【1月15日(土)】


 6時からユタ。SFM編集部でアルバイト中の京大SF研現役会員M浦くんが登場。京都の下宿から毎日新幹線で神田多町に通勤する傑物である。ウソです。
 あとはSFM増刊「2000年版このSFがすごい」(仮題)の話とか。SF系ガイドブックは売れると思うんだけど、なんかガチガチのつくりになりそうな気も。徳間のSF大賞&新人賞ムックも同日発売らしい。新人賞受賞作一挙収録ってことは、こっちはカドカワミステリのプレ創刊号みたいなつくりになるんだろうか。まあ2000年ですからね、少しは盛り上がらないと。




【1月16日(日)】


 夕方起き出し、うどん屋でカツ重食べてから、マイルストン→MAG TIMEとまわって仕事。文藝別冊のミステリ特集の原稿をぼちぼち書かなきゃいけないんだけど、どうも調子が出ない。「ニュージャンルへの胎動」って言われてもなあ。
 全然進まないので家に帰り、ローマ×ベローナの試合をフジテレビで途中から見る。ありゃりゃ、中田くんはボランチじゃなかったの? デルベッキオがいなくてトッティがトップなんだ。ふうん。まあしかし、王子様も2ゴール決められたんだからそんなにムカついてないだろう。よかったよかった。ヒデ自体は可もなく不可もなくってとこで、後半はチームが全体にダメだったから途中交替もしょうがない。しかしちょっとミスするとすぐパスが来なくなるのは立派(笑)
 NHK衛星では城くんのデビュー戦。リーガエスパニョーラは全然わかりません。こんな弱小チーム同士の対戦を見るとはねえ。でもまあヒデ×城二元中継(笑)だからな。サービス交替の出場とはいえ、ふつうにやってたみたいなのでオッケーでしょう。問題は次の試合だな。




【1月17日(月)】


 津原泰水監修のオリジナルアンソロジー『十二宮12幻想』と『エロティシズム12幻想』を読む。エニックスが四六判造本に不慣れなせいか、書体が小説には不似合いだったり開きが悪かったりするのがマイナス点ですが、カバーはどっちも上々。
 エロティシズムのほうは、ストレートなポルノがほとんどなくてちょっとがっかり。竹本さんと我孫子さんが中ではオーソドックスなほうだけど、抜けるところまではいかない感じ。巻頭の牧野修は、まさに牧野修ですが、サキュバス言語は語彙が少なすぎ。真正マゾとか、被虐系/嗜虐系の単語に集中しているのは趣味の問題かもしれないけど、どうせなら「男のリキッド」とか(笑)、他系統のポルノ用語も採用していただきたかった。同じ単語が何度も出てくるのは反則でしょう。いや、アイデアは爆笑なんだけど。それでいうと、いきなり《厭》シリーズの新作を書いちゃった京極さんも反則。単行本にまとまらない短編は書かないというポリシーはわかるけど、それならむしろ南極シリーズでエロを書いてほしかったなり。無理か(笑)。
 皆川ゆか「荒野の基督」は痴漢電車ネタでかなりそそるシーンあり。新津きよみ「サンルーム」もレディコミ的な幻想の味わいがリアルで意外と好きですね。有栖川有栖「恋人」は、末広雅里ファンにおすすめのリリカル夏休み物。
 『十二宮12幻想』も全体的なレベルは高い。島村洋子「スコーピオン」は反則ネタですが意外性があって笑えます。性格が悪い話というかなんというか。図子慧「アリアドネ」は図子さんらしい嫌味が効いててラストのツイストもマル。ひねりがないのがひねりになってる高瀬美恵「ネメアの猫」も妙な味がある。
 比較対照のため、「書き下ろしホラー小説アンソロジー」からホラーの文字がとれてしまった異形コレクション最新刊『世紀末サーカス』を読む。竹河聖のサナダムシ小説に仰天。思わず扉に戻って著者名を再確認してしまいました。いや、田中啓文とか飯野文彦の小説ならそんなに驚かないけど、こ、これは……。驚いたねまったく。これは傑作。
 田中啓文の「にこやかな男」は、あのネタでもうちょっと引っ張ったほうがよかった気がする。70年代筒井康隆系?
 しかしこの巻からホラーの文字をとるのはタイミングがよくないような。まあ芦辺さんのミステリが巻頭だからこれでいいのか。このテーマだと同じパターンの話が多くなりすぎるんじゃないかと思ったけど、思ったよりバラエティは出てますね。

 いきなり大変身した『SFバカ本』の新刊は未読。祥伝社文庫の『おぞけ』もあるし、なんかアンソロジーばっかりだな。こないだまでホラー大賞の短編を採点してたので、思わず各編にB+とかA−とかつけたくなったり(笑)。




【1月18日(火)〜19日(水)】


 文藝別冊ミステリ特集の原稿をようやくフィニッシュ。「ニュージャンルへの胎動」みたいなテーマを与えられたんだけど、オレはジャンル守旧派なので。枚数計算をまちがえて後半は走り書き。いいのか、そんなことで。




