【3月11日(土)】


 というわけで、第一回のMYSCON合宿である。詳細は、レポートリンクとかを適当に参照してください。
 夕方5時ごろ、地下鉄南北線「東大前」駅に着くと、スタッフが案内に立っているあたり、人的資源の豊富さをうかがわせる。エレベーターで地上に上がり、そこにまた待機しているスタッフの指示にしたがい、松本楽志が立っているという角まで歩く。うしろのほうには、MYSCON参加組らしいお嬢さんたちの集団が道に迷っていた模様ですが――ていうか、目印と指示された寿司屋が見つからなかったらしい――自助努力に期待しました。教えてやれよ>おれ。
 ところでMYSCONは、MissConとの混同を避けるためか、アルファベット表記が推奨されてるんですが、同音なので発声上は区別できず、まあふだんはそれでなんの問題もないんだけど、南北線の駅のホームでうら若い女性の集団が「あなたもみすこんですか?」「わたしもみすこんに参加するんです」とか言ってるのを横で聞いてると、知らない人はぜったい誤解するよね、と思ったが、まあ誤解されて困ることはないのか。たとえば、「福井健太はミスコンに反対らしいよ」と言った場合、ミスコンがどちらを指すのかはほぼ自明だし。Mystery Realmと違って読み間違えられる心配もないので安心。

 角に立つ松本楽志と日本ホラー小説大賞の受賞可能性その他についてしばらく立ち話してから(当人のレポートによると、オレは「まあ、受賞はない」と言ったらしい(笑)。結果的に、今回のホラー大賞は全部門いっさい授賞ナシでした)、会場の鳳明館森川別館へ。この旅館ははじめてのような気がするが、もはやよくわからない。ローマ風呂にはなんとなく見覚えがあるような……。
 とりあえず業界ゴロ用の部屋に荷物を置き、先生部屋(笑)にいる井上夢人氏と打ち合わせ(修学旅行用の旅館なので、宿の部屋割り表には「生徒111名、先生1名」とか書いてあるのだ)。
 本番のインタビューの内容は、MYSCON井上夢人インタビュー(2000.2.11)にほぼ全文が再録されているのでそちらを参照してください。もっとも、大森発言に関しては、事前の原稿チェックはもちろん、掲載許可も求められた記憶がないので、いっさい責任は持ちません。
 与えられた時間は45分で、いくらなんでも短すぎるんじゃないかと思ったんですが、予想通りのっけから激しく時間オーバー。e-NOVELSの話だけで1時間、その他の話題に30分――というぐらいが適正だった気が。井上さんはどんどんしゃべるので、インタビュアーはほとんど出る幕がなかった感じ。時間があれば、「なぜpdfか?」ってあたりはもっと突っ込みたかったんですが。いずれにしても予定終了時刻を守れなかったのは申し訳ない。

 インタビュー終了後は、割り振られたチームに分かれて、本の交換会とクイズ大会。初心者の交流の場がほしいとか、知らない人と話ができなかったとか、プレMYSCONに対して寄せられた文句・要望に応えるべく用意された企画だった模様。そのため、なるべく知らない人同士をおなじチームにするという方針で、まあそれなりに機能していたのでは。しかしクイズのネタがネタだったので、古本系掲示板参加者から不規則発言が相次ぎ、内輪色は払拭しきれていなかったような。スタッフ間でも、パブリックな話題とプライベートな話題の区別がついてない印象。べつにそれが悪いってわけじゃないけど、目指している方向性とはずれてるかも。
 本の交換で出したのは、出がけにBook Islandで買ってきた松村光生『わが母の教えたまいし歌』(ハヤカワ文庫JA)。50円ですが、絶版文庫だし、SFハードボイルドの傑作だし。と思ったら、なんと某氏が、連城三紀彦『変調二人羽織』の初版・帯付き・サイン入りを出展。どういうわけかだれもそれを欲しいと言わないので、無競争で大森が入手。こんなにお得なトレードは初めてかも(笑)。
 クイズのほうは、「50円玉20枚の謎」にちなんだ「100円均一古本20冊の謎」で、趣向としてはかなり盛り上がりました。合宿企画のチーム対抗クイズの出題としてはかなりよくできてると思った。じっさい、回答は珍説奇説のオンパレード。どこかのチームの代表で登壇したのだ@のだなのだ嬢が、「紙魚の研究をしている生物学者」説を発表したあたりが、個人的にはポイント高かったですね。「西澤」って回答も、証言の信憑性を根底から覆す発想で、かなりエレガントでした(「昼休みに毎日20冊古本を買っていく男を見た」っていう話が発端なんで、「毎日20冊古本を買っていく人がいたわけじゃなく、「昼休みに古本を買う男を目撃したという一日が7回くりかえされているのに証言者が気づいていない」という回答)。

