【6月19日(月)】


 午前4時帰宅。ユーゴスラビア×ノルウェーの生放送を見る。スタメン出場のストイコビッチは絶好調。なんか二試合目は、ハジといいマテウスといい、ベテランのがんばりが目立つ気が。すでに今大会はオレより年下の監督もいたりするんだけど(スロベニアの監督)、このへんの世代の選手にはがんばっていただきたいものである。ピクシーはW杯までやれるんじゃないの。

 スロベニア×スペインはビデオで確認。ザホビッチのせっかくの同点弾が……。一分後にまた突き放されるんじゃなあ。

 今朝の新聞各紙を見ると、ボリビア戦2-0勝ちを受けて、トルシエ続投はすでに既定事実――って感じなんだけど、この豹変はいったいなに? いや10月までの続投は当然だと思いますが、2002年までトルシエ体制で行くかどうかは、べつにいま決めなくても。五輪とアジア杯の成績を見て――という話になるのが筋じゃないの。五輪は決勝リーグ進出、アジア杯は決勝進出とか、そういうノルマを課すのがふつうの発想では。

 EURO2000も一段落したので、まじめに仕事を再開することに。GW明けから一カ月以上遊び呆けていた感じなので(いや、働いてないわけじゃないけど、どうも地道に翻訳やってないと遊んでる気がする)、ぼちぼち気合いを入れ直す頃合い。




【6月20日(火)】


 MAG TIMEで午前7時まで仕事をしてから銀座。ロッテリアで朝ごはん食べて、8時半から日劇東宝で『ホワイトアウト』の試写。冒頭の黒部ダム俯瞰ショットは出色。
 原作者が脚本を担当しただけあって、原作には忠実なつくりだが、このキャストならではの新ネタも多数用意されていて飽きさせない。途中までは傑作になりそうな予感。
 それが予感に終わったのは、悲愴感を強調しすぎる(いかにも日本映画的な)後半の展開と、キレの悪いラスト。エンドマークのうちどころをまちがえているという意味では、『アナザヘヴン』とおなじ問題を抱えている。まあしかし、10億の予算にもかかわらず、20億〜30億の映画に見えるので、成功だったんじゃないですか。
 ディスプレイ類は非現実的にかっちょいいデザインなんだけど、最初のほうに出てくる地図で、ロッジのスペルがRodgeになってるのが台無しな感じ。だれか気づけよ。

 徹夜なのに意外と眠くならないので、おなじ日劇東宝で、つづけて『クロスファイア』の初回上映を見る。平日の朝なので場内はがらがら。しかし『グラディエーター』のほうは満席だった模様。はやくも大ヒットの予感?
『クロスファイア』のほうですが、頭の一時間は「燔祭」そのまま。このパートは非常によくできてて、このまま90分の映画にまとめてよかったんじゃないかと思うぐらい。矢田亜希子の青木淳子、多田一樹の伊藤英明はどちらも悪くないし、雪江と淳子を会わせておく脚色もまあ納得できる。「わたしは装填された銃」っていう原作のキメゼリフを採用しなかったのは、青木淳子のキャラが原作とは若干違うからでしょうね。メジャー系の映画としては当然の選択か。
 その「燔祭」の話から『クロスファイア』に行くのかと思いきや、両者の事件が強引に融合され、クライマックスは平成ガメラに突入するという驚天動地の展開。予備知識ゼロだったので激しく驚きました。螢雪次朗に藤谷文子に中山忍まで出てくるし。G1の藤谷文子のかわりが東宝シンデレラの長澤まさみ。孤児院が出てきたところで爆笑しました。そのまんまやん。
 矢田亜希子、長澤まさみ、吉沢悠の三人がごはん食べるシーンとか、桃井かおりと田龍二がなぜか橋の上でしゃがんで打ち明け話をするシーンとか、焼肉関連ギャグのしつこい引っ張り具合とか、日常描写は意外と秀逸。
 しかしいくらなんでも後半の展開(永島敏行がらみ)は無理がありすぎ。『人狼』かと思いました。人体発火の特撮も本編のムードと合ってない感じ。

 ところで上映前に『ホワイトアウト』の予告編が流れたんですが、ラストのネタを思いきり割ってます。いくらなんでもあのシーンを使うことはないんじゃないの。
『ジュブナイル』の予告もちょっとバラしすぎでしょう。しかし予告編だけ見るとすごく面白そう――っていうかダメなとこはダメなんけど、けっこうわくわくしますね。

