【11月1日(水)】


 15:00、早川書房でロバート・ソウヤーのインタビュー(SFマガジン3月号用)。1997年にサンアントニオのワールドコンでも一回インタビューしてるので(SFオンライン参照)、これが2回目。もうあんまり聞くことないので――というか、たぶんオレは日本でいちばんひどくソウヤー作品をけなしてる書評家なんだけど、ソウヤーが日本語読めなくてほんとによかった――瀬名さんかだれかとの対談にすればといってたのに、けっきょく時間切れでまたまたインタビューすることに。立会人は熱血ソウヤー翻訳者の内田昌之。じゃあおまかせにしようと思ったら内田にも逃げられてしまい、わりと基本的な質問でお茶を濁す。しかしソウヤー氏はどんどんしゃべってくれるのでノー・プロブレム。
 1月に刊行予定のFlash Forwardに関しても、「ヴォネガットの『タイムクエイク』を連想させる設定ですが、インスパイアされたんでしょうか」とか、読んでもいないのに読んだような顔で質問(笑)。アメリカでは『タイムクエイク』との類似を指摘する書評はひとつもなかったそうですが、ふつう『タイムクエイク』だと思うよなあ。全人類の意識が一瞬だけ未来に飛んじゃう事件が起きる話。

 インタビュー終了後は地下のリヴィエールで歓迎パーティ。ソウヤー・ファン多数が出席。ソウヤーにサインを求める本は『占星師アフサンの遠見鏡』が多かったような。品切だから? なぜか古橋秀之がいたり。

 二次会は近くの居酒屋。ソウヤーはアルコールを飲まず魚を食わないので店の選択はたいへんだった模様。
 終了後、神田駅前で解散。新宿方面に流れるタクシー2台が去り、野田玲子、塩澤編集長、さいとうよしこと西葛西方面組でタクシーに乗ろうとしたところ、なぜか茫然と佇む男がひとり。もちろん、「なぜかそこにいる」のが芸風の福井健太である。
「きみはどうするの」
「いや、ぼくは行くところがありません」
「ああそう。まあ大人なんだから自分でなんとかしたまえ」
「そんな! ひどいじゃないですか!」
 なにがひどいのかよくわからないが、ここで甘やかすと彼の将来にとってよくない。昔の人は言いました。「情けは人のためならず」
 しかし結局、さいとうよしこが四人で乗り込んだタクシーを降り、福井健太ともう一台のタクシーに乗って西葛西方面をめざすことに。
 しばらくして携帯が鳴る。
「なんか福井くん、冷静になったら方向が反対だって気がついたみたいで、逆向きのタクシーに乗るからって降りちゃったよ」
「…………」

 一応反省しているのでコメントは差し控えたい。しかし森山和道との抗争(このあたりからうしろ参照)が一瞬で終わってしまったのは情けない。bk1のミステリ棚×SF棚の内部抗争で派手に盛り上げて集客するのが正しいネット的営業戦略では。

 amazon.co.jp開店。
 あと、検索エンジンのgoogleをまだ知らない人がけっこういるみたいなので、日記からもリンクを張っておきましょう。gooよりはるかに使えます。これでデフォルト100件表示が可能ならもっといいんだけど。




【11月2日(木)】


 《サイトで〜た》のコラム原稿、bk1のインタビュー原稿まとめ、《本の雑誌》用の読書とか。




【11月3日(金)】


 本格ミステリ作家クラブ準備会の総会@日本出版クラブ。会則と役員人事の承認とか。

 つづく発足記念パーティは鮎川賞パーティの常連プラスアルファの大盛況。文壇パーティ初登場の森博嗣・乾くるみに加えて、大森も何年ぶりかで会う松尾由美とか。主に初対面の人同士を紹介する係を担当する。
 喜国夫妻ともひさしぶりの対面。喜国さんの腹部の手術痕と発掘された結石を見せてもらう。かなり邪悪な外見(笑)。

 二次会は神楽坂カーニバル2。結局ここかい。
 巨大パーティルームにも入りきらず、あぶれた人々はべつの部屋へ。地下二階をフロアごと貸し切り状態。
 3,40人入ったパーティ部屋では、さすがにだれも歌い出さない――と思ったら、すっくと立ち上がったのが横井司@探偵小説研究会。いきなりアニソン(やや濃いめ)。
 しかも、二曲目も横井司(笑)。

 奥の部屋に避難すると、倉阪鬼一郎が、
「だいたいミステリの評論家はTPOをわきまえない人間が多い。いきなりアニソンとはどういうことか。しかも二曲もつづけるとはまったく」
 などと怒っているので、
「でも、横井司、いまは『東京ラプソディ』歌ってるよ」と教えてあげるといきなり顔色が変わる倉阪鬼一郎。
「なに。それはいかん。ちょっと行ってきます」
 と立ち上がり、しばらくすると、大部屋のほうから倉阪鬼一郎の特大の邪悪な歌声が……。奥のボックスの人々はただ爆笑。3分後にもどってきた倉阪さん、もとの席に倒れ込むと、
「……いかん。またやってもうた」
 横井司とはいいコンビになるんじゃないかと思いますがどうですか。それにしてもあんな人だとは知りませんでした>横井司。いやはや。
 なにしろですね、その後、奥の部屋にカラオケ好きが集合して大盛り上がり大会になってる最中に、「じゃあ、ぼくもそろそろ」と言って、またまた横井司の入れた曲が、谷山浩子「夜のブランコ」。なかなかできない選曲である。この勇気は見習いたい。

