オンライン書店bk1との提携力強化中。

【ハヤカワ文庫SF 重版フェア】

 今回重版分の注目はワイドスクリーンバロックの二大傑作、バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣』クリス・ボイス『キャッチワールド』。前者は和製ワイドスクリーンバロックの巨匠、田中啓文も推薦。後者は読んでないらしいので買って読むように。
 ロバート・F・ヤングの短編集『ジョナサンと宇宙クジラ』は短編SF愛好家必読の名品揃い。「リトル・ドッグ・ゴーン」も泣けますが、オレは「空飛ぶフライパン」が好きだな。「ピネロピへの贈りもの」「サンタ条項」「いかなる海の洞に」あたりは読んでてあたりまえの定番。もう忘れたけど。
 アンダースン&ディクスンの《ホーカ》シリーズ2冊、『地球人のお荷物』『くたばれスネイクス!』は、イウォークの元ネタ。こぐまみたいな宇宙人が一生懸命地球人のマネをする牧歌的なユーモアSF。帝国主義的とか言わないように。
 牧歌的と言えばシマックの『中継ステーション』も忘れちゃいけない。シマックなら『都市』よりこっちという田園志向のSFファンも多数。
 フレッド・セイバーへーゲン『バーサーカー/赤方偏移の仮面』は、野尻抱介「太陽の簒奪者」の元ネタ。というのはウソですが、三割ぐらいほんとかも。創造者がとうに消えちゃったあとも敵を求めて宇宙をうろつく自動殺戮機械をモチーフにした連作集。このシリーズでは、長編の『皆殺し軍団』と短編集の『星のオルフェ』がありますが、出来はたぶんこれがいちばんでしょう。「グッドライフ」は傑作。
 ロジャー・ゼラズニイ『わが名はコンラッド』は、評価が高いのに全然売れなかった長編。「あなたはカリカンザーロイよ」とかいきなり言われるやつですね。返す言葉が「蹄も爪も役所に置いてきてしまった」だっけか。地球の管理人をなさっている方の話です。いま読むと『光の王』より面白いかもしれない。
 グレゴリイ・ベンフォード『タイムスケープ』は時間SFのオールタイムベスト――というより、科学者SFの頂点か。ベンフォード作品では例外的に読める小説。
 『タイムスケープ』の原点みたいな古典がフレッド・ホイルの『10月1日では遅すぎる』。どうして遅すぎるのか忘れました。
 しかしハリイ・ハリスン『テクニカラー・タイムマシン』はどうかなあ。高校で読んだときはあんまり面白くなかったけど。これって白背だよね。白背復刊?
 スタニスワフ・レムの『捜査』は新本格。いやほんとに。

 というわけで、びっくりしたい人向けのベストは『カエアン』『キャッチワールド』『捜査』『赤方偏移の仮面』、しみじみしたい人向けのベストは、『ジョナサン』『中継ステーション』『コンラッド』『タイムスケープ』にホーカの2冊かな。




【2月10日(土)】


 19:00、ミステリ書評家系の新世紀会@新宿・犀門。トヨザキ社長の音頭で、関口苑生、香山二三郎、吉野仁、新保博久、白石朗、杉江松恋、古山裕樹、茶木則雄、T内@新潮社、大島@マガジンハウスなどなどの各氏が参集。
 となりのビルの店では藤津組の宴会をやってるらしいので途中で抜けて覗きに行き、森山@bk1と仕事の話とか。あとはタニグチリウイチとか松谷とか、SPA!のK坂ちゃんとか。
 さくらやで爆発的に無能な店員からイーサネットのハブを買って犀門にもどり、深夜まで。二次会はなぜか西口の東方見聞録。杉江松恋ひとり大食らい選手権の模様はミステリ相談室のトヨザキ社長レポート参照。

 森博嗣『今夜はパラシュート博物館へ』(講談社ノベルス) は、やっぱり小鳥遊練無meets西之園萌絵が白眉でしょう。これしかないという森博嗣黄金パターンのひっかけなのにそれでもひっかかるオレ。
 そう言えば日記には全然書いてないけどVシリーズはずっと読んでて、『魔剣天翔』の空中殺人ネタは新鮮でした。このシリーズでこう来るとは思わなかったな。





