【4月26日(木)】


 小説すばるの書評をようやく仕上げ(お題は我孫子武丸・田中啓文・牧野修の『三人のゴーストハンター 国枝特殊警備ファイル』集英社近刊)、一眠りして昼から病院。
 白石朗一家来訪。ベビー布団とかいろいろ頂く。ありがたいことである。
 S澤SFM編集長がキース・ロバーツ特集用のロバーツ本を受けとりに来訪。仕事の話なのに手土産持参で申し訳ないことです。
 ロバーツに関しては、THE WORLDS OF KEITH ROBERTSがけっこう詳しい。イラストギャラリーもあります。
 うちから発掘できたのは、Anita、The Chalk Giants、The Furies、The Grain Kings、Grainne、The Inner Wheel、Kaeti on Tour、Kite World、The Lordly Ones、The Passing of the Dragons、Winterwoodとか。あとはロバーツが表紙を書いたScience Fantasyのバックナンバー類。Molly ZeroとKaeti and the Companyはなぜか行方不明。買い逃してる本も何冊かありますね。The Boat of Fateとか、SFじゃないから要らないと思ってたけど今となってはちょっとほしいかも。
 特集に翻訳が載る短篇は、アニタとケイティの両シリーズから一編ずつと、The Lordly Onesの表題作が先に決定しているので(というか、この3本はもう翻訳が上がっているらしい)、大森はWinterwood収録のホラー短篇を訳すことにしました。




【4月27日(金)】


 メンズエクストラの映画コラムを送って、昼から病院。よく考えると産院は病院じゃないのか? 出産は病気じゃないので保険が効きませんという理屈からすればそうだよな。医療費控除の対象にはなるの?
 元ご近所の野間美由紀さん来訪。西澤さんと共同購入の出産祝いを頂く。ポロのベビー服セット。父親よりいいものを着るのかおまえは。
 柳下毅一郎・美恵夫妻来訪。スクープ記事を抜かれる。しかし出生届の期限は生後2週間なので土壇場で名前を変えるかも。対抗措置として、赤ん坊を抱く殺人研究家の写真を公開。こんな恐ろしい男に抱かれているとも知らずすやすやと眠る新生児。無惨やな、兜の下の蟋蟀。
 さいとうは退院講習で呼び出され、オレは代引グッズの受けとりのため自宅に戻らなきゃいけないので、蟋蟀の世話は柳下夫妻に任せて病室を明け渡す。どうせもうすぐベテランの人が来るからだいじょうぶ。なんかあったらこれがナースコールね。とか。
 荷物を受けとってもどってくると、三村美衣とT岡&恵夫妻が来てました。GAPのベビー服を頂く。草刈美由紀さんからもGAPの同じシリーズのカエル柄のやつをもらったんだけど、これは別パターン。そう言えば、水玉さんにもらったやつは「時計仕掛けのオレンジ」柄(笑)。アレックスと名付けてサッカー選手にするのか。しかし明徳義塾には入れたくない。  T岡パパの練達の授乳術を見学。ベテランの人は違うね。と大にぎわいのところへさいとう叔母もやってきて、さらにうちの母から携帯に電話が入ってもうわけがわからない。

 それにしても、こうやって病室でだらだらしてるといろんな人がやってくるっていうのはコミケにブース出してるような感じ。「新刊出ました」とかさ。やってきた客は、ほうほう、これですかと見本誌を手にとりじっくりながめて帰っていく。売るものもないのにすいません。

 5時に産院を出て、6時から渋谷のロッキンオン本社でSIGHT用の書評対談with北上次郎。やっぱり『黒い仏』はどこが面白いのかさっぱりわかんなかった模様。北上次郎強力推薦の志水辰夫短編集『きのうの空』は主に高知の話なのでオレは面白かったけど、北上次郎の推薦の弁を聞いてると、熱心な志水辰夫ファン以外には関係のない本のように思えてくるぞ。わたしは後半の家族小説のキャラクター描写が秀逸だと思いました(ぜったい自分の非を認めないお母ちゃんとか)。それにしても高知新聞系列で高知広告センターとはべつの広告代理店ってどこなんだろう。『チーズはどこへ消えた』話もけっこう盛り上がるが、しかし結論は予想通り。大森はゴダード『永遠に去りぬ』に、北上次郎を超えるA評価。誉めるポイントが全然違うのが笑える。『ハドリアヌスの長城』は、『模倣犯』によく似てると思うんだけど(無垢な魂の持ち主が腐れ縁の友人に翻弄されて泥沼に落ちてゆく)、北上次郎は比較すべき小説ではないと主張。やっぱり読み方が全然違うのだった。

 対談終了後、山手線で馬場に出て、SFオンライン主催(?)の星野富美男壮行会@イル・キャステロ。堺三保・添野知生・柳下毅一郎・三村美衣・岩田恵とか。星野師範代におかれましては、《マジック:ザ・ギャザリング》プロツアーのバルセロナ大会に出場されるのである。目標は初日抜けとか気弱なことを言ってましたが、シールド戦なんだから優勝も夢じゃない。ベスト8ぐらいに入って凱旋していただきたいものである。
 M:tGからは長く遠ざかってるので、Invasionブロックのことはさっぱりわかりませんが、プレイヤー人口は着実に増えているらしい。




