交響三章

芥川也寸志

1948年 日本
ナクソス日本作曲家選輯
より

1. オーケストラのためのラプソディ

2〜17.エローラ交響曲

交響三章
18. カプリッチョ<奇想曲>
19.ニンネレッラ<子守唄>
20. フィナーレ<終曲>


 クラシックでも「カッコいい」という抽象的な評がたくさんあっても良いのではないかと思ったきっかけがこの芥川也寸志の「交響三章」をレビューするにあたってだ。アカデミックに解説するのはもっと適任者が五万といるし、僕には出来ませんからそうなるだけなんですがね。
 多分この曲を聞くと日本のクラシック作曲家に対する評価の度合いが変わってくるのではないでしょうか、一般的にクラシックの大半は欧米偏重であり、日本の作曲家に対する注目度ってのは低いですからね。まぁ、歴史が違いますからしょうがないんですけどね。
 
 しかし、それを覆すだけのカッコよさがこの「交響三章」にはあります。この曲は芥川のオーケストラ作品の処女作(1948年作)でそのせいか若々しさに溢れかえっている様に感じる。
 第一楽章のカプリッチョは明快なメロディとリズムの跳ね具合、第二楽章のニンネレッラは穏やかなメロディに管楽器のゆったりしたたおやかさが「子守唄=ニンネレッラ」に相応しい。そして第三楽章のフィナーレ!これがもうフィナーレの名に恥じないカッコよさ。これもまた明快でウキウキなメロ。そして打楽器の迫力に圧倒される。さらに各楽章とももったい付けずに終わるのも良い感じですね。
 各楽章に通じるのはそのメロディの素敵さ。明快で解りやすく、こねくり回していないから素直に入ってくる。オスティナートと呼ばれる反復の技法を使っているのだが、執拗ではあるが、押し付ける様な感じもなく、すっきりと展開しているのもポップス的、ロック的な耳で聴いてもイケる要因か。
 そしてこれまたポップス的、ロック的にイケる躍動感は特筆すべき所。やっぱカッコいいのだ。リズムがとっても躍動的なのは彼の作風らしいが、あいにくとこのCDしか現在持っていないので今後しっかりと聴いてみる予定。

 ちなみに2曲目のエローラ交響曲(1958年)は爆裂系の曲としても知られるが、他の曲に比べると多少難解。解説から引用すると「初めも終わりも中心もなく、男性的なものと女性的なものの交わりがいつ果てるともなく繰り返され生命を産出し続ける音楽である」と」ある。楽章というか断片的なパーツが女性(テンポ遅め)であったり男性(テンポ速め)である決まった順序で演奏する作品なのだが、まぁ、その説明を理解しながらというより、単に爆裂系な打楽器アタックとビートルズの「A DAY IN THE LIFE」の奇妙なオーケストラの盛り上がり部分のような感じを聴くだけでも十分面白い。
 この作品のあとが「交響三章」なので余計に「交響三章」がカッコよく聴こえてしまうのは笑いどころw

 日本人が創ったからこその解りやすさでしょうか。クラシックと言っても「曲」であり、長尺なだけでポップスと(僕の中では)変わりないので一聴をお勧めします。
 せっかく漫画の影響でクラシック流行ってるんだから、日本人の感性で創ったクラシック音楽もぜひ聴いてみて下さい。