 全体企画終了後は適当にごろごろ。なぜか作家が集まっていた煙草部屋では、初対面の蘇部健一氏に紹介される。講談社ノベルス新刊情報交換とか。ストラングル成田氏ともオフラインでは初対面。

 ネットワーク企画部屋では、ともさん@みすべすの「初心者をいかにケアするか」という発言が印象的でした。WWW掲示板管理者の鑑。まあオレの場合、参加者がみんな和気藹々と仲良くしてるような掲示板は管理したくなかったりするんだけどさ。

 深夜からはじまったオークションではSF系の出物もちらほら。『一角獣・多角獣』の美本が出てたので食指がうごいたが(うちのはビニールカバーがついてない)千街晶之が法外な値段で落札。まあしかし、全体的には相場よりやや安めだったのでは。いや、YAHOO! オークションとか見てると相場観が崩壊してしまうのでよくわかりませんが。

 大広間のキャラ萌え企画を覗いたり、ひとりでこっそりローマ風呂に入ったりしてるうちに朝になり、エンディングを待たずに雨の本郷からタクシー帰宅。




【3月12日(日)】


 家に帰り着き、寝床でだらだら本を読み、午前10時頃から夜中まで爆睡。




【3月13日(月)】


 夜中から出かけて、《本の雑誌》の原稿を書く。あとはミステリチャンネル用の読書とか。飯嶋和一『始祖鳥記』はたしかにおもしろかったけど、どう読んでもミステリじゃないよな。途中から塩の流通をめぐる経済小説になってびっくり。国家の規制というか護送船団方式と戦う独立系ベンチャー。ちょっといかにもな図式すぎる気もするが、読んでるあいだはそう思わせないのがうまい。




【3月14日(火)】


 八重洲ブックセンターに寄って本を仕入れてから、銀座の《がんこ》で年に一度の美由紀さん母子を囲む会。山岸真はスーパーミルクちゃんがけっこう好きらしい(笑)。




【3月15日(水)〜16日(木)】


 ミステリチャンネル用の読み残しを消化。伊野上裕伸『モラルハザード』は保険金詐欺の加害者側の視点で書いたピカレスク。従業員に保険かけてタイへ連れてって殺すんだけど、計画がどんどん破綻してたいへんな目に遭う話。けっこう笑えます。水木楊の『砂城』も経済物で、こっちはシンガポールが舞台。ディーリングルームの内幕とかも書いてあるんだけど、川端裕人の『リスクテイカー』なんかとくらべると、一昔前の企業サスペンスという印象。まあこっちのほうがリアルなんでしょうが。

 スターログの原稿のために、「ブレードランナー」のクライテリオン版LDをひっぱりだし、ひさしぶりに見直す。ついでに♪きむらかずし氏のブレードランナーFAQの日本語版を読んだり。ちなみに、Bladerunnerのタイトルの長編を書いたひとは、SF業界表記だと、アラン・E・ノーズじゃなくて「ナース」です>きむらさま。




【3月17日(金)】


 竹橋の毎日新聞本社ビル地下の喫茶店で6時半からミステリチャンネル「ベスト・ブックス」の収録。茶木さんほど芸がないので、宿題はばっちり。今月のリストの十冊はぜんぶ読んでったんだけど、スムーズな進行はともかく、盛り上がり的にはいまいちかも。海外編のピンチヒッターは吉野仁氏で、こちらは話題作が目白押しだった模様。四月の放送らしいので、スカパー加入者はお楽しみに。

