【9月1日(土)】


 馬場の例会に出てから、三村美衣・柳下毅一郎と帰宅し、ワールドカップ欧州予選TV観戦の会。メインイベントは当然、アイルランド×オランダ戦。オランダは勝たなきゃ絶望になる試合(アイルランドは引き分けでも2位でプレーオフ抜けが有力)。そりゃまあ点をとるために攻撃的になるのは当然として、10人の相手にフォワード4人も5人も入れますか? ファンホーイドンクとファンニステルローイとハッセルバインクとクライファートとファンブロンクホルストとファンバステン(うそ)。ゼンデン下げたのがまちがいのものだと思うなあ。中盤が存在しないオランダサッカー。これが華麗なアヤックス流なのか? まあ、ある意味で歴史的な試合でした(笑)。さようならオランダ。

 つづくドイツ×イングランドも歴史的な試合。フェラー監督には厄日でした。昔からファンなのに。しかしこれでギリシャに勝って一位抜けとは言い切れないのがイングランドだな。オーウェンも今がピークだったりして。



【9月2日(日)〜12日(水)】


 9月に入り、再開した『フリーウェア』翻訳がようやく軌道に乗ってきたか――と思ったところに、いきなり事故発生。Dynabook SS3380V の液晶が割れちゃったよ。
 落っことした覚えもないのにいきなりパネル中央上端から、右端の上から3分の1あたりにかけて斜めに亀裂が走り、その線から上の一画がホワイトアウト。
 ラオックスの5年保証をつけてるので修理は問題ないんだけど、修理中の代替マシンが必要なので、結局またDynabookを買いました。なんかSSシリーズは個人向けのモデルをやめちゃうことにしたらしくて、最新モデルは秋葉原に在庫なし。去年発売の旧モデルを求めて何軒かショップをまわったあげく、ツクモで3480DS60P/1NMRを発見。HD20ギガでCPU600Mhz、WindowsME プレインストールのモデルが実質16万円。
 匡体は3380からほとんど変わってないので、バッテリーやACアダプタはそのまま流用可能。
 しかし問題は環境移行。マイクロテックのXpressDock経由でベアドライブにバックアップしてそのままコピーしようと思って20ギガの安いドライブ買ったのに認識しない。しょうがないのでまた秋葉原に行ってジャンパピン買ってきてフォーマットし直したら、なぜか2ギガしか見えない(笑)。
 これまでメインのバックアップメディアだったPDはほとんど終わりかけていることが判明したので、DVD-ROM再生とCD-R/CD-RWの読み書きができるノート用のコンパクトなドライブ(PCカード接続)と、USB/IEEE1394両対応の40ギガHDDをそれぞれ購入。新マシンでDVDを再生するとさすがにきれい。HDDのほうは、IEEE1394でつなぐとさすがにめちゃくちゃ早い。1ギガのコピーもあっという間です。
 しかしマシンが変わるとつい新しくソフト買ったりツール入れたり環境再構築したりしちゃうので全然仕事が進まない。もちろんテレビにかじりついてるせいもありますが。

 週刊現代に宮部みゆき『R.P.G.』(集英社文庫)書評。SFマガジンに映画『クローン』原稿(Imposter「にせもの」はとうとうタイトルまでこうなってしまいました)。スターログ80年代名画座は『A.I.』つながりで『E.T.』。

 本の雑誌は『反在士の指環』を枕に上遠野浩平『私は虚夢を月に聴く』を経由して、メインは野阿梓『ソドムの林檎』。あとは『ブギーポップ・アンバランス ホーリイ&ゴースト』とか若木未生『メタルバード1』とか岡本賢一『クレイジー・ウォー』とか津村巧のメフィスト賞受賞作『DOOMSDAY』とか。小川勝己『眩暈を愛して夢を見よ』にも無理やり言及。しかし最近SFの新刊が多くて行数削るのに必死。ふつうにぱーっと書くと倍ぐらいになっちゃうんだよなあ。




【9月13日(木)】


 東銀座・松竹本社試写室で『赤い橋のぬるい水』『リベラ・メ』の二本立て。『赤い橋…』は爆笑のマジックリアリズム映画。今村昌平おそるべし。あの年でこんな映画撮るとはなあ。韓国版『バックドラフト』と言われている『リベラ・メ』は、P2宣伝担当I田女史の弁によれば、消防庁推薦の防災映画。
「時節柄、公開について心配してくださる方もおいでですが、この作品は防災映画で、消防庁の推薦も頂いておりますので、予定通り公開します」だって。
 中身はサイコサスペンス要素を加味した『バックドラフト』で、サイコサスペンス部分に全然説得力がないのが難。もうちょっとメリハリつけてくれればいいのに、全体に深刻ぶりっこが過ぎるのもねえ。まあ明るくやってたら公開できなかったかもしれないが。
 歌舞伎町雑居ビル火災のあとでは根本的に説得力に欠けるのもつらい。




