【8月7日(月)】

 SF大会で書き忘れた話いろいろ。
 GAINAX勢とイタ飯食べたとき、すぐとなりが山賀博之氏で、今後の展開についてすさまじい話をいろいろ聞いたんでした。だ、だ、だいじょうぶなのか。あとは『フリクリ』話とか、『ガイナックス連続殺人事件(エロ)』話とか。『フリクリ』3話がはやく見たいなり。(エロ)もサンプルをいただいてるんですが、まだインストールしてませんすみません。
 ちなみにこのとき、店内のSF人口は20数人じゃなくて40人ぐらいだったらしい。「17人いたところに大森さんが17人連れてきたですから」と堺三保に指摘されました。それ以外にももう一グループいたしな。付和雷同の人が多い証拠である。

 中学校の文化祭でラッカーの展示を敢行した大磯の中学生、本上力丸氏とも対面。前に、文化祭用の質問メールをもらってたんですが、ひと言では答えにくい質問だったんで(「ラッカ−の魅力とはなんでしょうか?」とか)、ヒマがあるときあとでゆっくり――と思ったきりすっかり忘れててすみません。ちゃんと回答した菊池誠氏はえらい。
『フリーウェア』はいつ出ますか? と聞かれてさらに申し訳ない感じ。いや、なんとかその、今世紀中には……ってだいじょうぶかなあ。早川書房の予定ではそうなってるんですが。それにしても14歳でSF大会参加はかなり自慢できるレベル。須藤玲司がSFセミナーにはじめて来たときは中学生だっけ? 高校生だっけ? しかし彼もすっかりSFの道は踏み外してしまったので、本上くんの将来に期待したい。80万人の中学生がいっせいに学校を拒否して家でSFを読みはじめるとか。

 Zero-CON関連のリンク集では、公式サイトのものと、当日スタッフをつとめた湯川さんSF系日記Zero-CON関連ファイル・リンク集がある模様。情報提供はほそいさんでした。

 大森関連企画のレポートでいちばん詳しいのは安田ママさんとこ。白炭屋さんとこのZero-CONレポートも爆発的。とくに「SFの20世紀 4.外ジャンルへの波及」とか。さいとうよしこは《通信カラオケ研究会》のレポートに喜んでいた模様。
 あと、《押井守、光瀬龍を語る》は某所に再録が決まったらしい。でも水槽の魚の話はナマで聞きたかったなあ。

 河出文庫の全6巻年代別海外SFアンソロジー(中村融・山岸真編)用の短編を何本か受注しているのだが、どうせこういうのは遅れるに決まってるよなあとのんびりしていたところ、11月刊行分予定(1、2巻同時発売)に関しては、オレと中村融以外の原稿はすべて入ってしまったらしい。どういうことですかいったい。世の中まちがっている。と怒るわけにもいかず、必死にあやまりつつ仕事。スタージョン2本は難物すぎ。




【8月8日(火)】


 15:00、《SIGHT》日本映画特集(1990年以降)用の座談会@ロッキン・オン編集部。メンバーは北小路隆志、谷岡雅樹、渋谷陽一編集長(司会)の各氏。投票結果のベスト20までの各作品について順番にコメントするというシステムで「なるべく批判はしない」とのお達し。それだと人選が違うんじゃ(笑)。
 渋谷さんは今年になってから黒沢清の『CURE』を見て、「最近の日本映画はこんなすごいことになってるのか!」と仰天し、それから黒沢作品や三池作品をかたっぱしから見まくったんだとか。けっこう思う壺なベストテン結果になって大満足らしい。いちいち音楽業界に置き換えて語るのがおかしくて、
「三池崇史のインタビューを調べたら、ほとんどどこにも載ってないんですよ。いまの映画雑誌はどうなってるんですか! 椎名林檎のインタビューが音楽誌に載ってないようなもんですよ」などなど。
 黒沢・三池はじゅうぶん評判になってると思うんだけど、まあ「誰でも知ってる」レベルには達してないか。ていうか、邦画自体がマイナーな文化に落ちちゃってるから。しかしオレ以外の出席者では、アニメをいちばん見てるのは渋谷さんだったり。

 座談会終了後、北小路、谷岡両氏とお茶。谷岡さんから最近のVシネマ業界に関するレクチャーを受けて帰宅。




【8月9日(水)】


 10:00からソニー・ピクチャーズで『インビジブル』の試写――に行くはずが起きられず。あきらめて仕事。スタージョンはなにを考えてるのかよくわからない。昔わかったと思ってたのは誤解度80パーセントだったことに気づいたり。




【8月10日(木)】


 SFマガジン70年代特集のベイリー原稿4枚をようやく仕上げる。フィンランドのJuha Lindroos氏がやってる超マニアックなファン・サイト、『Astounding Worlds of Barrington Bayley!』をひさしぶりに覗いたら、チャールズ・プラット・インタビューが載ってて大笑い。ニューワールズ時代の裏話もがんがん出てるので、NW系のファンも必読でしょう。ヘルシンキからニューヨークまで国際電話をかけ、ベイリーの思い出話を聞いたらしい。だれかここと提携してベイリーの日本語版ファンサイトやりませんか。オレがやりたいところだが今はぜんぜん無理。
 ついでにamazon.comでベイリー検索してみたら、予想通り、WH40Kノベルの最新長編しかin printの本がない。それに関して、泣ける読者書評が載ってました。
 ところでウォーハンマー40,000って日本じゃ今どうなんですか。一時は日本でもけっこう翻訳が出てたような気がするが。ベイリーの最新長編のEYE OF TERRORはけっこういいみたいなのでゲーム系の人に読んでみてほしいなり。大森は未読。というか、そのまえに『時間帝国の崩壊』をなんとかしろ>自分。

