【7月17日(月)】


 午前6時半にホテルを出て模範タクシーで金浦空港。8:50AM発なので昼前には成田に到着。東京はめちゃくちゃ暑い。そうか、われわれはソウルまで避暑に行ってたのか。着いたときはソウルも暑いじゃんと思ったけど、この暑さにくらべれば……。

 家に帰って風呂に入り、郵便物を整理して(堺三保著『星方武侠アウトロースター 雲海のエルドラド』集英社スーパーダッシュ文庫が届いてのでとりあえずあとがきを読む)ネットを覗いてからふたたび出撃。ミステリチャンネルの書評番組、ベスト・ブックスの収録なのである。番組の冒頭で「アニョハセヨ」と挨拶するためだけにソウルで髪を切ったようなもんだったり。もちろん服も上から下までソウル調達物件。前開きのシャツは侍魂アスラ斬魔伝の海賊コピー柄(笑)。
 しかし誤算だったのはウェブサイト用の写真を撮影されてしまったこと。一回だけの韓国スタイルのつもりだったのに、ずっとこれですか。

 収録後は、見学者の某嬢を交えて飲食。トヨザキ社長はあいかわず絶好調。





【7月18日(火)】


 旅行疲れを癒すべく爆睡。「メダロット」最終回と「メダロット魂」の冒頭二話をやっと見る。新谷真弓ってこんな役だったのかあ。第二話はちょっと作画が崩れてた気が。うーん、どういう方向に持ってくのかまだちょっと見えない感じ。新キャラの男の子はよさそうだけど。




【7月19日(水)】


 15:30 洋泉社@神保町でTくんと打ち合わせ。
 16:30 角川春樹事務所に移動して、第一回小松左京賞の最終候補決定会議。最終的には予想通りの結果。総じてレベルが高く、個人的には残したい作品が落ちちゃったりもしたんだけど、残す最大本数が決まってるからしょうがない。最終候補作と二次選考通過作は、8月1日に角川春樹事務所のウェブサイトで発表される模様。詳細はまたそのときに書くかも。




【7月20日(木)】


 ビデオで韓国映画『八月のクリスマス』。写真館の独身男と駐車禁止取締婦人警官(ミニスカポリスではありません)のラブストーリー。日常描写(料理とか食事とか)は非常にいい感じ。『あ、春』とかの世界にわりと近いかも。最後の手紙はちょっとなあ。韓国の人も泣かせが好きなのか? しかし主人公のキャラは相当にユニーク。




【7月20日(金)〜7月22日(土)】


 SIGHTの90年代日本映画ベストテンのために、90年代の見てない邦画名作群をかたっぱしからレンタルビデオ屋で借りてくる週間に突入。
『大阪物語』を見逃していたのはやはり痛恨だったと判明。見てれば去年のベストに確実に入れたのに。しかし90年代のベストにはちょっと届かないか。
『萌えの朱雀』は、ビデオで見てはいけない映画。もはやこのテンポに体がついていかない。『金融腐食列島 呪縛』は特撮怪獣映画のテンポなので快調に見られる。よくできてますが、やっぱりビジネスファンタジーか。




【7月23日(日)】


 柳下家改装完了記念house warmingパーティ。美恵夫人の手料理をごちそうになりつつ、ソウルで買ってきた韓国映画を見る。『Cube Mystery』は『CUBE』というより『π』みたいな数学SFらしいんだけど、言葉がわからないので意味不明。画面はなかなかかっこいい。と思ったら最後が特撮モノの香港B級アクションみたいになっちゃってがっくり。韓国映画界は特撮のリアリティに寛容すぎるのではないか。まあ韓国だけじゃないけど。
『Ring Virus』もようやく柳下邸で最後まで見る。高山が死ぬところも最後のオチも中田版『リング』とまったくおんなじでした。中田版よりこわくないというのが見ていた人々の感想。オレはどっちもこわくないのでよくわからない。

 家に帰って、清水崇監督の『呪怨』『呪怨2』をようやく見る。こわがらせる映像としては極北ですね。まだちょっと見せすぎだけど、そのへんは個人差があるかも。こわがりの人に見せたいビデオ第一位に決定。しかし『2』はバンク多すぎ。どういう事情で二本に分けたのかしらないけど、どう見たってこれは一本の映画でしょ。
 ただし一本の映画としてはズルをしすぎてるので、絶賛はしにくい。キネ旬邦画ベストテンの下位候補。ま、映画が見せ物だとすれば、むしろこれが王道なんだけどさ。しかしここまで来ちゃったらこの先はどうするんだろうなあ。『女優霊』から思えば遠くへきたものである。




【7月24日(月)】


 2時半、京橋で《Big Tomorrow》読書特集のインタビュー。ホラー関連。ビッグ・トゥモロウの読者がぜったい読まないようなもの中心に選ぶ(笑)。

 15:30、映画美学校試写室で犬童一心監督『金髪の草原』。池脇千鶴主演で、YO-KINGの歌(真心ブラザーズじゃなくてエレファントラブだけど)だと、まるで『大阪物語』の続編みたい。随所に市川準タッチ(ドキュメント風の会話とか)があり、退屈さも市川準的。『大阪物語』ほどじゃないけど、池脇千鶴、またしても走らされてます。原田知世以来の「走らせたい女優」?

