【10月1日(日)】


 3時間ぐらい寝てから男子マラソンを見てまた寝る。
 夜中に起きてザ・スニーカーの押井インタビュー原稿とか。




【10月2日(月)】



 筒井康隆の最新短編集『魚籃観音』(新潮社)と、ジュブナイル作品集『細菌人間』(出版芸術社)を読む。
 『魚籃観音』では、「ジャズ犬たち」と「谷間の豪族」でしょう。後者のオチにはちょっと茫然。80年代筒井康隆から戦略的に一歩後退してる感じが非常にしっくりなじむ。いまさら「新しいカンカク」をウリにすることもないわけで。円熟の境地ってやつですか。若い人には物足りないかもしれないが、そういう人は文庫で昔のやつを読んでいればよろしい。
『細菌人間』は、筒井ジュブナイルとしてはかなりダメなやつが多いんだけど、「W世界の少年」は爆笑。パロディ版『発狂した宇宙』で、ある意味ヤングアダルトっぽい。表題作は、フィリップ・K・ディック Father-thing(パパに似たやつ/お父さんに似たもの/父さんもどき)の本歌取り。2本めの冒険物は豪快なまでにでたらめ。
 まあしかし、最近のヤングアダルトは昔のジュブナイルっぽいものが増えてるよね、とか言ってても、ほんまもんの「昔のジュブナイル」はやっぱり全然別物なんでした。




【10月3日(火)】



『八犬伝2001』の第一回を見る。なぜアボ? シドニー五輪合わせなのか。女子ソフトボール部だし。って、アボリジンをアボと呼ぶのは蔑称なので気をつけていただきたい。
 字は違うけど(阿保智子)、鈴木あみにオレの本名を連呼されると恥ずかしいというかなんというか。
 でも、「なんでアボなんかとつきあってるんだよ」って大きなお世話です。




【10月4日(水)】


 終日仕事。




【10月6日(金)】


 午後7時、新宿3丁目、味のセゾンプラザで「野尻抱介さんの星雲賞受賞を祝う会」
 詳細は野尻ボードの当人報告参照。
 大森さんは「星雲賞ごときでこんな大騒ぎしてちゃだめで、やっとこれでSF作家と名乗れるようになったってことですから――ま、その前から名乗ってましたが。これからスタートですから、野尻さんは決して森岡浩之のようになってはならない。森岡さんは火浦巧をめざすと言ってますが森岡さんにテニスができますか」と本人の面前でわるものぶりを放射していました。しかしクラークのサイン入りのTシャツをくれたので、根はいい人なのかもしれません。

 だそうです。ちなみに「火浦巧」じゃなくて火浦功ね。この話のポイントは、野尻抱介も体型的・ライフスタイル的に森岡浩之の仲間であり、「書かない作家」として(火浦功のように)キャラをたてるのは無理である。SFを書き続けないかぎり存在価値がない。というところにあります。
「クラークのサイン入りのTシャツ」は、スリランカでもらってきたやつ。クラークが共同経営してるダイビングショップのオフィシャルTシャツというレア物ですが、うちに置いておくと猫の毛で汚れるばかりなのでこの機会に処分。しかし野尻さんは、豪勢な花束といっしょに、このTシャツもパーティ会場に忘れたまま、自分の荷物しか持たずに二次会場へ移動。忘れ物を届けにきた三村美衣に思いきり罵倒されていたことは記録に残しておきたい。
 さらに三次会場への移動に際しては、巨大な花束を持ち歩くのに嫌気がさしたのか、
「これ邪魔ですね。このへんに捨てていっちゃだめですかね」と、路上のゴミ捨て場に放り出しかけて、思いきり周囲の顰蹙を買っていたことも記録に留めたい。
 さいとうよしこも事前に、やっぱり花とか持っていったほうがいいかなとか言ってたんだけど、「やっぱり野尻さんはウツボカズラとかじゃないとダメでしょ。花は好きじゃないと思うな」と考えを改め、花束購入をやめたんですが、それが正解でした。豚に真珠、のじりんに花束。

 パーティ会場では、青井邦夫氏ほか数名の方から、「リトル東京はいつ復活するんですか」とのご下問。asahiのミラーサイトはまだ全然知名度が低いらしい。www.ltokyo.comは、すでにマシンの入れ替えは終了し、現在試験運用中。10月中旬には、同じurlで復活するはずです。しかし全ファイルの移転が終わるのはいつのことやら。この機会にディレクトリ構造を直したいんだけど、そうすると旧ファイルのリンクをぜんぶ直さないといけないしなあ。

