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【10月29日(月)】


 リテレール『今年読む本イチ押しガイド』(だっけ?)の投票。あんまり変わりばえしませんが、こんな感じ。

●2001年単行本ベスト3
1 奥泉光『鳥類学者のファンタジア』集英社
2 イアン・ワトスン『オルガスマシン』コアマガジン
3 小川勝己『眩暈を愛して夢を見よ』新潮社

●2001年文庫本ベスト3
1 中村融・山岸真編『20世紀SF』1〜6(河出文庫)
2 グレッグ・イーガン『祈りの海』山岸真訳/ハヤカワ文庫SF
3 ブルース・スターリング『タクラマカン』小川隆ほか訳/ハヤカワ文庫SF




【10月30日(火)】


 渋谷で東京国際映画祭――と思ったが途中で方針を変更し、シアターイメージフォーラムでロメロの『URAMI 怨み』。なんか昔のクローネンバーグみたいな話だけどニューロティックというよりはエンターテイニング。現代人のアイデンティティ喪失っていうか自分探し(笑)がテーマなんだけど、それをガジェット化(白い仮面)しちゃうところがディック的。原題のBruiserは主人公が勤務するハスラーみたいな男性誌?の名前なんですが、その編集長がめちゃくちゃおかしい。ひどい目に遭った男がすべてを無くしたついでに顔もなくし、かたっぱしから復讐して回る――という線で徹底させたほうがよかった気もするけど、まあこれはこれで妙な居心地の悪さがあって好きですね。ホラーじゃなくて不条理SF。

 渋谷から有楽町に引き返し、東京国際フォーラムで今日から開催のコリアン・シネマ・ウィーク(国際映画祭協賛)にまわって、『猟奇的な彼女』を見る――つもりだったんですが、わたしが悪うございました。4時間も前から客が並び、2時間前でギリギリ入れる状況らしい。整理券は出しません、今日はあんまり早くから列ができたので先にチケット出したけど、明日からはずっと並んでてもらうようにします――と説明されてあきらめる。公開予定も決まってない韓国映画の新作6本なんで、見られるものなら見たいけどさすがに2時間は並べません。まあ定員50人先着順では仕方ないか。




【10月31日(水)】


 SIGHT読書特集で「今年のベスト・エンターテインメント」をテーマに北上次郎と来週対談するんですが、題材は、大森と北上おやじと編集部がそれぞれ挙げたベスト5の計15冊。どういうタイトルが挙がってるかというと、

●大森選
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』集英社
小川勝己『眩暈を愛して夢を見よ』新潮社
舞城王太郎『煙か土か食い物』講談社ノベルス
グレッグ・イーガン/山岸真訳『祈りの海』ハヤカワ文庫SF
マイケル・マーシャル・スミス/嶋田洋一訳『オンリー・フォワード』ソニー・マガジンズ
●北上次郎選
唯川恵『肩ごしの恋人』マガジンハウス
川上健一『翼はいつまでも』集英社
ロバート・ドレイバー『ハドリアヌスの長城』文春文庫
デニス・ルヘイン『ミスティック・リバー』早川書房
高橋克彦『天を衝く』講談社
●編集部選
宮部みゆき『模倣犯』小学館
白川道『天国への階段』幻冬舎
高野和明『13階段』講談社
京極夏彦『ルー=ガルー 忌避すべき狼』徳間書店
小野不由美『黒祠の島』祥伝社

『肩ごしの恋人』『ミスティック・リバー』『天を衝く』『天国への階段』と未読なので今から読まないと。はたして間に合うのか。




【11月1日(木)〜2日(金)】


 というわけで、唯川恵『肩ごしの恋人』とデニス・ルヘイン『ミスティック・リバー』を読む。『肩ごしの恋人』は、腐れ縁コンビの女二人を主人公にした楽しいキャラクター小説。図子慧とか若竹七海の書く女性キャラと重なる部分も少々。エンターテインメントとしても非常によくできてますが、よくできすぎててひっかかる部分がないから、さーっと読んですぐ忘れちゃう。しかし昔に比べると抜群にうまくなってますね。こういう小説をプッシュしたい人の気持ちはよくわかる。
『ミスティック・リバー』は、子供時代の因縁を抱えた三人がそれぞれに成長し、それぞれに鬱屈を抱えた人生の軌跡が25年後にふたたび交錯する――みたいな超定番の話。しっかり書いてあるけど、あんまり興味が持てない。というか他人の人生に関心がないのかオレは。