【2月11日(日)】


 20時起床。寝過ぎて頭がぼうっとしているのでワーナーマイカル市川妙典に『BROTHER』を見にいく。日本にいられなくなったヤクザがアメリカにわたって大暴れするがイタリアンマフィアにはやっぱり勝てませんでした、という話。アメリカ人にとっての『BROTHER』は、日本人にとっての『ブラック・レイン』みたいな感じなのかも。日本人が見ると非常にストレートな北野映画。全然ひねらずにこういうヤクザ・アクション映画をとるためにはアメリカに行く必要があったのか。その意味では押井守における『アヴァロン』に近い。

 それにしても、9時過ぎてるというのにワーナーマイカルのチケット売り場は長蛇の(というほどでもないが)列。周辺もけっこうにぎわってるみたいで、この調子で店が増えるといいんだけど。




【2月12日(月)】


 大阪万博ネタでアスキーネットJのオークションコラムを書き、河出文庫《20世紀SF》の4巻(1970年代)に入るオースン・スコット・カード「Fat Farm」の翻訳に着手。オムニに載ったやつで、昔読んだときは笑った記憶があるんだけど、いま読むとちょっとシンプルすぎる気が。でぶSFとしても「シルベスターの復讐」には勝てないしなあ。まあ、70年代ぐらいまでは、適当な長さで未訳の傑作なんかほとんど残ってないに違いない。訳されてないのはたいがいなにか理由がありますね。ウルフのSeven American Nightsとか載せればいいのにと思っても長すぎるし。




【2月13日(火)】


 金曜日に来日したトーレン社長@Studio Proteusのお供で双葉社。
 飯田橋でパスタの遅い昼飯を食ってから、宮部さんの仕事場に行って、《SF Japan》の宮部みゆきインタビュー。今度の号に載る宮部さんの「ジャック・イン」は、いまe-NOVELSで連載している「ドリームバスター」の姉妹編。《ドリームバスター》っていうのがシリーズ名で、中編三本集めて一冊にまとめ、それが全五巻で完結とか、そういう予定らしい。




【2月14日(水)】


 ふたたびトーレン社長のお供で新宿プリンスホテル。スタジオぬえの竹川さんとダーティ・ペア関連の打ち合わせ。

 終了後、トーレンと別れて紀伊国屋に寄り、ヨドバシとかさくらやとかビックカメラとかを冷やかす。DSLにしてから、H"のモデムカードがいまいち調子よくないので(フリーズが頻発)、USB接続のモデム内蔵ケーブルを購入。SUNTACのUケーブル。これでPCMCIAのスロットが空く。
 あとは、インタビューの自動テキスト化システム構築をめざしてオリンパスのICレコーダを買いました。スマートメディアが使えて、VoiceAtok14で音声認識→テキスト化ができるやつってことで、オリンパスのVoiceTrek DS-1を選択。64メガのスマートメディア使えば22時間連続録音ができるそうですが、電池は11時間しか保ちません(笑)。
 DSSとかいう独自圧縮方式を採用してるんだけど、録音データの入ったスマートメディアをそのままパソコンに挿して、VoiceAtokに読ませることは可能なのか。と店員に聞いてもさっぱり要領を得ないので、とりあえずソフト同梱の接続キットは買わずにすませる。
 さらに、Windowsの98→MEのアップグレードキットが5000円ぐらいで出てたので衝動買い。98の動作が不安定なんで、MEへの移行を検討中。簡単にすめば一瞬なのだが、一応使えているシステムを入れ替えて後悔したことは多いからなあ。

 コマ東宝にまわって、『弟切草』『狗神』の二本立て。
『弟切草』のデジタル処理はけっこう面白い。予算の割りに舞台の屋敷は非常に立派に見えます。途中までは悪くない。問題は結末。マルチエンディング的にするんなら、奈美/直美対決から火事へってパターンから脱却したものを用意しないと無意味でしょ。いやまあサカナの弟とか百個めの干し首は無理だとしても。
 予想外によくできていたのが『狗神』。こちらも結末にはかなり問題があるんだけど、スーパーナチュラルとの距離のとりかたが非常にうまい。オリジナルなアイデアも入れてあるし、最近の角川ホラー映画の中ではいちばんいいと思った。添野はけなしてるけど、オレなら★3つか4つあげてもいいな。だいたい、「徐々に若返っていくというオリジナル設定が生かされなかったため、せっかくの好演も報われていない」っていうのは違うんじゃないの。生かされてるじゃん。
 問題は台詞が非常に聞きとりにくいこと。土佐弁ネイティヴじゃなくて原作読んでない人だとさらに聞きとれないのでは。




