【8月3日(木)】


 小松さんが予選委員から話を聞きたいと言ってますが……という連絡を角川春樹事務所のM松さんから受け、急遽、一口坂の小松左京事務所に予選担当者が集合。もっとも小松左京賞関係の話は15分ぐらいで終わり、あとは小松さんの独演会。
『日本沈没』を書き始めたときの話をしてたかと思えば山本冨士子の話になり、そこに万博の裏話がはさまりつつ、南極旅行でアザラシに追われたときの話が……という具合で6時間。途中で豊田有恒氏まで登場し、なんだかすでにSF大会がはじまってる感じ。Zero-CON第ゼロ日? 企画が重なってて小松さんが登壇するリレー座談会は見られないので、すごくありがたいプレ企画でした。

 おまけに有感地震が一時間に一回ぐらい襲ってきて、頭も体もぐらぐら状態。さすが『日本沈没』の作家である。小松左京おそるべし。




【8月4日(金)】


 昼頃起床。京急経由で桜木町。Zero-CON自主前泊で泊まるロイヤルパークホテルニッコーはランドマークタワーの上のほう。大森の部屋は62回で眺望抜群。
 49階にスカイプールがあるというので、麻耶雄嵩の新刊『木製の王子』(講談社ノベルズ)を持って部屋を出る。プールはけっこう狭いんだけど、リラクゼーションルームその他アメニティ施設は豪華なのでリゾート読書には最適。ちょっと泳いでジャクージに入り、プールサイドで本を読み、飽きると風呂に入ってレストルームで一服……みたいな。
『木製の王子』は、『夏と冬の奏鳴曲』の変奏曲的な位置づけの傑作。発想的にはやっぱりSFだと思うんだけどどうですか。特殊な共同体の根幹をなす世界律を発見する話。あるいは、サプライズのあるホワイダニットを書こうとするとどうしてもそうなってしまうのか。あんまり書くとネタバレだけど、基本的にこの系列の話はSFファン好みでは。

 日が落ちるころになって仙台エリ嬢が合流。べつにワイルド・サマー ビートでGOGO!的な野心があったわけではありませんが、野尻さんがいたら感涙にむせんでいたかも。

 プール後、エグゼクティヴ・フロアに投宿している三村美衣・小浜徹也部屋に集合。野尻抱介・山本和人・SF人妻もやってきたところで、タクシーに分乗して中華街。關帝廟のすぐ近くに夜中までやってる店を発見したのでそこになだれこみ、屋上のオープンスペースで食事。オリジナルアレンジの謎めいた料理がなかなかでした。
 ちなみにSF人妻日記(←Zero-CONの邪悪なレポートが読みたい人は必読)によれば、野尻・小浜・大森は「エリちゃんズ」を結成、「若い女の子にちやほやするおやじ状態だった」そうですが、わたしはもちろん、自分の企画にゲストで呼んだ審査員の先生を接待していただけなので(笑)。SF大会においては、SF度の低い人ほどゲスト度が高いのである。
 それにしても野尻さんはあいかわらず飛ばしてましたね。仙台エリ(実物)と対面するのはたしか二度めのはずなんだけど、その第一声が、感極まった口調で、「ずいぶん立派に成長なさって……」だし(笑)。それにしても、
「仙台エリ係数というのを考えたんです。これは自分の年齢を仙台さんの年齢で割った値なんですが、わたしの場合は悲しいことに、2を超えているんです」
 とこの世の終わりのような声で発言するのはどうかと思う。しかし星雲賞受賞記念ってことで、ここはやはり、仙台・野尻ツーショット写真を謹呈しておきましょう。

 真夜中にホテルへもどり、うちの部屋でしばらく歓談。若竹七海『古書店アゼリアの死体』(カッパノベルス)を読みつつ寝ようと思ったが全然眠れず。




【8月5日(土)】


 7:30AM起床。ていうかほとんど寝てません。1時間ぐらい?
 8時過ぎにホテルを出て、Zero-CON会場のパシフィコ横浜へ。こんなはやい時刻からSF大会行くのは生まれてはじめてかも。総合司会の西川先生に挨拶して、そのへんをぶらぶら。けっこうはやくから来る人が多くて驚く。新宿パセラから直行しましたという須藤玲司とか。関西方面に住んでる人がどうして新宿経由で横浜に来ますか? 「いや、通り道なもんで」ってそれは違います。

