■ フランスのリゾート
■ 伝統的リゾート地
プロムナード・デ・ザングレに面して開かれたマセナ広場は、 大噴水とアーチ状のモニュメントを中心に配した、ヤシの緑の美しい広場である。 周りをとり囲む大規模な建築群にすこしもひけをとらない第一級の規模と内容であり、 広大な緑地に人々が思い思いに憩うさまは、世界の保養地にふさわしい雰囲気である。 しかし、コート・ダジュールの魅力は、ビーチと高級ホテル、カジノばかりではない。 まず、カンヌの映画祭、モンテカルロ・ラリーといった国際的に有名なイベントが一年中目白押しである。 また、文化の面においても、ピカソ、マチス、シャガール、ゴッホ、 他数え切れないほどの画家たちの足跡がしるされている。 カンヌの近くのサンポール・ド・ヴァンにあるマーグ財団美術館では、思いがけずミロの特別展を見る機会を得た。 シャガールの壁画を建物に使ったハイレベルの美術館で、 このような小さな街でこれほど素晴らしい文化に接することができたことは驚きであった。 ニースにはマチスとシャガール、アンティーブにはピカソといった個人の美術館をはじめ、 主な街には多くの傑作を集めた美術館が揃っている。 またサラド・ニーソワーズ<ニース風サラダ>、ブイヤベースなど、 海の幸をふんだんに盛り込んだグルメメニューとこの地特産のロゼワイン。 食べ物の世界でも一つの文化を確立している。 さらに、リゾートマンションも、アンティーブのマリーナ・レジャンヌを始めとし、 ヨーロピアンスタイルで多様な住み手に対応できる様々なタイプのものが建ち並んでいる。 夏のバカンスの時期には、ニースでは40万人の人口が60万人にまで膨れ上がるそうだ。 人々を引きつけてやまないコート・ダジュールの魅力は、ビーチリゾートとしての顔だけでなく、 公園、美術館、劇場、マーケット、リゾートマンション等、生活と文化のインフラがきちんと整備されている所にあり、 爽やかな地中海性気候の風土と相まって、訪れる人皆に夢と幸福を与えてくれる。
■ 新しいリゾート地
その秘密は、ニュータウンの全戸に運河を引き、運河の引けない所は浮島形式とし、 自分の家の庭先にヨットが係留できるという通常では考えられないロケーションにある。 つまり、自分の庭から地中海へ直接クルージングができるのである。 日常生活とリゾートライフが一体となった、まさに「遊感覚」の極めつけの街づくりである。 また、一戸当たりの建築面積は約90平方メートルとさほど大きくなく、 分譲価格も2000万円程度と手頃であり、庶民のためのリゾート地という感が強い街であるのも人気の理由であろう。 街並づくりの点でも、運河に面した庭先や、 埋め立ててつくった浮島の人工地盤の上には豊富な植栽と花を配してリゾートの華やいだ雰囲気を盛り上げている。 建物も、各戸に色彩の変化をつけたブロック積みの外壁とオレンジ色の緩勾配の屋根で、 南欧の香りを強く漂わせており、地方色を活かしたデザインで、周辺環境との調和を図っている。 ロケーションを活かし、各戸に思い思いのヨット、クルーザーを浮かべ(建物よりも船の方が高額かも知れない)、 ゆったりと庭でくつろぐ光景は別世界のようであり、にわかには信じがたい現実であった。 鐘楼の上から望む街並は、あたかもヨットハーバーの中に街があるかのようである。 このリゾート開発は、従来の総合型リゾート開発に対して、 ヨットライフに的を絞ったクラスター型リゾート開発ともいうべき性格のものである。 この他にも、世界中のミモザ<アカシア>を集めた国立公園をつくろうと町長が意気込んでいる街あり、 ナチュラリスト<ヌーディスト>の専用の島あり、様々な街で色々なリゾートが出現しつつある。 このような新しい開発のアイデアを生み出し、実行に移していくパワーが、 この地を常に魅力あるリゾート地として活性化させている源であると感じさせられた。
■ まとめ
そして、このようなリゾート地の街並づくりからは、 街の魅力づくりのポイントとして「洗練する」ということが、一つの教訓として学びとれる。 コート・ダジュールも、元々は自然が素材として与えられていただけに過ぎないはずである。 そこに魅力ある街をつくりあげようという強い意志と夢を抱いて、洗練していった結果が今日の姿である。 ただ、街の機能として全てを取り揃えることが街の魅力となるのではない。 ポールグリモの人気でもわかるように、その街の持つ個性を最大限に洗練し、 磨いてやることにより、どこにも負けないその街独自の魅力が高められるのである。 中途半端な街並づくりはかえってその街の魅力を消し去ってしまいかねない。 また、 もう一点上げるならば、 これらのリゾート地で街全体に感じた「ワクワク感」も、何とか活かせないものかと思う。 ヨット係留権付タウンハウスとまでは行かないにしても、人々を感動させる「遊感覚のしかけ」は、今の日本にこそ必要なのではないでしょうか。 |