 終了後はおなじビルの居酒屋で打ち上げ。『鳩よ!』に連載していた乱歩賞の歴史がまもなく単行本にまとまる関口苑生氏の話題が異様に白熱する。あとはみんなで茶木則雄を誉め倒していた。と日記には書いておこう。

 11時過ぎに解散になり、タクシーで神保町。C嬢@集英社のお招きに預かり、「奥泉光のフルート伴奏に合わせてカラオケを歌う会」(仮称)に途中から参加する。奥泉光、いとうせいこう、倉阪鬼一郎ほか集英社の編集者各氏がメンバー。「どんな曲でもフルートでついてくる」という話だったので、「MOTOR MAN」で挑戦。これなら勝てると思ったんだけど、間奏が長くて、そのあいだフルート吹きまくり。参りました。
 すごかったのは、自分で歌いながら合間にフルート伴奏を入れるという奥泉的アクロバットカラオケ。Georgia on My Mindとか絶品でした。もう爆笑。しかし忙しいことである。
 途中で小部屋に移ってからは、最近奈良に引っ越した奥泉さんの奈良話が炸裂。奈良は毎日天気が悪くて、食べものがまずいらしい。主にグラスゴーのような町だという結論?




【3月18日(土)】


 明け方帰宅。2時間ぐらい寝ただけで、朝っぱらから新小岩の江戸川区総合文化センターで開かれる「MYSTERY'S REALM」へ。11時ごろタクシーで会場に到着、北村薫×若竹七海のトーク(杉江松恋司会)を途中から見物。新しくてりっぱなホールですが、場所が場所だけに客の入りはいまいちな感じ。話はおもしろかったのにもったいない。三人とも固有名詞が出てこずに、「ほら、ええと、あれ、なんでしたっけ」で顔を見合わせる健忘症芸とか。しかし杉江松恋は物忘れがひどくなるにはまだはやいのではないか。アルコールで記憶領域が破壊されてるとか?

 トーク終了後、控え室で遊んでると山田正紀氏到着。『順列都市』の塵理論についてご下問を賜る。いや、オレに聞かれても(笑)。うだうだしてるうちに昼食タイムになり、立派なお弁当が到着。なぜか大森の分まで用意されていたのでありがたくいただく。招待状もらったけど赤字色が濃厚なので珍しくまじめに参加費を納入したんですが、それがこの弁当に化けたのか? そういえばプログラムにはなぜかスペシャルサンクスのコーナーに大森の名前が出てて驚きました。協力なんかしたつもりはないのになぜ。まあ控え室で大きな顔をしている言い訳にはなったのでありがたいことである。お弁当、おいしゅうございました。
 おかげで午後の企画はたいへん眠い。森英俊×藤原義也の古典ミステリ談議とか、聞いてるとどんどんいい気持ちになってくるし。だいたい椅子が良すぎるのである。
 山田さんのインタビュー(日下三蔵)は、作品リストから非SF系タイトルを順番に振り返っていく構成。関ミス連の講演会の詳細バージョンって感じでしたが、記憶力にすぐれたインタビュアーの的確な突っ込みで、山田さんも珍しく記憶力にすぐれた回答をしてました。しかし会場からの質問は圧倒的にSF関連のものばっかりだったり。やはりSF系イベントに呼ぶしか。とりあえずゼロコンかな。

 キックボードを購入したタニグチリウイチが見せびらかすために乗ってきてたので、借りて試乗。つるつるの床だと非常になめらかな走りで気持ちがいい。しかしアスファルト道路で長時間走行するのはちょっとつらいかも。あたたかくなったら購入を検討しよう。

 企画終了後は、SF組で新小岩駅近くのすかいらーく。さすがに眠さが爆発してきたので、裏合宿に流れる人々と別れ、ひとりバスに乗って帰宅。近いと便利だと思った。


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