんなもんと比べるなあっ、と。まあ気持ちはわかるけど、オレビジョンなので仕方がない。

 今年の日本SF大賞は、北野勇作『かめくん』が受賞。おめでとうございます。小松左京賞を落ちたのが結果的にはさいわいしたわけで、「この賞は新人賞なんだからプロ作家に与えるのはどうか」という小松さんの判断は慧眼だったと言うべきか。

《本の雑誌》の新刊ガイド原稿。★評価はこんな感じ。

町井登志夫『今池電波聖ゴミマリア』(角川春樹事務所)★★★★
神林長平『永久帰還装置』(朝日ソノラマ)★★★1/2
宮部みゆき『ドリームバスター』(徳間書店)★★★
坂東眞砂子『曼荼羅道』(文藝春秋)★★★★
倉阪鬼一郎『BAD』(エニックス)★★
菅浩江『夜陰譚』(光文社)★★★
田中啓文『ベルゼブブ』(トクマノベルズ)★★★★
谷口裕貴『遺産の方舟』★★(徳間デュアル文庫)
三雲岳斗『ワイヤレスハートチャイルド』★★(徳間デュアル文庫)
森岡浩之『月と闇の戦記一 退魔師はがけっぷち。』(角川スニーカー文庫)★★1/2
エリック・ガルシア『さらば愛しき鉤爪』(ヴィレッジブックス)★★★

 単行本で再読した『今池電波聖ゴミマリア』はやっぱり前半が最高。とくにファッションヘルスの待合室でじっと待ってるところとか。その一方、SFネタ(携帯の電磁波がらみのとことか)はかなりつらい。もう一歩でブードゥー・サイエンスかも。あとがきもちょっとどうかと思った。エリック・ガルシアの恐竜ハードボイルドはけっこう笑えます。




【12月8日(土)】


 市川妙典のワーナー・マイカルで『ポワゾン』と『シュレック』先行レイトショウをはしご。『ポワゾン』はトリュフォー版より原作に忠実な『暗闇のワルツ』映画化。しかしあの時代にアンジェリーナ・ジョリーは違和感ありすぎでしょう。なぜか18禁なんだけど、これは中年親父のスケベ心をくすぐるための陰謀としか思えない。ふつうならPG13ぐらいじゃないの。『シュレック』は評判通りの秀作。字幕でfairy tail creatureを「おとぎ話のキャラ」と訳すのはいいとしても、Ogreを「怪物」と訳すのはあんまりだと思う。あと、意訳しすぎて表の意味と裏の意味がごっちゃになってるとこがあったり(シュレックとお姫様のとりちがえ会話のところ)。吹き替え版がどうなってるのかちょっと知りたい。結末は政治的に正しいおとぎ話?




【12月9日(日)】


 黎会の忘年会@六本木。子連れなので一次会はパスしてアマンドから合流。ゴジラ話とSF大賞話とか。




【12月10日(月)】


 東映本社試写室で角川まんが祭り(←違います)の残り半分。あずまんが大王とでじこ。『デ・ジ・キャラット 星の旅』はあいかわらず快調。6分しかないあずまんがはある意味実験作かも。

 新橋TCCでイラン映画『私が女になった日』。これがデビュー作となる監督のマルズィエ・メシュキニは、モフセン・マフマルバフの今の奥さん。前の奥さんの妹なので、『ブラックボード−背負う人−』のサミラ(マフマルバフの娘)にとっては叔母さんにあたるらしい。一族のウェブサイトを覗いたら、13歳の末娘も監督修行中なんだとか。マフマルバフ一家おそるべし。プロデューサー一家なら珍しくないが、家業が映画監督って……。
 映画のほうは、『キシュ島の物語』でおなじみのキシュ島が舞台、同じく3話オムニバス。しかも2話めはマフマルバフ監督の『サイクリスト』でおなじみの自転車乗りの話。しかも全体としてはドキュメント女の一生みたいなつくりなんで、どう考えても面白くなさそうなんだけど、これが妙に面白いのが不思議。
 アボルファズル・ジャリリ監督の最新作『少年と砂漠のカフェ』もそうだけど、最近のイラン映画はマジック・リアリズム的な映像がギャグ発生装置として機能してる感じ。いや、イラン映画なんてそんなに見てないからよくわかんないけど。






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