 《本の雑誌》の原稿がめずらしく難航。M村嬢に泣きを入れて謝り、とりあえず河出アンソロジーのスタージョン一本だけを仕上げて送る。この状況で週末はコミケか。




【8月11日(金)】


 夏コミ一日目。どういうわけか、北方謙三事務所のAZMさんと宮部みゆきさんを案内することになり、お昼ごろ宮部さんの仕事場に集合。中華弁当をごちそうになってから、タクシーで東京ビッグサイトへ。
 宮部さんが宮部本を買いあさるのは、いくらなんでも売ってる人の心臓に悪いかもしれないと思って、前日、河内さん@ものぐさ堂に電話して、「よさそうなのがあったら適当に見繕っておいてください」と頼んであったんですが(なんか腰が抜けたらしい(笑))、結局、あやべさんが午前中にまわって、まとめて購入してくれていた模様。宮部本はみんな健全なので安心です。
 どうなることかと多少は心配されたものの、宮部さんはけっこう溶け込んでて、意外と気づかれないのだった。同人誌売ったあとで「あれ?」という顔になり、茫然と見送ってた人とかもいましたが。
 コミケ初体験のひとがいるので、やはりコスプレ広場に案内するしか――と思ってるところにみのうらさん発見。「日本語が通じる現地ガイドを調達したのでもうだいじょうぶです。ガイドの言うことをよく聞いて、彼女についてってください」と無理やり先導を押しつける。地元の少年にガイドされてサファリパークを歩くような……。あそこに群れているのがキリンです。子連れの雌ライオンは刺激しないように。カバはああやって水浴びをします。などなど的確な解説がつく。
 しかし宮部さんはマメにゲーム雑誌読んでるので、コミケで主流のゲーム系コスプレに関しては大森よりはるかに詳しく、ガイドの人と現地の言葉で意見を交換しているのだった。

 ふたたび西ホールにもどり、もうひとまわりしたところで、およそ2時間のツアーが終了。ニュートーキョーで河内組・甲影会組と合流、売り切れで買えなかった貞ラブのラスト本とか、『ハサミ男』本とか(医師との自殺方法をめぐる会話をマンガにしたもの)を見せてもらう。

 帰りは30分待って門前仲町行きのバスに乗り、大渋滞の中、1時間近くかけてようやく帰還。門仲駅前の蕎麦屋で蕎麦食べて帰宅。




【8月12日(土)】


 ミステリチャンネルベストブックスの収録が来週なので残りの未読を消化。二階堂黎人編『密室殺人大百科』上下をやっと読む。bk1で注文してあったはずなのに届かないなあ……と思ったら買い物かごに入れたまま購入ボタンを押してなかったんでした。やれやれ。さいわい書泉西葛西に在庫があってラッキー。

 国産ミステリは、ほかにも今野敏のトンデモ本殺人事件……じゃなくて『神々の遺品』(双葉社)とか、芦辺拓『和時計の館の殺人』(光文社カッパ・ノベルス)とか、はやみねかおる『少年名探偵虹北恭助の冒険』(講談社ノベルス)とか、沢井鯨『P.I.P.プリズナー・イン・プノンペン』(小学館)とか、恩田陸『麦の海に沈む果実』(講談社)とかいろいろ読んでるんだけどコメントを書いてるヒマがない。
 ミステリ以外で面白かったのは、乙一『石ノ目』(集英社)と、エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』(東京創元社)。




【8月13日(日)】


 夏コミ最終日。昼ごろ起きてタクシーでビッグサイト。評論系をざっとまわってから、おたく系エロ小説界の大スター、雑破業先生(《ホットミルク》最新号に大々的なインタビューあり)のブースでNeWMenカバーのオフセット新刊を購入、しばらく油を売ってから、すえひろさんとこの新刊を買い(沖縄取材敢行の堂々120ページ。小学生の話じゃなきゃ英訳が出せるのに)、国樹由香嬢から《こたいつ》の新刊をいただき、荷物を置かせてもらってSF方面へ。
 はしもとさちこさんとこのお嬢さんの「サイボーグクロちゃん」本が2冊出てました。ゴーくんは激似。著者印税は5割らしい。小遣いをコミケで稼ぐ小学生。

 話題の新刊と言えば、ふぢーさんの『SF作家の値うち』。日記を見てこの新刊の存在を知ったのは金曜の夜だったんで、今日こそ買うぞと思ったのにもう売り切れ。タニグチリウイチかだれかが買ってたやつを読ませてもらいましたが、「なぜこの作家が?」「どうしてこの作品が?」というあたり、原典の再現性が非常に高く、評価基準がよくわからないところもマル。百点満点の採点は、大森もむかし《小説奇想天外》の「海外SF問題相談室」でやってたことがあるんだけど(ダ・カーポの中上健次文芸時評の影響?)、点数を決めるのに書評を書くのとおなじぐらいの時間がかかるのでこれはたいへんすぎると思ってすぐやめました。評価の整合性とか考えちゃうんだよな、考えても無駄なのに。

 あと笑ったのが、星界+おじゃる本の『ラフィールまる』。ルしか合ってないじゃん(笑)。しかしおじゃる顔のラフィールはなかなかキュートです。とこでこの本買ってると売り子のお嬢さんたちがなんだかくすくす笑ってて、PockethuruのTシャツ(ピカチュウは邪神の仲間だったんだよ柄)のせいかなと思ったら、Zero-CONのお客さんだったらしい。人の顔を見て笑わないように。

 ひとまわりしたあとSF者の集団とZero-CON情報交換。あとは例によってコルドンブルーで休憩し、ゆりかもめで新橋。駅前でお茶飲んでから、サーコン夫婦とカラオケ一時間。西葛西にもどって仕事。


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