【9月25日(月)】


 そういえば、昨日の夜はジャイアンツのリーグ優勝が決まったらしい。

 室伏のハンマー投げが後半に進めなかったのを見届け、あまりに低調な記録に愛想をつかして寝床で本を読んでたら、とつぜん、となりのアパートのほうから、「うぉおおおおおお!」というもの凄い歓声が。
 もう今日のオリンピック競技はだいたい終わってるはずだし、いったいなにごと? と思ったら、それにつづいて、「満塁ホームラン!」の絶叫。
 ふうんと思いつつ居間にもどると江藤の満塁ホームランで東京ドームは4−4の同点。ドラマチックなのはサッカーだけじゃないのか。と思ったら次の瞬間に仁岡のサヨナラホームラン。逆転サヨナラ優勝! とかアナウンサーが叫ぶ叫ぶ叫ぶ。

 そうか、プロ野球ってまだやってたのか。

 おかげで今朝のスポーツ紙各紙は芸能面ゼロ。高橋尚子の話とジャイアンツの話しか出てませんでした。

 18:00、五反田イマジカで中嶋竹彦監督『人間の屑』の試写。WOWOW+バンダイビジュアル製作で、仙頭武則プロデュースのJ・MOVIE・WARS第5弾。原作は町田康『夫婦茶碗』に入ってる同名の短篇。プロットやキャラクターじゃなくて文体で読ませる小説だけに、映画にするのはむずかしい素材。絵的にはもうちょっと冒険してもよかったんじゃないかと思いますが、村上淳はダメな感じがよく出ていた。夏生ゆうなも佐伯日菜子のお株を奪う迫力。しかし原作を読んでないと納得しづらいかもなあ。

 試写終了後は、イマジカの地下で、崔洋一氏が音頭をとった中嶋竹彦再デビュー祝賀パーティ。なぜこんな宴会に呼ばれたかというと、中嶋さんの奥さんが、元《本の雑誌》編集部のY田N子こと、吉田伸子だから。世間はせまいというかなんというか。
 サンセントシネマワークスの仙頭プロデューサーとも5年ぶりぐらいに対面。WOWOW時代には毎週のように会ってたんだけど、『萌の朱雀』『M/OTHER』『EUREKA』と、いまや飛ぶ鳥を落とす勢い。プロデュース作品はすでに40本を越えているらしい。
 助演の鰐淵晴子様が花束持って駆けつけたり、豪華絢爛たる宴会でしたが、オレとしてはやはり佐伯日菜子に挨拶できたのが最大の収穫。デジカメ持っていかなかったのが惜しまれることである。ちなみに試写にはUAも来てたそうだけど目撃し損ねた。ちぇ。

 しかし会場の片隅で、主賓の奥様や東えりか相談員と額を集めて、WEB本の雑誌・読書相談室に関する相談をしたりしているのでは、なんのパーティなんだかよくわかりません。




【9月26日(日)】


 ビデオをセットするのを忘れたので、夜中に帰宅して、スペイン×アメリカの準決勝を後半から見る。というか、後半はほぼ存在しませんでした。アメリカは準々決勝とはほとんどべつのチーム。負けてるきみたちがやる気出さなくてどうする。向上心も闘争心も日本戦で使い果たしてしまったのか。点をとられそうな気配が全然ないのでスペインはちんたらボールを回すだけ。時間の無駄。

