【5月16日(火)】


 5時、都内某所の焼肉屋の二階で、山本周五郎賞受賞作発表待機宴会。こんなところで発表を待つ作家はもちろんひとりしかいない。「おはなはん」と言えば岩下志麻、「焼肉屋の二階」と言えば岩井志麻子である。
 というわけで、まだ明るいうちから、各社編集者を中心に20人が集合。ひたすら肉を食いまくる。適正量の軽く二倍はありましたね。この場で聞いた最高の名言が、シマコさんが柴口さんから与えられたという忠告。
「身は慎めないんだから、せめて口は慎みなさい」
 至言というべきであろう。しかし現実には、「口は慎めないので掲示板への投稿は慎む」レベルかも。
 だがしかし、岩井志麻子も人の子である。午後6時をまわるとしだいに口数が少なくなり、やがて携帯電話の着信音が。静まり返る焼肉屋の二階で電話に出る志麻子さん。
「はい。ええ、岩井志麻子です……」数秒の沈黙に続いて、小声で「あ、ありがとうございます」
 わっとわきかえる焼肉屋の二階。拍手と歓声の渦の中、岩井志麻子の目に涙が……。



 手前に見える焼肉の皿が絶妙のアクセントになってますね。
 シマシマ姉妹の相方、島村洋子ももらい泣き。「悔し涙や」と憎まれ口で強がってましたが、それぞれの脳裡にさまざまな記憶が走馬燈のように駆けめぐったであろうことは想像にかたくない。わたしは、「しめたっ」と思ってひたすら写真撮ってましたが。

 受賞者が記者会見会場に去ったあと、祝勝会を抜けて近くのドトールで急ぎの仕事を1時間。飯田橋駅前の花屋で大枚はたいてバラの花束を買い(やはりトゲがないとね)、三次会の会場へ。
  20人ぐらいでどやどや入ってったんで、ほかのお客さんに迷惑だなあと思ってたら、さらに、どこかで見たような集団が。富士見事業部の《ドラゴン・マガジン》系編集部の新人歓迎会だって。さらに、富士見の編集者陣に混じって、どこかで見たような人がすわってると思ったらあかほりさとる氏。岩井さんは、竹内志麻子時代、某所のパーティであかほり先生に親切にしてもらったことがあるそうで、感激の再会だった模様。

 もうなにがなんだかよくわからない状態でしたが、とりあえずめでたい。志麻子さん、おめでとうございました。




【5月17日(水)】


 4時、ミストラルでS記者@毎日中学生新聞と打ち合わせ。半年の予定だったのが2年目に突入しちゃった連載の仕切り直しとか。

 グレッグ・ベア『スター・ウォーズ/ローグ・プラネット』のゲラ校正とファンタジー・ノベル大賞一次の原稿読み。




【5月18日(木)】


 森岡浩之を励ます会@青山ラピュタ・ガーデン。前に《異形コレクション》のパーティやったのと同じ場所で、出席者の顔ぶれもけっこう共通してたような。森岡さんは意外とまじめに仕事をしている模様。
 話題の中里融司氏がいたので、さっそく挨拶する。
「いやもうすごい話題じゃないですか。たった三文字であれだけの反響を引き起こすとは。でもやっぱり『寄生虫』っていうのは、ふつうに考えると、やっぱりお金もらってるプロの書評ライターのほうですよね。ウェブの書評は金銭的な見返りがゼロなんだから、寄生虫じゃないでしょう」
 咎めるつもりは全然なかったんですが、真剣に謝罪されてちょっと困惑。中里氏はたいへんいい人のようである。しかし、「いい人」がインターネット上の情報発信にあまり向いていないというのは、悲しいことだが真実だ。

 書評が(著作権法の定義とは関係なく)二次的著作物と見なしうるのは確かなので、他人の著作物についてああだこうだ言うことで金を稼ぐ職業が「寄生虫」と呼ばれることについてはべつになんとも思いませんが(どのみち99%の書評は、売れ行きにほとんど貢献しない)、作家も客商売なんだから、お金出して買ってくれてるお客さんを怒らせるのは賢明じゃないと思いますね。

『本とコンピュータ』編集デスクの仲俣暁生氏とは初対面。オンデマンド出版の話とか。同じく初対面の弾射音氏はご近所と判明。杉本蓮さんはいきなり金髪になっててびっくり。

 大原さんから、埼玉県庁の新千年紀記念行事担当の人を紹介される。この年末からはじまるインターネット博覧会の担当で、埼玉県は、秩父原人ゆかりの地ってことで、「人類博物館」っていうのをやるらしい。なぜ大森のところに相談に見えたかというと、「明石原人になんとなく興味のある会」の会員だという情報をウェブで拾ったから、だって(笑)。わたしの原人に対する興味は「なんとなく」以下なので、ほとんど協力はできないんですが、あとからいただいたメールによると、

