【6月10日(土)】


 14:20発の《あさま》で東京駅発。長野からバスで白馬駅。富井会長に迎えにきてもらって、第17回ローカル・リフレッシュ・コンベンション(略称LRC、通称ロリコン)会場の岩岳セブンロッジへ。いつもスキーに行ってる八方尾根の山ひとつ向こうらしい。

 ロリコン17の参加者は全38名。やねこんスタッフとZero-Conスタッフが大半を占めている模様。Zero-Conの木原浩貴実行委員長も来てました。今年の日本SF大会、Zero-Conは、8月5日(土)〜6日(日)、パシフィコ横浜で開催予定。あと2カ月ですが、まだ定員には余裕があるみたいなので参加希望の方はおはやめに。

 さて、食事のあと午後7時に開幕したロリコンは典型的ななごみ系ローカルコン。「信濃の国」の歌(やねこんのOPでやったやつ。ロリコン恒例の儀式らしい)の合唱から、参加者全員紹介、企画案内――とつづくのはいずこも同じ。この規模だとクローズドな合宿宴会になりそうなもんですが(KSFAとミナミ合同のSF忘年会@京都とか)、ゲストがいたり初参加者がいたりして、オープンなローカルコンの様式が維持されている。

 オープニングでは、地元在住のアマチュア天文家の人が撮影したM51星雲の立派な写真と花束を頂く。猫に小判というか豚に真珠というか。しかしSF者の看板を掲げる以上、自宅に一枚くらいは宇宙の写真が飾ってないと恥ずかしいのでありがたいことである。
 あと、富井会長からは長野五輪グッズを拝受。ありがとうございました。

 大森の出番は8時からの質問大会。まるさんこと丸山博之氏の司会で、参加者から事前に寄せられた質問に答えてゆく形式。今週はインタビューされる星回りなのか。話題はSF翻訳関連が中心。あんな話でよかったんでしょうか。
「ライバルはだれですか?」という質問にはちょっと意表を突かれる(笑)。「ほんとにいつもカメラ目線なんですか?」という質問も出て、河内マンガの影響力恐るべし。

 ノルマ終了後は各部屋に分かれて合宿企画。とりあえずゲーム部屋に行って、「サンバDEアミーゴ」初体験。床面積がないので、我が家で遊べないのはDDRといっしょ。ゲームとしてはDDRより燃えるかも。体が全然動きませんが、とりあえず木原には勝ったのでよしとしよう(笑)。

 ラウンジの大画面TVにはWOWOWのチャンネルもあり、をを、これでEURO2000開幕戦が見られる! と思ったが、契約してないのでデコーダーが入ってないんでした。世の中そう甘くはない。

 ロリコン17で驚いたこと2つ。

【その一】夜中にラウンジをのぞくと、みんなで「さんまのからくりTV」のビデオを見ている。究極のアットホーム状態。しかしなぜ。長野ファンダムではさんまが流行しているのか? いや、めったに見ないのでためになりましたが。
(もっとも、午前4時ごろもう一度ラウンジに行ったときには、70年代TVアニメOP集という標準的なビデオが流れていたのでちょっと安心。つづきが「カトちゃんケンちゃん」とかだったらどうしようかと思った。

【その二】女性参加者がマイ・パジャマ持参で、みんな夜中に着替えている。オレも最近の合宿コンベンションではジャージ持参を励行してるんですが(今回はあわてて家を飛び出したので忘れた)、そうですかパジャマですか。これからは京フェスやセミナーでも、合宿時パジャマ着用を義務づけるのはどうか。いきなり雰囲気が変わるぞ。

 ロリコンはほとんどの参加者がクルマで来てるので(人間は38人、クルマは10台以上)、パソコンとかモニタとかゲーム機とかも持ち込み放題。ひとりでモニタ二個とフルタワーとその他もろもろを運んでる若者もいました。




【6月11日(日)】


 4時間ぐらい寝て、9時過ぎ起床。残しておいてもらった朝ごはんを食べてエンディング。ロープウェイで岩岳に登るのが恒例行事らしいんだけど、天候不順につき、白馬のジャンプ台見学ツアーに変更。
 いつもは遠くから眺めるだけのジャンプ台ですが、夏場は一般人もてっぺんまで上がって見学できる仕組み。途中の通路と階段が素通し(金網状)で真下が見下ろせる構造になってて、めちゃめちゃスリリング。高所恐怖症の人は通れないのでは。下を見ながら歩いてると階段を踏み外しそうになります。肝試しアトラクションとしては、フリーフォールやローラーコースターより優秀なのでは。
 サマージャンプの練習に来てる選手たちがいてくれたおかげで、ラージヒル/ノーマルヒルともに、間近から見物できてラッキー。ジャンプ台斜面の最大斜度は45度ぐらいありそうで、あれではジャンプに失敗するほうがおそろしい。