 二次会では酔っ払った(ていうかいつもの)谷甲州氏から、お嬢さんの自慢話を一時間聞かされる。「下の娘はワシに似て色っぽいんや」って、それは誤解を招きがちな表現。べつの場所では阿部毅氏が爆発していたらしい。

 野尻抱介・堺三保・塩澤快浩とタクシー2台でうちの仕事場。だらだら世間話をして明け方帰宅。




【10月7日(土)】


 夕方からユタ。のべ16人の盛会だったらしい。東京国際映画祭のパンフを検討。




【10月8日(日)】


 
《本の雑誌》書評用に、月末刊行の瀬名秀明『八月の博物館』(角川書店)をゲラで一気読み。時代はジュブナイルなのか?
「メモワール美術館」だと思いこんでましたが、「めもあある美術館」が正解だったらしい。しかし瀬名さんの時代にも小学校の国語教科書にこれが載ってたとは。
 なんでエジプトなんだろうと思ってたら、こちらの元ネタは「カンビュセスの籤」(推定)。わたしは中公の藤子不二雄SF短編集で初めて読んだクチなので、これに関してはあまり思い入れがありませんが、なるほどこのへんがSFの原点になるわけですか。ていうことは間接的に40年代50年代のアメリカSF短篇の影響を受けてるはずで、そのつもりがなくてもSFに成ってしまう理由がよくわかる。
 ディテールをすっ飛ばしてしまうと、資質的にはけっこう山田正紀に近いのでは。『エイダ』的な要素もわりと目につくし。ただし、山田正紀的(文系SF作家的?)なはったりが全然ないのが特徴。ストレートすぎるのが弱点かもしれない。




【10月9日(月)】


 日本代表とパリ・サンジェルマンの壮行試合。どうでもいい試合とはいえ、あそこで追いつかれてしまうようでは先が思いやられるなあ。まあアジアカップ前に弱点を思い出しておくという意味では貴重。もうひとつ貴重だったのは小野くんです。意外とやれるじゃん。いや、そんなとこにいていいのかという問題は別にして。しかしレッズでやってるときとは別人。小野じゃなくてレッズがダメなの?




【10月10日(火)〜11日(水)】



 本の雑誌が終わったので、国産ミステリ9月新刊の未読消化。

 辻井南青紀『無頭人』(朝日新聞社)は朝日新人文学賞受賞作。文体は村上龍系。オヤジ狩りの高校生が主人公なんだけど、どうしようもない感じのキャラは馳星周か。全裸にマスク姿で土下座して「いのちだけはおたすけください」とくりかえす謎の男は秀逸。

 森山清隆『エイリアンクリック』(光文社カッパ・ノベルス)はUFO陰謀理論モノ。トンデモ本ミステリは今年の流行? 面白いネタも多少入ってるけど、これではちょっと。トンデモ的にもミステリ的にも中途半端。

 香山二三郎氏イチ押しの香納諒一『炎の影』(角川春樹事務所)は、死んだ父親との関係に決着をつける話。もう完璧に演歌の世界に入り込んだハードボイルドで、こういうのが好きな人がいるというのは理解できるが、どこが面白いのかはさっぱり理解できない。

 装丁的にはそれとほとんどそっくりの(というか、オビもカバーもタイトルも、交換したって誰も気づかないんじゃないかと思う)東直己『残光』(角川春樹事務所)は、中身は180度違いました。むしろ戸梶圭太の仲間では。めちゃくちゃ強いスーパーヒーローが山で大人しく暮らしてて、その間は平和なんだけど、うっかりこいつが発動するとたいへんなことになるので、新宿のヤクザとかは戦々恐々としているという設定。キャラクター小説的には非常によくできてて、類型の使い方が抜群にうまい。もう爆笑です。
『炎の影』とおなじヤクザ物でも、中身は『ゴッドファーザー』と『レザボア・ドッグス』ぐらい違う。むしろ『アドレナリン・ドライブ』とか『鮫肌男』の仲間でしょ。売り方がまちがってるとしか思えません。

 佐藤正午『ジャンプ』(光文社)は、昔に戻ったような感じのダメ男ラブストーリー。コンビニにリンゴを買いにいったまま失踪しちゃった恋人をさがす話で、むかし知り合いが失踪しちゃったときのことを思い出したり。『Y』のような仕掛けはないんだけど、ラストはなかなか。

