【3月5日(日)】


 宮部みゆき『鳩笛草』解説に着手。あとは新刊ガイド用の読書とか。

 夜中にNHK BSでバリャドリードVSセビリア。セビリアの猛攻すさまじく、セサールがあたりまくってなければ軽く2点は入ってましたね。いやもうスーパーセーブの連発。この試合のMVPはセサールでしょう。しかしセビリアはこんな攻撃ができるのにどうして最下位なのか。崖っぷちのチームは強いってこと? それともすごく運が悪いチームなのか。今日だって、相手に退場者まで出て、当然勝てるはずの試合を落としちゃったもんなあ。  




【3月6日(月)】


 今月収録のミステリチャンネル「Best Books ミステリ書評国内編」にピンチヒッター出演を頼まれたので(なんか茶木さんは死ぬほど忙しいらしい)、番組でとりあげる本10冊を決めるためにミステリ方面の新刊(2月刊行分)の未読消化。
 柄刀一『ifの迷宮』(カッパノベルス)は、時代設定が2015年で遺伝子がらみの近未来本格。読みながら、当然ネタはアレに決まってるよな、どうして登場人物が全然その可能性に言及しないんだろう……と思ってると見事にすかされました。その手があったか……。しかし××××の話が出てこないのは不自然な気が。
 高嶋哲夫『ダーティ・ユー』(NHK出版)は、いじめをモチーフにした学園物。主人公(帰国子女の男の子)の設定は面白いんだけど、典型的アメリカンボーイ過ぎるかも。フォーミュラフィクション的にはよく書けてます。ただしフォーミュラフィクションで書いちゃうと意味がない気がしなくもない。
 山本甲士『ナイト』(ハルキノベルス)は、女探偵がヤクザ組織と戦う話。都合よく進みすぎてB級テイストだけど、けっこう面白くて拾いものでした。こんなことでもないとなかなか読まないタイプの小説なので。




【3月7日(火)】


 徹夜で仕事して、ぼちぼち寝るかなと思ってたお昼頃、高知の母親から架電。
 1900年生まれ、今年の11月で100歳になるはずだった父方の祖父が、21世紀を待たずに自宅で急逝したとのこと。あと1年がんばれば、3世紀にまたがって生きた計算になったんだけど、まあいくら長寿社会とは言っても、大往生の部類でしょう。戦前は中国日々新聞で新聞記者をやってた経験もある人で、昔は巻紙に小説をしたためていたりしたらしい。
 その長男(うちの父親)も学生時代は小説書いてて、卒業してから新聞記者になり、その息子二人はどっちも大学卒業後は編集者になったわけで、まったく血は争えないものである。祖父の子供は6人、孫は16人、曾孫は30人ぐらいですが、玄孫はまだでした。




【3月8日(水)】


 午後イチの新幹線に乗り、祖父の通夜のため姫路へ。5年前、ばあちゃんが亡くなったときは、真夏に自宅でお葬式だったので、暑さでへとへとになりましたが、今回はお通夜から葬儀場の場所を借りてるので、スムースな流れ。




【3月9日(木)】


 姫路駅ビルの喫茶店でモーニングを食べ、三人でタクシーに乗りふたたび葬儀場。出棺を見送ってからマイクロバスで火葬場まで行き、もどってきて食事してから骨上げ。お寺に行ってお経をあげてもらい、お骨をもって自宅に引き返し、親族一同で読経。10時からはじまって、一段落したのが4時近くでした。
 従兄弟に送ってもらってホテルで荷物を回収、トイレで着替えて荷物を宅急便で出し、身軽になったところで弟と別れ、さいとうよしこと新快速で明石。明石の駅で降りるのは30年振りぐらいとちゃいますか。
 駅前で田中哲弥と合流。
 とくに予定もないのでとりあえず駅ビルの中のお好み焼き屋に連れてってもらって明石焼き。
「ここはうまい店なの?」
「え? ここですか。まあふつうですわ」
 東京から来た客をふつうの店に連れていく田中哲弥。あとで歩いてるときにべつのお好み焼き屋を指さして、「ここが明石焼きで有名なとこですね」。最初からそこへ連れていかんかい。
 明石焼きを食べたあと、田中哲弥の先導で「魚の棚」を歩く。高知で言えば大橋通商店街みたいなとこですが、ほとんど魚屋ばかりが軒を連ねる。エイ売ってるのなんか初めて見たな。あれはどうやって食べるんですか。いや、田中哲弥には聞いてません。あんたは答えんでよろしい。あ、田中啓文もね。
 明石と言えば蛸である。明石の蛸はたいへんに生きがいいので、昼網(お昼の漁をこう呼ぶらしい)にかかったやつが魚屋の生け簀から逃げ出してアーケードを練り歩いているという話だが、すでに夕方なのですでに過半数の店は閉まり、逃走した蛸も捕獲され販売されたあとなのだった。だから明石焼きより先に魚の棚に連れてこんかい。
 閉店間際のアーケードをゴミ収集車といっしょに歩きながら、蛸関係のもろもろとか、干物とかを購入。いかなごの釘煮はどこにでも売っている。あれはキビナゴって呼んでるやつじゃないですか。次々としまってゆくシャッターに追い立てられるようにがんがん買ってると、田中哲弥が、
「いやあ、そんな豪快に買い物する人はじめて見ました」
 だからいま買わないと店が閉まるだろうが。