 のんびりオープニング見てたら、はっと気がつくと10時35分。しまった、10時半から打ち合わせだったのに。とダッシュでゲストルームに向かうと、最初の企画《宮部みゆきトークライブ》の主役の宮部さんはまだ姿が見えない。
 やれやれと安心してなごんでると、スタッフから連絡。「宮部さんはもう企画室のほうにいらっしゃってるそうです」
 あわてて5階の502まで走り、打ち合わせもそこそこに企画スタート。頭が全然まわらなくて反応が遅れがち。たいへん要領を得ないインタビューになっちゃいましたが、宮部さんがどんどんしゃべってくれたおかげで助かりました。
 個人的にたいへん情けなかったのは、
「ここにいらっしゃる方はサンリオ文庫なんか全部そろえてる方が多いんでしょうね。全部お持ちの人は手を挙げていただけます?」
 と質問したのに、だれも手を挙げなかったこと。
「じゃあ8割ぐらい持ってる人は?」でやっと2、3人。ウソでもいいから手を挙げろよ。って、まあ海外SFおたく系の客は少なかったのかもしれません。どうせならその質問はSFセミナーでしてほしかったんですよ宮部さん。ああ情けない。
 ちなみに宮部さんの探求本は、シルヴァーバーグの『内死』とパシフィカ版『シャイニング』の初版と……あとなんだっけ。『シャイニング』はうちのをあげてもいいんだけど、初版だったかどうか確認するには仕事場まで行かなければならないのだった(あとで確認したら再版でした)。残念ながら『内死』はだぶってません。
 この企画の詳細については、安田ママさんのレポート参照。わたしも覚えてないことが書いてあってためになります。いやほんと、部分的に意識が飛んでたことがよくわかる(笑)。じっさいの発言とは多少違うとこもありますが、とくに問題はありません。

 トーク終了後、ダッシュで《電撃SFの部屋》に行って上遠野さんをつかまえ、《ブギーポップの部屋》でインタビューを担当することになったのでよろしくおねがいしますと挨拶。リレー座談会の伊藤典夫・柴野拓美・野田昌宏パネルをしばらく覗いてから、《電撃SFの部屋》にもどって上遠野さんの「SFとのなれそめ」話を聞く。いちばん笑ったのが、「ぼくの場合、SFはろくに読んでないんです。しいてなれそめと言えば、口伝ですね」と語る古橋秀之氏。なんでもお兄さんがSFマニアで、
兄「おまえ、レンズマン読む気あるか?」
弟「そんなぶあついの読みたくないなあ」
兄「そうか、よし、じゃあこれからお兄ちゃんが話をしてやるからそこにすわれ。いいか、まず最初に、宇宙には善と悪の二種類の宇宙人がいるんだ。悪いやつがエッドール人で、いいやつがアリシア人」
 ……みたいな調子で、講談レンズマンをどんどん語ってくれたらしい。おまけに、
「トレゴンシーというのはこういうやつだ。ウォーゼルはこうだ」とどんどん絵まで描いてくれたらしい。こういう兄がいるとべんりですね。美人の妹だったらもっといいなあ。

 などと妄想しているうち、はっと気がつくと椎名さんが到着しているはずの時間なので、サイン会をやってるはずのフォワイエに行くと椎名さんの姿がない。「ディーラーズルームで本を見てます」との情報をスタッフから得てキャッチに行くと、ハヤカワSFシリーズ即売棚の前に立ちつくしじっと動かない椎名誠。
「いやあ、いい本があるねえ。こんなことならもっとはやくから来ればよかった」
 オークション本コーナーにはもっと珍しい本も多数出てましたが、銀背の前から動かないところが椎名さんらしい。
「オレ、ずっと見てたんだけどさ、となりによさそうな本があるんだよ。なのにでかいやつがさあ、『ここはオレの縄張りだかんな』みたいな顔してその前からどかないんだよ。にらみつけてやったけど」
 椎名誠にガンつけられて動じない古本マニアがいるうちは、SF大会もまだまだ安泰であろう。