【2月15日(木)】



 品川プリンスホテル新館のティーラウンジで打ち合わせ。大森が太田出版のN木さんに村上貴史を紹介し、村上貴史がうら若い女性二人をN木さんに紹介する会。ってさっぱりわけがわかりませんが、要するにバイトの斡旋を大森が村上氏に丸投げしたという関係。
 軽く相談してから近くの居酒屋で酒宴。品川の居酒屋はどこもサラリーマンで栄えている。話題は、『バトル・ロワイヤル』追加撮影現場のエピソードとマサイ族の話。SFの人がいないのでキクユ族の話には流れません。




【2月16日(金)】


 WEB本の雑誌開設5カ月記念パーティ。バックエンド担当の人多数。博報堂の人を一度にこんなに大勢見たのははじめてかも。ウェブデザイン担当企業の人も多数。いやまさかこんなに予算がかかってるとは思いませんでしたね。所帯が大きいと資本の有効活用に失敗しがちな例……って、べつに失敗してるわけじゃないけど、投下資本に見合うサイトになってるかどうかは疑問。要するに、目黒さんがやりたいようなことをやるのをバックアップするのにふさわしい体制じゃないというか。老舗の団子屋が駅前にちょっと変わった支店を出そうとしたら巨大商社が協力を申し出て、最新のノウハウや機材や専門のマンパワーをどんどんつぎ込むんだけど、団子屋の親父の考えてることには必要がないものばかりでした、みたいな。
 まあ、目黒さんがやりたかった読書相談室と新刊採点はちゃんと実現してるんだから、べつに問題はないと言えばないんだけど、なんか無駄が多い気がする。もったいないと思うのはオレが貧乏性なだけ?
 あと、これはむしろ提携先の本やタウンのほうの問題なんだけど、検索窓にたどりつくまでがやたら面倒なので、フリの客には使いにくい。地域の顧客以外関係ないメガ店の店内在庫検索は、完全に別立てにしたほうがいいんじゃないのかなあ。

 パーティには新刊採点員の人々も大集合。文庫本班の人は単行本班より平均年齢がかなり若い感じ。そこだけなんとなく書評サイトのオフ会みたいな雰囲気なのがおかしい。いや、考えてみればまさに書評サイトのオフ会なんですけど。

 二次会は、神楽坂を放浪したあげく、駒忠だかなんだかに入る。もうただのお座敷宴会。眠いからとっと帰ろうと思ったら、月曜まで締切がないらしい茶木則雄にジャケットの裾をがしっとつかまれ、そのまま目黒考二とともに池林房に拉致される。なぜ池林房かと言えば、もちろんメンツを集めるためなのである。
 とはいえせっかく来たんだからと席に着いたら、隣に見た顔が。幻冬舎のH川と沢村鐵氏が打ち合わせ中。デビュー作の『雨の鎮魂歌』は海辺の花火シーンが絶品で、夏休み小説としてはオールタイムフェイバリットに入れたい出来。ミステリにはしないほうがよかったと思うけど。
 目黒さんがH川に、茶木さんが沢村鐵氏に向かってそれぞれ演説しているのを30分ほど眺め、トクヤ社長がやってきたところで麻雀に流れる。
 目黒さんが割れ目の茶木さんから親の三倍満を上がる。72000点。やたら赤いのが入ってたんで超インフレ麻雀だったんだけど、それにしても。大森はまずまず好調で、こないだの記録的大敗の半分弱をとりかえす。あと一回勝てば――というのがよくない思考。ほっといたら昼近くまでやってそうな三人を無理やり説得し、なんとか6時に解散(だから5時で終わる約束だったんだってば)。

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