 ほかにまわってた予告編は、馳星周原作/三池崇史監督の『漂流街』とか、石井總互監督/浅野忠信主演の『五条霊戦記』とか。『漂流街』は意表をつく映像。でも本編と関係ないかも。

 さらにとなりの映画館に移動して、『ミッション・トゥ・マーズ』。まわりでは悪評さくさくなんだけど、そんなに悪くないじゃん――と思ってたらラストでこける。うーん。デパルマ版2001年やるなら、あの宇宙人はないでしょう。激しく眠くなったのですでによく覚えてないけどな。

 ところで主演のゲイリー・シニーズですが、P・K・ディックの「にせもの」が原作の映画『Impostor』では、主人公のスペンス・オルハム役を演じる模様。アポロ13で奇蹟の生還をはたしたと思えば火星へ行き、今度は宇宙人の手先になっちゃうのか。忙しいことである。
 それにしてもImpostor。♪きむらかずし氏の情報提供@伝言板で上記のサイトを見に行ったんですが、もう本編の撮影が終了、特撮部分が一部入ってないだけのバージョンはすでに試写も回されてるそうで、ちょっとびっくり。

 西葛西のラーメン屋でざるラーメン食べて帰宅。氷川透の鮎川哲也賞候補作『密室は眠れないパズル』を読みつつ寝る。




【6月21日(水)】


 午前1時起床。3:30から、グループAのサバイバル試合。イングランド×ルーマニアは、ルーマニアのうまさばかりが目立つ。ハジがいなくてもだいじょうぶじゃん。後半のイングランドは露骨に引き分け狙い。2-2のまま終われば問題なかったのに、これが守れない。終了間近に、フィリップ・ネヴィルがペナルティエリアで痛恨のファウル。イングランドは土壇場で地獄へまっさかさま。
 問題はそのあと。ロスタイムも残り少なくなったラスト30秒、WOWOWの生中継映像が、同時刻に行われているドイツ×ポルトガル戦の映像に突如切り替わってしまう、まさかのハプニング。こんな放送事故ははじめて見ました。
 WOWOWではイングランド戦の生中継終了後にドイツ×ポルトガル戦を録画で放送する予定だったので、その結果は伏せたまま、
「さあ、あとはドイツ×ポルトガルの結果次第です」とか言ってるのに、もう結果はバレバレ(笑)。がっくり肩を落とすドイツ選手たち。苦笑いのマテウス……。
 いや、それにしても3−0で負けてるとは思いませんでした。一軍半のポルトガル相手に、情けなさすぎるぞドイツ。あそこでヘスラーとかキルシュテンが出てくるようじゃあね。しかしセルジオ・コンセイソンのハットトリックにはびっくり。

 というわけで、ポルトガル圧勝の試合を5:45からの中継録画で確認し、徹夜で外出。

 10:15、東宝東和で『ルール』の試写。2年間寝ていたUrban Legend がなぜ今頃公開されるのか。都市伝説見立て連続殺人というネタは面白いんだけど、途中から都市伝説の見立てがどうでもよくなっちゃうのが惜しい(往年の東宝東和テイストが爆発する予告編は、かなりウソが混入してます)。ま、『スクリーム』フォロワーとしてはそれなりによくできてて、『ラスト・サマー』よりはずっと上。しかしタイミングを逃した感は否めない。

 13:00、メディア・ボックス試写室で『海のオーロラ』。日本テレビ自社制作のフルCGアニメ。プロットは思ったよりSFしてたので驚いたけど、映画の出来自体はまったく予想通り。どうしてこういう企画が通ってしまうのか謎すぎる。モーションキャプチャで動きを再現しても、キャラが人形劇では違和感が増幅されるだけだと思いますが。FFシリーズぐらいの予算と手間を投下するならともかく、勝算ゼロの勝負を挑んでも。

 15:30、浜松町のワーナーで『サウスパーク無修正劇場版』。こちらはCGIの正しい使い方の見本。ギャグの方向性はいまいち好きになれないのだが、地獄のサタンがあまりにもすばらしいので許す。ケニーの手術シーンは最高。字幕はかなり健闘してます。

