【1月6日(土)】


 サンフランシスコ編のつづきです。
 いちばん驚いたのはスミス家の愛犬トフィー。めちゃめちゃでかくなってます。顔は子犬のときのままなので激しくアンバランス。でもせっかくなので比較的かっこいいトフィー写真を載せておきましょう。
 ちなみにトフィーの下のラグは斉藤友之デザイン。このデザインでやってくれと業者に発注したら、「このデザインの使用権を譲ってくれるなら、ラグの代金を半額にサービスしましょう」と言われて即OKしたらしい。芸は身を助ける。
 念のために言っておくと、斉藤友之はさいとうよしこの妹のペンネーム。この名前で、現在《電撃大王》にエッセイマンガを連載中。ガイナックスからは、斉藤友之キャラデザイン&原画のPCゲーム、『あにまる・まぐねてぃずむ』も発売中です。えっち系の仕事をするとき専用の筆名かと思ったけど、そうじゃなかったらしい(笑)。

 眠いのは眠いけど、いまから寝ちゃうと睡眠時間がぐちゃぐちゃになりそうなので、斉藤友之同伴でダウンタウンに出撃。モスコーン・センター(ワールドコンの会場にもなったとこっす)の斜め向かいに新しくできたソニーピクチャーズのシネコンモール、メテレオンへ。土曜の夜なので映画はものすごい行列。いちばん人気はなぜかアン・リーの『グリーン・ディスティニー』で、チケットは次の次の回まで売り切れ。正月一番のヒット作になっているらしい。字幕つきの香港映画がなぜ。

 しょうがないのでモーリス・センダックのテーマパーク(?)フロアを見学。なんか日本にもショップができてるらしいけど、入場料をとるセンダック遊園地はかなり再現性が高い。それにくらべて売ってるグッズ類は出来が悪すぎ。これじゃ大きいお友だちには売れないし、子供はセンダックそんなに好きじゃないでしょ。マーケティングに大きな問題があります。百ドルぐらいの精巧なものをどんどん出したほうが絶対商売になると思う。ちなみにかいじゅうたちがいるところはこんな感じです。

 映画をあきらめてメシでも食おうと思ったらレストランも満席。さすがアメリカは景気がいい。サンフランシスコの人口密度はバンクーバーの十倍ぐらいある気がするなあ。

 あきらめて屋台のサンドイッチを食べつつ歩き、muniのバスでべつの映画館へ。人気の秘密を探るべく、まだ見てなかった『グリーン・ディスティニー』を見る。英語タイトルはCrouching Tiger, Hidden Dragon(日本公開作品だと気がつかなくて、ウェイン町山に「それでも映画評論家か!」と思いきりバカにされた話はひみつだ)。
 こっちの映画館でも場内は満席で、しかもめちゃめちゃノリノリ。ラブシーンではひゅーひゅー、アクションシーンでは大拍手。シナリオ的にはずいぶんデタラメだと思うんだけど、大作ならそれでいいのかきみたち。まあ『シュリ』が日本で大ヒットしたような感じですか。しかし女の映画になってるのは、この手の香港アクションとしてはけっこう珍しい。

 映画終了後、ヴァンネスの向かいのトミーズ・ジョイントで遅い夕食。ついまたスペアリブを頼んで食べ過ぎて後悔。




【1月7日(日)】


 買い物がてらふたたびダウンタウンに出撃。おたくな本を買い漁る。『MANGAの美少女の描き方』とか。つまり日本のマンガみたいな絵が描きたいお友だち向けの本で、何種類も出てる。格闘の描き方とかメカの描き方もある。さらにAnimeのガイドブックとか。なかなかためになりますね。あとはアニメージュが『TVアニメ25年史』の続きをなかなか出さないのでアメリカのおたくが自分でつくってしまった40年史とか。さらにアメコミ少々とバービー写真集とか買ってたらたいへんな荷物に。