 永嶋恵美『せん−さく』(幻冬舎)は、オンラインTCGの掲示板オフ会から始まる。オフの描写は爆笑で、「ルリルリよりユリカでしょ」みたいな単語もちらほら。しかし後半はわりとふつうのミステリになっちゃって、やや退屈。

 ネット物と言えば、倉阪鬼一郎『不可解な事件』(幻冬舎文庫)の冒頭のやつも笑えます。こっちはちょっと生々しすぎるかも。こういうタイプの連作だと、無理してストーリーをつくらなくてもいいので、資質的には合ってますね。しかし電波なひとの描写ではだれも牧野修に勝てない。




【10月12日(木)】


 2時、赤坂の東北新社で、『PARTY7』の石井克人インタビュー(for 文藝春秋《TITLE》)。おたくネタ方面のツッコミ係として指名されたらしいので、なぜキャプテン・バナナなのか? なぜ造形が原口智生なのか? とかそういう話を中心に聞く。小学生時代はアニメセルおたくだったそうで、そのころの友だちの話が爆笑。尊敬する監督は出崎統、好きなTVアニメは「ど根性ガエル」という正統派。まあ、ガッチャマンがああなっちゃう世の中だから、インプットがこれでアウトプットがアレっていうのは納得できなくもなかったり。当然のことながら、映画監督ってイメージとは全然違いますが、結果的に、「思いつきで好きなようにやる」ってところで自主映画に近づいてしまうのがCF出身監督の系譜なのかも。

 馬場の芳林堂で、電話注文してあった文語訳の聖書を購入。新共同訳と口語訳を同梱した電子ブック版聖書はHDDに入れてあるんだけど、やっぱりモノによっては文語訳じゃないとどうしても気分が出ないのだった。「死の陰の谷を行くときも/わたしは災いを恐れない」じゃあね。ここはどうしても、「たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害をおそれじ」でしょう。それにしても、日本聖書協会は、どうしてウェブ上で翻訳を公開しないのか。個人サイトに著作権法違反とかいちゃもんつけてる(←推定)場合じゃないぞ。

 9時、テアトル新宿で三池崇史監督「DEAD OR ALIVE2 逃亡者」の試写。そうそう、連絡船といえばやっぱりうどんです。私はてんぷらうどん派でしたが、隠岐島行きのフェリーでもやっぱりうどんが出るんだね。
 今回は、DOA「島編」。哀川翔と竹内力は、おなじ孤児院で育った仲間という設定。対決モノのシリーズじゃなかったらしい。塚本晋也が田口トモロヲみたいな役で出てると思ったら、後半、田口トモロヲはちゃんとべつの役で登場。塚本は田口の控え?
 冒頭は前作の結末を受けて(?)、妖星ゴラスのように始まるんですが、ネタのフォローはなし。天使の翼(黒い天使と白い天使)とか出して、「ザ・クロウ」になるのかと思えば、これまたフォローなし。思いつきのネタを入れるのはいいけど、ちゃんとサポートしてほしい(『漂流街』の闘鶏ネタ参照)。
 島編の本編部分は悪くないんですが(ただし芝居部分はもっと面白くできたはず)、大阪編はちょっとねえ。NAKA雅MURA脚本とは思えないほど話がばらばらだし。
 しかし、関係者試写を兼ねてたおかげで、会場には、哀川翔、竹内力、青田典子、田口モロヲ、手塚とおるetc.と出演者陣が多数集合。実物を間近に見学できたので満足。哀川翔は意外と長身でした。手塚とおるはそのまんま。なんか気弱で友だち少なそう……。

 終了後、柳下毅一郎とアジアン・キッチンでサッカー話1時間。終電で帰宅。

 帰ってアジアカップ開幕戦。A組、イランは強すぎでしょう。レバノン相手とはいえ、ダエイ、アジジに両サイドのマハダビキア、ミナバンドが加わる攻撃陣は超強力。決勝トーナメントの緒戦で当たるとちょっとイヤかも。

 イラク×タイは予想通りの試合でつまんない。ていうか、予選段階で8チームに絞って、本大会は2組に分けて総当たりとかにすればいいのに。予選リーグで12チームを8チームに絞って決勝トーナメントっていうのはなあ。




【10月13日(金)】


 ソウル以来、ひさしぶりに美容院へ。しばらく髪の毛が黒いままだったので、たまには違う色にしてみるかと思ったらたいへんなことになってしまった。そりゃ、おまかせにしたのはオレだけど。まさかこんな色になるとは。まあ自分には見えないからいいんだけど、心の準備なしに鏡を見ると心臓に悪い。おまえだれ。