【4月28日(土)】


 栃木からさいとう弟が彼女連れでやってきて、一部にセンセーションを巻き起こす。今日で退院なので荷物運びの手伝いに来たんですが、すでにそれは目的が変わってないか?
 入院費を精算し、山のような荷物をさいとう弟のクルマに積み込み、新生児は産院の送迎車に乗せて自宅に帰還。レンタルのベビーベッドはけっこうでかいのでリビングルームに設置。
 一段落したところで、さいとう弟カップルとクルマで必要品の買い出しに南砂町のジャスコへ。空気清浄機とか調乳器とか哺乳瓶とかいろいろ。笑っちゃうような育児グッズ多数。動きが止まるとアラームを鳴らす新生児モニターキットとか。

 帰ってきてごはん食べてるところに添野知生夫妻が突然来訪。電話抜きで友だちが訪ねてくるのはすごく珍しいが、まあ今から一カ月ぐらいは必ず家にだれかいるに決まってるので突然訪問のチャンスかも。添野夫人からはバースデーケーキのプレゼント。そうか、よく考えると誕生日だったのか。しかし0歳なのでろうそくはありません。

 猫三匹はよくわかんないものがとつぜん出現してひそかにストレスを貯めていたらしく、夜中にテツヤが怒りのスプレー攻撃。床に置いてあった鞄4個に壊滅的打撃を与える。まあこれに比べれば赤ん坊の排泄物なんかかわいいもんですな。




【4月29日(日)】


 やや黄疸気味のうちの社長(仮称)を連れてタクシーで病院。診察を終えて帰ってきてから、SFセミナー番外編@カナダ大使館に出かける。山野さん、浅倉さん、森さんとはひさしぶり。メリルの座談会は主に彼女が日本にいたころの思い出話。ジュディス・メリルが東小金井に借りていたアパートの家賃を早川書房が一部負担していたという話は初めて聞きました。しかしゴシップ的なネタは抑え気味。矢野さんか伊藤さんが加わっていればもっとめちゃくちゃなエピソードが多数披露されていたかも。

 ゴロ系の参加者は少なかったのか、企画開催中、ロビーで油を売る人がほとんどいない。いつものセミナーとはかなり雰囲気が違いました。
 全企画に同時通訳が入るのもすごい。まともに通訳を雇ったら、その報酬だけでふだんのセミナーの会場費をオーバーするのでは。さすがはカナダ大使館。カナダ大使がまた意外に若くていい男(ティム・パワーズ似)だったのもびっくり。

 セミナー終了後はレセプション……というか、ソウヤーの誕生日を祝うサプライズパーティ。大森はクラッカーを鳴らす係りを担当。タイミング的にはけっこううまく行ったんじゃないでしょうか。恐竜型のケーキはかなり強烈。絶句するソウヤーの顔がなかなか。
 中村融vs渡辺英樹対決は予想通り対決にならず、中村融の「だって『ドラゴン・フライ』とか読まずに書いてるだろ」攻撃が炸裂して英樹は轟沈。ダメだよ、もっと戦わなきゃ。
 外薗昌也氏とは初対面。『新SFハンドブック』にサインしてくださいと言われてのけぞる。それは話が反対でしょう。こんなことと知ってたら『ラグナ通信』とか持ってきたのに。

 会場では育児経験者からアドバイス多数。思ったんですが、なんかこれって初めてパソコン買った人みたいね。経験者からの質問のパターンもだいたい同じ。「男か女か」「名前は?」「体重は?」「母乳?」っていうのは、「へえ、パソコン買ったんだ。なに、Windowsマシン? 機種は? CPUいくつ? OSは? いや、うちはWin98だからMacのことはよくわかんないんだけど……」とかいうのとあんまり変わらない。PCユーザーじゃない人にはなんの興味も持てない会話になりがちなところも似てますね。
「なんかハードディスクがへんな音立ててるんだけど、これはほっといていいの?」とか、「新しいソフトのインストールがうまくいかないんだけど」とか、ベテランの人のところに電話して質問する感じもそっくりだったり。市販のマニュアルがたくさん出てたり、教材ビデオがあったり。

 パーティを途中で抜け出し、南砂のジャスコでふたたび買い物してから帰宅。深夜当直をすませて明け方寝る。




【4月30日(月)】


 さいとう両親と妹が来訪。夜勤明けで眠いのでかまわずぐうぐう寝続ける娘婿。3時ごろにやっと起き出してみると、さいとう両親は居間の床でぐうぐう寝てました。まあおたがいさまってことで。
 出かけてちょっと仕事してから(なぜ5月1日に締切があるかなあ)また戻る。小笠原在住のさいとう従妹が来訪。
 さいとう母だけを残して父・妹・従妹が引き上げたあと、ふたたび外出してロバーツ翻訳仕事。短い話なのになかなか調子が出ない。帰って当直。
 奥泉光『鳥類学者のファンタジア』読了。『「吾輩は猫である」殺人事件』『グランド・ミステリー』と合わせて、奥泉時間SF三部作完結編? これはもしやと思いながら読んでると、予想通りのハードSF解釈が登場してどうなることかと思いますが、奥泉光なのでそのへんはさらっと流す。主人公は黄昏の女バッパーと自称するジャズピアニストなので、ハードSFには向きません。タイムトラベル物のツボは押さえつつ、SF的にいちばんおいしい部分は微妙にはずして決着させるあたりがこの人らしい。
 山田正紀の『ミステリ・オペラ』と趣向は似てるんだけど、『ミステリ・オペラ』が最初から多世界解釈を全面に押し出してくるのとは対照的。そっちはまだ読み終わってないので、またそのうち。

Powered by bk1(Online Bookstore)

top | link | board | articles | other days