【5月8日(月)】


 乱歩賞最終候補作決定会議@講談社。昨年同様、予選委員は、原田社長@出版芸術社以下、関口苑生・山前譲・池上冬樹・吉野仁の各氏。立会理事は今野敏氏。個人的にこれだけは残したいと思ってた3本がすべて残ったので、ほぼ完璧な結果。アレが受賞したらかなり話題になるような気がするが、乱歩賞らしくはないか。

 終了後は例年通り神楽坂の鳥茶屋。ただし、新しくできたばかりの別館のほう。坂の途中に忽然とそびえる謎の建物って感じで、インパクトが強い。さらに二次会に流れ、深夜零時頃帰宅。




【5月9日(火)】


 小説すばる新人賞一次の評価表を記入して、3箱を送り返す。これで残る箱はファンタジーノベル大賞だけ……とか言ってると、もうすぐ小松左京賞の箱が来るのだった。
 しかしその前に新刊書評の締め切りが来るので、猛然と製本された小説を読みはじめる。とりあえずはマイクル・クライトン『タイムライン』の仮綴じ見本に着手。『ドゥームズデイ・ブック』とほぼ同じ話(笑)。いや、こちらは活劇というか、チャンバラ時代劇成分が中心なんですが。タイムトラベルには量子論を使用ってことで、詐欺的説明に期待していたのだが、多世界解釈を恣意的に運用しているだけという印象。量子コンピュータを極秘裏に開発して……みたいな無理無理な設定をどうして使うのかクライトン。そのへんんにこだわらなければ楽しく読めます。キャラ立ってないけど。




【5月10日(水)】


《噂の真相》6月号を読む。「平野啓一郎の盗作疑惑」記事に仰天。2カ月ばかり前に公開されて物議を醸したこのエッセイ、「『バルタザールの遍歴』絶版の理由」の内容をそのまま紹介し、一方的に新潮社サイドの対応を非難する内容。常識的に考えると、「盗作疑惑の証拠隠滅のために絶版を画策する」なんて説は電波系陰謀論じゃないかと思うんだけどなあ。まあ、常識が適用できないこともままあるので断定はしないけど。
 しかし、佐藤亜紀のエッセイをウェブで読んだ人がふつう知りたいのは新潮社サイドの見解なわけで、《噂の真相》があえていま記事にするなら、そこを突っ込んでくれないと意味がないのでは。ていうか、新しい情報がほとんどない記事でした。それにしても前田編集長はとばっちりでかわいそう。

 しかし今月号でいちばん面白かったのは、「斎藤美奈子の性差万別」。東浩紀は326に似ている説は目からウロコが落ちましたね。小説トリッパーではじまった東浩紀の新連載第一回を読んで、この人はいったいどうして自分の話ばっかしてるんだろうと思ってたんですが、いや、なるほど。
 もっとも、東浩紀がいつもこういう文章を書いてるってわけじゃないので、やっぱり「これからは自分語りの時代だっ」みたいな読みがあったんでしょうか。タニグチリウイチ氏の分析に期待したい。
 それにしても東浩紀=326なんてふつう思いつかないよな。斎藤美奈子は天才かも。

 ほかにもこの号は読みどころ満載で、メディア(裏)最前線の「漫画」欄には、白泉社の少女マンガ家が角川系の雑誌に移籍するケースが目立つ理由として、「ネット上で暴れている編集者を始め、マニア気質の個性の強い編集者が白泉社に多いのが、少女マンガたちの嫌う理由だともいう。」だって。固有名詞出さなきゃなにを書いてもいいのかっ。まあたしかに「マンガ担当編集者」とは書いてないしなあ。

 いちばん笑った一節は、「本誌特別取材班」が担当する、角川歴彦関連記事の中で、『ホラーCDコレクション リング』に触れたくだり。要するに、「女帝」的な人物が売れそうもない企画を持ち込み、それを歴彦氏がOKして出したら案の定失敗した――とおいう趣旨なんですが、そんなことはどうでもいい。このCD版『リング』って、文中の説明(「鈴木光司の同名小説を音声だけでドラマ化したもの」)からすると、どうやらふつうのドラマCDみたいなんですが、書いた人はそういうジャンルが存在することも知らなかった模様。いわく、
いくら原作がベストセラーとはいえ、このニューメディア時代にこんなラジオドラマもどきのものが本当に売れると思っていたのかのクビをひねりたくなるが(後略)
だって。
 ラジオドラマもどきどころか、ラジオドラマをそのままCDにしたものだってたくさん売られてるんですけど。この『リング』ドラマCD企画がどうしようもなくとんちんかんに見えるとしたら、それは取材者の頭の中身が20年前で止まっているからでは。なにしろ「ニューメディア時代」だもんなあ。

 サンフランシスコから斉藤友子とデイナ・ルイスが到着。ミストラルで落ち合って、メトロセンターのうどん屋で夕食。斉藤友子はいきなり髪の毛が爆発している。栄養状態の悪いホームレス? 嗚呼、西海岸mangaおたくの嘆きの声が聞こえる……(笑)。やっぱりJapanese girlは黒いロングのストレートヘアでないと。だいたい、あれじゃ自画像と全然合ってないぞ。お下げにしてメガネをかければ可?

 さいとう姉妹が久闊を叙している隙に《プレミア》2周年パーティを覗きにゆく。意外と人が少なかったような。

 電車に乗ってるあいだに、イオンから届いたSW/RPの朗読カセットを聞く。固有名詞の発音が完璧にわかるのですごく便利。これ聴きながらゲラを校正するとちょうどいいかも。




【5月11日(木)】


 またしても某メフィスト賞受賞作の帯裏に推薦文のようなものを書く仕事。いいのか、ほんとに(笑)。

 さらに新刊消化。三雲岳斗『レベリオン』(電撃文庫)は、ジュブナイル学園SFの現代的再話。ちゃんと90年代のヤングアダルトになってるんだけど、しかしこれでは《ブギーポップ》をふつうに書いただけじゃないかという気も。
 茅田砂胡『レディ・ガンナーの冒険』(角川スニーカー文庫)は、ファンタスティック4主演の西部劇。「四匹荒野を行く」とかそんな感じ。面白いんだけど茅田砂胡にしてはふつうすぎる気が。いや、ふつうでもいいんだけど。

 斉藤友子が明日、栃木の実家に行くというので、同行することに決定。サーコン夫妻もツインリンクもてぎに行くらしい。しかし土曜日の夜はロフトプラスワンで《魔術戦士》完結記念の朝松ナイトなので、たぶん一泊だな。


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