【9月14日(金)】


 昨日に引き続き試写二本立て。
 クリストファー・ノーラン監督・脚本の『メメント』は、北川歩実『透明な一日』でおなじみの前向性健忘症にかかった男が主人公。事件の結末から発端へ遡っていく構成で、まあなんというか新本格みたいなミステリ映画ですね。記憶障害に対抗するためのディテールがおかしい。しかしあのタトゥーはレタリングに凝りすぎでしょう。それにしてもこのオチはいまどきの観客に理解してもらえるのか。これから見る人は伏線に注意。
 これに比べると『ソードフィッシュ』の「全米がハメられた!」どんでん返しなんてかわいいもんで、最初から見え見え。『リベラ・メ』が防災映画ならこっちは防テロ映画なので無事に公開できるらしい。ハル・ベリーの、ストーリー的にはまったく必然性のない露出が見所(笑)。いや、オレはけっこう好きだけど。キメキメのトラボルタはいい感じです。しかしハッカー描写はリアリティ皆無。昔の映画なら手先の器用な金庫破りが主役だったはずで、金庫破りの場合はオレの身の回りに存在しないから、「ふつうの金庫破りはそんなことしないよ」みたいな感想を抱くこともないんだが……。だいたいヒュー・ジャックマンは全然ハッカーに見えないよね。ウルヴァリンはコンピュータ使わないでしょう、ふつう。でも、タランティーノなテイストをまじえたハリウッド・エンターテインメントとしては成功している部類に入ると思う。この映画の通りに実行していれば、世界貿易センタービルも無事だったのに。それにしてもトラボルタが元モサド工作員っていうのはどうよ。




【9月15日(土)〜18日(火)】


 渋谷で矢口史靖監督『ウォーター・ボーイズ』と韓国映画『イル・マーレ』をつづけて見る。ひさしぶりに渋谷の映画館に行ったけど、なんかすっかり若者向けになっちゃってて茫然。シネパレスなんか韓国映画専門館みたいですね。
 女子高生でぎっしりだった『ウォーター・ボーイズ』はベタなギャグが肌に合わなくて全然笑えず。こんな映画撮ってちゃダメでしょう。せめて『のど自慢』を見習ってほしい。『アドレナリン・ドライブ』のギャグセンスはめちゃめちゃツボだったのになあ。

『イル・マーレ』は、ヒロインの職業がアニメ声優(TV人形劇にも出演)でアフレコ場面あり(売れてないので主にガヤ担当)。おまけにヒマなときは、友だちの経営するマンガ喫茶でアルバイトしてたり(笑)。もうこれだけで見なきゃダメだと思いますがどうですか>そのへんのひと。メインプロットは時間SFラブストーリーで、イル・マーレと名づけられた海辺の家が舞台。そこんちの前のポストに入れたモノだけが時間を超えて行き来するという「チャリティからのメッセージ」パターンの話なんですが、時間差が4年ぐらいしかないところがミソ。まあ、岩井俊二の『ラブレター』見て、あんな映画がつくりたいなあと思ってつくった感じが露骨に出てるので、SFおたく的には突っ込みどころ満載なんだけど、語り口も絵柄も題材にフィットしてて、好感の持てる小品。

 新潮社《波》に椎名誠の新刊短篇集『飛ぶ男、噛む女』の書評。一部SFあり。でも基本的にはニュータイプの怪談集で、かなりびっくりした。都筑道夫の某長編をちょっと思い出したけど、インパクト(というか現実的なリアリティ)はこっちのほうが上かも。ちなみに作中に出てくる高知の料亭はオレも昔行ったことがあり、「べろべろの〜かみさまは〜」のべく杯も経験してるのでますますリアルだったり。どうせなら「新宿赤マント」でこれをやったらもっとびっくりするのに……って、それじゃ田中哲弥の日記か。
 もっとも、一般読者的には、著者個人が有名でエッセイを書きまくったりしてないと使えない手なので、こういう小説を書ける作家はごく少数だと思う。




【9月19日(水)】


 徳間ホールで、三池崇史監督の新作『殺し屋1』の完成披露試写。マゾ系ヤクザ垣内役の浅野忠信があまりにもハマりすぎてて、オモテの主役、イチとジジィのパートがすっかりかすんじゃったのが惜しい。原作に忠実にやった結果2時間越えちゃってるわけですが、エピソード削って100分ぐらいの浅野映画にしたほうが傑作になった気が。後半のダレ場がちょっと……。しかし、『オーディション』を上回る痛さを実現した点は評価したい。各種拷問シーンは笑うしかない痛さです。しかしCGIに関してはそろそろなんとかしたほうがいいと思う。
〈映画秘宝〉のファビュラス・バーカー・ボーイズ対談ではウェイン町山がクレジットタイトルにウケてたけど、三池映画のエンドクレジットに関しては『日本黒社会』が史上最強最高なので、この程度ではまだまだ甘い(笑)。

 映画終了後、原作の山本英夫と三池監督を囲んで茶話会が予定されてたんですが、ダッシュで飛び出して東映に走り、やっと『GO』に間に合った――と思ったら満席で入場不可。やっぱり窪塚人気? 山崎努との決闘場面が見たかったのに……。

 しょうがないので喫茶店で仕事してから、飯田橋・角川書店本社で謎の打ち合わせ。書籍編集部I田氏が、高知新聞本社の向かいにある食堂の息子だということを知って驚愕する。小学校の頃に何回か行きました。いやなつかしいというか、世間はあまりにも狭い。おまけに中学・高校の後輩だったり。




【9月21日(木)】


 乱歩賞受賞パーティ@帝国ホテル。受賞作の『13階段』はちょっとどうか。ソツなくまとまってはいるけど、いかにも乱歩賞狙いな感じであまり好きになれない。
 青山さんが連れてきたらしい三鷹ういさんとは初対面。パーティ会場の一部で話題を独占していた模様。どういうわけか、若桜木虔さんとも意気投合していたらしい。

 終了後、喜国・国樹夫妻、宮部みゆき、貫井徳郎、C塚K子ほか各氏とのんびり食事。カラオケに合流するつもりだったけど雨も降ってるのでおとなしく帰宅。どうせすぐ鮎川賞だしなあ。



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