 という騒動のあげく、《SFは楽しい!》が開幕する。ゲストは宮部さん同様、SF大会初参加の椎名誠・北上次郎(というか目黒考二)。
 個人的にいちばん笑ったのは、北上次郎がニューウェーブの台頭でSFから離れていったころの話。

「あのころは毎月SFマガジンを読んでたんですよ。そしたらニューウェーブ特集(注・1969年10月号)っていうのがあって、これが全然わからない。「リスの檻」(トマス・M・ディッシュ)はまだわかったけど、あとはさっぱりで(注:特集のあと2本は、パミラ・A・ゾリーン「宇宙の熱死」と、ジョージ・コリン「マーティン・ボーグの奇妙な生涯」)。こんなのがはやってるようじゃダメだ、と。そのへんから急に読まなくなったんです。
 あのころ、伊藤典夫さんがSFマガジンで連載してたでしょう(「エンサイクロペディア・ファンタスティカ」」。ところが伊藤さんは、「最近のSFがわからなくなった」といって、いきなり連載を休載するんですよ。やっぱりそうだよな、伊藤典夫はえらい! いい人だなあ(笑)と思って、すごく共感したんだけど。
 しばらくしたら急に文芸誌の《海》で伊藤さんがSF特集を監修して。あのときは裏切られた気がしたなあ」

 正確な引用じゃありませんがだいたいこんな話。あと笑ったのは、椎名・目黒のSF趣味の歴然たる違い。椎名さんはどっちかというと科学派でセンス・オブ・ワンダー系。科学ノンフィクションを面白がれるタイプで、理屈がなくなってファンタジーに傾斜すると面白くないらしい。
 目黒さんは現実密着型というか、SF的設定に放り込まれた個人のドラマが好み。かんべむさしや筒井康隆のサラリーマン物とか、タイムトラベル物とかがツボ。
 しかし椎名さんは、「タイムトラベルなんてどうせ不可能なんだからつまんないよ」という立場で、このへんの掛け合いが絶妙でした。

 それにしても、この企画の真裏がリレー座談会の小松左京・石川喬司・高橋良平・森下一仁パネルだったのは痛恨。おかげで客席のSF度が薄く、「かんべむむさしの、主人公が朝起きたら、そいつだけ重力が逆向きに働くようになってて、しょうがないからいろんなものにつかまりながら必死に会社へ行こうとする話って、タイトルなんだっけ?」みたいな質問が出ても、客席から答えが返ってこない(笑)。
 えーと、たしか最初のころの奇想天外に載ったやつで、『ポトラッチ戦史』か『俺はロンメルだ』か、そのへんの短編集に入っていると思ったけど、ええと、タイトルはなんだっけかといくら考えても思い出せないオレもオレだが、助け船を求めて会場を見わたしても、うしろのほうで山本和人が「知らん」と左右に首を振っているだけなのである。
 そうだ、「道程」だよと思い出したのは翌日の夜でした。やれやれ。