 バートでGlen Parkに引き返し、駅前のカフェで町山智浩と合流。なんかずいぶん体重が増強されたような。日本からやってきたばかりの母上様に子守をさせて自分は遊びに出かける鬼畜な所業。まあ、こんな大人になってしまった息子につきあうより、孫娘の相手をしていたほうがはるかにしあわせかもしれませんが。
 スミス家に到着すると、しきりに家を褒めちぎるウェイン町山。誉める英語は完璧ですね。でもまるでアメリカ人のような誉め方なので気持ち悪い(笑)。
 そうこうするうちにデイナ・ルイスもやってきて、日米おたく対決宴会に突入。これだけ集まってもアメリカTV事情にいちばんくわしいのはウェイン町山。
「わたしも最近全然テレビ見てないから、町山さんの本を読んで勉強します」とデイナ・ルイス。さらに斉藤友之の仕事部屋で別府ちず子のマンガを発見し、思いきり盛り上がる町山智浩。まあサンフランシスコには一冊しかない本かもしれん。それとも引っ越してきたばかりでおたくな会話に飢えているのか……。

 5人で駅前にできた小洒落たアメリカンレストランにくりだし、トーレン社長のおごりで会食。店のたたずまいとメニュー内容が全然合ってない感じですが、お値段的にはリーズナブルかな。




【1月8日(月)】


 朝9時にデソトのキャブを呼んで空港へ出発。30歳ぐらいのかっちょいい美人ドライバーでした。豪快なおばちゃん運転手はときどきいるけど、モデル系はかなり珍しい。




【1月9日(火)】


 半分寝ながら機内上映のWhat Lies Beneath。これを「ホワット・ライズ・ビニース」みたいな邦題で公開する神経は謎すぎる。予告編で見た部分からあとのどんでん返しについては、ああ、そのパターンねと思った記憶はあるが、今となってはなにも覚えていない。

 隣席にすわってる東南アジア系の女性(40代半ばぐらい?)が、トマス・ハリスの『ハンニバル』を読んでたのでちょっと話をする。日本語もできるらしいんだけど、とりあえず英語で、「僕もそれ読みました。ミステリとか好きなんですか?」みたいな。「うん。ハリスはけっこう好き。あとグリシャムとか」
 ユナイテッドのこの便は成田経由のシンガポール行きなので、
「シンガポールまでですか?」
「東京まで。わたし、日本に住んでるの」
「あ、そうなんですか。いつから?」
「もう二十年ぐらい」
 ここであわてて日本語に切り替えるオレ(笑)。
「日本は住みにくくないですか?」
「仕事があれば大丈夫」
「お仕事はなにを?」
「大学で教えてるの」
 なんと上智大学でインドネシア現代史/政治経済を教えてるえらいひとなんでした。というわけで、バリ島の仮面とかランダとかの話を聞いたり、東京にあるインドネシア料理屋のおすすめ店を教えてもらったりしているうちに成田到着。

 リムジンバスで箱崎からタクシー帰宅。荷物をほどき、風呂に入ってしばらく休憩してから、あんまり眠くないので月刊アスキーの新年会@初台に出かける。東京のほうがバンクーバーよりずっと寒いぞ。
 最近、アスキーには全然顔を出してないので、十年ぶりとかで会う人もちらほら。なにしろ月刊アスキーの連載コラムを3年近く担当してもらってたのに一回もあったことがなかった編集者とかもいたりするからなあ。




【1月10日(水)】


 14時間眠りつづけて午後3時ごろに起床。ギブスンのインタビューをまとめる前に、前世紀に収録したソウヤーのインタビュー(SFマガジン用)をまとめないといけないのだった。結局、年末年始は二週間ぐらいろくに仕事をしてないのでたいへんです。千年紀の変わり目なんだから、1年とは言わないけどせめて1カ月ぐらい休みにしてはどうか。1月は本も雑誌も刊行禁止。催促のない1月

 などと夢を見ても締切はなくならないのでひたすらキーボードを叩く。インターセクションはグラビアページに行っちゃったので締切が早いのである。




【1月11日(木)】


 ソウヤーにつづいて、文藝春秋《Title》2月号用のギブスン・インタビュー原稿を作成。IT特集の巻頭に入るらしいので、思いきりそれに合わせた内容につくったら、編集部からずいぶん喜ばれる。1月26日発売予定っす。そのあとひきつづき《本の雑誌》原稿。


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