【11月3日(土)】


 ワセダミステリクラブ主催の岩井志麻子講演会@早稲田大学――に行こうと思ったが雨なので挫折し、高田馬場ルノワールで合流。打ち上げ宴会に寄せてもらいました。例によってまんぷく亭。フカザワ社長の料理批評がまたしても炸裂。まあここまで学生メニューだとカテゴリー自体が違うので逆に新鮮らしい。雨のせいか、OBの参加者は少なめ。S山くんはまだOBになってないらしい(笑)。なぜか古本のえらい人たちが一部に集まっていたのはなんだったんでしょうか。
 打ち上げを抜けてユタにまわり、ねぎし経由で最後はまたルノワール。今日はルノワール→稲門ビル→ユタ→稲門ビル→ルノワールという回文みたいなコースだったな。




【11月4日(日)】


 これだけは読むまいと思ってずっととってあった『天国への階段』をついに読む。うわあ。だから読みたくなかったのに。中瀬ゆかりといっしょに暮らしてるのに、それでもこういう女性キャラが書けてしまうのはある意味すごいと思いますが、いくらなんでもこの口調は……。母と娘の会話なんて、とても今の話とは思えません。ゲームのソフトハウスとか出してなんとかいま風にしようと努力はしてるけど、やっぱりどう見てもコテコテの演歌ワールド。『砂の器』みたいなもんですね。にもかかわらず(タイトル通りに)ツェッペリンが核になってるのがいちばんの驚きで、わたしのツェッペリン観は根底から覆されました。まあしかし考えてみればツェッペリンってそういう存在なのかも。
「プロジェクトX」の作為的なつくりに感動できる能力を持つ人にとっては非常に共感できる「物語」なのかもしれなくて、だからベストセラーになったことはよくわかるんだけど、最大の疑問は、ここまで立派な主人公がなぜあんなことをしたのかってこと。謎すぎる。




【11月5日(月)】


 トキオ社長は今日から保育園。ちょっと遠いけどまあしょうがない。西葛西はこんなに人口が多いのに、認可・認証保育園が少なすぎ。

 渋谷東急で、ピトフ監督の舞台挨拶つき(司会はアスミックT内氏)『ヴィドック』完成披露試写。ハードカバーの絵本みたいな超豪華プレスが配布されて、相当気合いが入っている模様。フランスで大ヒットっていっても『ヤマカシ』を見たばかりなので全然信用できなかったんですが、映像的にはかなりいい感じ。HD24P撮影の絢爛豪華な時代冒険アクション巨編。ただしシナリオのほうはちょっと詰め込みすぎで説明不足。ミステリ映画的な構成が後半どんどん崩れてくるのもつらい。期待せずに見ると面白いが、傑作にはなり損ねている。

 SIGHT対談用未読消化の最後の一冊、高橋克彦『天を衝く』は、戦国時代の東北地方(南部)に生きた天才的軍略家・九戸政実(くのへ・まさざね)の半生を描く歴史小説。クライマックスは10万の秀吉軍を敵にまわし、5000人で城に篭もって一歩も引かなかったという籠城戦。戦国時代の歴史小説を読むのはほとんど20年振りぐらいなんですが、いやこれは面白い。銀英伝かデル戦みたい――ってそれは話が逆ですね。
 合戦シーンもよくできてるんだけど、平時の駆け引きとか、人間に対する洞察とかを伺わせるエピソードも非常に面白い。本来なら天下を統一するだけの器量を持っていた天才の悲哀と挫折――みたいな部分が現代人にもアピールする要素で、企業小説的な読み方も可能。ただし、おのれの境遇を環境のせいにしたがる主人公を、「結局おまえがええかっこしたがるからこの程度で終わってしもうたんや」みたいにしかりとばす坊主が出てきたりするのがうまい。敵側のキャラも、とにかく逃げて逃げて逃げまくる南部の棟梁とか、えげつない作戦ばっかり考えるその参謀とか、とにかくよくできてます。いまの小説に男のロマンを求める読者は、やっぱりみんな時代小説や歴史小説に行っちゃうんだろうなあ。
 仕事でもなきゃ絶対読まない本なので、ちょっと得した感じ。かといって、ほかのもぜんぶ読もうとは思いませんが、ふだん歴史小説を読まない人にもおすすめしておきたい。高いけど。