 昼食はクルマとバイク(うち一台はハーレー)を連ねて、白馬から20分ほどの距離にある有名店らしい蕎麦屋へ。蕎麦の風味を損なうのでざるは出しませんとかそういう店なので盛りとそばがきを食べる。そばがきは上々でした。

 食後に解散、また富井さんに送ってもらって長野駅まで。新幹線に乗ってまっすぐ帰宅、終わったばかりのキリン杯、日本×スロバキア戦をビデオ観戦。スロバキアは格下の日本相手だというのに最初から守備的。俊輔のFKで同点にされたあとは露骨な引き分け狙い。もうちょっと攻めてきていただかないと。遠い母国には結果しか伝わらないから?
 あれだけ背の高い人々に守られるとちょっとどうしようもない。あとは「強引なドリブル突破でファウルをもらう作戦」では。しかしトルシエ監督はまたも謎の選手交替。俊輔はもっとたくさんごはんを食べないと信用してもらえないのかにゃ。三浦淳宏の左サイドは問題なし。しかしやっぱり右サイドに人材がいない気が。

 芦辺拓『怪人対名探偵』(講談社ノベルス)を読みつつ寝る。




【6月12日(月)】


 午前3時起床。ユーロ2000のグループD、オランダ×チェコ。レベルはずいぶん違うが、前半の展開はキリン杯の日本×スロバキアに似ている。チェコの選手の体格とチーム戦術がスロバキアのそれとそっくりってこともありますが、オランダがやってることは日本が(実力さえあれば)やりたいことだと思った。
 しかしそのオランダも、あれだけチェコに引かれると攻撃の糸口がつかめなくなるわけで、スロバキアに引かれた日本が攻めあぐねたのも当然。勝つために必要なのは審判のえこひいき(笑)。
 というわけで、後半はチェコが人が変わったような猛攻を見せて圧倒的に押していたにもかかわらず(ネドベドとコーラーのすばらしいシュートがポストとクロスバーに嫌われる)、「かっこだけ」のバイシクルキックをペナルティエリア内で邪魔したのが祟り、PKで決勝点を与えてしまう。どう見ても疑惑のPKだけど、主審がセリエA最強のコリーナさんだから文句も言えない。ま、開催国にはオマケがつくわけだ。でも、ベルカンプは調子よさそう。クライファートはいまいちかな。

 実況の柄沢晃弘がダヴィッツとシードルフを何度もまちがえたのが笑えた。やっぱりあのふたりはプロでも見分けにくいのか。ヘアスタイルはともかく、どっちか片方、ヴェストみたいに髪の毛を緑色にするとかしてほしい。シードルフが下がってやっとこれでだいじょうぶと思ったら、出てくるのは双子の片割れだし(笑)。

 あと驚いたのが、シュタムの怪我の縫合処置実況中継。目の上がぱっくり割れる、かなり深い傷だったんですが、ベンチで眉ひとつ動かさず、チームドクターに傷口を縫ってもらってる様子が至近距離から中継されてました。シュタムおそるべし。しかしあれだけえんえん縫合現場を映しておいて、けっきょく監督判断で交替。そりゃないよ!

 つづいてグループBのイタリア×トルコ。これまた1−1から、ふつうならとってもらえないPKでイタリアがタナボタ決勝点。これはあれですか、強豪国はゲタを履かせてもらえるルールですか? UEFA杯でガラタサライが優勝したくらいじゃ、まだまだトルコは一流国と認めてはもらえないという。チェコもチェコ単独になってからは新参だからな。




【6月13日(火)】


 ニューヨーク帰りの柳下毅一郎と電話。主にEURO2000の話題。オランダのサッカーは日本の(目標とする)サッカーに似てるとか。守られると点がとれないが相手が攻めてくると大量点。

 ドイツ×ルーマニアの後半だけ観戦。かたやヘスラーにマテウス、かたやハジと、フル出場できない人たちが中心のチーム対決。今日は期待したインチキPKもなく、1-1の引き分け。というか、後半はこの人たち、ほとんどなんにもしてませんでした。こういう年寄りチーム同士の対決の場合、両者で相談して、試合は前半だけにするとか、20分ハーフの試合にするとかしたほうがいいのでは。だからどうせなら前半だけ見ろよ>オレ。