 トーク終了後、ビールが飲みたいという椎名・目黒組をインターコンチネンタル・ホテルのマリンカフェに案内してSF大会話と古本話。一時間ほど休憩してからまた会場にもどり、18:30からは、ていとく氏主宰の《ブギーポップの部屋》。直前になってインタビュアーを振られた企画で(上遠野さんのスケジュールの関係で、実行委員会側から正式にGOサインが出たのがかなり遅かったらしい)大森としては著しい準備不足(といっても、まともに準備したのは《最強対決》だけだけど)。
 ブギーポップの細かい話はよく覚えてないので、司会ヘルプ用にみのうらさんに声かけてたんですが(だいたいわたしは、新刊の『冥王と獣のダンス』さえまだ読んでなかった)、客席置いてけぼり的なネタで個人的に盛り上がってしまったので、前に来て上遠野さんに濃い質問を浴びせ倒していただく計画を発動する機会を逸してしまい申し訳ないことでした。
 面白かったのは、「どうすればかっこよくなるか」を追求した結果、「変身ヒーローはまぬけだ」という事実を最初に本人が認めちゃえばあとはなんでもオッケーなんじゃないか、ということに気づいた話。それと、『笑わない』のスタイルの下敷きになったのが山田風太郎だった――という、すごく意外だけど聞いてみればなるほどと納得する事実。客席の反応は鈍かったけど(そりゃそうだ)日下三蔵がひとりでにこにこしてました。
 もうひとつ、客席と関係なく暴走したのが、『殺竜事件』にはじまるミステリ話。麻耶雄嵩の新作のネタまで割っちゃってすみません。しかしじつは上遠野浩平と麻耶雄嵩はけっこう近いところにいるかもしれない――と、講談社ノベルス次回作の構想を聞いて思ったことである。

 残り三十分で質疑応答に入ったところでブギーポップ部屋を抜け出し、逗子まりなさん主宰の《YAKATAの小部屋》へ。ゲームの『ナイトメア・プロジェクト YAKATA』について話をする部屋らしい。ゲストの我孫子さんと南澤さんを囲んで茶話会的な雰囲気でした。『暗黒館』の行方は? とか、「最近の綾辻行人」とか、そういう雑談。こんなんでよかったんでしょうか。

 そんなこんなですべての企画が終了したのは午後8時。しばらくロビーでうだうだしてから、ようやくインターコンチネンタル・ホテルにチェックイン。真正面に観覧車が見える部屋で、グレード的にはニッコーとおなじぐらい? でもできたのが古い分、バスルームは狭め。ほんとならパンパシフィックに泊まりたいところだが、やっぱり会場との近さは捨てがたい。

 荷物を置いてからふたたびパシフィコにもどってGAINAX組と合流。時刻はすでに9時をまわり、中華街にくりだす気力もないので、先発隊が向かっている近所のイタ飯屋になだれこむ。すでに営業時間が最重要課題だったり。
 そのへんにいた顔ぶれは、我孫子武丸田中哲弥田中啓文牧野修小林泰三、南澤大介、C嬢、武田康広柳下毅一郎、三村美衣、小浜徹也、山岸真、高橋良平、SF人妻、SF人妻の夫、タカアキラウ、南智子、さいとうよしこなどなど総勢20人ぐらい。




【8月6日(日)】


 10時ごろ起きて荷物をまとめ、10時半チェックアウト。出演予定の企画はすでにはじまっているのだが、昨日のうちに遅刻届を提出しているのでまあいいやと勝手に判断し、朝ご飯を食べて目を覚ます。
 さいとよしこの企画をちょっと覗いて写真撮ってから、1時間遅れで小浜徹也主宰企画《達人たちが教える、インターネット時代に英米SFのものと情報を入手するためのFAQ》へ。高橋良平・小川隆・牧眞司・山岸真・堺三保とこれだけメンツがそろってればオレがしゃべることはないでしょう。しかし考えてみれば、今回の大会で「SF翻訳者」の立場で出る企画はこれだけ? 多少は印税収入の向上につながるような企画を考えるべきかもしれない。

 2階のラウンジで一服してから、ゲストルームで午後の企画打ち合わせ。今回、もっとも準備に時間を費やした、《ジャンル対抗「最強」決定戦:SF・ホラー・ミステリ・ファンタジー史上最大の決戦》である。事前に決定した一回戦の組み合わせは以下の通り(【】の中は所属ジャンル)。

山田正紀:リプリー(アラン・ディーン・フォスター『エイリアン2』など)【SF】
我孫子武丸:潘金蓮(山田風太郎『妖異金瓶梅』)【ミステリ】

高野史緒:アルベルト(ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』)【FT】
牧野修:高山竜司(鈴木光司『リング』)【ホラー】

