これから期待される自己免疫疾患の治療法 part2　　　　　　part3　/　part1
～抗サイトカイン療法への期待と現状～

２００３年早期にレミケードが慢性関節リウマチ、クローン病への使用制限を拡大されることなどが現在話題となっています。また、レミケードのほかにも抗TNFα阻害剤の臨床試験が進んでおり、また、我が国で開発されたIL-６などにも期待が寄せられてれております。
その一方で、レミケードを初めとした抗ＴＮＦα抗体薬を使用した場合、クローン病、慢性関節リウマチを初めとした自己免疫疾患においての改善率が高いことが海外のデーターで明確になっているにもかかわらず（エンブレル、レミケード）、日本では副作用の問題が最重要視され，認可の手続き等がそのために非常に複雑になってなかなかすぐに使えるようにならない（欧米より認可がかなり遅れる）という現状もあります。
このように、今話題になっている抗サイトカイン療法についての期待と現状（問題点も含めた）について考えてみたいと思います。

>>インフリキシマブ（レミケード）＆エタネルセプト（エンブレル）はどんな薬か
抗サイトカイン療法の中で、いわゆる抗ＴＮＦα抗体治療薬の上記の二剤が、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患への適応が期待されています。そんな中で、まずレミケードが先行して、２００２年４月にクローン病において投与回数が一部制限されていますが厚生労働省の認可され健康保険の適応を受けています（既存治療で効果不十分な場合において）。更に２００３年前半には、慢性関節リウマチ、更にクローン病・維持治療：効能追加され適応が広げられ期待が高まっています。
レミケードは点滴で、まずは2週間後、その６週間後、その後は2ヶ月に1回の投与するという方法をとるようです。また、エンブレルは皮下注射で、一週間に二度程度の投与を必要とします。
現在、日本ではこれらのタイプの抗ＴＮＦα抗体治療薬に多くの期待が寄せられていますが、やはりこれらの薬剤は根治療法ではなく、投与を中止すると症状が元に戻ってしまう（対症療法）ことも併せて知っておく必要があると思います。
しかしながら、投与の間はこれまでの既存の薬剤と比べるても抗炎症効果がかなり期待できることで、ステロイドの離脱ができるということが一つの注目されている点でもあるといえます。
また、これらの薬剤が実際の治療に使われる場合、免疫抑制剤（メソトレキセート、アラバ）と併用されるケースが多いようです。
いずれにしても、レミケードやエンブレルの抗炎症効果は、従来の治療において手詰まりになった場合には、次の選択肢として期待があると考えられます。

レミケード（Remicade）＆エンブレル（Enbrel）の問題点
まずは抗ＴＮＦα抗体治療薬の初期投与において、アレルギー反応、また、まれにアナファラキシーショックを起こしたりする事があります。このような反応の頻度はレミケードに比べて、エンブレルの方が少ないというように言われていましたが、実際にはこの二剤において差がないという報告も最近になって出ているようです。
なお、長期使用においては、これらの薬剤は腫瘍の発生の問題が以前より指摘されておりますが、海外のデータではいまのところ（短期的にみて）、レミケードやエンブレルを使用した場合としなかった場合の腫瘍の発生率に優位差はないと一応は結論づけられているようです。
しかし、最終的にかつ最大の問題はおそらく感染症であり、その中で特に結核が一番の問題になっているようです（海外の報告）。
もう一つ付け考えられる大きな課題は、初期の投与においては効き目が大きくても、投与を続けるなかで、抗炎症効果が本当に持続しづづけられるかということなどが問題視されています。いずれにしても、海外のデーターおいてもそれほど長い期間の使用経験があるわけではありませんので、詳細は不明な部分も大きいと言わざるとおえません。

レミケード（Remicade）＆エンブレル（Enbrel）の選択

これまでの臨床データを内外の臨床データを参考にすると、レミケードが慢性関節リウマチ、クローン病の両疾患に対して効き目を示したの対して、エンブレルでは、慢性関節リウマチ対しては大きな効果を示したものの、クローン病では思ったような効果を得られなかったと言う国内グループでの報告が出ています。
また、逆に慢性関節リウマチにでにおいて、海外の報告ではエンブレルのほうがレミケードより、若干、効果が高かったというような報告もあります（もちろん、これらの抗TNFα抗体に免疫抑制剤を併用するかしないかということにおいても、リカバリー率はかわってくることも事実ですので単純な比較は出来ないのですが）。
現在、自己免疫疾患に対して更に様々な抗サイトカイン療法（IL-6などもふくめて）、免疫抑制剤など、抗リウマチ薬が試されているいるわけですが、どの疾患にどの療法が適しているのかなどが、徐々に明らかになっていくのではないかと思われます（下記は、これから認可される可能性のあるリウマチ薬のリストですご参考までに）。