・原人に興味があって、秩父原人に関わりたい(発掘の担当者に紹介するなど、でき
る範囲での便宜は図ります。)
・埼玉県に住んで(又は出身)いて、多少は協力してもいい
・今はひまなので協力してもいい

 というような人を募集している模様なので、該当者は連絡してください。インターネット博覧会については、高知県庁の人も、どうしたもんかとまだ悩んでるみたいでしたが、すでに企画が決まってる分、埼玉県の立ち上がりははやいのか。上の人間がいっさいチェックせず、役所内で企画を公募して勝手にやらせるとか、役所でいちばんへんな人間にまかせるとかすれば、けっこう面白いサイトができるような気もする。都道府県単位だと難しいか。

 今日のパーティには、めずらしくうちの実弟も出席。現・JUNE編集長。なんかすごく偉くなったような気が。仕事上の接触はゼロなんですが、めったにない機会なのでSFな人々に紹介したりとか。
 ひかわ玲子さんいわく、
「似てると思わなかったけど、並べてみるとやっぱり似てるよね」
 なにをおっしゃるひかわさん。ひかわさんの場合は並べなくてもお兄さんにそっくりじゃないですか。と言ったら殴られた。なかなか複雑である。

 森岡さんの挨拶が森下さんの日記で紹介されてますが、より正確には、
「わしが監督に就任したら、三年で優勝を狙えるチームにする」だったと思いました。いまのSFは、戦力的にはじゅうぶん優勝を狙えるチームだと思うがどうですか。

 二次会は、ラクファカールの人(たぶん)がさがしてきてくれたイタ飯屋に、20人ぐらいでなだれ込む。SF組は主に早川書房のK山氏から昔話を取材。ホラー組の話題は『憑き者』とか。飯野文彦×井上雅彦は意外といいコンビかもしれないと思いました。ボケとツッコミじゃなくて、濁と清ね。飯野さんはペプシのSWボトルキャップをタダで送ってきてくれたいい人なので、発言は記録にとどめないことにしよう。貢物重要。それにしても、天井が高くて暗くて奥まったテーブル席にワインとキャンドルが並ぶ高級なムードも、飯野文彦がひとりいるだけでまったく別世界になってしまうのだから強力である。




【5月19日(金)】


 ファンタジーノベル大賞の箱がだいたいかたづいたので、小説すばる新人賞2次の箱を開ける。今年の一次は通知表型の採点システムを採用。クラスでいちばんできる子に5をつけて、それにつづく15パーセントに4をつけて……みたいなやつ。つまり完全な相対評価。まあ絶対評価だと人によって採点基準が変わってくるので、それはそれでひとつの方法かもしれない。




【5月20日(土)】


 どしゃ降りの雨の中、徳岡正肇・いわためぐみの新居披露宴会@西早稲田。富士見の人とか元ログアウトの人とかゲームの人とか。
 徳岡シェフのトルコ料理を貪り食ってからユタに流れる。中野ブロードウェイツアー帰りのちはら嬢とか。そのせいか、SFセミナー「田中香織のなぜなにファンジン」の続編みたいな話題が中心。「原始、京フェスは大学SF研のオフ会だった」という大森史観を述べ、「セミナーも合宿は似たようなもんだった」と発言したところ、三村美衣が強硬に反対。彼女は昔から大学SF研が機雷だったらしい(笑)。
 そういえば、その昔、ファンジンに愚劣なセミナーレポート(←三村主観)を書いた大学SF研の若者を自宅に呼びつけて説教した(←大森主観)武勇伝もある。似たもの夫婦? ファンダムが敵だった男と、大学SF研が敵だった女が結婚したのか? って野尻抱介だけが喜びそうな話だな。まあいいや、今日はサービスしておこう。ってなにを。

 しかし考えてみれば、昔は日本SF大会だって、地方ファングループのメンバーが集まる全国オフのようなものだったわけで、スタッフ/お客という区別が明瞭になるのはSHINCONあたりからなのではないか。
 と思ったら、それは「会場に依存する」と高橋良平が解説。そりゃそうだね。とすっかり温故知新が流行しているのもセミナーの影響か。

 注目された小浜徹也×森太郎の先輩後輩対決はなかった模様。せっかく場所を用意したのに。

 11時過ぎに西葛西までもどり、ロイヤルホストでさいとう姉妹・国樹由香嬢と合流。メトロセンターの寿司屋で深夜の寿司を食べたあと、MAG TIMEで『スター・ウォーズ/ローグ・プラネット』のゲラ校正。

 あ、リンク張るのをすっかり忘れてましたが、あにまる・まぐねてぃずむ ぽちのだいすき絶賛発売中の斉藤友之ファンサイトはここです

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