 おなじ試写室で18:00から青山真治監督『EUREKA』。カンヌで国際批評家連盟賞を受賞しての凱旋公開――と思ったら西鉄バスジャック事件のほうで注目されてしまった「話題」作。3時間38分のモノクロ映画ってことでかなり覚悟してたんですが(せめて休憩入れてほしい)、思ったほど退屈はしなかった。悪くない出来。しかし結局PTSDの映画なのか。話はぜんぜん違うけど、ほとんど『永遠の仔』劇場版。癒し系はやっぱり強いらしい。

 3時間38分の疲れを癒すべく、中原昌也氏と銀座のつばめグリルで食事。
「なんでまた『EUREKA』に?」
「ほら、《SIGHT》の90年代日本映画ベストテンってあるじゃないですか」
「そうそう、ちょうど昨日、柳下んちに行ってて、中原昌也はなにを選ぶのか? って話をしてたんですよ」
「オレ、全然見てないからなあ。それで『EUREKA』ぐらいは見とかないとまずいだろうと思って……」
「でもあれって、1990年から99年までの10年からベストを選ぶんでしょ。今年の映画は対象外じゃ……」
「え!? だったらこの3時間38分は無駄だったわけえ? くー」
 などなど。あとは、「小説書いても儲からない」話とか。「やっぱり芥川賞とるしかないでしょ」と言ったら、「オレ、そういうのやなんですよ」。けっこうわがままである。
『マリ&フィフィの虐殺ソング・ブック』文庫版は柳下毅一郎が解説書くらしい。

 黒沢清監督の『降霊』『ニンゲン合格』を自宅で二本立て上映。
 『降霊』はじつにいやな話。途中がとくにいやですね。役所広司が樹海から帰ってきてしばらくのあいだ。しかしそのあとは黒沢版『シンプル・プラン』になってしまうのだった。ホラーとしては異色の展開で、発想はすごく面白いんだけど、ちょっと説得力がない感じ。風吹ジュンだからかなあ。たぶんジャンルホラーにはあまり興味がないんだと思うがどうですか。完成度的に『CURE』を越えてはいないが、たぶんこわさと不快感の醸成ではこっちが上。
『ニンゲン合格』は、なにがしたいのかよくわからない映画でした。




【7月25日(火)〜26日(水)】


 これまで全然見てなかった岩井俊二をまとめて見る。よかった順に、『スワロウテイル』『Love Letter』『打ち上げ花火、下から見るか横から見るか』『PiCNiC』『Undo』。あとの3本は、連続で上映しても、合計時間は『EURECA』一本より短い(笑)。
『スワロウテイル』はもうちょっとで傑作になったかも。CHARAがすばらしいのでこのままでもCHARAファン的には傑作ですが。『Love Letter』は脚本が抜群。後半、話が逆転していくあたりは最高です。トヨエツと山へ行く話はくどいけど。しかし神戸と小樽ってのはあざとすぎるよなあ。アンチ岩井俊二な人はそのへんが耐えられないのか。

『打ち上げ花火』から、子役つながりで塩田明彦『どこまでもいこう』。これも去年見ていればキネ旬のベストテンに入れただろう映画。尺が短いしプロットが弱いので小品ですが、テーマ曲の使い方は最高。

 あとはなぜか見逃していた映画シリーズ。坂本順治『王手』はぜんぜんダメ。松岡錠治『バタアシ金魚』も前半いいけど後半いまいちかなあ。浅野忠信が出てたのを知らなくて、めちゃくちゃ驚きました。こ、こいつこんなガキだったのか! この十年でもっとも変貌した役者かも。まあこの時から悪ガキだったとも言える。
『東京上空いらっしゃいませ』は、だれでも一度は撮りたいジェントル・ゴースト物。相米映画とは思えません。基本的には好きだけど、90年代の映画じゃないよね。