主なリウマチ治療薬

薬剤名（商品名）	認可の状況	開発元	備考（日本発売元、薬のタイプ）
エタネルセプト（エンブレル）	米で９８年認可日本で申請中	ワイス、アムジェン	日本ﾜｲｽﾚﾀﾞﾘｰ可溶性TNF受容体
※インフリキシマブ（レミケード）	米で９９年認可日本で近く認可	セントコア	田辺（難治性のクローン病に限定して回数を制限して認可）ｷﾒﾗTNF-α抗体
アナキンラ（キネレット）	米で昨年認可	アムジェン
ＭＲＡ（ＩＬ－６）	日本で臨床試験中	中外製薬	ヒト型化抗ヒトインターロイキン６レセプターモノクローナル抗体
アダリムマブ（D2E7）	米で申請中　日本臨床試験中	アボット	エーザイ　北陸ﾋﾄTNF-α抗体
※リツキシマブ（リツキサン）	英国などで臨床試験中	Ｆ・ホフマン・ラ・ロシュ
ＣＴＬＡ４Ｉｇ	欧米で臨床試験中	ブリストル・マイヤーズ・スクイブ

※　他の疾患に対して日本で認可済み

>>抗ＴＮＦα抗体治療薬のＡＳ治療薬としての可能性と問題点

以前より「ASの原因に持続感染が絡んでいる」、という可能性は考えられているので、TNF阻害薬の免疫抑制療法によってさらに悪化するのではないか、という危惧を持つ研究者は一部にはおります。しかしながら、これまでの治験において、感染症の誘発はあるが、AS自体が悪化した、と言う報告は今のところないようです。ですから、少なくとも短期的には問題がないと考えられますが、長期的な結果は、まだこれからですので、その辺は何ともいえない部分は残されています。
この「感染症の誘発」の問題は、取り敢えずはＡＳ特有の問題と考えられますが、あるいは他の自己免疫疾患においても微少ながらも考えられる懸念？であるともいえるかも知れません。

>>結論
欧米ではではすでに慢性関節リウマチ治療にはメトトレキサート（MTX）の使用が一般的になっているケースが多く、15-20mg/週を投与してもなお寛解に至らない例もあるようです。このような場合、また、クローン病や他の自己免疫疾患の難治性に対しては生物学的製剤（エンブレル、レミケード）による抗サイトカイン療法が積極的に行われています。
しかし、わが国では、両薬剤とも現時点ではまだ未承認（一部クローン病で認可）です。欧米諸国のめざましい慢性関節リウマチの治療の進歩に対して、その遅れを感ぜざるおえないないことは事実であります。
そして、この春、いよいよというより、やっとわが国の慢性関節リウマチにおいても認可(レミケード）が内定？しているようです、多くの期待がある反面、問題も抱えていることも事実ですので、これらの生物学的製剤の問題点を下記に記載します。

① 日本では副作用の問題が先行しており、健康保険の認可の手続きが非常に複雑になってなかなかすぐに使えるようにならない。
② 医療費の問題（薬剤が大変高額であり、健康保険の財政圧迫の問題、患者の経済的な負担増の問題）
③ 長期投与の場合、感染症（結核など）、悪性腫瘍の発生、および自己免疫疾患の併発などの安全性問題
　　
2003/03/05

＊アナフィラキシーショック
抗原に感作されている状態において、再度抗原が投与された場合に起こる即時型アレルギー反応をアナフィラキシーといい、これが全身性に起こってショックとなった場合を指す。
症状は数分であらわれ、口渇、口唇のしびれ感、心悸亢進、尿意、便意などで始まり、さらに皮膚症状として全身の発赤、そう痒感、眼瞼・口唇の腫脹があらわれる。気道閉塞症状としては喉頭異物感・閉塞感から呼吸困難へと至り、致命的となることがある。

これから期待される自己免疫疾患の治療法　part３　/part２　/　part1　　ＨＯＭＥ