 ワーナーではTOWANI第一回作品の『さくや 妖怪伝』の予告編も流してましたが、これはなにかのまちがいじゃないのという凄絶な映像が一部に混入。だ、だいじょうぶなのか、これ。いや、巨大××××が暴れるカットとか、少なくとも『ワイルド・ワイルド・ウェスト』なんかよりはるかにいい感じなんだけど。見たいような見たくないような……。




【6月22日(木)】


 午前2時半起床、ユーゴスラビア×スペインの生中継を途中から見る。
 優勝候補のスペイン、W杯につづいてまたもグループリーグ敗退!――と思ったのに。5分のインジャリータイムにまさかあんなことが。疑惑のPKは今大会のルールなのでしかたないが、それにしてもあれは……。

 ユーゴ選手の表情からして、てっきりノルウェーが2位抜け決定かと思ったんだけど、同時刻に試合をしていたノルウェーはスロベニアと0−0の意図的引き分け。後半終了直前までユーゴが3−2でリードってことで、すっかり準々決勝進出を決めた気になっていたらしい。いい気味ざます。だいたいユーゴスラビアを信用してはいけない。0ー3で負けてた試合を、十人になってから追いつくチームなんだから。当然逆のケースだってある道理だ。

 3:30からはグループリーグ突破を決めてる同士のオランダ×フランス。フランスはバルテズ、テュラム、ジダン、アンリを温存して余裕の戦い。準々決勝を地元でやりたいオランダはフルメンバーで真剣勝負。なのにどうしてフランスに2点もとられますか。本気でやったらどう見てもフランスのほうが強そう。だいじょうぶかオランダ。




【6月23日(金)】


 新潮四賞授賞パーティ@ホテルオークラ。三島由紀夫賞・山本周五郎賞・新潮学芸賞・日本芸術大賞が新潮四賞で、それプラス、川端康成文学賞の贈呈式も同時に行われる仕組み。
 日本芸術大賞の受賞者が三宅一生氏だったんで、他の受賞者はみんなミヤケ・イッセイのスーツでかためてたらしいんですが、われらが岩井志麻子嬢は激しく露出度の高い(小柳ゆきレベル)ゴルチエ(推定)の勝負服。わたしは遅れていったので聞き損ねたんですが、受賞挨拶の第一声が、「新大久保の街娼みたいなかっこうですみません」だったとか(笑)。
 ミニスカートのサイドには大胆なスリットが入ってて、椅子にすわってるあいだにそのスリットがだんだんずれて、前に寄ってくるんですね。授賞パーティでパンチラを披露した山本周五郎賞受賞者は空前絶後に違いない(笑)。
 しかし、小説新潮今月号のグラビアには、裸の男をハイヒールで踏みつけて猟銃持ってる写真が載ってるぐらいだから、今さらパンチラぐらいでは誰も驚かないかも。
 ちなみにこのグラビア、次のページには、【狂乱西葛西日記350◆焼肉屋の二階で山本周五郎賞を受賞する女編】に載せた写真を撮影中の大森が写り込んだメイキング写真(笑)が掲載されてます。小説新潮はモノクロだけど、うちの写真はカラーだし、距離も近いのでオレの勝ちだね、フフ。