 ところでこれだけ映画を見る時間をどうやって捻出したかというと、「『FF IX』を最後までやったと思えば……」作戦なので、当然『FF IX』はやってません。ていうか、ソウルへ行く前に2枚めの頭までやったきり中断してます。最後までやれば感動するのでぜひやりたまえという人がもしいたら説得してやってください。


 いよいよ今年の日本SF大会、Zero-CONが近づいてきたので、大森担当企画、『ジャンル対抗「最強」決定戦:SF・ホラー・ミステリ・ファンタジー史上最大の決戦』の出場者各位に確認メールを出す。トークバトルのテーマは、「最強の悪者」(笑)。
「SF、ファンタジー、ホラー、ミステリの4ジャンルから、1ジャンル2名ずつ出場。所属するジャンルの小説作品から、『これぞ最強の悪者』と思われるキャラをひとり選び、いかに悪者であるかを観客にアピールする」という趣旨で、一対一のトーナメントが基本。一回戦4試合を勝ち上がると準決勝2試合。3回勝てば優勝というシステム。出場者は、
【SF】山田正紀/野尻抱介
【ホラー】倉阪鬼一郎/牧野修
【ファンタジー】高野史緒/菅浩江
【ミステリ】我孫子武丸/田中啓文
 という布陣。ジャンル分けと人選は諸事情あって(綾辻さんが来られないとか、裏にファンタジーコンのパネルが入ってるとか)こうなりました。みなさま今月中に作品エントリをよろしくね。
 ちなみに特別審査員は、ホームタウンデシジョンに左右されない公平な視点の持ち主(エントリ予想作品を一冊も読んでないのが理想)ってことで、仙台エリ嬢に依頼。
 最強座談会自体は、《本の雑誌》や《この文庫がすごい》でやってる企画のパクりなんだけど、ライブで観客に見せるのは初めてなのでどうなるのかまったく予想がつきません。選手の弁舌に期待したい。

 ちなみに大森の参加予定全企画は以下の通り。【】の中は場所です。

8月5日(土曜日)
11:00-13:00 宮部みゆきトークライブ(司会らしい)【502】
15:00-17:00 SFは楽しい!(北上次郎・椎名誠とパネル)【419】
18:30-20:00 YAKATAの小部屋(なにをするのか不明。たぶん適当にミステリ話。我孫子武丸を連れてゆく予定)【511】

8月6日(日曜日)
10:00-12:00 達人たちが教える、インターネット時代に以下略(小浜徹也企画の情報パネル。小川隆・堺三保・高橋良平・牧眞司・山岸真)【511】
12:30-14:30 ジャンル対抗「最強」決定戦 【501】

 これ以外にも調整中の企画がありますが、時間ぶつかったりしてるのでどうなるかわかりません。
 あ、さいとうよしこは、8月6日(日曜日)10:00-12:00の「通信カラオケ研究会」【512】に出ます。わたしは自分の企画の裏なので見物できません。そういえば去年もそうだったよなあ。
 出演企画の宣伝とかしたい人は伝言板のほうにお気軽にどうぞ。
 なお、最新版のタイムテーブルは、ここで確認できます。今年は見たい企画が多いのにほとんど行けそうもなくて残念。
 また、Zero-CONは当日参加も受けつけることになりました。だからふと思い立っていきたくなった人もだいじょうぶさ。22,000円払って、難波弘之ライブと水木一郎コンサートだけ見て帰るとか。SFおたくなら、リレー座談会「SFの20世紀」が必見ですね。二日がかりで合計14時間。伊藤典夫・石川喬司・森優・小松左京・眉村卓・豊田有恒・辻真先なんて顔ぶれが集まるSF大会はそれこそ20年ぶりぐらいじゃないですか。
 じっさい、全体を見わたしても、Zero-CONの企画内容は、この20年のSF大会の中でたぶん最強を誇ってるので、ちゃんと見るつもりなら22,000円は高くない。ホテルはつきませんが、まあ寝なくていいつもりならなんとかなります。


 ちなみにうちはようやく横浜のホテルを予約しました。
 パシフィックのサマープランもロイヤルパークのネット予約プランも売り切れと言われてちょっと焦ったんだけど、”横浜三銃士”  みなとみらい21よくばりプランという謎のプランで予約に成功。「みなとみらいの 3ホテルのうち2つのホテルに1泊ずつステイ」ってやつで、金曜日の前泊がロイヤルパーク(ランドマークタワーの上のほう)、土曜日がインターコンチネンタル。金曜は13,000円、土曜は20,000円で、どちらも朝食または昼食つき。どのみちインターコンチは土曜のプランが出てないので、これでもふつうに予約するよりはだいぶん割安でしょう。どっちも本名で泊まってます。金曜夜は中華街にくりだす予定。



top | link | board | articles | other days