一風堂、2006年12/20にボックス発売記念レビュウ

2ndアルバム「REAL」(1980年/右)

3rdアルバム「RADIO FANTASY」(1981年左)

RADIO FANTASY
1. RADIO COSMOS
2. ふたりのシーズン
3. ラジオ・ファンタジー
4. YOMOTOLO-WAITA
5. チャイナ・ステップ
6. RADIO JAPAN
7. イミテーション・チャチャ

1. モーニング・メニュ
2. MAGIC VOX
3. スパイ大作戦
4. DUBLING RADIO
5. LISTEN TO ME
6. I NEED YOU
REAL
1. ジャーマン・ロード
2. BROKEN DUMMIES
3. ロンリー・パイロット
4. IN Side/ OUT Side
5. ミステリアス・ナイト
   〜OUT Side / IN Side

1. HEIDELBURG SYMPHONY
2. FUNK#9(A present for disco people)
3. NEU!(Changing the history)
4. HELPLESS SOLDIER
5. LUNATIC GUITAR

 


 80年代モノの再発ブームももう旬を過ぎ、自分的な真打ちはやっとのことで再発される今回の一風堂。一般イメージが「すみれSeptember Love」なので大衆ポップ寄り(その事を否定するものではなし)のテクノと思われています。しかし、今回アルバムが再発されて多くの人に聴かれる事でそのイメージがほんの一面だった事が理解されるでしょう。
 「惜しむらくはボックスセットでの再発という点。一万円ですからねぇ?7枚+DVDで一万円だからコスト・パフォーマンス的にはとてもいいのですが、好き者しか買わなくなっちゃうよなぁ。」
 
 注「」下線部分を訂正します。
 
惜しむらくはボックスセットでの限定再発という点。一万5千円ですからねぇ?7枚+DVDなのでDVDが何分入ってるかにもよりますが、好き者しか買わなくなっちゃうよなぁ。
 

 一風堂のサウンドは音楽をカリカチュアライズド(戯画化)した様な所があり、パンク〜ニューウエイヴ、テクノ〜アフターテクノと時代の流れに対応しながらも自分達のサウンドにどっぷり浸かる事はなく、たぶんに戦略的なサウンドに感じます。また、ポップの線を崩さないところは何もかも飲み込む歌謡曲的ですらあり、ある意味「イイとこ取り」なんて批判もあるにはありますが、そのイイとこ取りが音楽に格好良く寄与しているのだから始末に終えません。彼らが残した4枚のオリジナルアルバムの中でお勧めするのは2ndの「REAL」と3rdの「RADIO FANTASY」。

 2nd「REAL」ではちょっとダークな感じのニューウエイヴ、レゲエ(ドイツっぽいイメージの)テクノをサウンド、アートワークに醸し出しつつ「日本のロック/ポップ」。
 アルバムはA面、B面ともにインストで始まり、特にA面、ドイツの道でクラフトワーク「アウトバーン」をニヤリと(「NEU!」なんて曲もあるしねw)思い出させる「ジャーマン・ロード」のスピード感はとてもカッコいい。他の曲もとにかく「カッコいい」がキーワードで、ロック感を強調したハードな演奏ナンバーでもどこか冷めた印象。
 特筆はリーダーの土屋昌巳の黒っぽさが全然感じられないうえ、上手さと器用さが災いしてか器用貧乏に思われがちなギタープレイ。めちゃくちゃ上手いんですけどねぇ?
 レゲエビートのカッティングや流れながらも少し引っかかるギターソロなんていかにもニューウエイヴ的で、タイプとしてはXTCのアンディ・パートリッジやビル・ネルソンが想起されます。(解りづらい例ですね、ごめんなさい)
 
 考察して行くと2ndアルバムのサウンドは少し洋楽的借り物感が無いとはいいませんが、これに日本語歌詞がのっかると「日本人にしか出来ない歌曲」になっちゃいます。歌詞に時代が見えちゃってるのが聴いていてかなり気恥ずかしい部分ですが、今の耳では逆に新鮮かも。こんな歌詞日本人にしか書けません!

最新流行 パリコレ アレコレ
見せもの 似せもの 借りもの さらしもの
「BROKEN DUMMIES」より

 

 次に一般的には多分、こっちの方が取っ付き易い人多いと思っている3rdアルバム「RADIO FANTASY」。
 このアルバムでは、ニューウエイヴを意識的に「和風」で咀嚼しYMOとはまた違った方法論でのより高性能なテクノポップの完成形として日本のものに作り替えています。よりロックのダイナミズムを求めるのであれば一風堂の方が刺激性高めです。
 シングル曲「RADIO FANTASY」はその完成形の成果。エレキインストとニューウエイヴと歌謡曲の邂逅です。
 新機軸として、土着リズム、アフリカンビートもそつなく取り入れているのもまた一風堂らしい技。楽しげなお祭りリズムが多くなったおかげで、前作のちょっと暗く重めなイメージからとてもはじけた印象を持ちます。なんとなく感じていた借り物感も上手く消化され、まさに日本のサウンドになっている事も記しておきましょう。
 ただ、微妙なバランスのマニアライクさも配置され、一気に売れ筋に流れていかないのがまた一風堂らしい所。

 こう書いていくと、様々な要素を散りばめまとめ、まとめ散りばめ構成して1つの曲、アルバムになっているのですから過剰に思えます。確かに過剰です。しかしこの過剰なポップさもまたテクノポップ時代の良い所。細分化ではなく、融合ですか。70年代のくそ真面目っぽい融合/要素の取り入れ方ではなく、感覚的に取り入れているところもまた80年代っぽくて面白い。僕はどっちも好きですけどね。

 今回発売されるボックスには他にも1st、4thにライブと土屋昌巳の82年のソロとキーボードの見岳章(美空ひばり「時の流れのようにの作曲者)のソロにDVDが付きます。だからやっぱ買わなきゃ。でも僕としてはバラ売りはして欲しいなぁ。もっと色んな人に聴いて欲しい。