 あまり食欲はないし、葬儀疲れでぐったりしているものの、明石まで来たんだから海のものを食って帰らねばと、田中哲弥御用達の居酒屋に入る。有線の演歌がいい感じである。昼間、葬儀場であんなにたくさん弁当食ってなかったら、田中哲弥言うところの「超高級寿司屋」に繰り出したのだが惜しいところである。

 新快速で新大阪まで出て新幹線。歩きまわった疲労で死にそうになりながら帰宅。




【3月10日(金)】


 本の雑誌4月号が到着。笹塚日記をぱらぱら読んでたら、狂乱西葛西日記に対するコメントがいきなり出てきて思わずコーヒーを噴きそうになる(笑)。ついでにurlを書いておいてくれればアクセス倍増かもしれないのに。2月8日の日記に書いた、固有名詞いくつわかりますかクイズの出題は、
「くるみ」「でじこ」「トルーパー」「ブギーポップ」「霧舎巧」「活くら」「To Heart」「K/S」「合田」「間の楔」
 の10個。以下、目黒考二氏のために回答を書きます。

「くるみ」は、WOWOWで放送中のTVアニメ「鋼鉄天使くるみ」より。メイドのコスチュームを着た願望充足ファンタジー的なおねえちゃんロボットです。
「でじこ」は、おたく御用達のチェーン店、ゲーマーズのマスコットキャラ、デ・ジ・キャラットの愛称。目から「目からビーム」光線を出すにょ。TBSの深夜バラエティ『ワンダフル』の枠内でアニメも放送されたにょ。と語尾に「にょ」をつけるだけで目黒さんもでじこに。って、ついコスチューム着てる姿を想像してしまった。もうしないにょ。
「トルーパー」は、スターシップ・トルーパーでもストーム・トルーパーでもなくて、88888年〜89年に放映されたTVアニメ、『鎧伝サムライトルーパー』より。女の子のあいだで人気が爆発し、無数の同人誌が誕生。コミケでは一ジャンルを築きました。まだやってるひともいます。
「ブギーポップ」は、上遠野浩平のシリーズキャラ。《本の雑誌》で何回も書評してるから、いくらなんでもこれは目黒さんにもわかったはず……だと思いたい。
「霧舎巧」は、メフィスト賞受賞作家。講談社ノベルスから、『ドッペルゲンガー宮』『カレイドスコープ島』が出てて、これもわかったはずだけど。
「活くら」は、雑草社が出している雑誌『活字倶楽部』の略称。ヤングアダルト系とはいえ、おなじ書評誌なんだから名前ぐらいは知ってるでしょう……と思ったけど、この略称だけではわからなかったのかも。
「To Heart」は一世を風靡した美少女ゲーム。遊んだことはないのでよく知らない。
「K/S」は、カークとスポックがあんなことやこんなことをするアメリカのやおいジャンルの名称。日本的な表記だとK×S? カークが攻かどうかはよく知らない。
「合田」は、この文脈で出てくる以上、高村薫のシリーズキャラの合田刑事ですね。
「間の楔」は、吉原理恵子のベストセラー。近未来SF……というより、JUNE小説勃興期の名作ですか。
 うーん、どう考えても三つはわかると思うんだがなあ。
「全部わかるって人はどんな人?」と言われてますが、アニメ見てゲームやって新本格呼んでるような人ならだいたい全部わかるはず(あ、K/Sだけはちょっと特殊かもしんない)――と思うんだけどどうですか。