【11月6日(火)】


 映画美学校で佐々木浩久監督『血を吸う宇宙』試写。『発狂する唇』の続編というか姉妹編。部分的には笑えるネタもあるし、ちょっと面白いアイデアもいくつか入ってるんだけど、全体としてはB級に安住しすぎていてあまりに退屈。これでロマンポルノだったら、UFOネタとかB級魂に拍手喝采できるんだけど、それ自体をウリにしちゃうととたんにつまらなくなる気がするのはオレだけ? 『宇宙猿人ゴリ』のテーマの替え歌は笑いましたが、映画っていうより小劇場の芝居。15年前のWAHAHA本舗が「WAHAHAの血を吸う宇宙」とかいって箱根あたりで上演すれば傑作になったかもなあ。

 渋谷のロッキン・オンにまわって、北上次郎とSIGHT対談。大森推薦の5冊を北上次郎は1冊も読んでないので、そっちに関してはひたすらオレが説明するだけ。せっかく目黒さんにも読めそうなとっかかりがあるものばっかり選んだのに。このうち北上次郎が興味を示したのは『鳥類学者のファンタジア』と『祈りの海』。
 イーガンは『宇宙消失』を買うだけ買って読んでないそうです。『祈りの海』は、まだ新刊書店で買えるかなあと気にしてたので、早川の人は、北上次郎に送本してあげると吉。「貸し金庫」みたいな話は意外と好きだと思います。

 2時間しゃべったあと、飯田橋の中華料理屋・天水で謎の宴会。うちの家族三人と、斉藤友子、トーレン・スミス、国樹由香、柳下毅一郎・美恵夫妻に水野純子嬢がメンバー。水野さんとは初対面。こないだトゥナイトIIに出てたのをたまたま見たんですが、実物のほうがずっとかわいい感じ。ていうか、ああいう絵を描く人には見えませんね。

 一次会後、トキオ社長が少々おむずかりの御様子なので母親とトーレン社長同伴で帰宅。マックが挙動不審でトラブル渦中の水野嬢もひきあげ、残りのメンバーで外堀のカフェ(マクドナルドの横を降りたボート乗り場の先)に行って主にサッカー話。それにしてもこんな店がいつのまに。とても飯田橋とは思えません。




【11月7日(水)】


SF Onlineの特集「『20世紀SF』を読もう」の全作品考課表のために、後半の3巻でむかし読んだきりだった作品をまとめて再読。収録全73編から大森が選んだベストテンは、

1 イーガン「しあわせの理由」6巻
2 ラファティ「町かどの穴」3巻
3 ジェフ・ライマン「征たれざる国」5巻
4 ティプトリー「接続された女」3巻
5 ハーネス「現実創造」1巻
6 スタージョン「たとえ世界を失っても」2巻
7 ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」4巻
8 フレデリック・ポール「幻影の街」2巻
9 ラッカー「宇宙の恍惚」5巻
10 ダン・シモンズ「ケンタウルスの死」6巻

 ワースト3は「イルカの流儀」「復讐の女神」「肥育園」かな。




【11月8日(木)】


 どこかの試写室で橋口亮輔監督『HUSH!』。主役トリオ(田辺誠一、高橋和也、片岡礼子)が知り合う前から語りはじめるのでちょっと長すぎるのが難点ですが、出来はいい。片岡礼子の妙なリアリティと、ゲイ・カップルのほうの芝居っぽい芝居とがミスマッチなんだけど、それが社会ドキュメンタリー的なリアリズムとシチュエーション・コメディの中間ゾーンにうまくハマってるというか。片岡礼子がいなかったら、たぶん全然違う映画になっただろうな。





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