 ブリーチしたあと色を入れたので所要時間は3時間。持参した戸梶圭太『赤い雨』(幻冬舎文庫)をあっという間に読み終わってしまい、ちょっと失敗。アイデアは面白いけど、ほとんどプロットが存在せず、断片的な描写だけ。こういうの書くのはもうちょっと先でもいいんじゃないかと思った。

 アジアカップ予選B組。この組は韓国、中国が1位2位で、クウェートには3位抜けの可能性があり、インドネシアが番外地。とだれでも思うはずだが、韓国×中国、クウェート×インドネシアはともに引き分け。
 それ以上に笑ったのが韓国×中国の中継映像。
 レバノンから衛星中継されてきた国際映像を編集し、1時間遅れでNHK BSが放送してるんですが、合計4ゴールのうち、2ゴールのナマ映像を中継に失敗するお粗末。片方は、左コーナーキックの早いリスタートからのゴール(韓国)で、リプレイ流してる隙をつかれたよくあるケース。しかしもう片方が凄い。その7分後、映像が一瞬途切れたと思ったら、
「映像ではお伝えできませんでしたが、この間に中国がペナルティキックで同点に追いつきました。PKを与えた洪明甫はレッドカードで退場になり、韓国は10人です」
 再三再四、映像が乱れるのはまあしょうがないとしても、絵がまったくないわけじゃないんだから(スローのリプレイは一瞬流れた。PKはともかく、あれでレッドカード退場は厳しいのでは)、もうちょっとなんとかならないもんですか。
 中国はこれで勝てそうだと思ったとたん緊張したのか足が止まり、結局2-2の引き分け。しかし次はまたしても洪明甫が出られないわけで、韓国危うし。ア杯もなにが起きるかわかりません。




【10月14日(土)】


 4時から竹橋でミステリチャンネル《ベストブックス》の収録。現場に行ったら、カートに機材を山積みにしたクルーのお兄ちゃんと廊下とすれ違い、「おはようございます」とか挨拶したんですが、向こうは茫然とした顔でオレの髪を見つめ、壁にカートをぶつけて機材の山ががらがらと崩落。そんな、化物を見たような顔をしなくても……。

 トヨザキ社長も爆発ヘアで登場し、間にはさまれた香山二三郎氏は、Tシャツの上からネクタイを締めるプレイを強要されることに。ますますバラエティ化が進んでいるような……。

 これまでミステリチャンネルの掲示板、情報交差点はドラマ関連の話題が中心だったんですが、昨日から、小説専門の掲示板《ミステリ相談室》が新設された模様。トップからベストブックスのページを経由して飛べますが、とりあえずこれが《ミステリ相談室》直リンク。タイトルは「相談室」ですが、投稿はミステリ小説関連/ベストブックス関連、なんでもOK。出演者はみんな読んでるはずなので、香山二三郎・吉野仁・トヨザキ社長などに文句のある人はぜひどうぞ。
 あと、2000年の年間ベスト投票も受けつけてます。投票フォームはこちらから

 収録終了後は神楽坂の寿司屋でメシ。話題は主に香山二三郎氏のお嫁さん探し。ていうか、毎月これです。われと思わんミステリファンの独身女性は、ぜひ上記掲示板で立候補を。カヤマ氏はけっこう貯金もあるし、人格は円満だし、背は高いし、痩せてるし、早稲田大学出身だし、釣書的には問題ないと思うんですがどうですか。

 帰宅後、アジアカップ予選C組。日本×サウジアラビアは、サウジが弱すぎ。しかし高原の2点めは立派。フォワード二人の得点のあと、名波、小野のゴールっていうのも理想的な展開。5点めは伏兵の森岡(笑)。いくらサウジが入れてくれないからって、自分で入れなくても……。川口は気負いすぎて空回り。ほかにも危ないシーンが2度ありました。あのオールバックのヘアスタイルはやめたほうがいいと思う。

 ウズベキスタン×カタールは1対1の引き分け。カタールも決定力がない。ウズベクもあのオフサイドがなければねえ。見たところ、この組では実力的に日本が抜けてる感じ。しかしだからといってウズベクに勝てるとは限らない。まあ、負けはしないだろうけど。
 最大の問題は決勝トーナメント一回戦なので、そこまで無難にやってほしい。


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