 ついでに目黒さんが「意味不明」だとお嘆きの箇所にも解説を。

「チューチューマウス」というのは、よく押すボタンにカーソルが勝手に移動してくれて、マウス操作の負担を軽減する定番のシェアウェア。『チューチューマウスと仲間たち』なんかでダウンロードできます。大森が愛用してるのは、これのオマケで、デスクトップのアイコンを小型化したり、ウェブブラウザの「戻る」を右クリックに割り当てたりする機能。
 その次の、「キャッシュ書き出し・ローカル再構築用のソフト」っていうのは、説明がめんどくさい。えーと、ウェブブラウザで見たホームページの内容が、キャッシュフォルダに保管されることはご存じでしょうか。Internet Explorer5.0では、C:\WINDOWS\Temporary Internet Files\Content.IE5(WINDOWSフォルダの中の、Temporary Internet Filesってフォルダの中の、Content.IE5ってフォルダ)がそれですね。日本語のIEでは、このキャッシュのことを、「インターネット一時ファイル」と呼んでいます。
 IEのツールメニューから、インターネットオプション→全般→インターネット一時ファイル「設定」を選ぶと、「保存しているページの新しいバージョンの確認」って欄が出てきますね。これはどういうことかというと、あるサイトにアクセスしたとき、新たにその内容をダウンロードして表示し直す(リロードする)か、それとも前回表示したときの内容を(あなたのパソコンのハードディスクに蓄えられた)キャッシュから呼び出して表示するかを決めるわけです。常時接続環境にある場合は、そのたびにリロードすればいいわけですが、ノートパソコンの場合、そのたびに読みにいくのは面倒だし不経済です。
 というわけで大森は、「保存しているページの新しいバージョンの確認」を、「確認しない」にしてあります。じっさいに接続して、更新された内容を表示させたいときは、リロードボタンを押す(あるいは、コントロールキー+Rキーを同時に押す)とリロードされます。
 基本的には、キャッシュの中身をぜんぶ残しておくことで、遡って検索したいデータ(作品リストや受賞リスト、書評ページの書評など)はすべてローカルに(自分のパソコンのハードディスクの中に)保存されます。キャッシュファイルに対して検索をかけることで、いちいちインターネットに接続して検索しなくても、「どこかのウェブサイトで読んだはずの情報」がさがしだせるわけです。ただし、キャッシュファイルはでたらめな状態でぐちゃぐちゃに蓄えられているので、自分で整理するのは不可能だし、ブラウザのバージョンアップのときとか、異常終了とか、思わぬタイミングで、せっかく貯めこんだ情報が消えてしまうことがあります。
 で、「キャッシュ書き出し・ローカル再構築用のソフト」というのは、そのでたらめに保管されているキャッシュファイルを、サイトごとに整理して、リンクを書き直してくれるソフトなんですね。ふつうはウェブレコーダーみたいな専用の巡回・保存ソフトを使うんですが、この方法だと、一度でも見たページはすべて自動的にローカルに保存されるので、とりこぼしがない。2年ぐらい前のSFオンラインにたしか書いてあったよな、と思うと、PHSがつながらない場所にいてもすぐローカルから探し出せるわけで、けっこう便利です。
 とか説明を書くとやっぱりたいへん長くなるのだった。うーん、これでもやっぱりなにが便利なのか全然わからないかも。ちなみにキャッシュのこういう使い方をしてる人は少数派でしょう。

 なお、笹塚日記に出てくる、日本映画の全リストが載ってるサイトっていうのは、jmdbこと日本映画データベースでしょうか。jmdbはimdbの日本版という認識が一般的じゃないかと思いますが、本家より先にjmdbを知る人も当然いるわけですね。

 というわけで、MYSCON合宿レポートは次のファイルで。とか言ってるうちに、その次の週末、3月18日には、SFセミナーのミステリー版というか、北村薫・若竹七海・森英俊・藤原義也・山田正紀の各氏がゲストで登場するミステリ・セミナー、「MYSTERY'S REALM」が開かれるのだった(MYSCONでこのイベントの告知を担当した日下三蔵が、「なんかむずかしい名前がついてますが……ええっと、『みすてりーず・れあるむ』ですか?」と言ったのはひみつだ)。団体のひと以外は、当日直接現地に行けばいいらしいので、みなさまお誘い合わせのうえふるってご参加ください。西葛西からバスで10分の会場なので、大森はたぶん朝から行きます。
 とか言ってるうちにDASACON、西へも4月1日開催が決まった模様。あとはだれか3月25日にコンベンション開けば完璧だな。今度のDASACON大阪大会は、1961年生まれの大森には関係のないテーマですが、一応は参加予定。しかし問題は仕事だ。今月中にあと800枚は無理だと思うぞ。

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