【1月11日(火)】


 4時から《本の雑誌》編集部で、西上心太氏と「パソコン雑誌」対談。司会の北上次郎は新年から風邪でダウンしてるらしく、最高に投げやりな仕切り。さらに、本来のテーマ(「どんなパソコン雑誌がほしいか?」)を振るのを忘れて、雑談に終始する。いいのか、こんなことで。
 北上おやじが、「新刊書店で売ってるパソコン誌をぜんぶ買ってきてかたっぱしから読む」っていう企画がメインの特集なんだけど、新宿の紀伊国屋に編集者が買いにいったら、あんまり数が多すぎて(百誌以上?)あえなく挫折。結局、「紀伊国屋書店笹塚店に置いてあるパソコン誌」ってことで妥協したらしい。
 応接スペースに置かれた雑誌の山を事前に点検したんですが、月刊アスキーが入ってない(笑)。週刊アスキーもない。
「専門的なやつははずしたんですよ」というわりにWindows NTの雑誌が入ってて、DOS/VマガジンもASCII DOS/V ISSUEもないぞ。
 購入担当者のM村嬢いわく、。
「え? 『どすぶい』ってついてるやつも一般のパソコン誌なんですか? だってなんか難しそうじゃないですか。DOS/Vなんて。ぜったい違うと思ったのに」
「…………」
 もはやDOS/Vという言葉は死語なのか。ていうか、じっさい、もう意味ないですけど。IBM/PC互換機で日本語が使えるのかと感動したのはもはや遠い昔の物語。キューハチといえばWindows98だし。

 司会の人にほっとかれたので、「昔のBug Newsは面白かったよね」とか、西上心太とすっかり昔話。ウィザードリィ日記の話とかここでしてどうする。

 北上氏は着実にPCスキルを上げている模様。メーラ(たぶんOutlook)のフィルタリング機能を発見して感動したそうである。マシンは液晶モニタつきのFMV Deskpower。
 壁紙とかも初期状態のまま使ってるので、「かっちょよくしてあげましょう」と申し出るがすげなく断られる。けち。

 北上おやぢがどろどろなので、西上心太氏とふたりで笹塚駅近くの牛タン屋に入って夕食。強盗と格闘した傷もすっかり癒えたようです。って、その話を信じて年賀状のネタにした人が何人かいたそうですが(笑)、真実は強盗が入ったところまでです。逃げたに決まってるじゃん。でもあの体だけ見てたら、栄養不良の強盗三人ぐらいは余裕で取り押さえそうだよな。

 ところで、《本の雑誌》の最強対決シリーズですが、次回は「最強のろくでなし」決定戦だそうです。
 M村嬢いわく、「次は茶木さんのひとり勝ちになりそうですね」
 うーん、SFは前向きな主人公が多いからなあ。とりあえず頭に浮かぶのは、『火星人ゴーホーム』の火星人とか、ラッカー『セックス・スフィア』の主人公とか。『砂の中の扉』のモラトリアム主人公もかなりろくでなしか?
 というわけで、ネタを思いついた人は、新・大森なんでも伝言板にどうぞ。




【1月12日(水)】


 氷雨の降りしきる中、飯田橋の角川書店本社ビルへ。日本ホラー小説大賞の最終候補作決定会議。10分前に到着すると、来てるのは茶木則雄だけ。こういうときだけは早いチャッキーである。まあこの会議が年を越したのも茶木さんのおかげなので足を向けては寝られませんが。
 などとフォローを書かなきゃいけないのも理由がある。茶木則雄先生におかれましては、このたびついにインターネット環境を獲得、自分の名前で検索して、かたっぱしからサイトを見てまわったりしているらしい。
「オレの名前出てるのはやっぱり大森さんとこがいちばん多かったね。うん、覚悟を決めて我孫子武丸のところもぜんぶ読んだよ。でも最近ほとんどオレ出てこないじゃん。しかし大森さんとか我孫子さんとかに書かれるのはいいけど、全然知らないやつが好き勝手なこと書いてるの見るとむかつくねえ。タニグチなんとかの、なんだっけ、裏日本工業新聞とかさあ。なにあいつ?」
 ということなので、タニグチリウイチも覚悟しておくように。

 ちなみに茶木さんがパソコンを獲得したのは、某社の「40代からのパソコン入門」みたいな企画(推定)の結果らしい。液晶モニタつきのVAIOと個人指導の先生を用意してもらい、これが最後のチャンスと一念発起してがんばったら、意外とハマっちゃったということのようである。3、4年前にもだれかにだまされてパソコン一式購入したものの、そのマシンでは結局、将棋しかしなかったという茶木くんだが、人間やればできるのである。

 しかし角川のS戸さんなんか、出たばかりのPS-55 noteを40万円で購入しながら、電源も入れずに箪笥のこやしにしてたらしいので、上には上がいるのだった。
 これまでワープロも使わず手書き一辺倒だった茶木さんは、キーボードで原稿を書くのが楽しくてしょうがない模様。以下、伝言板に書いたネタですが、