菅浩江:ウェンディ(ジェイムズ・バリ『ピーター・パン』)【FT】
倉阪鬼一郎:ロマー・マウル(ジョン・クーパー・ポウイス「ロマー・マウル」)【ホラー】

田中啓文:双葉山の殺人鬼(綾辻行人『殺人鬼』)【ミステリ】
野尻抱介:アラハバキ神(梅原克文『カムナビ』)【SF】

 基本的にそれぞれの芸風をもとにして出場メンバーを決定、まじめに優勝を狙いにいくのは菅浩江と我孫子武丸ぐらいだろう――という読みだったんですが、勝負は蓋を開けてみないとわからない。まさか山田正紀があんな大ネタを用意してくるとは。
 優勝候補だった我孫子さんは山田さんの冒頭陳述を聞いただけで戦意喪失。わたしもあまりのことに茫然としてしまい、気をとりなおすのがたいへんでした。山田正紀おそるべし。
 一回戦敗退組の中でもっとも強烈だったのは、ホラー愛爆発で飛ばした倉阪さん。
「ポウイスの名前は知らない人も多いかもしれませんが、この人は20世紀英国の四大幻想文学作家のひとりなんです。ちなみにあとの三人は、『邪竜ウロボロス』のエディングス、『ゴーメンガースト』のマーヴィン・ピーク……」
 とか幻想文学史講義まで付属するサービス。さらに、
「ホラー界の悪者と言えば、ラヴクラフトのクトゥルー神話大系が代表だと一般には見なされるところですが、わたしにとってラヴクラフトはホラーとSFの境界領域に位置する作家であり……」
 と誰もきいてない質問にどんどん答えはじめたり。試合に負けて勝負に勝ったというか、怪奇小説家の代表として場内を感動の渦にたたきこんだ……はず。倉阪さんには大森賞をさしあげたいと思います。
 高野さんのプレゼンテーションはみごとな戦いぶりだったし、田中啓文の駄洒落ネタ、野尻抱介のハードSFネタ(「まちがった宇宙に住んでるんだから、アラハバキは悪者に決まってるじゃないですか)、牧野修のおやじネタなど、それぞれ自分の芸風に忠実な話芸を見せていただいて助かりました。仙台エリ特別審査員のプチわるものぶりもなかなかで、期待通りのチェンジ・オブ・ペース。

 試合結果は、準決勝が山田正紀×高野史緒と菅浩江×田中啓文、決勝が山田正紀×菅浩江の顔合わせ。決勝戦はアドリブとは思えない名勝負でしたが、ネタのインパクトで山田さんの優勝。会場から募った事前の予想では山田さんが一番人気、菅ちゃんが二番人気だったんで、結果的には順当。10人近い的中者が出て、抽選で5人にプレゼントが配られました。
 山田さんの優勝賞品は大森提供の「韓国海苔」。賞品を受けとった山田さんは、舞台から降りる際に思いきり転倒。や、山田さん、なにもそこまでしてウケをとらなくても……。
 ちなみに野尻さんによるレポートは伝言板のここにあります。見てた人は感想とか書いていただけると吉。第二回(やるんかい)に向けての反省点にします。

 これでZero-CONの大森ノルマは完全終了。エンディングまで時間があるので、《E.G.コンバット》の部屋を見にいく。『猫の地球儀』の元ネタが、(『宇宙の孤児』+『テイル・チェイサーの歌』)×『王立宇宙軍』+『飢狼伝』と聞いて、なるほどと納得。世代宇宙船と猫と宇宙開発と格闘技でネタはきれいにそろってます。『飢狼伝』がまじるところがヤングアダルト。
 学生時代に書いた、黒丸サイバーパンク文体版『猫の地球儀』の話が爆笑。コンソールカウボーイが目にも止まらぬはやさでコマンドを入力すると、猫がばばばと走ってって命令を実行する話らしい。電撃HPにぜひ載せていただきたい。

 企画終了後、秋山瑞人・古橋秀之・高畑京一郎など電撃作家各氏と編集部のM氏に挨拶。すでにSF大会では最大派閥? オレがスタッフなら、小松左京×上遠野浩平とか、山田正紀×橋本紡とか、野尻抱介×秋山瑞人とか、そういう異種配合企画を考えるんだけどなあ。