 3:30からイングランド×ポルトガル。第一試合屈指の好カード(オランダ×チェコには負けるかも)。実況担当は柄沢晃弘。わたしはサッカー実況でこの人がいちばん好きなんですが、EURO2000では解説担当・奥寺彰彦と組んでる模様。奥寺はほんとにつまんないことしか言わなくて、どうにかしてほしい。

 前半3分、ベッカムがボールを止めて、ほとんどフリーキックのようなセンタリング。スコールズの頭にピンポイントで合って、1-0。さらにオーウェン→ベッカム→マクマナマンで2点め。
 ふつうこのレベルの試合だと、「おたがいの長所を消す作戦」が実行されるものなのに、この試合はノーガードの殴り合い。わたしたちは自分がやりたいサッカーをするので、あなたたちも自分がやりたいサッカーをしてください、みたいな。フリーでボールを持たせてもらったベッカムのみならず、ルイコスタ、フィーゴもやりたい放題。
 いやそれにしてもポルトガルの反撃は凄かったですね。フィーゴ、アダムスの股抜きで30メートルの右足ロングシュート! これはいまんとこ今大会のベストゴール。シーマン一歩も動けず。ていうか、なぜシーマン?
 つづいてはルイコスタのクロスにジョアン・ピントがディフェンダーの手前で渋くヘッドで合わせ、これがポストに当たって入り同点。
 イングランドはあいかわらずロングボールばっかり。ポルトガルはあいかわらず華麗なパス回しに耽溺するサッカー。そこまでつながなくてもと思うんですが、見てる分には面白すぎる。問題はフォワードだね。

 ……ってとこまでハーフタイムに書いてたんだけど、失礼しました。後半はルイコスタのパスに飛び出したヌーノ・ゴメスが勝ち越しゴール。
 大森ははじめて見る選手なんですが、ヌーノ・ゴメスはルックスもかわいいし、今大会で人気爆発の予感。ルイコスタ×ヌーノ・ゴメスのコンビは、10年前のアルゼンチン代表のマラドーナ×カニージャみたいだとちょっと思った。ポルトガル強い。面白い。今大会はポルトガルを応援することに決定。現時点では、勝ち点3でグループAのトップだし。ドイツ、ルーマニアのロートル軍団は敵じゃないでしょ。
 それにくらべてイングランドは……マンチェスターUやチェルシーよりずっと弱そう。予選からあんまり調子が上がってないし、オーウェンもぱっとしないし、絶好調なのはベッカム様だけ。

 オランダの強さも圧倒的とは思えないので、ジダンが絶好調らしいフランスのW杯につづく優勝って可能性もかなり高そう。がんばれポルトガル。PKのオマケはないけどな。

 みのうら風虎日記SF編への反応。
「ファン活動っつーと、定期的に読書会やるとか、建設的な議論するとか、ミニコミ作るとか、もっとまじめで建設的なイメージじゃないですか?」
 ってことですが、それはサーコン(serious and constructive=まじめで建設的)系ファン活動のイメージで、ファン活動全体に占める割合としてはむしろ小さいほうじゃないですか。ファニッシュと呼ばれる、まじめでも建設的でもない宴会活動のほうがマジョリティだと思いますが。コスプレとかアニソン合唱とか怪傑のーてんきとか替え歌作成とかイントロ当てクイズとか、そういうのは伝統的にファン活動の王道。
 ファニッシュ系の活動がおたく文化全般に消化吸収されてしまった結果、サーコン系の活動しか「SFファン活動」と見なされなくなってしまっているのか? だとすれば、ジャンルとしてのSFがたどってきた道のりとパラレルだと言えなくもない。
 だいたいSFファンがふたり集まって話をしてりゃ、それがファン活動の最小単位。
「オレが飯を食っている。それがファン活動だ」とか(←柴野さんならアリかも)。

 SF大会は伝統的に「SFファンのお祭り」なので、企画自体はSFと関係なくても、「SFファンがおもしろいと思うことをやる」イベントだったわけですが、『SFにはたいして興味がないが、「SFファンがおもしろいと思うこと」には興味がある』参加者が増大した結果、「最近じゃSFの企画のが珍しくなっちゃったよ」状態になってるんじゃないですかね。そういう人もぜんぶひっくるめてSFファンとかファンダムとか呼ぼうとすると、呼ばれた人から「そんなつもりはありません」的反応が返ってきたり。というわけで、話はまたSFセミナーがらみの議論にループするのだった(笑)
 もしかしたら、「わたしの知らないどこか遠い国に立派なファンダムや立派なファン活動がある」――みたいな幻想が蔓延しているのかも。どこかにあるユートピア? しかしファンダムもファン活動も基本的にはすごくくだらないものなので、ガンダーラはどこにもありません。


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