「強直性脊椎炎とは」       
 
強直性脊椎炎は潜在性に発症し、おしりの両わき(仙腸関節)、背骨(脊椎)および肩関節や股関節などの体幹に近い関節に起きる慢性の炎症であり、最終的にはこれらの関節が骨性に癒合(強直)してしまう疾患です。 欧米では成人全人口の0.2%程度存在するといわれていますが、わが国ではこれよりも頻度は低い(白色人種の1/3から1/4程度)と考えられています。若い男性に発病することが多く、男性が女性の4倍以上であり、ほとんどの方が20歳台までに発症します。 
はっきりした病因は不明ですが、本症の患者の90%が白血球に存在する組織適合抗原のHLA−B27が陽性であることから、発症には遺伝的因子が関与するといわれています。病理学的には、靭帯・腱・関節包が骨に付着する部分(エンテーシス)の炎症であり、進行すると瘢痕組織となって石灰化が起こり、骨に置換され強直を生じます。 
最近では、乾癬という原因不明の皮膚疾患や潰瘍性大腸炎、クローン病といった腸疾患、ベーチェット病やライター症候群という原因不明の疾患に強直性脊椎炎と同じ変化が起きる症例があることから、強直性脊椎炎とこれらの疾患を加えて、血清反応陰性脊椎関節炎と呼ばれています。この疾患群の特徴は血液中のリウマチ反応が陰性であり(血清反応陰性)、仙腸関節と脊椎、四肢の関節に慢性炎症をきたすことです。


「強直性脊椎炎の症状と診断」

本疾患の初期像や経過について、あまり注意がはらわれていないためわが国では確定診断が遅れることが多く、初診時には慢性関節リウマチ、坐骨神経痛、腰痛症などと診断されることが多いといわれています。 初期症状は思春期から青年期に始まる腰痛、殿部痛、頸部痛と背骨の動きの減少(脊椎の可動域制限)です。痛みは体を動かした時の痛み(運動痛)だけではなく、じっとしていても痛い(自発痛)ことがあります。肩凝り、背中や腰のこわばり感のほかに、アキレス腱などの腱のつけねの症状が存在することもあります。進行すると背中が丸くなり(円背)、胸部痛、胸郭の運動制限が出現し、肩関節や股関節の痛みと動きの低下(可動域制限)が出現します。 最終的には痛みは軽減しますが、背骨が固まり股関節、膝関節が伸びないため前かがみの典型的な姿勢をとり、日常生活に支障をきたすことになります。 
関節外の症状として全身の倦怠感、体重減少、軽い発熱、ぶどう膜炎があり、時には大動脈弁や大動脈起始部の炎症を伴うことがあります。 
検査所見では赤血球沈降速度(いわゆる血沈)の亢進、炎症反応(CRP)陽性という炎症所見が存在しますが、リウマチ反応は陰性です。90 %はHLA−B27が陽性です。診断は疫学的診断基準によって行なうことになっています。この基準によると、仙腸関節のX線学変化と腰椎の可動域制限、腰背部痛、胸郭の拡張制限の3つの臨床項目の組合せによって診断が確定されます。



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