「いやあ、パソコンは面白いねえ。もう原稿書くのが楽しくてさあ。変換が気持ちいいんだ。辞書登録とかさ。CHAって打つと「茶木則雄」って出るんだぜ【←自慢しているらしい】。「お茶」って入れようと思うと「お茶木則雄」になっちゃってちょっと不便なんだけど、そんなの後ろから一字ずつ削除すればいいんだから。「WA」って打つだけで「わたし」って変換するし、いやあほんとに便利だね。もう原稿用紙なんか全部捨てちゃったよ」
 などなど。
 ワープロを経由しないで、いきなりWordの縦書き編集で原稿を書きはじめた人の言葉はさすがに重みがあると思いました。
 しかしだれも感心してくれないので業を煮やした茶木くん、角川のS戸氏に向かって、
「なに? S戸、おまえまだブラインドタッチできないの? だめだよ、そのぐらいできなきゃ」
角川K氏「S戸さん、こないだなんか、『づ』が打てないって大騒ぎしてましたからね。『つ』に点々はどうやって出すんだ、って」
S戸氏「だって、ZUって押すと『ず』になるじゃない。じゃあ茶木さん、『つ』に点々はどうやって出すか知ってます?」
茶木氏「いや、オレはちゃんと紙張ってあるからそれ見ればだいじょうぶだよ」
S戸氏「じゃあ、DUって打つとなんて出るか知ってる?」
茶木氏「でぃーゆー? ええと、それは『デュ』だな」
 などなど。
 ちなみに茶木さんのブラインドタッチ速度は、ミステリマガジンの原稿一本書くのに7時間かかるぐらいだそうです。ダブルクリックはマスターしたけど、まだ右クリックはできない模様。

 しかし年末に始めたわりには長足の進歩。北上次郎を追い抜く日も近いか。そういえば、新保博久教授もウェブサイト開設を計画しているそうですが、書評ウォッチ日記とか始められた日にはおそろしいことになりそうな気が。

 それにしても、角川の編集者諸氏は、掲示板とかにほとんど登場しないくせによくまあマメにウォッチしてますね。いや、小林泰三担当の人とか津原泰水担当の人とかが事情に詳しくなるのは当然か(笑)。
「大森伝言板経由で2チャンネルまで行っちゃって思いきりハマっちゃいましたよ」っていう人とか。捨てハンドルで社内情報を洩らしまくる人とかいてもよさそうなもんだけどなあ。《噂の真相》にあれだけ洩れて、ウェブにほとんど洩れないのは、やっぱり飲み屋の情報交換がメインだから?

 掲示板には全然出てこない風間賢二氏も、読むだけはけっこうあちこち読んでる模様。東雅夫氏と隅のほうで怪しい情報交換をしてました。三橋暁氏は欠席。

 摩天楼飯店で食事のあとは例によって麻雀。S戸、池上冬樹、茶木則雄、大森で囲む。のっけからヤミで張ってた清一色が炸裂し、池上冬樹絶好調。大森は最後の一局でトップをとって挽回、またしてもとんとん黒字で終電脱出。結果は茶木則雄の報告を待ちたい。

 家に帰って、世界クラブ選手権の準決勝。グループリーグからちょくちょく見てるんですが、なんかいまいち盛り上がらないねえ。結局、バスコ×コリンチャンスの決勝になっちゃうし。




【1月13日(木)】


 本の雑誌とホラー大賞が終わったので、ミステリ方面の読書。講談社ノベルスの新刊を読みはじめる。歌野晶午が面白い。意表をつくサンドイッチ構造。倉阪鬼一郎は、『白い館の惨劇』のほうがよかったかな。吸血鬼が出てくる部分がいちばん「現実的」って意味では不思議な小説である。しかしこういう意味ありげなプロローグをたくさんつけるのはちょっと。
「最後まで読んでプロローグの意味がわかる」ってタイプのプロローグがつくミステリはものすごくたくさんありますが、構想通り機能しているものは少ない気がする。わけのわかんない文章を小説の最初に置くのはどうか。だったらプロローグなんか真ん中に置けばいいのに。歌野晶午はそのへん工夫がありますね。ってあれはプロローグじゃないけど。



【1月14日(金)】


 ソニー・マガジンのS木氏がミストラル来訪、Darwin's Radioのゲラわたし。諸般の事情で激しく遅れちゃいましたが(当初の予定は昨年11月刊だった)、結局、3月刊行になった模様。

 小説すばる2月号は、本格ミステリ特集で、森博嗣、北森鴻、山口雅也、山田正紀、倉阪鬼一郎という布陣。我孫子武丸・牧野修・田中啓文のゴーストハンター物セッション小説(共通の設定でそれぞれの持ちキャラ動かす一種のシェアードワールド物)がはじまってて、第一回は田中啓文が担当。オマケ鼎談は例によって例の調子ですが、小説誌の誌上で読むとまた新鮮。ていうかこんなの載せていいんか(笑)
 笠井潔×野崎六助対談、綾辻行人×皆川博子対談もあって、ミステリファンにはお得な内容です。と、たまには宣伝しておこう。


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