 そのうちさいとうよしこが斉藤友子を連れてやってきたので、友子ちゃん(宮部みゆきファン)に宮部さんの歌声を聞かせる。それがまた「魂のルフラン」だったりするのがなんとも。
 別部隊と食事に行ってた森博嗣氏もあとからやってきたんですが、問答無用でカラオケ部屋に拉致監禁されてました。なかなか心温まる風景というか。まあ宮部さんが久々に歌いまくってたのでポイントは高かった気が。鯨統一郎の歌を聴き損ねたのはちょっと残念。

 大森は新曲を仕入れてないのでもっぱら雑談部屋で四方山話。野崎六助氏が竹本健治ネタでいじりまくる姿が新鮮。笠井さんもやたら上機嫌だったな。

 12時をまわったあたりで空腹に負けてロイヤルホストに流れ、竹本・綾辻組と合流して食事。朝まで組の人々と別れて帰宅。




【11月4日(土)】


 夕方起きて高田馬場。林哲矢日記によると、小浜徹也、三村美衣、志村弘之、林、久世信、茅原友貴、柳下毅一郎、高橋良平、福井健太、大森望、添野知生というメンバーだったらしい。
「髪の色」問題の元凶は大森ではなく柳下毅一郎。いきなり銀髪にしたらしいがどうも緑がかった金色に見える。高橋良平はナチュラルなシルバーメタリックで、3人並ぶとオリンピックの表彰台だとか。しかしオレは銅メダルなのか? 納得いきません。
 高橋さんはふつうなのに三人揃うと仲間に見えてかわいそうと同情されていました。柳下はどうしても馳星周系。すでに夜中の渋谷を歩くのはこわい感じ。みんなで喧嘩をふっかけよう。

 それにしても林日記で嘆かわしいのは、「エステルハージィ・ラヨシュ」という謎の人名。これはもしや、かの名作、「メサイルと星と献立」で知られるメシュテルハージ・ラヨシュのことでしょうか。こんな簡単な基本的人名を間違えるとは、林哲矢には猛省を促したい。こういうひとがSFオンラインのSFマガジン・レビューを担当するとは世も末である。

「青少年SFファン活動小史」については、だれか注釈をつくってほしい。ここに出てくる固有名詞はオレでも半分ぐらいしかわかりません。ま、オレは東京ファンダム出身じゃないからな。




【11月5日(日)】


 6時半起床。ワセミス主催の講演会ゲストが五條瑛なのでひさしぶりに顔を見に行こうと思ったんだけど、結局すれ違いであえず。かわりに講演会流れの宴会三次会に合流し、《土風炉》でワセミスの現役学生たちと2時間歓談。講演会の五條瑛嬢はいつものファッションでいつもの調子だったらしい。会場は五條ファンのお嬢さんたちが大挙押し寄せていた模様。『プラチナ・ビーズ』のときの予言が的中して満足かも。

 ついでに買いのがしていた《フェニックス》最新号を注文。まだ在庫があるみたいなので、ほしい人はおはやめに。でもまだうちには届いてないぞ。




【11月6日(月)】



 今週は金曜から京都なのにぜんぜん仕事が終わってないので、ひたすら原稿。  スターログ原稿のために、DVDで買ってきたハワード・ホークス版「物体X」を20年振りに見直す。こんなにバカな映画だったっけ? 後半をぜんぜん覚えてなくて愕然とする。いやはや。




【11月7日(火)】


 さらに原稿を書き続ける。とりあえず、『このミステリーがすごい!』の国内編と、東京創元社から原書房に移籍した『本格ミステリーベスト10』のベスト投票。
 スターログの80年代SF映画コラムをカーペンター版「遊星からの物体X」で書き、《SIGHT》のSF/ホラー時評を仕上げ、世界文化社《メンズ・エクストラ》の新連載映画コラム、「SF的」の第一回を「式日」で書く。
 その勢いで、bk1の連載コラム、「大森望のSFハイパーリンク」第四回の中村融・山岸真インタビューにつける注を書く。今回は河出文庫《20世紀SF》刊行開始記念企画なので、それに合わせてSFアンソロジー特集を組むことに。
 その昔、三村美衣編集の《てんぷら☆さんらいず》4号アンソロジー特集に書いた原稿、『お花畑でつかまえて 日本語で読める英米SFアンソロジー・ガイド』をまずhtml化。たしか5年ぐらい前、てんぷら☆さんらいずサイトが現存していたときに一度html化されてるはずなんだけど、データはすでにどこへ消えたか行方不明。あの特集をそのままぜんぶhtml化すればけっこう役立つと思うんだが、キャノワード文書(笑)のかたちでしか残っていないらしい。
 一応、80年代までの文庫版SFアンソロジーに関してはこの原稿でほぼ網羅されているはずなので、それ以降をフォローすべく、「bk1でいま注文できる英米SF(およびその周辺作品)アンソロジー適当リスト」を作成。内容の確認にやたら時間をとられたり。このリストはbk1注文ボタンがついてないと意味がないので、そのうちbk1のほうにアップロードされるでしょう。リストだけならとりあえずここにあります。
 さらについでに、福島アンソロジー収録作リストを作成。芳賀書店版と講談社文庫版の対照表をつくろうとしているうちに謎なものになってしまった(笑)
 ほんとはジュブナイル関係とかも入れないといけないんだけど、あとは
野村宏平さんのIndex to Anthologiesとか、ameqさんの「海外SF翻訳作品集成」とか、石原インデックスとかで適当に検索してください。

 bk1と言えば、森山さんところで便利なSF新刊用検索ボタンが。さっそく流用してみました。「いま買えるのに買いのがしていた本」チェックには有用。




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