 パーティの主な話題は、幻冬舎の今月の新刊、覆面作家・大信田麗の『フェイク!』。今月の幻冬舎は、森博嗣『女王の百年密室』、古川日出男『アビシニアン』、西澤保彦『依存』、松尾由美『おせっかい』と書き下ろし話題作が目白押しなんですが、書評家の人々が真っ先に読んだのは『フェイク!』だったらしい。
 小説の中身は、「ホラー作家はなぜ失踪し、未完の遺作に謎のメッセージを残したのか?」という、ありがちな業界ミステリ。メタミステリ仕立てのどんでん返し部分は、某新人作家の去年出た二作目とおなじパターン(しかもシンプル・バージョン)なので、あまり高い点数はつけられない(もっとも、Pontoon7月号のミステリー書評で、野崎六助は、「本作で特筆されるべきは何といっても、贋作ミステリーと定義するだけでは大きくはみ出る、メタミステリーの達成にある。新本格派周辺で議論かまびすしい問題もこの達成によって蒼ざめるに違いない。/最後の一頁の奇蹟的な旋律! かつて目にしたことのない、類例のない◎◎トリックのはなれ業を読め。」と激賞してるので、そういう読み方もあるのかも)。
 なぜそれが書評家の注目を集めているかというと、実在書評家をもじった名前の書評ライターが何人も登場し、クソミソに書かれてるから。覆面座談会事件はじめ、現実の出来事が材料になってて、なおかつ微妙にデフォルメされてるもんだから、読みようによっては洒落にならない。
 ゲラで読んだときは、いつ自分が出てくるかと戦々恐々だったわけで、帯用に書いた、
私はかつてこれほど恐ろしい小説を読んだことがない。作者はいったい何者だ?」
 という一文はまったく正直な感想なのである。(ちなみに、他の文案としては、「私はこの小説および著者とはいっさい関係ありません」とか、「すみません。私は読まなかったことにしてください」とか。)
 読了後、担当編集者には、「幻冬舎はここに出てくる書評家とはいっさい縁を切るつもりなんですか?」とか、「洒落じゃすまないんじゃないですか?」とか、いろいろ私見を述べたんですが、作中に直接登場しない書評家たちの間からも、一部、激しい反発が出ている模様。
 個人的には、『このミス』覆面座談会の小説版(匿名の書評家が実在の作家の行状を揶揄的に語るのと反対に、匿名の作家が実在の書評家の行状を揶揄的に語る)みたいなものだと思ってるので、正しい反応としては、この小説に出てくる登場人物名で覆面(じゃないけど)座談会を開くことでは。

「おまえはこれを読んで腹が立たないのか」という問題については、もちろん「書評マフィア」(笑)の端くれとして多少むっとする部分はありますが、ここに出てくる書評家バッシングはある種の紋切り型だし、まあそういう見方をする人もいるよね、という程度。だいたい自分(および自分を含む集合)に対する悪口には、腹を立てるより面白がっちゃうほうなので。こういう本に対する推薦文を書けと言われたら、そりゃもう、「これはオレに対する挑戦だ」と思って引き受けるしか。

 ゲラで読んだので、PHSおよびインターネット関連の描写については、いくつか改善意見を出しましたが、それ以外はノータッチ。作者の正体もいっさい教えてもらってないので、わたしを問いつめても無駄です(笑)。

 しかしこの本が話題をさらったおかげで、「作者当てクイズ」が実施されているカッパノベルス『白銀荘の殺人鬼』(プロ作家ふたりの合作)がすっかり霞んでしまった感じ。今年は作者当てがブームなのか?

 岩井志麻子組の二次会は銀座ワインハウス。瀬名秀明・花村萬月両氏のスピーチでなごやかに始まったパーティは、東さんの挨拶をはさみ、茶木則雄暴走スピーチで突如凍りつく。暴れん坊将軍の面目躍如というか、いくらなんでもまじめすぎるというか、こんなところで熱く本音を語っても、まわりが寒くなるばかりでしょ。茶木さんは自分の芸風というか、周囲の役割期待に応えるべきだと思いますね。いや、岩井志麻子の将来をいちばん真剣に心配しているのは茶木則雄だということはよくわかったけどさ。
 オチの見えない暴走に、とうとうジャッジからレッドカードが飛び、無言のままスピーチを放棄する茶木則雄。お通夜のようにしんと静まりかえる二次会会場。
 しかし、司会のK氏@角川書店は極寒の状況にも動じず、何事もなかったような顔で、「それではつづきましてもうお一方、大森望さんのご挨拶を」
 かんべんしてよ(涙)。いったいオレがなにをしたと。いやはやこの十年でもっとも緊張するスピーチでした。プレッシャーには強いと思ってたんだけど、意外と弱いことが判明したり。まだままだ修行が足りません。だからそんな修行はしたくないんだってば。

 三次会は七丁目のバー。島村洋子の私生活が主な話題だったような気がするがすでによく覚えていない。主賓が帰ったあとの四次会は十人ぐらいでカラオケ。茶木則雄の選曲は小浜徹也に似ているかも。いきなり「蒼い瞳のステラ」とかアリス・メドレーとか。
 関口苑生夫人のほか、藤臣柊子・望月玲子・島村洋子……とかなり珍しいメンツ。島村さんの選曲はもろに倉阪鬼一郎ライン。川内康範とか岩谷時子とか戦後歌謡曲王道方面で、倉阪さんは一度しましま姉妹カラオケに呼んでもらうべきでしょう。朝まで歌ってタクシー帰り。


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