 その正反対だったのがチリ×カメルーンの後半。カメルーンはあいかわらず、いくらチリに裏をとられてもどんどんディフェンスラインを上げて上げて上げまくる(動き自体はわりとちんたらしてます)。裏をとられたってぜんぜん平気。チリの選手にはぜったいゴールが決められないから。今日のカメルーンのゴールキーパー、カメニくん16歳(おまえほんとに16歳?)には神様がついてました。ゴール前にチリの選手が三人いても、GKと余裕ばりばりで一対一になっても、決まらないものは決まらない。
 最後のほうはもう、チリの選手もこりゃまただめだなあと思いながらボール蹴ってる感じ。しかし、攻撃側がゴールを割れないなら、かわりに守備側に入れてもらいましょう作戦が的中。さすがのカメニくんも、味方ディフェンダーのシュートは防ぎきれず、オウンゴールでついにチリが勝ち越し。これでとうとう勝負あり。カメルーンの諸君、きみたちはほんとうによくがんばった。えらい。ブラジル戦といい、このチリ戦といい、歴史に残る戦いぶりだったよ。
 と健闘をたたえているところにエムボマくんのシュート。うわ、きみのシュートはどうしてそんなにあっさり決まりますか。同点で延長をしのげば、PK戦はぜったいカメルーンの勝ちだよね。
 と思ってたら終了間際にまたまた神様ンボマ様がPKをもらう。こ、これでカメルーンが勝っちゃうなんて。
 サヨナラ逆転優勝よりやっぱりこっちのほうが面白いと思いました。ドンペリはかけないけど。

 さあ、仕事に行くか。と準備をしかけたところで韓国×アメリカの野球がはじまったのでつい見てしまう。録画なので短く編集してあって、ちょうどいい感じ。しかしこっちは雨で2時間中断して、真夜中過ぎまで試合をやってたのね。韓国もえらく気合いが入ってたけど、ドリームチームつくってもアメリカのマイナーリーグには勝てない。




【9月27日(水)】


 仕事して帰ってきて、さあ寝ようと思うとオリンピック中継がはじまるのはなんとかしてほしい。
 日本×韓国の三位決定戦をつい見てしまう。あのアナウンサーと解説者はなんですか? 高校野球担当のひと? 「松坂クン」はともかく、いくらなんでも「中村クン」はないだろう。韓国の選手のプロでの実績とか記録とかを全然まったく紹介しないのは、もう常識になってるから? 松坂の奪取した三振の数と松坂の直球のスピードにしか言及しないのはなぜ? 「はやく松坂を援護してやりたいですね」って、そういうところだけプロ野球の常識が顔を出す。トーナメントの三位決定戦は援護とかそういう問題じゃないでしょ。

 それにしても、あそこで直球を三球つづけるとは、前回の敗戦にまったく学んでいない配球としか。それ以前に、6回か7回でピッチャー交替でしょう。プロアマ混成チームの監督がいろいろ作戦を立てにくいのはわかるが、あれにくらべればトルシエだって天才監督だぞ。まあ、オールスターの監督みたいなもんだと思えばあんなもんか。でもやっぱり広岡が監督のままだったら……と思うのは避けがたい。

 木製バットになった以上、オリンピックの野球はもはや日本のアマチュア野球とは別物。どうしても混成チームにするなら、プロの野手+アマの投手という布陣のほうがまだ戦えたのでは。このチームで4位は順当な結果ですね。

 3時間ほど寝て、18:00から、半蔵門の関東クラブで第12回日本ファンタジーノベル大賞授賞式。
『仮想の騎士』で優秀賞を受賞した斉藤直子さんは国立天文台勤務(事務系)。歴史物の原点は少女マンガらしい。アニメ版ベルばら世代。二枚目騎士の女装ネタとかあるのでてっきり森川久美かと思ったら、そっちは全然読んでなかったんだそうで。
 二次会は例によってオークラのオーキッドバー。歴代受賞者では、審査員の鈴木光司のほか、南條竹則・井村恭一・山之口洋、沢村稟・宇月原晴明の各氏が出席。
 鈴木光司はぜったい政治家になると予測してるんだけど、本人はまんざらでもなさそう。比例代表区記名制の民主党候補とか? AERA最新号の特集「慎太郎を精神分析する」を読んだ奥さんから、「あなたとそっくりじゃないの」と言われたらしい(笑)。自分で読んでも、「オレのことかと思った」そうで、さもありなん。「天然のナルシシズム」だもんなあ。しかし民主党向きのキャラクターじゃない気が。
 山之口さんはデュアルCPU、デュアルモニタの執筆用PCを自作したとか。あとはbk1とか電子文庫パブリとかの話。
 23時過ぎにお開きとなり、山之口さんとタクシーに相乗りして帰宅。