 廊下でしゃべってると、うさぎ屋こと妹尾ゆふ子さんが通りかかり、新刊の話を聞く。今度のは現代物らしい。オレの場合、ハイファンタジーは苦手なんだけどモダンファンタジーは得意なので期待したい。妹尾さんは熱血古橋ファンらしく、名札で古橋秀之の名前を見つけてなんだか一方的に盛り上がってました。紹介する隙もない(笑)。

 そうこうするうちに、スタッフが、「2003年の大会開催地を決める投票をするのでぜひエンディングに出席してください」と呼びにくる。物見高いので当然見にいく。大阪は作戦負け参加した大会で銀河皇帝が出てきたら、運が悪かったと思ってあきらめるしかないが、最初から銀河皇帝が出てくるとわかってる大会にはふつう投票しないでしょう。いや、すくなくとも40歳を越してから参加する大会であれを見せられるのはつらいしねえ。
 まあ横浜の大会で投票を募れば、栃木が有利になるのは当然の話で、その点、公平性を欠く気もするけど、そうじゃなくたってあのプレゼンではやっぱり栃木の勝ちでしょう。しかし会場の場所ぐらいは発表すべきでは>栃木。那須塩原の温泉リゾートホテルらしいっす。

 というわけでZero-CONも無事終了。
 自主企画全盛の最近の趨勢に真っ向から棹をさし、実行委員会企画を大幅に増強、活字系のパネルを柱のひとつに据えるという方針は大成功だったんじゃないでしょうか。こういう大会はDAICON V以来かな。Zero-CONは、今後の都市型SF大会のひとつのスタンダードになりうると思う。
 もっとも大会企画を増やしたおかげで、企画数が多くなりすぎたのは問題点。自主企画を削れない以上、ある程度はしかたないんだけど、同傾向の企画(客層の重なる企画)がおなじ時間帯でバッティングしたりするのは、もうちょっと調整できた気が。
 見られなかった企画に関しては、ワールドコンみたいにカセットテープなりビデオテープなりを販売してほしい。とくにリレー座談会。せっかく公式記録撮ってるんだからさあ。あるいはウェブ上で公式記録を載せるとか。
 来年の大会に関しては、事前に記録担当スタッフを決めて、少なくとも実行委員会企画に関してはきちんと記録を残す体制を整えたらどうですか>武田さん。ウェブサイト主宰者を公式記録スタッフとして事前リクルートしておくだけでもずいぶん違うと思うけど。

 全企画終了後、インターコンチのティールームで休憩。水玉螢之丞・仙台エリ・さいとうよしことタクシーで横浜駅まで出て東海道線。仙台嬢と別れたあと、残る三人で八重洲地下街の和食屋。鰻重で疲労回復をはかってからタクシー帰宅。




【8月7日(月)】


 死んだように眠りつづけて夕方起床。

 2chのSF板SF大会スレッドを読んでたら、コクラノミコン管理委員会が更新されているらしいので早速見にいく。
全面リニューアルで旧コンテンツが消えちゃってるので、これだけ見た人はなんのことやらと思うのでは。思わずローカルに再構築してある旧サイトを読み返してしまいました。
 今回新たに公表された部分っていうのは、進行中の裁判とは直接関係しない(法律的というより道義的な問題に関わる)話なのでは。何年も会ってない人の肉声をリアルプレーヤーで聞くというのは新鮮な体験でしたが、はたしてこれを公開する意味があるのか。今後の更新を待ちたい。

「文庫解説の系譜 ―読書展開の指針として」で、今年のファンジン大賞「翻訳・紹介」部門を受賞したらしい水鏡子師匠(その他の授賞結果はSFオンラインのニュース欄参照)とお茶を飲み、白石朗とか林哲矢とかも呼んで、大会の情報交換。「古沢嘉通をいじめたのはだれか?」とか、「夏をめぐるSFの物語」のどこがフィクションか、とか。

 関係ないけど、Zero-CONレポートリンク集ってだれか作ってないんでしょうか。どこになにがあるかわかんなくて不便。



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