【1月20日(木)】


 馬場の芳林堂で『現代のエスプリ』2月号(特集が「日記コミュニケーション」)を買ってから西武線で新宿に出て、歌舞伎町のロフトプラスワン。12幻想前夜祭を覗きにゆく。
 8時に着いたらちょうどトークがはじまったところで、飯野文彦がのっけから絶好調。これはなんかべつのイベントでは(笑)。津原さんもやりにくそうな感じでどうなることかと思いましたが、だんだん調子が出てきてけっこう盛り上がった模様。客席ではホソダさんが隅のほうにひとりで潜伏してました。
 開田さん夫妻も見物に来てたんですが、あやさんの第一声は「今日はサイクサさん来てないんですか?」(笑)。
「サイクサさんはいないけどホソダさんはいるよ」
「え? どこどこ? どの人? 教えて。ネット有名人の顔が見たくて見たくて」
 とかなり重症の模様。しかし細田氏はすばやく姿を消していたため見せてあげられなくてすみません。
 初対面の小中千昭さんとは控え室でひとしきり立ち話。『THEビッグオー』の裏話をいろいろ聞けて収穫でした。でも昨夜放送の最終回を見てなかったのは失敗だったな。あとは最近のホラー映画とか、新作のこととか。
 飯田雪子さん、八尾の猫さんとも初対面ですが挨拶しただけ。なにしろ人が多いのでたいへん。東さんに原稿わたしにきたという岩井志麻子はまたしても(初対面の人の前で)下ネタを炸裂させてるし。どうでもいいけど、担当編集者がその昔、××と情交した話を持ちネタにするのはいかがなものか。いや、固有名詞を伏せるようになっただけ、前回よりは進歩してますが(笑)。高知の人間がみんな××と情交していると思われると迷惑です。
 あとは、有栖川さんの「恋人」について、「これはオレの話や」と力説し、ひとりで爆走する我孫子武丸とか。『永遠の仔』ネタでも飛ばしてましたね。

我孫子「あんな小説で泣ける人間の気がしれんね」
大森「じゃあ我孫子さんはどういう話で泣けるの?」
我孫子「そりゃやっぱり『賢者の贈り物』やね。ストーリーを思い出すだけでも泣ける」
大森「……」
田中啓文「……」
大森「あれってギャグとちゃうの? アホの夫婦の話でしょう。落語で言うたら三人駕籠みたいな」
我孫子「それは違うな」
大森「たんなるコミュニケーション不全というか」
田中「あの夫婦、あのあとぜったい離婚しとるわ。そらもう大喧嘩ですわ。『おれがせっかく櫛こうてきたったのに、おまえはなんで髪切っとんねん、このボケ!』言うて」
大森「『あたしがせっかく鎖こうてきたのに、あんた、なんで時計売ってしもうたん。アホちゃうの」言うて。そりゃもう大喧嘩やね」
我孫子「いや、違う。あの夫婦のあいだにはちゃんとコミュニケーションが成立してたの」
大森「してないでしょう」
我孫子「いや、愛情はちゃんとある。ただ運が悪かった。そういう不幸な話やね。泣けるなあ」
大森「……」
田中「……」

 我孫子武丸の『永遠の仔』批判が一気に説得力を失ったことは言うまでもない。河内さんがこの現場に居合わせなかったことだけが心残りです。

 一方、ステージ上で最高に飛ばしていたのが高瀬美恵。いずこともなく姿を消した飯野文彦のアナを埋めるがごとく、ただの酔っぱらいねえちゃん状態で暴走。
 版元のエニックスを津原さんがひたすら持ち上げてるところへ、
「それでドラクエはいつ出るんですか?」と神をも恐れぬツッコミ。作家もRPGに負けない小説を書かねばとか議論してると、「全然だいじょうぶ。こないだのFFなんか最低だったもん」といきなり正論(笑)
 梅チャーハンを貪り喰う合間に「幻想文学会? 最低ですよ」と言い放つなど、強烈な個性で聴衆を魅了してました。さらには「倉阪鬼一郎の嫁さがし」という菊地秀行氏が振ったネタから、「高瀬美恵の婿には倉阪鬼一郎と福井健太のどちらがよりふさわしいか」という局所的なネタがステージ上で展開され、菊池さんが面白がってどんどんつっこみ、そこから「理想のタイプは夢枕獏」発言が出て、獏さんがいかにかっこいいかを(だれも聞いてないのに)ひとりでしゃべりつづける高瀬美恵。

 ……ってべつに高瀬美恵漫談ショウだったわけじゃなくて、ちゃんと実のある議論もなされていたようですが、オレがちゃんと聞いてなかっただけですすいません。

 終了後は三十人ぐらいで近くの喫茶店に流れ、5時過ぎタクシー帰宅。


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