【9月28日(木)】


 EudoraPro4.2Jが起動しなくなったので、あきらめてEudora4.3日本語版にバージョンアップ。Eudoraからパッケージ販売がなくなって、広告つきの無料ソフトに変身。まあもともとはフリーウェアだったわけですが。
 細かいアンケートに答えてからダウンロード。インストールしてみると、広告スペースがけっこうでかい。いったいなんの広告が入るんだろうと思ったら、bk1でした(笑) ノート環境ではわりとうっとうしいので速攻で金を払って広告解除。ほんとは無料で解除できるはずなのだが、解除キーが行方不明なのだった。

 プレミアの『漂流街』原稿、小説すばるの書評、アスキー・ネットJのネット・オークション・コラムなど。ネットJは、オリンピックエイドのシドニー五輪オークションネタ。一点モノのウォンバットがめちゃめちゃ高騰してるのが笑えます。




【9月29日(金)】


 東京會舘で、第一回小松左京賞・角川春樹事務所創立4周年記念パーティ。
 春樹社長のスピーチは、SFセミナーでしゃべってたこととだいたい同じ。そうか、あれはこれのリハーサルだったのか(笑)。ボルテージはどんどん上がり、最後は、
「富野監督と組んで『果しなき流れの果に』をアニメ映画化します」と大々的に宣言。はたしてだいじょうぶなのか。すでに『アレキサンダー戦記』劇場版だけでもじゅうぶん不安なんですけど。
 小松さんの挨拶は例によって激しく脱線しつつ宇宙の彼方をさまよい、どうなることかと思われたが、ようやく受賞作『エリ・エリ』の話にもどってきたかと思うと、
「『虚無回廊』の第四部は、もう平谷さんにおまかせしようと思っています」
 とお約束のギャグ。だからギャグにならないんだってば。

 これで授賞式終了かと思いきや、つづいて角川春樹事務所社長賞の発表。最新号で50万部を達成した《ポップティーン》の編集長などが壇上に上がり、春樹社長が賞状を読み上げるんですが、その文面がすばらしい。社長直々に、受賞者の入社以来の功績の数々をじつに細かく文章化したもので、これが角川春樹の人心掌握術? 誉めるときはちゃんと誉めるのが基本ですね、やっぱり。
 と、となりにいた山田正紀氏に言ったら、
「それがわかってて、どうしてできないの?」だって(笑)。
 山田さんに面と向かって『ナース』の悪口をさんざん並べ立てたことを指すらしい。ダメでしょう、あれを誉めてちゃ。ああいうバカホラーこそ、しっかりまじめに書いていただきたい。
「あれは書いてる人間がいちばん楽しいっていうのがコンセプトなんだから、苦労して真面目に書いたりしちゃ意味がないんだよ」
 って同人誌じゃないんですから。とか言ってると小森健太朗氏がすたすた近づいてきて、
「どうもご無沙汰してます山田さん。『ナース』面白かったです」
 いやはや。

 富野さんも来てたので『果しなき…』について直撃。まあいろいろとアレでナニらしい。熱血ガンダムおたくの高瀬彼方を紹介しようとしたが、びびって逃げるのでかわりに山田さんを富野監督に紹介する。富野さんの反応がなかなか複雑でした。

 高瀬彼方になぜあれほど「いやな女」が書けたか(『カラミティナイト』ハルキ文庫)については、本人に聞いても要領を得ず。
「しかしあのヒロインが書いてるウェブ小説はちょっとうますぎるよね。あれぐらいキャラが立ってれば、愛・蔵太も誉めるでしょ」
「もっとヘタにしようかと悩んだんですけど。しかしよく愛・蔵太さんだとわかりましたね」
「だれが読んだってそうでしょ」
「でもウェブでそう書いてあるのは大森さんとこだけですよ」
 それはほかにも該当者が多いせいでは。ていうか、現象的にいちばん近いのはコモエスタ阪本の今は亡き嬲リンクだと思った。中傷にショックを受けて速攻でサイトを閉じちゃう善良な人は昔からたくさんいるのである。

 小松左京賞の結果は、角川春樹事務所のウェブサイトで発表されているとおり。
 正賞の平谷美樹『エリ・エリ』は、神の問題とからめてファースト・コンタクトを描く本格SF。平谷版『虚無回廊』――というより、カール・セイガンの『コンタクト』路線か。
『DOMESDAY(ドームズデイ)』の浦浜圭一郎氏、『ストレンジ・ランド』の高橋桐矢さんとも対面。舞台が恵比寿ガーデンプレイスなのはやっぱり理由があったらしい>DOMESDAY。高橋さんはハードSF系の模様。




【9月30日(土)】


 DASACON IV。場所はいつもの朝陽館本家。
 ゲストの永江朗氏とは、えーと、何年ぶりだっけ。とにかくひさしぶりなので宝島方面の四方山話とか。さすがに事情通である。
 本題のトークも立て板に水で、勉強になりました。最近の書店業界のことはもうよくわからない。西葛西周辺でも、ダメな書店はばたばたつぶれてるんだけど(この5年で4軒か5軒)、どう見てもつぶれそうなところばかりだったからな。駅前書店が消えて文教堂だけになってしまうというのが最悪のシナリオですが、西葛西は明和書店(山下書店西葛西店)があるから大丈夫さ。あ、書泉西葛西もあるか。
 文教堂がコンビニみたいに全国津々浦々に増えて、あとはチェーン系の大規模書店と、営業努力を惜しまない(専門書店化するかどうかはべつにして)駅前書店だけが生き残るんじゃないですか。
 ユーザー側からすると、ほしい本は十年前よりはるかに手に入りやすくなっている気が。安けりゃなんでもいいって人にはブック・オフ型の新古書店があるし、金に糸目を付けない人には古書サーチエンジンや古本オークションがある。
 こないだも必要があってジュール・ミシュレの『魔女』をさがしたんですが、スーパー源氏だかbizseekだかで調べていちばん安かった(岩波文庫版上下で700円+送料160円)古本文庫横丁に注文を出し、二日後には到着。図書館に行く手間も古本屋街を歩く手間もない。日本の古本在庫リストのデータベース化も、英米にかなり追いついてきた感じ。
 近所の書店が消えちゃうのを心配する人が多いけど、消えちゃうような書店には、どうせほしい本なんか置いてないんだから。ショウケース的な機能を果たしてくれる大規模書店が一時間圏内に一軒あれば、あとはオンライン書店で済むんじゃないですか。

 仕事が詰まってるので帰りますという永江さんと宿を出て、近くのコンビニで夜食を買って朝陽館に戻り、さらに合宿企画ふたつを消化。片隅でオークションやってる大広間で並行してべつの企画をやるのはちょっとつらい。どうせ寝ない人が多いんだから、布団不要な人に割引料金を提示して、空いた部屋を企画に当てればよかったのでは。

 それぞれの企画はまるで段取りがなかったにもかかわらずそれなりに進行していたので、まあDASACONらしいと言えなくもない。

 角川春樹事務所の中津氏が《新世紀SF》の立ち上げ時、書店用に準備した説明資料がなかなか飛ばしてて面白かった。なるほど、読者はいるのに供給がなかったわけですか。
 ハルキ文庫《新世紀SF》に関しては、書店バイト中のちはら嬢が「どうしてあんなに細かく一点一点定価が違うんですか? どうしてあんなに高いんですか?」と鋭い突っ込み。値段が高いのは、可処分所得の多い層を狙っているからです←ウソです。
 しかしじっさい、30歳を越えるともったいないのはカネより時間だと思うのだが。まあ小説の場合は、料金とクォリティを比例させることは不可能だから、高定価をつける以上は品質管理に力を入れるしかない。

 企画が一段落したので、浅暮・倉阪・タカアキラと半荘1回。ひさしぶりの東南戦はさっぱりリズムがつかめない。クラニー圧勝。大森は最下位に沈む。メモ:倉阪さんに2700ガバス支払うこと。

 昼から男子マラソンなのでとっとと帰って寝ようと思ったが、玄関が開いてない。勝手にカギ開けて帰るとまた怒られそうなので、7時までだらだらして帰宅。




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